2020/10/09(金) - 09:00
終盤に登場した細かいアップダウンを攻略し、最後は圧倒的な加速力でライバルたちを蹴散らしたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)がジロ・デ・イタリア第6ステージで2勝目をマーク。フランスチャンピオンがポイント賞ランキングでもトップに躍り出た。
スプリンター向きではあるものの、単純な平坦ステージではなく、レースにアクセントを与える仕掛けが加えられたジロ第6ステージ。前半の山岳地帯を抜けると平坦基調になるが、残り26km地点で3級山岳ガッレリア・ミロッタ(全長4.9km・平均6.3%)を越え、さらにフィニッシュまで登り基調となる。
フィニッシュ地点は、「サッシ」と呼ばれる石灰岩をくり抜いて作られた洞窟住居が世界遺産に登録されているマテーラ。残り3kmを切ってから平均6.3%・最大10%の登りが800mにわたって続き、さらに残り1kmから先も勾配3%弱の緩斜面。獲得標高差2,600mのコースはスプリンターとパンチャーの戦いに持ち込まれると予想された。
ほぼ0km地点からイタリアのUCIプロチームに所属する3名を含む4名の逃げが決まる。総合ですでに1時間前後遅れている4名による逃げに、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団は最大8分30秒の先行を許した。
逃げグループを形成した4名
総合109位 マッティア・バイス(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)50分23秒遅れ
総合117位 マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)52分09秒遅れ
総合122位 フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニCSF)52分33秒遅れ
総合135位 ジェームス・フェラン(オーストラリア、EFプロサイクリング)1時間00分16秒遅れ
先頭4名から遅れること8分で差し掛かった第1スプリント(61km地点)では、マリアチクラミーノを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下してアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が集団先頭通過(4ポイント獲得)。そこからボーラ・ハンスグローエがメイン集団の牽引を担い、逃げグループとのタイム差を削り取っていく。石造りの街が丘の上に点在するバジリカータ州らしい風景の中、残り50km地点でタイム差は2分まで縮まった。
無線機を調整するためにコース脇にストップしたマリアローザのホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)を避けきれず、ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)が追突して両者ともに落車するという珍しいトラブルが発生したものの、2人は怪我を負うことなくレースを継続している。
フィニッシュまで30kmを切って3級山岳ガッレリア・ミロッタの登りが始まると、2019年のジャパンカップでも逃げたフェランがUCIワールドチームのプライドとともに先頭単独に。一方、ボーラ・ハンスグローエを先頭に平均勾配6.3%の登りを平均スピード23.8km/hで淡々と進んだメイン集団からはエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)が脱落。ビッグスプリンターの中でヴィヴィアーニだけが3級山岳のセレクションに残ることができなかった。
3級山岳の頂上が近づくとメイン集団からトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)とフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)という世界最高峰のルーラー2人が抜け出したが、ボーラ・ハンスグローエがこの動きを封じこめて残り26km。先頭で粘り続けたフェランの逃げも残り13km地点で終わった。
アスタナやサンウェブ、イスラエル・スタートアップネイション、イネオス・グレナディアーズ、UAEチームエミレーツ、ロット・スーダル、ユンボ・ヴィスマが集団先頭でポジション争いを繰り広げ、ガンナとトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)という新旧タイムトライアル世界チャンピオンを先頭に残り3km。
平均勾配6.3%・最大勾配10%の短い登りが始まると、ピュアスプリンターを苦しめるためにマッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)がペースを上げる。
ファッブロ先頭のまま残り1kmを切るとヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)がスパート。再び主導権を奪ったボーラ・ハンスグローエに被せる形で、最終コーナーでファビオ・フェリーネ(イタリア、アスタナ)を引き連れるヤコブ・フルサン(デンマーク)が先頭に立った。
このアスタナトレインを利用してポジションを上げ、最終ストレートでフェリーネの後ろから加速したのがデマールだった。「終盤の短くも急勾配の登りで苦しんだけど、スプリントまでにリカバリーが間に合った。そして残り200mでコースが再び登り基調になった時、脚の感触から完璧なスプリントに持ち込めると確信したんだ」。そう語るデマールの加速は圧倒的だった。追いすがるマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)らを完全に突き放したデマールが圧勝。最終コーナーでポジションを落としたサガンは踏むのを止めた。
デマールは46km/h前後で残り300mの最終コーナーを抜けてから加速。そこから平均勾配2.5%の最終ストレートを踏み抜き、60.1km/hのトップスピードでフィニッシュした。
