2020/09/16(水) - 02:31
休息日のPCR検査によって全員のスタートが認められたツール・ド・フランス第16ステージ。逃げ切りによるステージ優勝を目指したイネオス・グレナディアーズ勢を振り切って、逃げグループの中から独走に持ち込んだレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がアルプス初日にステージ初優勝を飾った。
9月15日(火)第16ステージ
ラ・トゥール=デュ=パン〜ヴィラール=ド=ラン
距離:164km
獲得標高差:3,600m
天候:晴れ時々曇り
気温:22〜32度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
12.5km地点 4級山岳ヴィリュー峠(距離2.3km・平均6.8%)
44.5km地点 スプリントポイント
66.5km地点 2級山岳ポルト峠(距離7.4km・平均6.8%)
94.5km地点 2級山岳ルヴェル峠(距離6km・平均8%)
143.5km地点 ボーナスポイント/1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロット(距離11.1km・平均6.5%)
164km地点 3級山岳ヴィラール=ド=ラン(距離2.2km・平均6.5%)
アルプス初日は逃げ切り向きの3級山岳フィニッシュ
パリまで残り833.7km。アルプス山脈とヴォージュ山脈を舞台にした、勝負を決める大会3週目がオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏イゼール県のラ・トゥール=デュ=パンで始まった。
グルノーブルの街を見下ろす2級山岳ポルト峠と2級山岳ルヴェル峠、そして1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットを駆け上がる山岳ステージの獲得標高差は3,600m。最後は3級山岳コート2000/ヴィラール=ド=ランを駆け上がるが、翌日のクイーンステージと比べると難易度は低い。
前々日と前日に行われたPCR検査の結果、全チーム、全選手のスタートにGOサイン。レース現場に復帰したクリスティアン・プリュドム氏に見守られながらレースが始まると、この日も44.5km地点のスプリントポイントに向けたアタック合戦が始まった。
逃げ切りによるステージ優勝、山岳ポイント量産、スプリントポイント獲得、そしてあわよくば総合ジャンプアップという、様々な思惑が重なり合ったアタックに、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やイネオス・グレナディアーズ勢が積極的に参加。マイヨヴェール奪回を目指すペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)もアタックに加わったが、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)のマークによって飛び出すには至らない。
15名が先行した状態で差し掛かったスプリントポイントでは、ライバルのポイントを獲得を阻止したいダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を振り切ってマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)が先頭通過して見せる。20ポイントを獲得したトレンティンはベネットとの差を57ポイント、サガンとの差を12ポイントに詰めることに成功した。ベネットとサガンの一騎打ちと見られたマイヨヴェール争いにトレンティンも加わったと言える。
最終的に後方から8名が追いついて逃げグループは23名に。総合32分27秒遅れのワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)や総合32分55秒遅れのリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が逃げに乗ったが、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)率いるメイン集団はこの逃げを追い上げることはしなかった。
逃げグループを形成した23名
リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ)
パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)
ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)
カスパー・ピーダスン(デンマーク、サンウェブ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFプロサイクリング)
ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)
ウィネル・アナコナ(コロンビア、アルケア・サムシック)
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
イマノル・エルビティ(スペイン、モビスター)
カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)
マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)
ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
ロメン・シカール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットでケムナが独走
エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)の総合争い脱落によって山岳アシストの役目を解かれ、ステージ優勝に目標をスイッチしたイネオス・グレナディアーズの3名(カラパス、アマドール、シヴァコフ)や、山岳賞6位のピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)、出場選手の中で最長となる今大会362kmを逃げているニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)、ステージ2勝目を狙うアラフィリップらを含む大きな逃げ集団。ステージ中盤にメイン集団とのタイム差は10分を越える。
2級山岳ポルト峠と2級山岳ルヴェルを先頭通過して合計10ポイントを獲得したロランはブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)と山岳賞首位タイで並んだが、規定によりマイヨアポワを奪うことはできなかった。
タイム差が12分30秒に広がった状態で逃げグループとメイン集団はこの日最大の難所である1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットに突入していく。最初に動きを見せたカンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)が独走で登坂距離11.1kmの登りに挑んだものの、攻撃を仕掛けるタイミングを伺う追走グループを引き離せない。
