2020/02/25(火) - 09:32
最大勾配17%の名物ハッタダム頂上フィニッシュで、ブラケットを握ってもがき切ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が2年連続優勝。クイーンステージを前に総合首位に立った。復帰戦のクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)は登りで集団から脱落している。
出走サイン台に上がる新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ら photo:CorVos
レッドジャージを着る総合リーダーのパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
UAEツアー2020第2ステージ(距離168km/獲得標高差2,000m) photo:LaPresseUAE(アラブ首長国連邦)の東部に位置するハッタダムはドバイツアー時代(2014年〜2018年)からの名物フィニッシュ。内陸部のアップダウンコースの先に待つのは、ダムサイトの手前に引かれたフィニッシュラインに向かう勾配17%の激坂だ。
激坂区間の距離が150mほどしかなく、全開でもがく時間は30秒に満たない。そのためクライマーでもパンチャーでもなく、短時間高強度出力が得意な軽量スプリンター向きのステージであると言える。実際に2015年はジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、2016年はフアンホセ・ロバト(スペイン)、2018年はソンニ・コルブレッリ(イタリア)が優勝(2017年は砂嵐によりステージキャンセル)。2019年はユアンが激坂バトルを制している。
獲得標高差2,000mのアップダウンステージの大部分を先頭で過ごしたのはヴィーニザブKTMのヴェリコ・ストイニッツ(セルビア)とレオナルド・トルトマージ(イタリア)の2人。2日連続逃げとなる21歳&26歳のコンビはメイン集団から概ね3〜4分先行したが、残り24km地点で吸収されている。
岩肌むき出しの山岳風景をバックに、幹線道路の横幅いっぱいに広がって走るプロトン。総合狙いの選手たちも集団前方で激坂に突入する必要があるため、スプリンターチームと総合系チームが集団前方で複雑に入り混じる。新城幸也(バーレーン・マクラーレン)もワウト・プールス(オランダ)やエンリコ・バッタリーン(イタリア)のためにチームメイトの隊列を率いて集団前方をキープした。
岩山の荒涼とした内陸部を走る photo:LaPresse
ユアンのためにメイン集団を牽引するロット・スーダル photo:CorVos
後半にかけてペースが上がる集団に沿道から声援が送られる photo:LaPresse
残り10km付近のまとまった登りでのモビスターのペースアップがスプリンターの明暗を分けた。具体的には、1kmにわたって平均8%の勾配が続く登りを26.4km/hで走行したメイン集団から、レッドジャージを着る前日の優勝者パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)が脱落。しばらく集団前方をキープしていたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)も、ハイケイデンスを維持しながら遅れて行った。
勾配が緩んだところでヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)とニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)が勢いよくアタック。髭を蓄えたアワーレコーダーのカンペナールツとイタリア期待の次世代オールラウンダーであるコンチが10秒ほどのリードで先行したものの、残り3.5kmで吸収される。
中間スプリントでボーナスタイムを狙う動きを見せた地元UAEチームエミレーツとアスタナがメイン集団を牽引したが、残り1kmアーチ通過と同時にジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)とカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)の2人が先頭を奪う。デブイストの後ろで飛び出すタイミングを伺うユアンの後ろではサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が目を光らせた。
先に仕掛けたのは急激に勾配が増す残り150mの最終コーナーイン側を突いたベネット。このアイルランドチャンピオンの加速には、次点でグリーンジャージ(ポイント賞ジャージ)を着るユアンが反応して2人が飛び出す形に。
徐々にスピードを失って蛇行を始めるベネットに対し、ブラケットを握って力強く踏み続けたユアン。ベネットは26秒間にわたって平均1,060Wを出力(14.52W/kg)したが、激坂フィニッシュでは身長165cm/体重67kgの小柄なユアンに軍配が上がった。
残り10kmからアタックしたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)とニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
ハッタダムの激坂を駆け上がるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:LaPresse
ハッタダム2連覇を果たしたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:LaPresse
「麓から見るとフィニッシュが近くに見えるけど、実際はとてもハードだということを昨年の経験から知っていた。麓から全開でもがいてしまうと、重要な残り20〜30mで失速してしまう。だから数秒待ってから仕掛けるのが得策だと知っていたんだ。自分がどれだけの距離をもがけるのか分かっているので、加速するタイミングを伺った」というユアンが鮮やかなシーズン3勝目。1月のツアー・ダウンアンダーでのステージ2勝に続き、UCIワールドツアーレースで勝利を量産している。
「今シーズンは大成功の昨シーズンよりも良いスタートが切れている。今年もミラノ〜サンレモが大きな目標であることに変わりはないよ。今年はフィリップ・ジルベールがチームに加わったので、ハードな展開に持ち込まれた時には彼で勝負することができる」。ユアンはUAEツアー後に3月8日開幕のパリ〜ニース出場予定。コロナウィルスの影響で開催が危ぶまれているミラノ〜サンレモは3月21日に予定されている。
ボーナスタイム10秒を獲得したユアンが総合首位浮上。しかし、翌日の第3ステージには標高1,025mの岩山ジュベルハフィート(全長10.8km/平均7%)山頂フィニッシュが登場するため、ユアンが手にしたレッドジャージは再び持ち主を変えることになる。
レッドジャージを獲得したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:LaPresse
![出走サイン台に上がる新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ら](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/corvos00032096-007.jpg)