「2日前のスプリントは完璧ではなかったけど、今日のスプリントは完璧だった。フィニッシュ手前の登りをこなすことができるか不安だったけど、道が平坦になったところで集団の前まで上がり、最高のポジションから勝負に持ち込むことができたんだ。今日のコースでステージ優勝できる力があれば、この先のステージでもっとチャンスが出てくる」と、今シーズン世界最多となる12勝目(スプリント10勝&ステージレース2勝)を飾ったデマール。なお、シーズン9勝を飾っている勝利数2番手のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がすでにシーズン終了を決めている。
デマールはさらにステージ8位に沈んだサガンからマリアチクラミーノを奪うことにも成功した。両者の間には39ポイントもの差がついている。ジロ1大会で複数のステージ優勝を飾ったフランス人選手は2014年のナセル・ブアニ(フランス)以来。当時ブアニはステージ3勝を飾ってポイント賞を獲得している。
この日デマールと同タイムでフィニッシュしたのは59名。総合上位陣はしっかりと集団内でフィニッシュしており、アルメイダがタイムを失うことなくマリアローザを守っている。マリアアッズーラを着て走ったフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)は山岳賞トップの座をキープした。
スプリンター向きではあるものの、単純な平坦ステージではなく、レースにアクセントを与える仕掛けが加えられたジロ第6ステージ。前半の山岳地帯を抜けると平坦基調になるが、残り26km地点で3級山岳ガッレリア・ミロッタ(全長4.9km・平均6.3%)を越え、さらにフィニッシュまで登り基調となる。
フィニッシュ地点は、「サッシ」と呼ばれる石灰岩をくり抜いて作られた洞窟住居が世界遺産に登録されているマテーラ。残り3kmを切ってから平均6.3%・最大10%の登りが800mにわたって続き、さらに残り1kmから先も勾配3%弱の緩斜面。獲得標高差2,600mのコースはスプリンターとパンチャーの戦いに持ち込まれると予想された。
ほぼ0km地点からイタリアのUCIプロチームに所属する3名を含む4名の逃げが決まる。総合ですでに1時間前後遅れている4名による逃げに、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団は最大8分30秒の先行を許した。
逃げグループを形成した4名
総合109位 マッティア・バイス(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)50分23秒遅れ
総合117位 マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)52分09秒遅れ
総合122位 フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニCSF)52分33秒遅れ
総合135位 ジェームス・フェラン(オーストラリア、EFプロサイクリング)1時間00分16秒遅れ
先頭4名から遅れること8分で差し掛かった第1スプリント(61km地点)では、マリアチクラミーノを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下してアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が集団先頭通過(4ポイント獲得)。そこからボーラ・ハンスグローエがメイン集団の牽引を担い、逃げグループとのタイム差を削り取っていく。石造りの街が丘の上に点在するバジリカータ州らしい風景の中、残り50km地点でタイム差は2分まで縮まった。
無線機を調整するためにコース脇にストップしたマリアローザのホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)を避けきれず、ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)が追突して両者ともに落車するという珍しいトラブルが発生したものの、2人は怪我を負うことなくレースを継続している。
フィニッシュまで30kmを切って3級山岳ガッレリア・ミロッタの登りが始まると、2019年のジャパンカップでも逃げたフェランがUCIワールドチームのプライドとともに先頭単独に。一方、ボーラ・ハンスグローエを先頭に平均勾配6.3%の登りを平均スピード23.8km/hで淡々と進んだメイン集団からはエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)が脱落。ビッグスプリンターの中でヴィヴィアーニだけが3級山岳のセレクションに残ることができなかった。
3級山岳の頂上が近づくとメイン集団からトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)とフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)という世界最高峰のルーラー2人が抜け出したが、ボーラ・ハンスグローエがこの動きを封じこめて残り26km。先頭で粘り続けたフェランの逃げも残り13km地点で終わった。
アスタナやサンウェブ、イスラエル・スタートアップネイション、イネオス・グレナディアーズ、UAEチームエミレーツ、ロット・スーダル、ユンボ・ヴィスマが集団先頭でポジション争いを繰り広げ、ガンナとトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)という新旧タイムトライアル世界チャンピオンを先頭に残り3km。
平均勾配6.3%・最大勾配10%の短い登りが始まると、ピュアスプリンターを苦しめるためにマッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)がペースを上げる。
ファッブロ先頭のまま残り1kmを切るとヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)がスパート。再び主導権を奪ったボーラ・ハンスグローエに被せる形で、最終コーナーでファビオ・フェリーネ(イタリア、アスタナ)を引き連れるヤコブ・フルサン(デンマーク)が先頭に立った。
このアスタナトレインを利用してポジションを上げ、最終ストレートでフェリーネの後ろから加速したのがデマールだった。「終盤の短くも急勾配の登りで苦しんだけど、スプリントまでにリカバリーが間に合った。そして残り200mでコースが再び登り基調になった時、脚の感触から完璧なスプリントに持ち込めると確信したんだ」。そう語るデマールの加速は圧倒的だった。追いすがるマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)らを完全に突き放したデマールが圧勝。最終コーナーでポジションを落としたサガンは踏むのを止めた。
デマールは46km/h前後で残り300mの最終コーナーを抜けてから加速。そこから平均勾配2.5%の最終ストレートを踏み抜き、60.1km/hのトップスピードでフィニッシュした。
「2日前のスプリントは完璧ではなかったけど、今日のスプリントは完璧だった。フィニッシュ手前の登りをこなすことができるか不安だったけど、道が平坦になったところで集団の前まで上がり、最高のポジションから勝負に持ち込むことができたんだ。今日のコースでステージ優勝できる力があれば、この先のステージでもっとチャンスが出てくる」と、今シーズン世界最多となる12勝目(スプリント10勝&ステージレース2勝)を飾ったデマール。なお、シーズン9勝を飾っている勝利数2番手のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がすでにシーズン終了を決めている。
デマールはさらにステージ8位に沈んだサガンからマリアチクラミーノを奪うことにも成功した。両者の間には39ポイントもの差がついている。ジロ1大会で複数のステージ優勝を飾ったフランス人選手は2014年のナセル・ブアニ(フランス)以来。当時ブアニはステージ3勝を飾ってポイント賞を獲得している。
この日デマールと同タイムでフィニッシュしたのは59名。総合上位陣はしっかりと集団内でフィニッシュしており、アルメイダがタイムを失うことなくマリアローザを守っている。マリアアッズーラを着て走ったフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)は山岳賞トップの座をキープした。
ジロ・デ・イタリア2020第6ステージ結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 4:54:38 |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
3位 | ファビオ・フェリーネ(イタリア、アスタナ) | |
4位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | |
6位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール) | |
7位 | ミケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
8位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | エンリコ・バッタリーン(イタリア、バーレーン・マクラーレン) | |
10位 | ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
80位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:32 |
DNS | ブレント・ブックウォルター(アメリカ、ミッチェルトン・スコット) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 22:01:01 |
2位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:43 |
3位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:48 |
4位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
5位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:01:01 |
6位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 0:01:05 |
7位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 0:01:19 |
8位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:21 |
9位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:26 |
10位 | ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:32 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 106pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 67pts |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 55pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | 41pts |
2位 | ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) | 40pts |
3位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 19pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 22:01:01 |
2位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:59 |
3位 | ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) | 0:01:33 |
チーム総合成績
1位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 66:07:26 |
2位 | サンウェブ | 0:01:22 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:03:34 |
text:Kei Tsuji
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