2020/08/02(日) - 07:06
その強さ、もはや敵無し。レースが決まりかけたかに見えた終盤に後方グループからペースアップし、追従を許さず先行メンバーを全て抜き去ったアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)がストラーデビアンケ女子レースを制した。
新型コロナウイルスによる長い長いレース休止期間を経て、いよいよ男女ワールドツアーレースが再始動した。時差開催される男子レースに先立ちスタートしたストラーデビアンケ女子レース(正式名称はストラーデビアンケ・ドンネ)には、シーズン再開初戦を迎えた與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ)を含む、女子トップクラスの強豪選手が多数顔を揃えた。
「ストラーデビアンケ」が意味するのは「白い道」。イタリア中部トスカーナ州のシエナ近郊に広がる丘陵地帯に張り巡らされ、踏み固められた未舗装路を含むアップダウンコースがその舞台。男子コースを部分的にカットした136kmルートには8箇所のセクター(未舗装区間)が組み込まれ、その合計は31km。コース全体に占める割合は25%にも及ぶ。
昨年大会と同じコース、同じ砂埃舞うドライコンディションだが、大きく違ったのが気温だ。最高36℃を指したこの日、序盤からアシスト役を担った與那嶺には、熱中症によって残り40km地点でレースを降りるという結末が待っていた。
また、前日のトレーニング中に落車し、60針を縫う大怪我を負ったアシュレー・ムールマン(南アフリカ、CCC・リブ)はスタートを見送ったほか、前夜にトレック・セガフレードの機材トラックが襲われ女子チーム用の6台が盗まれるという事件が起きる。各選手はスペアバイクに乗ったほか、エレン・ファンダイク(オランダ)はクーン・デコルト(オランダ)のバイクを借りて出走するという事態となった。
厳しいコースと酷暑が序盤から選手をふるいにかけ、明確なエスケープが決まらないまま集団が縮小していくサバイバルレース。9.5kmに及ぶセクター5「サンマルティーノ・イン・グラニア」では集団が分裂したものの、その後選手たちが追いついたことで40名の先頭グループが形成される。決定的な動きが生まれたのは残り50kmを切ってからだった。
ファンダイクやアマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、リサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング)、カロルアン・カヌエル(カナダ、ブールス・ドルマンス)を含む11名が先行し、その中からアレ・BTCリュブリャナのエースを担うマビ・ガルシア(スペイン)が先行する。序盤に與那嶺のアシストを受けたガルシアはすぐさま5分のリードを稼ぎ、45km以上先のフィニッシュを目指して巡航体制に切り替えた。
しかし、ガルシアが独走態勢を築いたことを知った優勝候補筆頭アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が動く。この日メイン集団内で過ごしていた世界王者だったが、「逃げが先行したので私で勝負することはない、今日はチームメイトのアマンダ(スプラット)が勝つはずと思っていた。でも強力なマビが逃げたので私が行くしかないと感じた」と、もはや形を無くしたメイン集団から追撃に打って出た。
通常であれば不可能な場所から追走したファンフルーテンだったが、シーズン再開後のスペインレースで3連勝しているその力は圧倒的だった。すぐさま追走集団を捉えて全員を置き去りにし、続けざまにテンポを失っていたガルシアを射程圏内にロックオン。あれよあれよという間に残りガルシアを捉えると一旦ペースを落とし、ガルシアを千切ることなくフィニッシュまでの距離を減らした。
後方からはメカトラブルや再スタート時の落車に見舞われながらも単独3番手となったリア・トーマス(アメリカ、エキップ・ポール カ)が単独追走したものの、1分先行する先頭二人との距離は縮まらない。残り1kmアーチの先に待ち受ける最後の石畳坂が始まると、圧倒的な力の差を見せるファンフルーテンが独走に持ち込んだ。
パワフルなダンシングで丘の上の街シエナに向かう坂をクリアし、最終的にガルシアに対して22秒をつけたファンフルーテンがカンポ広場のフィニッシュラインにやってくる。昨年大会で勝利しているディフェンディングチャンピオンが、優勝候補全員を置き去る横綱相撲で勝利した。
「キツい展開は私の得意分野で、ライバルにとっては苦手分野。ただただ暑さに強いという事実が形になったと思う。メイン集団がスピードを落としてたところ、最後から2番目のセクターでチーム監督に突然『動くタイミングだ』と言われた。チームメイトのアマンダが逃げに入り私はメイン集団待機だったので、本当ならこの場所で先頭グループから攻撃する予定だったのに、と思った。でもタイム差を埋めるために踏み続けた」と振り返るファンフルーテン。今回の勝利は今季5勝目であり、世界選手権ロードから数えれば6戦6勝と勝率100%を維持している。「カンポ広場で勝つ美しさは格別。正直マビを捕まえられるとは思っていなかったし、そのこと自体がこの勝利をより壮観なものにしてくれたと思う」と加えた。
この日終盤46kmを逃げたガルシアは2位に入り、トラブルに屈しない強さを見せたトーマスが3位。ファンフルーテンを追ってメイン集団から加速したアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)やマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)らが追走グループを追い抜きトップ10に食い込んでいる。完走者45名、タイムアウト13名、DNF68名。2016年から毎年欠かさず表彰台に上がっていたカシア・ニウイアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)もDNFの一人となった。
新型コロナウイルスによる長い長いレース休止期間を経て、いよいよ男女ワールドツアーレースが再始動した。時差開催される男子レースに先立ちスタートしたストラーデビアンケ女子レース(正式名称はストラーデビアンケ・ドンネ)には、シーズン再開初戦を迎えた與那嶺恵理(アレ・BTCリュブリャナ)を含む、女子トップクラスの強豪選手が多数顔を揃えた。
「ストラーデビアンケ」が意味するのは「白い道」。イタリア中部トスカーナ州のシエナ近郊に広がる丘陵地帯に張り巡らされ、踏み固められた未舗装路を含むアップダウンコースがその舞台。男子コースを部分的にカットした136kmルートには8箇所のセクター(未舗装区間)が組み込まれ、その合計は31km。コース全体に占める割合は25%にも及ぶ。
