ジロ・ローザ最終日にエビタ・ムジック(フランス、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)逃げ切り。ライバルをコントロール下に置いたアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)が自身3度目の総合優勝に輝いた。
風車が回る丘陵地帯。先頭グループを逃したメイン集団がスローペースで進む photo:TREK-Segafredo/GettySport
新型コロナウイルスでの開催中止危機を乗り越え、最終第9ステージまで辿りついたジロ・ローザ(正式名称はジロ・ディタリア・インテルナツィオナーレ・フェミニーレ:女子ワールドツアー)。悲劇的な幕切れを遂げたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)を含む52名が去り、わずか86名となったプロトンが最後の決戦地モッタ・モンテコルヴィーノのスタートラインに顔を揃えた。
大会最終日のコースは登坂距離9.1km/平均勾配4.3%の山岳を含む27.5kmコースを4周回する109.9km。つまり1周回のうちのほとんどが長い登りか下りで構成されており、最後は山の中腹でフィニッシュを迎えるという、前日のクイーンステージに勝るとも劣らない難易度を誇る。
マリアローザを着用するアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)は安泰と言える1分10秒リードを得ているものの、総合3位エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)と4位セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)の差はわずか2秒。リアルスタートが切られると、大会最後のチャンスに向けて多くの選手たちがアタックを仕掛けた。
単独逃げを打ったイェレーナ・エリック(セルビア、モビスター)に対して26名の巨大な追走グループが追いつき、メイン集団との距離を広げながら突き進む。この中には2日連続逃げのルーシー・ケネディ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、連日集団牽引役を担ったエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)、エウジェニア・ブヤク(スロベニア、アレ・BTCリュブリャナ)など、複数の有力勢が入った。
連日集団牽引役を担ったエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)がエスケープ photo:TREK-Segafredo/GettySport
キャリア初優勝を挙げたエビタ・ムジック(フランス、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) photo:CorVos
27名という大きな逃げグループではあったものの、総合成績上位を脅かす選手が入らなかったことで、リーダーチームのブールス・ドルマンスは逃げ切りを容認。先頭グループからは登りの度に数名がこぼれ落ちていったものの、大人数が幸いし最終周回に入ってもリードは5分にまで広がっていた。
長い下り区間ではサブリナ・ストゥルテンス(オランダ、CCC・リブ)をはじめとする4名が飛び出したが、フィニッシュを目指す6.6kmの最終登坂に入ると引き戻され、ブロディ・チャップマン(オーストラリア、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)がエビタ・ムジック(フランス)のためにハイテンポを刻んでいく。平均勾配3.8%という緩斜面で次々と選手がこぼれ、残り2kmでチャップマンが牽引を終えるとハイペースを耐え抜いた選手たちは膠着状態となった。
ピンク色に彩られたモッタ・モンテコルヴィーノのフィニッシュが目前に迫るとニーヴ・フィッシャーブラック(ニュージーランド、エキップ・ポール カ)がアタックしたが、チャップマンの好アシストを受けたムジックがしがみつき、フィニッシュ直前でパス。連日総合エースのルドヴィグのために働いた21歳のムジックが、世界最高峰の舞台でプロ初勝利を挙げることに成功した。
逆転を狙うルドヴィグを封じた総合3位エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:TREK-Segafredo/GettySport
笑顔でフィニッシュに飛び込むアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) photo:CorVos
4分半差で最終勾配に入ったメイン集団では、マリアローザのファンデルブレヘン自らハイペースで牽引しライバルのアタックを完璧に封じた。総合2位のカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)は動けず、最終局面に入ってようやく3位総合表彰台を狙うルドヴィグが攻撃したが、2秒を守る立場のロンゴボルギーニはすぐさま反応して逃さない。ロンゴボルギーニがルドヴィグを抑えたその背後では、ペースを緩めたファンデルブレヘンがジロ・ローザ総合優勝を決めるガッツポーズでフィニッシュした。
