2020/10/11(日) - 07:55
後半にかけてガルガーノ半島のアップダウンが組み込まれたジロ・デ・イタリア第8ステージで、逃げの中から独走に持ち込んだアレックス・ドーセット(イスラエル・スタートアップネイション)が優勝。チームにグランツール初勝利&UCIワールドツアーレース初勝利をもたらした。
2級山岳と4級山岳が設定されただけのジャスト200kmのステージは一見スプリンター向きだが、切り立った海岸線が続くガルガーノ半島の先端を走るステージ後半はアップダウンの連続。しかも終盤に登場するヴィエステの周回コースには、全長1km・平均9.3%・最大17%というカテゴリーの付いていない急坂が登場する。合計2回登場するこの急坂を越えるとフィニッシュまで10kmしかない。
パンチャー向きの獲得標高差2,200mの難易度3つ星ステージを、スプリンターチームが狙ってくるのか否か。そんな様々なシナリオが考えられる第8ステージをスタートしたのは163名の選手たち。前日の落車で負傷したトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)やパトリック・ガンパー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)に加えて、チームの自主的なPCR検査によってCOVID-19(新型コロナウイルス)陽性が判明したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がスタートしなかった。前哨戦ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を飾りながら第3ステージの1級山岳エトナ山頂フィニッシュで4分以上遅れ、総合21位に順位を下げていた2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者がレースを去っている。
高速な幕開けから22km地点で飛び出したのは6名。総合で30分以上遅れている選手たちで構成された6名の先行をドゥクーニンク・クイックステップは容認した。集団スプリントに持ち込むべくメイン集団を牽引するスプリンターチームは現れず、ステージ中盤の時点でタイム差は10分を超えた。
逃げグループを構成した6名
総合76位 サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)34分30秒遅れ
総合77位 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)34分38秒遅れ
総合94位 シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)43分56秒遅れ
総合114位 マシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)55分34秒遅れ
総合157位 アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)
総合159位 マティアス・ブランドル(オーストリア、イスラエル・スタートアップネイション)
2級山岳モンテサンタンジェロ(全長9.6km・平均勾配6.1%)を28分かけて登り切った逃げグループに対して、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団は30秒早い登坂タイムを記録したが、アタックがかかるような展開には持ち込まれない。レースが動いたのはむしろその下り区間。パンクに見舞われたヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)がストップすると、危険回避のためにメイン集団先頭に上がっていたトレック・セガフレードがペースを上げた。
一時的に1分以上遅れたフルサンは2級山岳で脱落したスプリンターたちとともに前を追ったが、トレック・セガフレード率いるメイン集団への復帰には長い時間を要した。結果的にフルサンはチームメイトに導かれる形で問題なくメイン集団に復帰している。
このペースアップによって逃げグループとのタイム差は9分を割り込んだが、メイン集団が平穏を取り戻したため再びタイム差は拡大傾向に。フィニッシュまで50kmを残してタイム差は10分50秒。先頭6名の逃げ切りが決まった。
ガルガーノ半島の海岸線に沿った細かいアップダウンを経てヴィエステの周回コースに入ると、先頭6名の中でのステージ優勝争いが始まった。残り25km地点の最大勾配17%の急坂でプッチョとホームズ、ロスコフの3名がアタックを成功させて20秒先行。しかし、2014年に51.852kmのアワーレコード新記録を樹立したブランドルと、2015年に52.937kmのアワーレコード新記録を樹立したドーセット(現在の記録はカンペナールツの55.089km)のイスラエルコンビの追走によって残り19km地点で先頭は6名に戻った。
続いて残り18km地点で動いたのはドーセット。反応が遅れて牽制状態に入ったプッチョ、ホームズ、ロスコフ、ラヴァネッリを尻目に、ドーセットが単独先頭に躍り出た。チームメイトのブランドルが追走グループの2番手に陣取ってローテーションの流れを乱したことで、ドーセットは33秒リードした状態で14kmの最終周回へと入っていく。
ドーセットは追走グループから55秒先行した状態で最後の急坂にアタック。この登りで追走グループは再びホームズとプッチョ、ロスコフの3名に絞られ、先頭ドーセットとのタイム差を25秒にまで詰める。ストッパー役のブランドルがいなくなった追走グループはローテーションを回してスピードアップ。しかし、先頭で個人TTモードに入ったドーセットは下り&平坦区間でむしろリードを広げた。
急勾配の登坂区間を平均出力409Wで乗り切り、残り18km地点のアタックから平均スピード44.4km/h(平均出力347W)で駆け抜けたドーセットが、追走3名に1分15秒のリードをつけてフィニッシュした。ブランドルとの連携により、鮮やかな独走勝利を果たした。
追走3名はプッチョ、ホームズ、ロスコフの順で入り、ブランドルとラヴァネッリがそれぞれ2分以上遅れてフィニッシュ。比較的平穏な1日を過ごしたメイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)を先頭に13分56秒遅れでヴィエステにたどり着いている。
2013年大会第8ステージの個人タイムトライアルに続く2度目のステージ優勝を飾ったドーセットは「イスラエル・スタートアップネイションがワールドチームに昇格してからというもの、ずっとこの勝利に向けて戦い続けていた。今日はチームとして逃げでステージ優勝を狙う作戦で、勝つのはマティアス・ブランドルでも自分でもどちらでも良かった。大きな勝利を成し遂げてホッとしている」と語る。
