2020/08/09(日) - 12:29
「ファビオに勝利をプレゼントしたかった」と言うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、ポローニュの最難関ステージで圧巻の50km独走に成功。怪我に苦しむチームメイトへ捧げる勝利を掴んだ。
変則レースカレンダーによって、今月末に開幕が迫るツール・ド・フランスの前哨戦となったツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)。ここまで集団スプリントx2、登坂フィニッシュx1とスケジュールを消化してきたが、8月8日(土)に開催された大会4日目は、2つの1級山岳を含む53kmコースを3周回する152.9kmのクイーンステージだ。
ポーランド南部の避暑地ブコヴィナを発着する複雑な周回コースは例年最終日に使われ、去年はマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)の独走劇を演出した。登場するカテゴリー山岳は最長でも4.2kmだが、序盤から絶えずアップダウンを繰り返すことで獲得標高は3278mにものぼる。破壊力の強い丘陵コースで総合勢が激しく火花を散らした。
ギザギザのコースプロフィールを持つクイーンステージで逃げたのはクリス・ハーパー(オーストラリア、ユンボ・ヴィズマ)と前日終盤にアタックしたネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)だった。時間を空けてジェームス・フェラン(オーストラリア、EFプロサイクリング)らが合流し、5名がチームイネオスが先導するメイン集団から先行。この日、自国最大のレースでチャンスを得たパトリック・ストーツ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)は山岳ポイントを連取し、カミル・グラデク(ポーランド、CCCチーム)に代わり山岳賞ランキング首位浮上に成功している。
チームイネオスや総合優勝候補のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)擁するドゥクーニンク・クイックステップがペースアップするメイン集団では、レース中盤で大きな落車が発生してしまう。地面に倒れた選手たちの中には、黄色いリーダージャージを着るカラパスの姿もあった。
トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)、ライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング)が巻き込まれ、イアン・スタナード(イギリス、チームイネオス)がリタイアに追い込まれた激しい落車。カラパスは身体中に打撲と擦過傷を負ったものの辛くもレース続行を選択する。ミッチェルトン・スコット勢がペースを落としたことでメイン集団への復帰に成功したが、そのダメージはカラパスのパフォーマンスに影を落とした。
メイン集団は断続的なペースアップとサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)によるアタックで30名程度まで人数を減らし、同じくバラバラになっていた逃げグループを残り54kmで引き戻す。すると序盤の逃げに入ったハーパーがもう一度アタックを仕掛け、カウンターアタックでエヴェネプールが飛び出した。
「あんなに早いアタックは考えていなかったけれど、全員が限界に達していると感じたので攻撃した。すぐに差が生まれてチームカーからは『誰も追走できていない』という情報が入ってきた。それでより一層モチベーションが湧いてきた」というエヴェネプールが独走。残り51kmというサプライズアタックに、ここまでの消耗戦で各チームのアシストを失っていたメイン集団はパニックに陥った。
メイン集団ではエディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)が、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)が、ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)がペースアップを試みるも、中途半端に人数が多いことでローテーションが回らない。「リミットを越えないようにハイペースを保ち続けることを意識した」というエヴェネプールは1分のリードを得た。
バーチャルリーダーに立ったエヴェネプールの後方では、フルサンとイェーツ、そしてラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が抜け出して追走グループを形成。そこから遅れたカラパスはダンバーの力を借りて追走したものの、もはや第3グループに入った他チームに追走する意思は無く、カラパスもろとも遅れていった。
終盤の登坂区間でもエヴェネプールのペースは落ちることなく、51kmに及ぶ超ロングアタックを成功させてフィニッシュへ。第1ステージの最後に重体となったファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)のゼッケンをポケットから取り出し、両手で掲げながらフィニッシュ。2位以下を約2分引き離す圧倒的な独走の末、チームメイトに捧げる大きなステージ優勝を掴んだ。
「今日はファビオに勝利をプレゼントしたかった。事故の後は全員がとても厳しい雰囲気の中過ごしていたけれど、今日世界が改めて僕らチームの強さを実感してくれたと思う。昨日届いたファビオの意識が回復したというニュースは僕の士気を高めてくれた。レース前に彼のゼッケンを手にした時も心の中に何か沸き立つものがあったんだ。最後は苦しかったけれど、ファビオの苦しみとは比較にならない。彼のおかげで後ろを振り返ることなくアタックできたんだ」と語るエヴェネプール。フィニッシュ後は感極まり、路上に座り込んで涙を流した。
イェーツやマイカを振り切ったフルサンが1分48秒遅れでフィニッシュし、エヴェネプールは合計1分52秒もの大差でリーダージャージを獲得。今年サンフアン、アルガルヴェ、そしてシーズン再開後のブルゴスと出場したレース全てで総合優勝している20歳が、ここポローニュでも総合優勝に向けて王手をかけた。
変則レースカレンダーによって、今月末に開幕が迫るツール・ド・フランスの前哨戦となったツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)。ここまで集団スプリントx2、登坂フィニッシュx1とスケジュールを消化してきたが、8月8日(土)に開催された大会4日目は、2つの1級山岳を含む53kmコースを3周回する152.9kmのクイーンステージだ。
ポーランド南部の避暑地ブコヴィナを発着する複雑な周回コースは例年最終日に使われ、去年はマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)の独走劇を演出した。登場するカテゴリー山岳は最長でも4.2kmだが、序盤から絶えずアップダウンを繰り返すことで獲得標高は3278mにものぼる。破壊力の強い丘陵コースで総合勢が激しく火花を散らした。
ギザギザのコースプロフィールを持つクイーンステージで逃げたのはクリス・ハーパー(オーストラリア、ユンボ・ヴィズマ)と前日終盤にアタックしたネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)だった。時間を空けてジェームス・フェラン(オーストラリア、EFプロサイクリング)らが合流し、5名がチームイネオスが先導するメイン集団から先行。この日、自国最大のレースでチャンスを得たパトリック・ストーツ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)は山岳ポイントを連取し、カミル・グラデク(ポーランド、CCCチーム)に代わり山岳賞ランキング首位浮上に成功している。