「このジロ・ローザで勝つことができて、もちろん嬉しい。ジロの最終日はいつでもエキサイティングな展開になる。得ていたリードは大きかったけれど、コースは厳しいものだった。それでもチームメイトが1日中そばについていてくれたので良かったし、彼女たち無しでは結果を残すことはできなかった。チームにとっても、そして自分にとっても大きな1日になった」と、強い走りでマリアローザを守り抜いたファンデルブレヘンは言う。
自身3度目の総合優勝を掴んだアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) photo:CorVos
ポイント賞は区間3勝を挙げたマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ) photo:CorVos
チーム総合成績はリタイア者を出すことなく走りきったCCC・リブ photo:CorVos
エビタ・ムジック(フランス、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)らステージ上位3名 photo:CorVos
総合2位ニエウィアドーマ、優勝ファンデルブレヘン、3位ロンゴボルギーニ photo:CorVos
勝利の美酒を味わうアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) photo:CorVos
ファンデルブレヘンのジロ・ローザ制覇は2015年、2017年に続く3度目。リオ五輪や2018年世界選手権制覇など輝かしい戦歴にまた一つタイトルを加えた30歳は、目前に迫った世界選手権でファンフルーテン不在のオランダチームを率いる存在となる。
「大一番に向けて調子が戻ってきたことを確認できた。厳しいジロ・ローザで上手く走れたことは自身にも繋がる。本番までの数日間でどれだけリカバリーできるかがとても大切」と、その視線は2枚目のアルカンシエル獲得を見据えている。

新型コロナウイルスでの開催中止危機を乗り越え、最終第9ステージまで辿りついたジロ・ローザ(正式名称はジロ・ディタリア・インテルナツィオナーレ・フェミニーレ:女子ワールドツアー)。悲劇的な幕切れを遂げたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)を含む52名が去り、わずか86名となったプロトンが最後の決戦地モッタ・モンテコルヴィーノのスタートラインに顔を揃えた。
大会最終日のコースは登坂距離9.1km/平均勾配4.3%の山岳を含む27.5kmコースを4周回する109.9km。つまり1周回のうちのほとんどが長い登りか下りで構成されており、最後は山の中腹でフィニッシュを迎えるという、前日のクイーンステージに勝るとも劣らない難易度を誇る。
マリアローザを着用するアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)は安泰と言える1分10秒リードを得ているものの、総合3位エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)と4位セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)の差はわずか2秒。リアルスタートが切られると、大会最後のチャンスに向けて多くの選手たちがアタックを仕掛けた。
単独逃げを打ったイェレーナ・エリック(セルビア、モビスター)に対して26名の巨大な追走グループが追いつき、メイン集団との距離を広げながら突き進む。この中には2日連続逃げのルーシー・ケネディ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、連日集団牽引役を担ったエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)、エウジェニア・ブヤク(スロベニア、アレ・BTCリュブリャナ)など、複数の有力勢が入った。


27名という大きな逃げグループではあったものの、総合成績上位を脅かす選手が入らなかったことで、リーダーチームのブールス・ドルマンスは逃げ切りを容認。先頭グループからは登りの度に数名がこぼれ落ちていったものの、大人数が幸いし最終周回に入ってもリードは5分にまで広がっていた。
長い下り区間ではサブリナ・ストゥルテンス(オランダ、CCC・リブ)をはじめとする4名が飛び出したが、フィニッシュを目指す6.6kmの最終登坂に入ると引き戻され、ブロディ・チャップマン(オーストラリア、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)がエビタ・ムジック(フランス)のためにハイテンポを刻んでいく。平均勾配3.8%という緩斜面で次々と選手がこぼれ、残り2kmでチャップマンが牽引を終えるとハイペースを耐え抜いた選手たちは膠着状態となった。
ピンク色に彩られたモッタ・モンテコルヴィーノのフィニッシュが目前に迫るとニーヴ・フィッシャーブラック(ニュージーランド、エキップ・ポール カ)がアタックしたが、チャップマンの好アシストを受けたムジックがしがみつき、フィニッシュ直前でパス。連日総合エースのルドヴィグのために働いた21歳のムジックが、世界最高峰の舞台でプロ初勝利を挙げることに成功した。


4分半差で最終勾配に入ったメイン集団では、マリアローザのファンデルブレヘン自らハイペースで牽引しライバルのアタックを完璧に封じた。総合2位のカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)は動けず、最終局面に入ってようやく3位総合表彰台を狙うルドヴィグが攻撃したが、2秒を守る立場のロンゴボルギーニはすぐさま反応して逃さない。ロンゴボルギーニがルドヴィグを抑えたその背後では、ペースを緩めたファンデルブレヘンがジロ・ローザ総合優勝を決めるガッツポーズでフィニッシュした。
「このジロ・ローザで勝つことができて、もちろん嬉しい。ジロの最終日はいつでもエキサイティングな展開になる。得ていたリードは大きかったけれど、コースは厳しいものだった。それでもチームメイトが1日中そばについていてくれたので良かったし、彼女たち無しでは結果を残すことはできなかった。チームにとっても、そして自分にとっても大きな1日になった」と、強い走りでマリアローザを守り抜いたファンデルブレヘンは言う。






ファンデルブレヘンのジロ・ローザ制覇は2015年、2017年に続く3度目。リオ五輪や2018年世界選手権制覇など輝かしい戦歴にまた一つタイトルを加えた30歳は、目前に迫った世界選手権でファンフルーテン不在のオランダチームを率いる存在となる。
「大一番に向けて調子が戻ってきたことを確認できた。厳しいジロ・ローザで上手く走れたことは自身にも繋がる。本番までの数日間でどれだけリカバリーできるかがとても大切」と、その視線は2枚目のアルカンシエル獲得を見据えている。
ジロ・ローザ2020第9ステージ結果
1位 | エビタ・ムジック(フランス、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) | 3:16:30 |
2位 | ニーヴ・フィッシャーブラック(ニュージーランド、エキップ・ポール カ) | |
3位 | ジュリエット・ラボウ(フランス、サンウェブ) | |
4位 | カティア・ラグサ(イタリア、アスタナ) | 0:03 |
5位 | エレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:04 |
6位 | エリカ・マグナルディ(イタリア、セラティツィット・WNTプロサイクリング) | 0:08 |
7位 | サブリナ・ストゥルテンス(オランダ、CCC・リブ) | 0:10 |
8位 | エウジェニア・ブヤク(スロベニア、アレ・BTCリュブリャナ) | 0:25 |
9位 | アルレニス・シエラ(キューバ、アスタナ) | 0:36 |
10位 | アンドレア・パティーニョ(コロンビア、モビスター) | 0:42 |
個人総合成績
1位 | アンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) | 26:25:43 |
2位 | カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム) | 1:14 |
3位 | エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) | 2:20 |
4位 | セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) | 2:22 |
5位 | ミカイラ・ハーヴィー(ニュージーランド、エキップ・ポール カ) | 2:52 |
6位 | アシュレー・ムールマン(南アフリカ、CCC・リブ) | 5:02 |
7位 | アン・サンテステバン(スペイン、セラティツィット・WNTプロサイクリング) | 6:31 |
8位 | アンドレア・パティーニョ(コロンビア、モビスター) | 6:54 |
9位 | マビ・ガルシア(スペイン、アレ・BTCリュブリャナ) | 7:06 |
10位 | エビタ・ムジック(フランス、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) | 7:47 |
その他の特別賞
山岳賞 | セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) |
ポイント賞 | マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ) |
ヤングライダー賞 | ミカイラ・ハーヴィー(ニュージーランド、エキップ・ポール カ) |
チーム総合成績 | CCC・リブ |
text:So Isobe
photo:CorVos
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