イスラエル・スタートアップネイションにとってはグランツールのステージ初勝利。2015年に設立され、2020年にUCIワールドチームに昇格したチームが悲願のUCIワールドツアーレース初勝利を飾った。今シーズンの勝利数は7勝目で、これは19チームあるUCIワールドチームの中で16番目の数字。
「この勝利をどれだけ求めていたのかを言葉で表現しにくい。来年1月に子供が生まれるのに来年の契約が決まっていない自分にとって、この勝利は必要不可欠だったんだ」と32歳のTTスペシャリストは語っている。
第8ステージを終えてマリアローザ(総合成績)、マリアチクラミーノ(ポイント賞)、マリアアッズーラ(山岳賞)、マリアビアンカ(ヤングライダー賞)ともに大きな変動はなし。プッチョを逃げに乗せたイネオス・グレナディアーズがチーム総合成績トップに立っている。
2級山岳と4級山岳が設定されただけのジャスト200kmのステージは一見スプリンター向きだが、切り立った海岸線が続くガルガーノ半島の先端を走るステージ後半はアップダウンの連続。しかも終盤に登場するヴィエステの周回コースには、全長1km・平均9.3%・最大17%というカテゴリーの付いていない急坂が登場する。合計2回登場するこの急坂を越えるとフィニッシュまで10kmしかない。
パンチャー向きの獲得標高差2,200mの難易度3つ星ステージを、スプリンターチームが狙ってくるのか否か。そんな様々なシナリオが考えられる第8ステージをスタートしたのは163名の選手たち。前日の落車で負傷したトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)やパトリック・ガンパー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)に加えて、チームの自主的なPCR検査によってCOVID-19(新型コロナウイルス)陽性が判明したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がスタートしなかった。前哨戦ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を飾りながら第3ステージの1級山岳エトナ山頂フィニッシュで4分以上遅れ、総合21位に順位を下げていた2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者がレースを去っている。
高速な幕開けから22km地点で飛び出したのは6名。総合で30分以上遅れている選手たちで構成された6名の先行をドゥクーニンク・クイックステップは容認した。集団スプリントに持ち込むべくメイン集団を牽引するスプリンターチームは現れず、ステージ中盤の時点でタイム差は10分を超えた。
逃げグループを構成した6名
総合76位 サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)34分30秒遅れ
総合77位 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)34分38秒遅れ
総合94位 シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)43分56秒遅れ
総合114位 マシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)55分34秒遅れ
総合157位 アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)
総合159位 マティアス・ブランドル(オーストリア、イスラエル・スタートアップネイション)
2級山岳モンテサンタンジェロ(全長9.6km・平均勾配6.1%)を28分かけて登り切った逃げグループに対して、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団は30秒早い登坂タイムを記録したが、アタックがかかるような展開には持ち込まれない。レースが動いたのはむしろその下り区間。パンクに見舞われたヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)がストップすると、危険回避のためにメイン集団先頭に上がっていたトレック・セガフレードがペースを上げた。
一時的に1分以上遅れたフルサンは2級山岳で脱落したスプリンターたちとともに前を追ったが、トレック・セガフレード率いるメイン集団への復帰には長い時間を要した。結果的にフルサンはチームメイトに導かれる形で問題なくメイン集団に復帰している。
このペースアップによって逃げグループとのタイム差は9分を割り込んだが、メイン集団が平穏を取り戻したため再びタイム差は拡大傾向に。フィニッシュまで50kmを残してタイム差は10分50秒。先頭6名の逃げ切りが決まった。
ガルガーノ半島の海岸線に沿った細かいアップダウンを経てヴィエステの周回コースに入ると、先頭6名の中でのステージ優勝争いが始まった。残り25km地点の最大勾配17%の急坂でプッチョとホームズ、ロスコフの3名がアタックを成功させて20秒先行。しかし、2014年に51.852kmのアワーレコード新記録を樹立したブランドルと、2015年に52.937kmのアワーレコード新記録を樹立したドーセット(現在の記録はカンペナールツの55.089km)のイスラエルコンビの追走によって残り19km地点で先頭は6名に戻った。
続いて残り18km地点で動いたのはドーセット。反応が遅れて牽制状態に入ったプッチョ、ホームズ、ロスコフ、ラヴァネッリを尻目に、ドーセットが単独先頭に躍り出た。チームメイトのブランドルが追走グループの2番手に陣取ってローテーションの流れを乱したことで、ドーセットは33秒リードした状態で14kmの最終周回へと入っていく。
ドーセットは追走グループから55秒先行した状態で最後の急坂にアタック。この登りで追走グループは再びホームズとプッチョ、ロスコフの3名に絞られ、先頭ドーセットとのタイム差を25秒にまで詰める。ストッパー役のブランドルがいなくなった追走グループはローテーションを回してスピードアップ。しかし、先頭で個人TTモードに入ったドーセットは下り&平坦区間でむしろリードを広げた。
急勾配の登坂区間を平均出力409Wで乗り切り、残り18km地点のアタックから平均スピード44.4km/h(平均出力347W)で駆け抜けたドーセットが、追走3名に1分15秒のリードをつけてフィニッシュした。ブランドルとの連携により、鮮やかな独走勝利を果たした。
追走3名はプッチョ、ホームズ、ロスコフの順で入り、ブランドルとラヴァネッリがそれぞれ2分以上遅れてフィニッシュ。比較的平穏な1日を過ごしたメイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)を先頭に13分56秒遅れでヴィエステにたどり着いている。
