2020/09/14(月) - 02:30
ツール・ド・フランス第15ステージの超級グランコロンビエールでユンボ・ヴィスマが圧倒的なチーム力を披露。エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)が7分以上のタイムを失い、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がステージ2勝目、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が首位を固める結果となった。
鉄壁のユンボ・ヴィスマに守られるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
9月13日(日)第15ステージ
リヨン〜グラン・コロンビエール
距離:174.5km
獲得標高差:3,500m
天候:晴れ
気温:22〜33度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
58km地点 スプリントポイント
111km地点 1級山岳セル・ド・フロマンタル(距離11.1km・平均8.1%・最大22%)
129km地点 1級山岳ラ・ビッシュ峠(距離6.9km・平均8.9%)
174.5km地点 超級山岳グラン・コロンビエール(距離17.4km・平均7.1%)
9月13日(日)第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエール 174.5km photo:A.S.O.
9月13日(日)第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエール 174.5km photo:A.S.O.
スタート前にPCR検査を受けたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Kei Tsuji
無観客のスタートエリアにMCの声が響く photo:Kei Tsuji
ツール第2週を締めくくる超級山岳グラン・コロンビエール
大会2週目の最後に、ジュラ山脈が誇る標高1,501mの超級山岳グラン・コロンビエールが登場。まずはスタートから平坦路を100km近く走ってから1級山岳セル・ド・フロマンタルに挑む。グランコロンビエール山を西側から登るこの1級山岳はとにかく勾配がキツく、頂上手前には22%の激坂区間が登場する。そこから平均勾配8.9%という1級山岳ラ・ビッシュ峠をこなし、フィニッシュまで17.4kmを切ったところで超級山岳グラン・コロンビエールの長い登りが始まる。
4回目の登場にしてフィニッシュ地点としては初登場となるこの名峰は、登坂距離17.4km・平均勾配7.1%という過酷さ。平坦区間を含むため体感的には平均8〜9%で、12%の急勾配区間も連発する。標高差1,245mを駆け上がるグラン・コロンビエールを舞台に、休息日前のマイヨジョーヌ争いが繰り広げられた。
予定通り7月中旬に開催されているような錯覚を覚える夏の暑さのリヨン市内。新型コロナウイルス感染者の増加によりレッドゾーンに指定されているためスタート地点は無観客となったが、日曜日だけにコースの沿道には多くの観客が詰めかけた。
開始から2時間にわたって50km/h近いペースでレースは進行 photo:Kei Tsuji
落車したセルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)はリタイアを余儀なくされる photo:Kei Tsuji
スタートから最初の1級山岳セル・ド・フロマンタルの麓まではちょうど100km。スプリントポイント(58km地点)でのマイヨヴェール争いも絡むアタック合戦は熾烈なものになる。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)らがアタックとカウンターアタックを繰り返し、ポイント賞2位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のアタックにポイント賞1位サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が反応するシーンも。
最終的に28km地点で8名が先行を開始したが、メイン集団が落ち着くまでに長い時間を要した。最初の2時間を平均スピード49.9km/h、つまりステージ前半の100kmを2時間で駆け抜けた選手たち。このクレイジーでナーバスな高速な展開の中、アタック合戦に参加していたセルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)に弾かれる形で落車し、再スタート後の再落車を経てリタイアを喫している。
逃げグループを形成した8名
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)総合34分07秒遅れ
マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)ポイント賞3位
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング)
マルコ・マルカート(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)
ケヴィン・ルダノワ(フランス、アルケア・サムシック)
ポイント賞3位のトレンティンはスプリントポイントをしっかり先頭通過。3分遅れの集団スプリントはポイント賞1位ベネットに軍配が上がり、ポイント賞2位サガンとのポイント差は45ポイントに広がった。
逃げグループを形成したミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング)ら8名 photo:Luca Bettini
4分前後のリードでジュラ山脈の3連続山岳登坂を開始した先頭グループ photo:Kei Tsuji
ユンボ・ヴィスマやUAEチームエミレーツ、ミッチェルトン・スコット、トレック・セガフレードを先頭に1級山岳セル・ド・フロマンタルを登る photo:Kei Tsuji
1級山岳セル・ド・フロマンタルでメイン集団から脱落したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
逃げを捉え、ベルナルをふるい落としたユンボ・ヴィスマ
ユンボ・ヴィスマがメイン集団を牽引したためタイム差の広がりは鈍く、4分30秒差がついた状態で1級山岳セル・ド・フロマンタルに到着する。最大勾配が22%に達するこの急坂で先頭がゲシュケとロラン、エラダ、ゴグルに絞られた一方で、メイン集団からピュアスプリンターたちが脱落。さらに、驚くことに、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が集団後方に下がる。ベルナルは辛うじて集団内で1級山岳セル・ド・フロマンタルを越えたが、精彩をかいていることは明らかだった。