昨年大会と同じコース、同じ砂埃舞うドライコンディションだが、大きく違ったのが気温だ。最高36℃を指したこの日、序盤からアシスト役を担った與那嶺には、熱中症によって残り40km地点でレースを降りるという結末が待っていた。
また、前日のトレーニング中に落車し、60針を縫う大怪我を負ったアシュレー・ムールマン(南アフリカ、CCC・リブ)はスタートを見送ったほか、前夜にトレック・セガフレードの機材トラックが襲われ女子チーム用の6台が盗まれるという事件が起きる。各選手はスペアバイクに乗ったほか、エレン・ファンダイク(オランダ)はクーン・デコルト(オランダ)のバイクを借りて出走するという事態となった。
厳しいコースと酷暑が序盤から選手をふるいにかけ、明確なエスケープが決まらないまま集団が縮小していくサバイバルレース。9.5kmに及ぶセクター5「サンマルティーノ・イン・グラニア」では集団が分裂したものの、その後選手たちが追いついたことで40名の先頭グループが形成される。決定的な動きが生まれたのは残り50kmを切ってからだった。
ファンダイクやアマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、リサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング)、カロルアン・カヌエル(カナダ、ブールス・ドルマンス)を含む11名が先行し、その中からアレ・BTCリュブリャナのエースを担うマビ・ガルシア(スペイン)が先行する。序盤に與那嶺のアシストを受けたガルシアはすぐさま5分のリードを稼ぎ、45km以上先のフィニッシュを目指して巡航体制に切り替えた。
しかし、ガルシアが独走態勢を築いたことを知った優勝候補筆頭アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が動く。この日メイン集団内で過ごしていた世界王者だったが、「逃げが先行したので私で勝負することはない、今日はチームメイトのアマンダ(スプラット)が勝つはずと思っていた。でも強力なマビが逃げたので私が行くしかないと感じた」と、もはや形を無くしたメイン集団から追撃に打って出た。
通常であれば不可能な場所から追走したファンフルーテンだったが、シーズン再開後のスペインレースで3連勝しているその力は圧倒的だった。すぐさま追走集団を捉えて全員を置き去りにし、続けざまにテンポを失っていたガルシアを射程圏内にロックオン。あれよあれよという間に残りガルシアを捉えると一旦ペースを落とし、ガルシアを千切ることなくフィニッシュまでの距離を減らした。
後方からはメカトラブルや再スタート時の落車に見舞われながらも単独3番手となったリア・トーマス(アメリカ、エキップ・ポール カ)が単独追走したものの、1分先行する先頭二人との距離は縮まらない。残り1kmアーチの先に待ち受ける最後の石畳坂が始まると、圧倒的な力の差を見せるファンフルーテンが独走に持ち込んだ。
パワフルなダンシングで丘の上の街シエナに向かう坂をクリアし、最終的にガルシアに対して22秒をつけたファンフルーテンがカンポ広場のフィニッシュラインにやってくる。昨年大会で勝利しているディフェンディングチャンピオンが、優勝候補全員を置き去る横綱相撲で勝利した。
「キツい展開は私の得意分野で、ライバルにとっては苦手分野。ただただ暑さに強いという事実が形になったと思う。メイン集団がスピードを落としてたところ、最後から2番目のセクターでチーム監督に突然『動くタイミングだ』と言われた。チームメイトのアマンダが逃げに入り私はメイン集団待機だったので、本当ならこの場所で先頭グループから攻撃する予定だったのに、と思った。でもタイム差を埋めるために踏み続けた」と振り返るファンフルーテン。今回の勝利は今季5勝目であり、世界選手権ロードから数えれば6戦6勝と勝率100%を維持している。「カンポ広場で勝つ美しさは格別。正直マビを捕まえられるとは思っていなかったし、そのこと自体がこの勝利をより壮観なものにしてくれたと思う」と加えた。
この日終盤46kmを逃げたガルシアは2位に入り、トラブルに屈しない強さを見せたトーマスが3位。ファンフルーテンを追ってメイン集団から加速したアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス)やマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)らが追走グループを追い抜きトップ10に食い込んでいる。完走者45名、タイムアウト13名、DNF68名。2016年から毎年欠かさず表彰台に上がっていたカシア・ニウイアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)もDNFの一人となった。
ストラーデビアンケ2020女子レース
1位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) | 4:03:54 |
2位 | マビ・ガルシア(スペイン、アレ・BTCリュブリャナ) | 0:22 |
3位 | リア・トーマス(アメリカ、エキップ・ポール カ) | 1:53 |
4位 | アンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) | 2:05 |
5位 | エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) | 2:11 |
6位 | マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ) | 2:26 |
7位 | セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) | 2;40 |
8位 | リサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング) | 3:26 |
9位 | カロルアン・カヌエル(カナダ、ブールス・ドルマンス) | 4:20 |
10位 | マルタ・バスティアネッリ(イタリア、アレ・BTCリュブリャナ) | 5:20 |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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