チームイネオスや総合優勝候補のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)擁するドゥクーニンク・クイックステップがペースアップするメイン集団では、レース中盤で大きな落車が発生してしまう。地面に倒れた選手たちの中には、黄色いリーダージャージを着るカラパスの姿もあった。
トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)、ライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング)が巻き込まれ、イアン・スタナード(イギリス、チームイネオス)がリタイアに追い込まれた激しい落車。カラパスは身体中に打撲と擦過傷を負ったものの辛くもレース続行を選択する。ミッチェルトン・スコット勢がペースを落としたことでメイン集団への復帰に成功したが、そのダメージはカラパスのパフォーマンスに影を落とした。
メイン集団は断続的なペースアップとサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)によるアタックで30名程度まで人数を減らし、同じくバラバラになっていた逃げグループを残り54kmで引き戻す。すると序盤の逃げに入ったハーパーがもう一度アタックを仕掛け、カウンターアタックでエヴェネプールが飛び出した。
「あんなに早いアタックは考えていなかったけれど、全員が限界に達していると感じたので攻撃した。すぐに差が生まれてチームカーからは『誰も追走できていない』という情報が入ってきた。それでより一層モチベーションが湧いてきた」というエヴェネプールが独走。残り51kmというサプライズアタックに、ここまでの消耗戦で各チームのアシストを失っていたメイン集団はパニックに陥った。
メイン集団ではエディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)が、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)が、ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)がペースアップを試みるも、中途半端に人数が多いことでローテーションが回らない。「リミットを越えないようにハイペースを保ち続けることを意識した」というエヴェネプールは1分のリードを得た。
バーチャルリーダーに立ったエヴェネプールの後方では、フルサンとイェーツ、そしてラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が抜け出して追走グループを形成。そこから遅れたカラパスはダンバーの力を借りて追走したものの、もはや第3グループに入った他チームに追走する意思は無く、カラパスもろとも遅れていった。
終盤の登坂区間でもエヴェネプールのペースは落ちることなく、51kmに及ぶ超ロングアタックを成功させてフィニッシュへ。第1ステージの最後に重体となったファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)のゼッケンをポケットから取り出し、両手で掲げながらフィニッシュ。2位以下を約2分引き離す圧倒的な独走の末、チームメイトに捧げる大きなステージ優勝を掴んだ。
「今日はファビオに勝利をプレゼントしたかった。事故の後は全員がとても厳しい雰囲気の中過ごしていたけれど、今日世界が改めて僕らチームの強さを実感してくれたと思う。昨日届いたファビオの意識が回復したというニュースは僕の士気を高めてくれた。レース前に彼のゼッケンを手にした時も心の中に何か沸き立つものがあったんだ。最後は苦しかったけれど、ファビオの苦しみとは比較にならない。彼のおかげで後ろを振り返ることなくアタックできたんだ」と語るエヴェネプール。フィニッシュ後は感極まり、路上に座り込んで涙を流した。
イェーツやマイカを振り切ったフルサンが1分48秒遅れでフィニッシュし、エヴェネプールは合計1分52秒もの大差でリーダージャージを獲得。今年サンフアン、アルガルヴェ、そしてシーズン再開後のブルゴスと出場したレース全てで総合優勝している20歳が、ここポローニュでも総合優勝に向けて王手をかけた。
ツール・ド・ポローニュ2020 第4ステージ
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 3:55:52 |
2位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 1:48 |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 2:22 |
4位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 3:05 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | |
7位 | カミル・マウェツキ(ポーランド、CCCチーム) | 3:08 |
8位 | ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィズマ) | |
10位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:09 |
個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 16:58:28 |
2位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 1:52 |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 2:28 |
4位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 2:32 |
5位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 3:09 |
6位 | カミル・マウェツキ(ポーランド、CCCチーム) | 3:12 |
7位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 3:15 |
8位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィズマ) | 3:18 |
9位 | ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット) | |
10位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 3:19 |
その他の特別賞
ポイント賞 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) |
山岳賞 | パトリック・ストーツ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム) |
チーム総合成績 | ミッチェルトン・スコット |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos