2020/09/27(日) - 01:17
2日前に31.7kmの個人タイムトライアルで優勝したアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)がラスト41kmを独走。ロード世界選手権女子エリートロードレースで自身2度目の、そして今大会2枚目のアルカンシェルを手にした。終盤までメイン集団で展開した與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ)は自身最高位となる21位。
晴れ&強風のコンディションで開催された女子エリートロードレース
9月26日、ロード世界選手権3日目は女子エリートロードレース。コースプレビュー記事の通り、イモラサーキットを発着する27.8kmの周回コースには「マッツォラーノ(距離2.8km・平均勾配5.9%・最大勾配13%)」と「チーマ・ガッリステルナ(距離2.7km・平均勾配6.4%・最大勾配14%)」という2つの急勾配の登りが設定されている。
女子エリートはこのジェットコースターのような周回コースを5周する全長143km/獲得標高差2,800m。個人タイムトライアルが開催された前半2日間とは異なりこの日は北西から風が吹き付けた。降雨の心配がない青い空がイモラサーキットを包んだものの、コース沿道のフェンスを倒すほどの強風が吹くコンディション。レース前のPCR検査で新型コロナウイルス陽性が判明したオルガ・ザベリンスカヤ(ウズベキスタン)らを除く140名がスタートを切った。
4周目にオランダが攻撃を開始
ニュートラルゾーン走行中に落車した選手に詰まる形でストップした與那嶺はチェーン落ちに見舞われたものの、シマノのニュートラルサポートを受けて再スタートし、怪我を負うことなくレースに復帰している。この落車によって正式スタートが予定よりも遅らされた。
強い風が吹いたこともあり、序盤から逃げを打つ選手は現れなかった。「いつもだったら参考となるジュニアやU23のレースが事前にあるけど、今回は女子エリートが最初。だからいつもと違ってレース前半は様子見の雰囲気でした」と8年連続出場の與那嶺が証言する通り、大きな動きが生まれないまま1周目を終える。
2周目に入るとアメリカやベルギーが攻撃を開始し、エイミー・ピーターズ(オランダ)やリサ・ブレナウアー(ドイツ)、ハンナ・バーンズ(イギリス)を含む10名が先行を開始。逃げグループのリードが2分30秒まで広がった状態で4周目、つまり残り2周回に差し掛かった。
オランダ、イタリア、ドイツ、アメリカ、イギリス、スペイン、フランス、スロベニア、カナダ、ルクセンブルクが選手を送り込んだ逃げグループを、オーストラリアやポーランド、デンマークが率いるメイン集団が追いかける。タイム差が1分を割り込むと、フィニッシュまで50kmを切ったところでオランダが攻撃を開始。「マッツォラーノ」の登りでオランダがペースを上げるとメイン集団は一気に人数を減らしてしまう。「ここは出し切ってでも戻らないとと思った」という與那嶺はこのセレクションに残った。
逃げグループを飲み込んで「チーマ・ガッリステルナ」に入ると、マリアンヌ・フォス(オランダ)のペースアップからアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)がアタックを仕掛けて集団は崩壊。直前のジロローザで手首を骨折しながらも出場したディフェンディングチャンピオンのファンフルーテンにお膳立てされる形で、そこからファンデルブレッヘンが飛び出した。
「チーマ・ガッリステルナ」の急勾配区間で加速したファンデルブレッヘンに反応できる選手はいなかった。フィニッシュまで41kmを残して独走を開始したファンデルブレッヘン。エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)、セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク)、リアヌ・リッパート(ドイツ)、そしてファンフルーテンを含む追走グループが與那嶺を含む後続集団に飲み込まれた一方で、ファンデルブレッヘンはリードを1分43秒まで伸ばして最終周回の鐘を聞いた。
34名で構成されたメイン集団とのタイム差をむしろ広げる走りを披露したファンデルブレッヘン。メイン集団内では実質的な銀メダル争いが始まり、「チーマ・ガッリステルナ」でロンゴボルギーニが発進。ここにファンフルーテンだけが食らいつき、2人でファンデルブレッヘン追走体制に入る。先頭1名と追走2名のタイム差は縮小傾向に転じたが、ファンデルブレッヘンのリードは揺るがなかった。
独走のままイモラサーキットにやってきたファンデルブレッヘンが残り100mを切って勝利を確信し、早めにハンドルから手を離して勝利を味わう。31.7kmの個人タイムトライアル勝利に続く41km独走勝利。ファンデルブレッヘンのフィニッシュから遅れること1分20秒で繰り広げられた銀メダル争いは、ロンゴボルギーニに進路を塞がれながらもファンフルーテンが先着している。
4年連続オランダがロードレース世界タイトル獲得