ロード世界選手権のコロンビア代表メンバーからも外れたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がスプリンターとともにグルペット入りするちょうどその頃、13分前方ではアンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ)がカウンターアタック。この動きに反応する形で加速したアラフィリップ、カラパス、レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)の4名が先頭パシェに追いついた。
こうして5名となった先頭グループの中からカラパスがアタックを繰り出すも決まらない。1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットの頂上が近づくとケムナが加速。追いすがるカラパスを10秒、ライヒェンバッハを30秒、アラフィリップを45秒引き離して、フィニッシュまで20km強を残して、ケムナ独走に持ち込んだ。
一方のメイン集団からはギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)らが飛び出すシーンも見られたが、集団先頭に6人を集めたユンボ・ヴィスマが状況をコントロール。ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)による一定ペース一本引きがメイン集団を安定化させる。ステージ優勝に向けてペースアップした逃げグループが1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットを26分30秒で登り切った一方で、メイン集団の登坂時間は29分かかっている。
追い風吹く高原の平坦路でリードを広げたケムナはスピードを落とすことなく3級山岳ヴィラール=ド=ランを駆け上がり、カラパスに1分27秒差、ライヒェンバッハに1分56秒差をつけてフィニッシュ。この日は最終的に19名が逃げ切りを果たしている。
「間違いなく、この上なく素晴らしい1日だ。ステージ優勝するためには独走に持ち込む必要があるとわかっていた。カラパスがアタックの後に少しスピードを失ったのを見て、今度は自分の番だと思った。この勝利はチームに安堵の気持ちを与えてくれる。個人的には、このような勝利を飾れるなんてとても想像していなかった」。2位に甘んじた第13ステージ1級山岳ピュイマリーの悔しさを、見事な独走勝利で晴らしたケムナ。サンウェブからボーラ・ハンスグローエに移籍した24歳が、クリテリウム・デュ・ドーフィネ第4ステージに続くアルプス山岳での白星を飾った。
ログリッチがマイヨジョーヌを着てクイーンステージ対決へ
比較的平穏に進行したメイン集団は3級山岳ヴィラール=ド=ランに向けてペースアップ。登りが始まるとマイヨブランを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を引き連れたダビ・デラクルス(スペイン)が先頭に立つも、この日26歳の誕生日を迎えたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が主導権を奪って残り1km。
ロングスパートを仕掛けた総合4位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)を追いかける形で総合上位陣がスプリント体制に入る。「数秒でも奪いたいと思っていたけど、今日は脚に爆発力がなかった。明日のクイーンステージへの良いウォーミングアップになったよ」と語るポガチャルがプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の前でフィニッシュしたもののタイム差は付かなかった。
リードを失うことなく安全にアルプス初日を終えたログリッチは「今日もスタートから高速な展開で、チームはコントロールを失わないように気を払った。明日から重要なステージが続くけど、チームの状態も素晴らしく、終盤に向けて楽しみな気持ちの自分がいる」と語る。休息日を終え、大会最終週に入ってもその安定感はブレていない。
翌日はツール初登場となる標高2,304mの超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠が姿を現す。「明日は今大会最高地点に向かう最難関ステージであり、しかも最後は激坂が登場する。登りは試走済みだし、実は反対側の斜面もスキージャンプで試走済みなんだ」とログリッチ。雨予報も出ているスキー場で、マイヨジョーヌ争いはクライマックスを迎える。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
9月15日(火)第16ステージ
ラ・トゥール=デュ=パン〜ヴィラール=ド=ラン
距離:164km
獲得標高差:3,600m
天候:晴れ時々曇り
気温:22〜32度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
12.5km地点 4級山岳ヴィリュー峠(距離2.3km・平均6.8%)
44.5km地点 スプリントポイント
66.5km地点 2級山岳ポルト峠(距離7.4km・平均6.8%)
94.5km地点 2級山岳ルヴェル峠(距離6km・平均8%)
143.5km地点 ボーナスポイント/1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロット(距離11.1km・平均6.5%)
164km地点 3級山岳ヴィラール=ド=ラン(距離2.2km・平均6.5%)
アルプス初日は逃げ切り向きの3級山岳フィニッシュ
パリまで残り833.7km。アルプス山脈とヴォージュ山脈を舞台にした、勝負を決める大会3週目がオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏イゼール県のラ・トゥール=デュ=パンで始まった。
グルノーブルの街を見下ろす2級山岳ポルト峠と2級山岳ルヴェル峠、そして1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットを駆け上がる山岳ステージの獲得標高差は3,600m。最後は3級山岳コート2000/ヴィラール=ド=ランを駆け上がるが、翌日のクイーンステージと比べると難易度は低い。
前々日と前日に行われたPCR検査の結果、全チーム、全選手のスタートにGOサイン。レース現場に復帰したクリスティアン・プリュドム氏に見守られながらレースが始まると、この日も44.5km地点のスプリントポイントに向けたアタック合戦が始まった。
逃げ切りによるステージ優勝、山岳ポイント量産、スプリントポイント獲得、そしてあわよくば総合ジャンプアップという、様々な思惑が重なり合ったアタックに、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やイネオス・グレナディアーズ勢が積極的に参加。マイヨヴェール奪回を目指すペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)もアタックに加わったが、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)のマークによって飛び出すには至らない。
15名が先行した状態で差し掛かったスプリントポイントでは、ライバルのポイントを獲得を阻止したいダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を振り切ってマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)が先頭通過して見せる。20ポイントを獲得したトレンティンはベネットとの差を57ポイント、サガンとの差を12ポイントに詰めることに成功した。ベネットとサガンの一騎打ちと見られたマイヨヴェール争いにトレンティンも加わったと言える。