下り区間を攻めたゴグルが独走で次の1級山岳ラ・ビッシュ峠へ。独走するゴグルにはロランが合流したが、ユンボ・ヴィスマが牽引するメイン集団とのタイム差は2分にまで縮まってしまう。続く平坦区間で抵抗を見せたゴグルとロランだったが、超級山岳グラン・コロンビエールの麓に到着した時点でそのリードは1分50秒しか残っていなかった。
先頭で超級山岳グラン・コロンビエールに突入したピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)とミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング) photo:Luca Bettini
超級山岳グラン・コロンビエールでワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がメイン集団を牽引 photo:Luca Bettini
超級山岳グラン・コロンビエールでメイン集団から遅れたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:Luca Bettini
ステージ敢闘賞を獲得することになるロランが超級山岳グラン・コロンビエールで独走に持ち込むも、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)率いるメイン集団が勢いよく追い上げる。ファンアールトの刻むハイペースに、ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が、そしてベルナルが遅れて行った。
「最初の登りでメイン集団から脱落しかけて、調子の悪さを悟った。でもずっと支えてくれているチームのためにも、最後まで戦うと心に決めたんだ。なんて表現したらいいのかわからないけど、すっからかんだった。ライバルたちの加速にただついていくことができなかった。他の選手が自分よりも強かったという事実を受け入れる。何も言い訳はできない」。そう語るベルナルはミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)に牽引されてフィニッシュを目指したが、ライバルたちから7分以上のタイムを失う結果となった。
観客立ち入り禁止の超級山岳グラン・コロンビエールで、ファンアールト、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、セップ・クス(アメリカ)、トム・デュムラン(オランダ)という鉄壁のアシスト体制を築いたユンボ・ヴィスマ。総合ライバルたちをふるい落としながら、残り13kmのスイッチバック区間で先頭ロランを捉えてしまう。
超級山岳グラン・コロンビエールのスイッチバック区間をこなす photo:Luca Bettini
メイン集団を強力に牽引するトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
残り600mでアタックするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
約15名に絞られたメイン集団から残り7km地点でアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がアタックを仕掛けたものの、数キロにわたる独走の末にユンボ・ヴィスマのアシスト陣によって吸収。その後もユンボトレインが誰にもアタックを許さないハイペースを刻み、メイン集団が12名に絞られた状態でフラムルージュ(残り1kmアーチ)に差し掛かった。
デュムランの牽引からログリッチがアタックを仕掛けるとメイン集団は崩壊する。残り600mからのマイヨジョーヌの加速に反応できたのはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、そしてアシストのクスだけ。総合ジャンプアップを目指すポートが先頭を引き、残り100mでスロベニアンデュオがステージ優勝に向かって加速した。
マイヨジョーヌのログリッチとマイヨブランのポガチャルによるスプリント。獲得標高差3,500m、ジュラ山脈の難関山岳を3つ越えた末に、ポガチャルが先着した。
超級山岳グラン・コロンビエールの頂上に向かってペースを上げるリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)を先頭に残り200m photo:Kei Tsuji
残り100mで加速するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
超級山岳グラン・コロンビエールの頂上に近づく精鋭グループ photo:Kei Tsuji
登りスプリントを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Luca Bettini
スロベニアンデュオのセンセーションが続く
「今日はユンボ・ヴィスマが全てを打ち砕く勢いだった」。ステージ2勝目を飾ったポガチャルはライバルチームの強さに舌を巻いた。
ちょうど1年前(厳密には9月14日)のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで逃げ切り優勝を飾り、総合3位を決めた21歳のポガチャル。「ログリッチは誰にも止められないほど強い。でも今日ベルナルが失速したように、プリモシュと自分のどちらかがいつか失速しても不思議ではない。まだ変動のチャンスが多く残されている」。このステージ優勝によって総合2位の座をさらに固めるとともに、ボーナスタイムにより総合1位ログリッチとの総合タイム差を40秒に縮めている。
ステージ2勝目を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
「仲の良い友人でもあるタデイ(ポガチャル)にステージ優勝をプレゼントをするつもりなんてなくて、最後はただ彼に及ばなかっただけ。負けたことに悔しさを覚えたけど、強かった彼の勝利を祝福したい」。圧倒的なチーム力でレースを支配し、マイヨジョーヌを守ったログリッチは9歳年下のライバルを祝福した。
「今日は先頭グループの逃げ切りを容認する作戦だった。決してハードな展開に持ち込む必要はなかったけど、チームメイトたちのおかげで状況を完全にコントロールできていた。まだ総合争いのサスペンスは終わっていない。とても良いポジションにつけているのは間違いないけど、まだ戦いの終わりは遠い」。総合2位ポガチャルから40秒、総合3位に浮上したリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)から1分34秒のリードでログリッチは大会最後の休息日を迎える。