オランダに4年連続となる女子エリートロードレース世界チャンピオンのタイトルをもたらしたファンデルブレッヘン。2018年に続く2度目のロードレース制覇、そして今大会2枚目のアルカンシェルを獲得した30歳は、記者会見で「この不安定なシーズンで、まずは世界選手権が開催されて、オランダチームとして出場できたことが嬉しかった」と語る。
「チームメイトと話して、4周目の登りで攻撃を仕掛ける作戦だった。確かにフィニッシュまで距離が長かったけど、誰もが疲れた状態で挑む最終周回だとアタックを決めれるかどうか分からなかった。それにアネミエク(ファンフルーテン)も控えていたし、自信を持って勝負に挑んだ」とファンデルブレッヘン。例年であれば水曜日に個人タイムトライアルが開催され、中2日を置いて土曜日にロードレースが開催されるが、ジュニア&U23カテゴリーが開催されない今年は木曜日個人タイムトライアル→土曜日ロードレースと、リカバリー時間がいつもより1日少ない中での二冠達成。今シーズンはオランダ選手権ロードレース優勝、ヨーロッパ選手権個人タイムトライアル優勝、ジロローザ総合優勝、そして世界選手権二冠と、波に乗っている。
「イモラサーキットに入ってから(残り2kmの)登りでアタックしたけど向かい風で集団に引き戻され、最後は(集団スプリントが)9位争いかどうかもわからなかった」と語る與那嶺は19名の集団内でフィニッシュして21位。2014年大会の22位を上回る自身最高位をマークした。
「久々に自分のためのレースで、久々にレースができました」と與那嶺は笑った。過去5年間ロード世界選手権で思うような走りができなかった與那嶺は「今年はとにかく特殊なシーズンで、UCIワールドツアーレースを走らないまま挑みましたが、楽しくレースできた。もちろんもう一つ前(のグループ)でフィニッシュしたかったけど、まあまあ頑張ったと思います」と振り返る。
シーズン中断の影響でまだ出場レースの少ない與那嶺は「これからシーズンが始まる感じです。次戦に向けて良い感触を得ることができたので良かった」と語る。與那嶺はフレーシュ・ワロンヌとアムステルゴールドレースに出場する予定だ。
晴れ&強風のコンディションで開催された女子エリートロードレース
9月26日、ロード世界選手権3日目は女子エリートロードレース。コースプレビュー記事の通り、イモラサーキットを発着する27.8kmの周回コースには「マッツォラーノ(距離2.8km・平均勾配5.9%・最大勾配13%)」と「チーマ・ガッリステルナ(距離2.7km・平均勾配6.4%・最大勾配14%)」という2つの急勾配の登りが設定されている。
女子エリートはこのジェットコースターのような周回コースを5周する全長143km/獲得標高差2,800m。個人タイムトライアルが開催された前半2日間とは異なりこの日は北西から風が吹き付けた。降雨の心配がない青い空がイモラサーキットを包んだものの、コース沿道のフェンスを倒すほどの強風が吹くコンディション。レース前のPCR検査で新型コロナウイルス陽性が判明したオルガ・ザベリンスカヤ(ウズベキスタン)らを除く140名がスタートを切った。
4周目にオランダが攻撃を開始
ニュートラルゾーン走行中に落車した選手に詰まる形でストップした與那嶺はチェーン落ちに見舞われたものの、シマノのニュートラルサポートを受けて再スタートし、怪我を負うことなくレースに復帰している。この落車によって正式スタートが予定よりも遅らされた。
強い風が吹いたこともあり、序盤から逃げを打つ選手は現れなかった。「いつもだったら参考となるジュニアやU23のレースが事前にあるけど、今回は女子エリートが最初。だからいつもと違ってレース前半は様子見の雰囲気でした」と8年連続出場の與那嶺が証言する通り、大きな動きが生まれないまま1周目を終える。
2周目に入るとアメリカやベルギーが攻撃を開始し、エイミー・ピーターズ(オランダ)やリサ・ブレナウアー(ドイツ)、ハンナ・バーンズ(イギリス)を含む10名が先行を開始。逃げグループのリードが2分30秒まで広がった状態で4周目、つまり残り2周回に差し掛かった。
オランダ、イタリア、ドイツ、アメリカ、イギリス、スペイン、フランス、スロベニア、カナダ、ルクセンブルクが選手を送り込んだ逃げグループを、オーストラリアやポーランド、デンマークが率いるメイン集団が追いかける。タイム差が1分を割り込むと、フィニッシュまで50kmを切ったところでオランダが攻撃を開始。「マッツォラーノ」の登りでオランダがペースを上げるとメイン集団は一気に人数を減らしてしまう。「ここは出し切ってでも戻らないとと思った」という與那嶺はこのセレクションに残った。
逃げグループを飲み込んで「チーマ・ガッリステルナ」に入ると、マリアンヌ・フォス(オランダ)のペースアップからアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)がアタックを仕掛けて集団は崩壊。直前のジロローザで手首を骨折しながらも出場したディフェンディングチャンピオンのファンフルーテンにお膳立てされる形で、そこからファンデルブレッヘンが飛び出した。
「チーマ・ガッリステルナ」の急勾配区間で加速したファンデルブレッヘンに反応できる選手はいなかった。フィニッシュまで41kmを残して独走を開始したファンデルブレッヘン。エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)、セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク)、リアヌ・リッパート(ドイツ)、そしてファンフルーテンを含む追走グループが與那嶺を含む後続集団に飲み込まれた一方で、ファンデルブレッヘンはリードを1分43秒まで伸ばして最終周回の鐘を聞いた。
34名で構成されたメイン集団とのタイム差をむしろ広げる走りを披露したファンデルブレッヘン。メイン集団内では実質的な銀メダル争いが始まり、「チーマ・ガッリステルナ」でロンゴボルギーニが発進。ここにファンフルーテンだけが食らいつき、2人でファンデルブレッヘン追走体制に入る。先頭1名と追走2名のタイム差は縮小傾向に転じたが、ファンデルブレッヘンのリードは揺るがなかった。
独走のままイモラサーキットにやってきたファンデルブレッヘンが残り100mを切って勝利を確信し、早めにハンドルから手を離して勝利を味わう。31.7kmの個人タイムトライアル勝利に続く41km独走勝利。ファンデルブレッヘンのフィニッシュから遅れること1分20秒で繰り広げられた銀メダル争いは、ロンゴボルギーニに進路を塞がれながらもファンフルーテンが先着している。
4年連続オランダがロードレース世界タイトル獲得
オランダに4年連続となる女子エリートロードレース世界チャンピオンのタイトルをもたらしたファンデルブレッヘン。2018年に続く2度目のロードレース制覇、そして今大会2枚目のアルカンシェルを獲得した30歳は、記者会見で「この不安定なシーズンで、まずは世界選手権が開催されて、オランダチームとして出場できたことが嬉しかった」と語る。
「チームメイトと話して、4周目の登りで攻撃を仕掛ける作戦だった。確かにフィニッシュまで距離が長かったけど、誰もが疲れた状態で挑む最終周回だとアタックを決めれるかどうか分からなかった。それにアネミエク(ファンフルーテン)も控えていたし、自信を持って勝負に挑んだ」とファンデルブレッヘン。例年であれば水曜日に個人タイムトライアルが開催され、中2日を置いて土曜日にロードレースが開催されるが、ジュニア&U23カテゴリーが開催されない今年は木曜日個人タイムトライアル→土曜日ロードレースと、リカバリー時間がいつもより1日少ない中での二冠達成。今シーズンはオランダ選手権ロードレース優勝、ヨーロッパ選手権個人タイムトライアル優勝、ジロローザ総合優勝、そして世界選手権二冠と、波に乗っている。
「イモラサーキットに入ってから(残り2kmの)登りでアタックしたけど向かい風で集団に引き戻され、最後は(集団スプリントが)9位争いかどうかもわからなかった」と語る與那嶺は19名の集団内でフィニッシュして21位。2014年大会の22位を上回る自身最高位をマークした。
「久々に自分のためのレースで、久々にレースができました」と與那嶺は笑った。過去5年間ロード世界選手権で思うような走りができなかった與那嶺は「今年はとにかく特殊なシーズンで、UCIワールドツアーレースを走らないまま挑みましたが、楽しくレースできた。もちろんもう一つ前(のグループ)でフィニッシュしたかったけど、まあまあ頑張ったと思います」と振り返る。
シーズン中断の影響でまだ出場レースの少ない與那嶺は「これからシーズンが始まる感じです。次戦に向けて良い感触を得ることができたので良かった」と語る。與那嶺はフレーシュ・ワロンヌとアムステルゴールドレースに出場する予定だ。
ロード世界選手権2020女子エリートロードレース結果
1位 | アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ) | 4:09:57 |
2位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ) | 0:01:20 |
3位 | エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア) | |
4位 | マリアンヌ・フォス(オランダ) | 0:02:01 |
5位 | リアヌ・リッパート(ドイツ) | |
6位 | エリザベス・ダイグナン(イギリス) | |
7位 | カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド) | |
8位 | セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク) | 0:02:41 |
9位 | リサ・ブレナウアー(ドイツ) | 0:03:08 |
10位 | マーレン・ローセル(スイス) | |
21位 | 與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ) |
text:Kei Tsuji in Imola, Italy
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