2010/05/22(土) - 13:50
今年のジロ・デ・イタリアは、大集団によるスプリント勝負が少ない。スプリンターが次々にリタイアしているのが要因で、残るチャンスはこの日を含めて2つしかない。山岳突入を翌日に控えた第13ステージも、ここぞとばかりにアタッカーたちが奮起。17名による逃げ切りが決まった。
和解したエヴァンスとリーギ ユキヤはエスタテデビュー
前日の第12ステージで小競り合いを起こし、2000スイスフランの罰金を払った2人、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)が出走サインにやってきた。
喧嘩が続いているのかと思いきや、にこやかに会話しながらの登場。2人とも平静さを失っていた自分の過ちを認め、謝罪の言葉を口にした。エヴァンスはオーストラリア訛のイタリア語で「ロードレースのイメージを悪くするようなみっともない姿を見せてしまって申し訳なかった」と照れながら会釈する。
リーギは「ロードレースはチームスポーツ。僕ら2人の行為は歓迎されるものじゃなかった。でもブレーキはしていないよ(笑)」と満面の笑みで応えた。笑えば笑うほど、サムエル・サンチェスとフランシスコ・マンセーボを足してニで割ったような顔になると思うのは自分だけ??
「昨日のスプリントは上手くいきましたよ。昨日と比べると今日のステージのほうが逃げが決まりやすそうですが、本当にこればかりは展開次第ですね」。いつも出走サインの締め切りギリギリに登場するユキヤだが、この日は比較的時間に余裕をもってサインを済ませた。
スタート時間まで20分ほどあったので、出走サインを終えたユキヤは隣接するヴィラッジョ(スポンサー村)へと入って行く。
「昔はヴィラッジョでガゼッタ紙を広げ、あ〜だこ〜だと談笑している選手たちが多かった。今では出走サインしてすぐにスタート。時代は変わった」。長年レースに帯同しているスタッフが寂しげに語る。今年は例年よりもヴィラッジョは観客でごった返している。ゆったり寛げる環境ではないため、選手たちはヴィラッジョに入りたがらない感がある。
キャラバングッズを両手に抱えた観客の群れをかき分けながら進み、エスタテのブースで立ち止まったユキヤ。ご存知の通りエスタテはジロの名物スポンサー。ヴィラッジョでは甘い紅茶が配られている。
「まだ飲んだこと無かったんですよ」と言いながらエスタテを手に取ったユキヤ。細いストローで一気に飲み干した。感想は?「思ったよりも“普通”ですね(笑)もっと美味しいのかと思った」とポツリ。
ユキヤがエスタテを飲み終えたのを確認した地元の子どもたちが、次から次に「サインして」と寄ってくる。エスタテの女性スタッフも「ずっと彼と写真が撮りたかったのよ!」と言ってちゃっかり写真におさまっていた。
地元出身選手の勝利が涙を誘う
前日に引き続いてコース前半はアドリア海沿いの平坦路。青い海をバックにしたプロトンの写真を撮ろうと場所を探しまわったが、結局1回も海を撮影するチャンスがないままゴールに着いてしまった。
チェゼナティコは言わずと知れた故マルコ・パンターニの生誕地。海沿いの小さな街に近づくにつれて、パンターニを偲ぶ沿道の横断幕が目立つようになる。
フィニッシュラインのすぐ脇には、パンターニのモニュメントがある。頭にはお馴染みの黄色いバンダナ。この日ばかりはピンクのTシャツが着せられていた。
パンターニ像の目線の先にあるフィニッシュラインに先頭で飛び込んだのは、ゴールからほんの少し離れたチェゼーナ出身のマヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)。地元での大きな勝利に、24歳のベレッティは感極まる顔でガッツポーズを決めた。
表彰台でも感情の波が押し寄せ、涙にむせぶベレッティ。見ているこちらも目頭が熱くなった。
「今日は人生最高の日だ!」使い古された勝利者の決まり文句だが、ベレッティ以上にこの言葉が似合う選手を見たことが無い。「(クレイグ)ルイスが飛び出した時はもうダメだと思った。最後の1000mは本当に終わりが見えないぐらい長く感じた」。
気付けば、あれだけ勝利から見放されていたイタリア勢が連勝。後半戦に入って徐々にその勢いを増している。
翌第14ステージはドロミテ山岳の入り口に位置する1級山岳モンテ・グラッパの中級山岳ステージ。「ゾンコランのアンティパスト(前菜)」と呼ばれているこの上りで、イタリア勢は早くも動いてくるだろう。もちろんユキヤの動きにも注目だ。
text&photo:Kei Tsuji
和解したエヴァンスとリーギ ユキヤはエスタテデビュー
前日の第12ステージで小競り合いを起こし、2000スイスフランの罰金を払った2人、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)が出走サインにやってきた。
喧嘩が続いているのかと思いきや、にこやかに会話しながらの登場。2人とも平静さを失っていた自分の過ちを認め、謝罪の言葉を口にした。エヴァンスはオーストラリア訛のイタリア語で「ロードレースのイメージを悪くするようなみっともない姿を見せてしまって申し訳なかった」と照れながら会釈する。
リーギは「ロードレースはチームスポーツ。僕ら2人の行為は歓迎されるものじゃなかった。でもブレーキはしていないよ(笑)」と満面の笑みで応えた。笑えば笑うほど、サムエル・サンチェスとフランシスコ・マンセーボを足してニで割ったような顔になると思うのは自分だけ??