2013年大会第8ステージの個人タイムトライアルに続く2度目のステージ優勝を飾ったドーセットは「イスラエル・スタートアップネイションがワールドチームに昇格してからというもの、ずっとこの勝利に向けて戦い続けていた。今日はチームとして逃げでステージ優勝を狙う作戦で、勝つのはマティアス・ブランドルでも自分でもどちらでも良かった。大きな勝利を成し遂げてホッとしている」と語る。
イスラエル・スタートアップネイションにとってはグランツールのステージ初勝利。2015年に設立され、2020年にUCIワールドチームに昇格したチームが悲願のUCIワールドツアーレース初勝利を飾った。今シーズンの勝利数は7勝目で、これは19チームあるUCIワールドチームの中で16番目の数字。
「この勝利をどれだけ求めていたのかを言葉で表現しにくい。来年1月に子供が生まれるのに来年の契約が決まっていない自分にとって、この勝利は必要不可欠だったんだ」と32歳のTTスペシャリストは語っている。
第8ステージを終えてマリアローザ(総合成績)、マリアチクラミーノ(ポイント賞)、マリアアッズーラ(山岳賞)、マリアビアンカ(ヤングライダー賞)ともに大きな変動はなし。プッチョを逃げに乗せたイネオス・グレナディアーズがチーム総合成績トップに立っている。
ジロ・デ・イタリア2020第8ステージ結果
1位 | アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション) | 4:50:09 |
2位 | サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:01:15 |
3位 | マシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル) | |
4位 | ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム) | |
5位 | マティアス・ブランドル(オーストリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:02:10 |
6位 | シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)。 | 0:02:13 |
7位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 0:13:56 |
8位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール) | |
95位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | |
DNF | ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼール) | |
DNS | トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) | |
DNS | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
DNS | ショーン・ベネット(アメリカ、EFプロサイクリング) | |
DNS | エドアルド・アッフィニ(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
DNS | パトリック・ガンパー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 29:52:34 |
2位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:43 |
3位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:48 |
4位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
5位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:01:01 |
6位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 0:01:05 |
7位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 0:01:19 |
8位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:21 |
9位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:26 |
10位 | ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:32 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 163pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 107pts |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 87pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | 41pts |
2位 | ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) | 40pts |
3位 | マシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル) | 20pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 29:52:34 |
2位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
3位 | ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) | 0:01:33 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 89:32:58 |
2位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 0:09:07 |
3位 | サンウェブ | 0:10:29 |
text:Kei Tsuji
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