最終的に後方から8名が追いついて逃げグループは23名に。総合32分27秒遅れのワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)や総合32分55秒遅れのリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が逃げに乗ったが、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)率いるメイン集団はこの逃げを追い上げることはしなかった。
逃げグループを形成した23名
リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ)
パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)
ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)
カスパー・ピーダスン(デンマーク、サンウェブ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFプロサイクリング)
ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)
ウィネル・アナコナ(コロンビア、アルケア・サムシック)
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
イマノル・エルビティ(スペイン、モビスター)
カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)
マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)
ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
ロメン・シカール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットでケムナが独走
エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)の総合争い脱落によって山岳アシストの役目を解かれ、ステージ優勝に目標をスイッチしたイネオス・グレナディアーズの3名(カラパス、アマドール、シヴァコフ)や、山岳賞6位のピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)、出場選手の中で最長となる今大会362kmを逃げているニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)、ステージ2勝目を狙うアラフィリップらを含む大きな逃げ集団。ステージ中盤にメイン集団とのタイム差は10分を越える。
2級山岳ポルト峠と2級山岳ルヴェルを先頭通過して合計10ポイントを獲得したロランはブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)と山岳賞首位タイで並んだが、規定によりマイヨアポワを奪うことはできなかった。
タイム差が12分30秒に広がった状態で逃げグループとメイン集団はこの日最大の難所である1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットに突入していく。最初に動きを見せたカンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)が独走で登坂距離11.1kmの登りに挑んだものの、攻撃を仕掛けるタイミングを伺う追走グループを引き離せない。
ロード世界選手権のコロンビア代表メンバーからも外れたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がスプリンターとともにグルペット入りするちょうどその頃、13分前方ではアンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ)がカウンターアタック。この動きに反応する形で加速したアラフィリップ、カラパス、レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)の4名が先頭パシェに追いついた。
こうして5名となった先頭グループの中からカラパスがアタックを繰り出すも決まらない。1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットの頂上が近づくとケムナが加速。追いすがるカラパスを10秒、ライヒェンバッハを30秒、アラフィリップを45秒引き離して、フィニッシュまで20km強を残して、ケムナ独走に持ち込んだ。
一方のメイン集団からはギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)らが飛び出すシーンも見られたが、集団先頭に6人を集めたユンボ・ヴィスマが状況をコントロール。ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)による一定ペース一本引きがメイン集団を安定化させる。ステージ優勝に向けてペースアップした逃げグループが1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットを26分30秒で登り切った一方で、メイン集団の登坂時間は29分かかっている。
追い風吹く高原の平坦路でリードを広げたケムナはスピードを落とすことなく3級山岳ヴィラール=ド=ランを駆け上がり、カラパスに1分27秒差、ライヒェンバッハに1分56秒差をつけてフィニッシュ。この日は最終的に19名が逃げ切りを果たしている。
「間違いなく、この上なく素晴らしい1日だ。ステージ優勝するためには独走に持ち込む必要があるとわかっていた。カラパスがアタックの後に少しスピードを失ったのを見て、今度は自分の番だと思った。この勝利はチームに安堵の気持ちを与えてくれる。個人的には、このような勝利を飾れるなんてとても想像していなかった」。2位に甘んじた第13ステージ1級山岳ピュイマリーの悔しさを、見事な独走勝利で晴らしたケムナ。サンウェブからボーラ・ハンスグローエに移籍した24歳が、クリテリウム・デュ・ドーフィネ第4ステージに続くアルプス山岳での白星を飾った。
ログリッチがマイヨジョーヌを着てクイーンステージ対決へ
比較的平穏に進行したメイン集団は3級山岳ヴィラール=ド=ランに向けてペースアップ。登りが始まるとマイヨブランを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を引き連れたダビ・デラクルス(スペイン)が先頭に立つも、この日26歳の誕生日を迎えたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が主導権を奪って残り1km。
ロングスパートを仕掛けた総合4位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)を追いかける形で総合上位陣がスプリント体制に入る。「数秒でも奪いたいと思っていたけど、今日は脚に爆発力がなかった。明日のクイーンステージへの良いウォーミングアップになったよ」と語るポガチャルがプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の前でフィニッシュしたもののタイム差は付かなかった。