ポガチャルを除くライバルたちからリードを奪ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Kei Tsuji
7分20秒遅れでフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:Kei Tsuji
フィニッシュ後にレースを振り返るトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:Kei Tsuji
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
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9月13日(日)第15ステージ
リヨン〜グラン・コロンビエール
距離:174.5km
獲得標高差:3,500m
天候:晴れ
気温:22〜33度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
58km地点 スプリントポイント
111km地点 1級山岳セル・ド・フロマンタル(距離11.1km・平均8.1%・最大22%)
129km地点 1級山岳ラ・ビッシュ峠(距離6.9km・平均8.9%)
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ツール第2週を締めくくる超級山岳グラン・コロンビエール
大会2週目の最後に、ジュラ山脈が誇る標高1,501mの超級山岳グラン・コロンビエールが登場。まずはスタートから平坦路を100km近く走ってから1級山岳セル・ド・フロマンタルに挑む。グランコロンビエール山を西側から登るこの1級山岳はとにかく勾配がキツく、頂上手前には22%の激坂区間が登場する。そこから平均勾配8.9%という1級山岳ラ・ビッシュ峠をこなし、フィニッシュまで17.4kmを切ったところで超級山岳グラン・コロンビエールの長い登りが始まる。
4回目の登場にしてフィニッシュ地点としては初登場となるこの名峰は、登坂距離17.4km・平均勾配7.1%という過酷さ。平坦区間を含むため体感的には平均8〜9%で、12%の急勾配区間も連発する。標高差1,245mを駆け上がるグラン・コロンビエールを舞台に、休息日前のマイヨジョーヌ争いが繰り広げられた。
予定通り7月中旬に開催されているような錯覚を覚える夏の暑さのリヨン市内。新型コロナウイルス感染者の増加によりレッドゾーンに指定されているためスタート地点は無観客となったが、日曜日だけにコースの沿道には多くの観客が詰めかけた。
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最終的に28km地点で8名が先行を開始したが、メイン集団が落ち着くまでに長い時間を要した。最初の2時間を平均スピード49.9km/h、つまりステージ前半の100kmを2時間で駆け抜けた選手たち。このクレイジーでナーバスな高速な展開の中、アタック合戦に参加していたセルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)に弾かれる形で落車し、再スタート後の再落車を経てリタイアを喫している。
逃げグループを形成した8名
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)総合34分07秒遅れ
マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)ポイント賞3位
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング)
マルコ・マルカート(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)
ケヴィン・ルダノワ(フランス、アルケア・サムシック)
ポイント賞3位のトレンティンはスプリントポイントをしっかり先頭通過。3分遅れの集団スプリントはポイント賞1位ベネットに軍配が上がり、ポイント賞2位サガンとのポイント差は45ポイントに広がった。
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逃げを捉え、ベルナルをふるい落としたユンボ・ヴィスマ
ユンボ・ヴィスマがメイン集団を牽引したためタイム差の広がりは鈍く、4分30秒差がついた状態で1級山岳セル・ド・フロマンタルに到着する。最大勾配が22%に達するこの急坂で先頭がゲシュケとロラン、エラダ、ゴグルに絞られた一方で、メイン集団からピュアスプリンターたちが脱落。さらに、驚くことに、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が集団後方に下がる。ベルナルは辛うじて集団内で1級山岳セル・ド・フロマンタルを越えたが、精彩をかいていることは明らかだった。
下り区間を攻めたゴグルが独走で次の1級山岳ラ・ビッシュ峠へ。独走するゴグルにはロランが合流したが、ユンボ・ヴィスマが牽引するメイン集団とのタイム差は2分にまで縮まってしまう。続く平坦区間で抵抗を見せたゴグルとロランだったが、超級山岳グラン・コロンビエールの麓に到着した時点でそのリードは1分50秒しか残っていなかった。
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「最初の登りでメイン集団から脱落しかけて、調子の悪さを悟った。でもずっと支えてくれているチームのためにも、最後まで戦うと心に決めたんだ。なんて表現したらいいのかわからないけど、すっからかんだった。ライバルたちの加速にただついていくことができなかった。他の選手が自分よりも強かったという事実を受け入れる。何も言い訳はできない」。そう語るベルナルはミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)に牽引されてフィニッシュを目指したが、ライバルたちから7分以上のタイムを失う結果となった。
観客立ち入り禁止の超級山岳グラン・コロンビエールで、ファンアールト、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、セップ・クス(アメリカ)、トム・デュムラン(オランダ)という鉄壁のアシスト体制を築いたユンボ・ヴィスマ。総合ライバルたちをふるい落としながら、残り13kmのスイッチバック区間で先頭ロランを捉えてしまう。
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デュムランの牽引からログリッチがアタックを仕掛けるとメイン集団は崩壊する。残り600mからのマイヨジョーヌの加速に反応できたのはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、そしてアシストのクスだけ。総合ジャンプアップを目指すポートが先頭を引き、残り100mでスロベニアンデュオがステージ優勝に向かって加速した。