「昨日のスプリントは上手くいきましたよ。昨日と比べると今日のステージのほうが逃げが決まりやすそうですが、本当にこればかりは展開次第ですね」。いつも出走サインの締め切りギリギリに登場するユキヤだが、この日は比較的時間に余裕をもってサインを済ませた。
スタート時間まで20分ほどあったので、出走サインを終えたユキヤは隣接するヴィラッジョ(スポンサー村)へと入って行く。
「昔はヴィラッジョでガゼッタ紙を広げ、あ〜だこ〜だと談笑している選手たちが多かった。今では出走サインしてすぐにスタート。時代は変わった」。長年レースに帯同しているスタッフが寂しげに語る。今年は例年よりもヴィラッジョは観客でごった返している。ゆったり寛げる環境ではないため、選手たちはヴィラッジョに入りたがらない感がある。
キャラバングッズを両手に抱えた観客の群れをかき分けながら進み、エスタテのブースで立ち止まったユキヤ。ご存知の通りエスタテはジロの名物スポンサー。ヴィラッジョでは甘い紅茶が配られている。
「まだ飲んだこと無かったんですよ」と言いながらエスタテを手に取ったユキヤ。細いストローで一気に飲み干した。感想は?「思ったよりも“普通”ですね(笑)もっと美味しいのかと思った」とポツリ。
ユキヤがエスタテを飲み終えたのを確認した地元の子どもたちが、次から次に「サインして」と寄ってくる。エスタテの女性スタッフも「ずっと彼と写真が撮りたかったのよ!」と言ってちゃっかり写真におさまっていた。
地元出身選手の勝利が涙を誘う
前日に引き続いてコース前半はアドリア海沿いの平坦路。青い海をバックにしたプロトンの写真を撮ろうと場所を探しまわったが、結局1回も海を撮影するチャンスがないままゴールに着いてしまった。
チェゼナティコは言わずと知れた故マルコ・パンターニの生誕地。海沿いの小さな街に近づくにつれて、パンターニを偲ぶ沿道の横断幕が目立つようになる。
フィニッシュラインのすぐ脇には、パンターニのモニュメントがある。頭にはお馴染みの黄色いバンダナ。この日ばかりはピンクのTシャツが着せられていた。
パンターニ像の目線の先にあるフィニッシュラインに先頭で飛び込んだのは、ゴールからほんの少し離れたチェゼーナ出身のマヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)。地元での大きな勝利に、24歳のベレッティは感極まる顔でガッツポーズを決めた。
表彰台でも感情の波が押し寄せ、涙にむせぶベレッティ。見ているこちらも目頭が熱くなった。
「今日は人生最高の日だ!」使い古された勝利者の決まり文句だが、ベレッティ以上にこの言葉が似合う選手を見たことが無い。「(クレイグ)ルイスが飛び出した時はもうダメだと思った。最後の1000mは本当に終わりが見えないぐらい長く感じた」。
気付けば、あれだけ勝利から見放されていたイタリア勢が連勝。後半戦に入って徐々にその勢いを増している。
翌第14ステージはドロミテ山岳の入り口に位置する1級山岳モンテ・グラッパの中級山岳ステージ。「ゾンコランのアンティパスト(前菜)」と呼ばれているこの上りで、イタリア勢は早くも動いてくるだろう。もちろんユキヤの動きにも注目だ。
text&photo:Kei Tsuji
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