リードを失うことなく安全にアルプス初日を終えたログリッチは「今日もスタートから高速な展開で、チームはコントロールを失わないように気を払った。明日から重要なステージが続くけど、チームの状態も素晴らしく、終盤に向けて楽しみな気持ちの自分がいる」と語る。休息日を終え、大会最終週に入ってもその安定感はブレていない。
翌日はツール初登場となる標高2,304mの超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠が姿を現す。「明日は今大会最高地点に向かう最難関ステージであり、しかも最後は激坂が登場する。登りは試走済みだし、実は反対側の斜面もスキージャンプで試走済みなんだ」とログリッチ。雨予報も出ているスキー場で、マイヨジョーヌ争いはクライマックスを迎える。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第16ステージ結果
1位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 4:12:52 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:01:27 |
3位 | セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ) | 0:01:56 |
4位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:02:34 |
5位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) | 0:02:35 |
6位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) | 0:02:37 |
7位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ) | 0:02:41 |
8位 | ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) | 0:02:47 |
9位 | カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 0:02:51 |
10位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:02:54 |
20位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:16:48 |
21位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
22位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
23位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
24位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | |
25位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
26位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
27位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
30位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:16:55 |
36位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:17:23 |
127位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:27:27 |
OTL | ジェローム・クザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) | |
DNF | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 70:06:47 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:40 |
3位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | 0:01:34 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:01:45 |
5位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:02:03 |
6位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:02:13 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:02:16 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:03:15 |
9位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:19 |
10位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:05:43 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 269pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 224pts |
3位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) | 212pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 36pts |
2位 | ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 34pts |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 33pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 70:07:27 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:02:35 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:18:24 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 210:11:06 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:35:37 |
3位 | EFプロサイクリング | 0:37:00 |
text:Kei Tsuji
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