マイヨジョーヌのログリッチとマイヨブランのポガチャルによるスプリント。獲得標高差3,500m、ジュラ山脈の難関山岳を3つ越えた末に、ポガチャルが先着した。
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スロベニアンデュオのセンセーションが続く
「今日はユンボ・ヴィスマが全てを打ち砕く勢いだった」。ステージ2勝目を飾ったポガチャルはライバルチームの強さに舌を巻いた。
ちょうど1年前(厳密には9月14日)のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで逃げ切り優勝を飾り、総合3位を決めた21歳のポガチャル。「ログリッチは誰にも止められないほど強い。でも今日ベルナルが失速したように、プリモシュと自分のどちらかがいつか失速しても不思議ではない。まだ変動のチャンスが多く残されている」。このステージ優勝によって総合2位の座をさらに固めるとともに、ボーナスタイムにより総合1位ログリッチとの総合タイム差を40秒に縮めている。
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「仲の良い友人でもあるタデイ(ポガチャル)にステージ優勝をプレゼントをするつもりなんてなくて、最後はただ彼に及ばなかっただけ。負けたことに悔しさを覚えたけど、強かった彼の勝利を祝福したい」。圧倒的なチーム力でレースを支配し、マイヨジョーヌを守ったログリッチは9歳年下のライバルを祝福した。
「今日は先頭グループの逃げ切りを容認する作戦だった。決してハードな展開に持ち込む必要はなかったけど、チームメイトたちのおかげで状況を完全にコントロールできていた。まだ総合争いのサスペンスは終わっていない。とても良いポジションにつけているのは間違いないけど、まだ戦いの終わりは遠い」。総合2位ポガチャルから40秒、総合3位に浮上したリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)から1分34秒のリードでログリッチは大会最後の休息日を迎える。

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
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第15ステージ結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 4:34:13 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:00:05 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:08 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:00:15 |
6位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | |
8位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | 0:00:18 |
10位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:24 |
18位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:03:50 |
25位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:07:20 |
DNF | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 65:37:07 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:40 |
3位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | 0:01:34 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:01:45 |
5位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:02:03 |
6位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:02:13 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:02:16 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:03:15 |
9位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:05:08 |
10位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:12 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 269pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 224pts |
3位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) | 189pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 36pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 34pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 33pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 65:37:47 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:02:35 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:07:45 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 197:04:16 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:14:50 |
3位 | EFプロサイクリング | 0:26:15 |
text:Kei Tsuji
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