![レッドジャージを着る総合リーダーのパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/corvos00032096-031.jpg)
![UAEツアー2020第2ステージ(距離168km/獲得標高差2,000m)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/c26d00ca-44d1-4b5e-9a2c-ca4b8d262380.jpg)
激坂区間の距離が150mほどしかなく、全開でもがく時間は30秒に満たない。そのためクライマーでもパンチャーでもなく、短時間高強度出力が得意な軽量スプリンター向きのステージであると言える。実際に2015年はジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、2016年はフアンホセ・ロバト(スペイン)、2018年はソンニ・コルブレッリ(イタリア)が優勝(2017年は砂嵐によりステージキャンセル)。2019年はユアンが激坂バトルを制している。
獲得標高差2,000mのアップダウンステージの大部分を先頭で過ごしたのはヴィーニザブKTMのヴェリコ・ストイニッツ(セルビア)とレオナルド・トルトマージ(イタリア)の2人。2日連続逃げとなる21歳&26歳のコンビはメイン集団から概ね3〜4分先行したが、残り24km地点で吸収されている。
岩肌むき出しの山岳風景をバックに、幹線道路の横幅いっぱいに広がって走るプロトン。総合狙いの選手たちも集団前方で激坂に突入する必要があるため、スプリンターチームと総合系チームが集団前方で複雑に入り混じる。新城幸也(バーレーン・マクラーレン)もワウト・プールス(オランダ)やエンリコ・バッタリーン(イタリア)のためにチームメイトの隊列を率いて集団前方をキープした。
![岩山の荒涼とした内陸部を走る](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/ff58678.jpg)
![ユアンのためにメイン集団を牽引するロット・スーダル](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/corvos00032096-029.jpg)
![後半にかけてペースが上がる集団に沿道から声援が送られる](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/ee626ff0-e756-477c-80e9-283995f693ca.jpg)
残り10km付近のまとまった登りでのモビスターのペースアップがスプリンターの明暗を分けた。具体的には、1kmにわたって平均8%の勾配が続く登りを26.4km/hで走行したメイン集団から、レッドジャージを着る前日の優勝者パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)が脱落。しばらく集団前方をキープしていたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)も、ハイケイデンスを維持しながら遅れて行った。
勾配が緩んだところでヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)とニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)が勢いよくアタック。髭を蓄えたアワーレコーダーのカンペナールツとイタリア期待の次世代オールラウンダーであるコンチが10秒ほどのリードで先行したものの、残り3.5kmで吸収される。
中間スプリントでボーナスタイムを狙う動きを見せた地元UAEチームエミレーツとアスタナがメイン集団を牽引したが、残り1kmアーチ通過と同時にジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)とカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)の2人が先頭を奪う。デブイストの後ろで飛び出すタイミングを伺うユアンの後ろではサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が目を光らせた。
先に仕掛けたのは急激に勾配が増す残り150mの最終コーナーイン側を突いたベネット。このアイルランドチャンピオンの加速には、次点でグリーンジャージ(ポイント賞ジャージ)を着るユアンが反応して2人が飛び出す形に。
徐々にスピードを失って蛇行を始めるベネットに対し、ブラケットを握って力強く踏み続けたユアン。ベネットは26秒間にわたって平均1,060Wを出力(14.52W/kg)したが、激坂フィニッシュでは身長165cm/体重67kgの小柄なユアンに軍配が上がった。
![残り10kmからアタックしたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)とニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/corvos00032096-020.jpg)
![ハッタダムの激坂を駆け上がるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/ba0fdc10-b44f-4eff-9f28-f276ac4a48e0.jpg)
![ハッタダム2連覇を果たしたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/ff58987.jpg)
「麓から見るとフィニッシュが近くに見えるけど、実際はとてもハードだということを昨年の経験から知っていた。麓から全開でもがいてしまうと、重要な残り20〜30mで失速してしまう。だから数秒待ってから仕掛けるのが得策だと知っていたんだ。自分がどれだけの距離をもがけるのか分かっているので、加速するタイミングを伺った」というユアンが鮮やかなシーズン3勝目。1月のツアー・ダウンアンダーでのステージ2勝に続き、UCIワールドツアーレースで勝利を量産している。
「今シーズンは大成功の昨シーズンよりも良いスタートが切れている。今年もミラノ〜サンレモが大きな目標であることに変わりはないよ。今年はフィリップ・ジルベールがチームに加わったので、ハードな展開に持ち込まれた時には彼で勝負することができる」。ユアンはUAEツアー後に3月8日開幕のパリ〜ニース出場予定。コロナウィルスの影響で開催が危ぶまれているミラノ〜サンレモは3月21日に予定されている。
ボーナスタイム10秒を獲得したユアンが総合首位浮上。しかし、翌日の第3ステージには標高1,025mの岩山ジュベルハフィート(全長10.8km/平均7%)山頂フィニッシュが登場するため、ユアンが手にしたレッドジャージは再び持ち主を変えることになる。
![レッドジャージを獲得したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/02/25/ff18693.jpg)
UAEツアー2020第2ステージ結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 4:18:16 |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:02 |
3位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:04 |
4位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | リック・ツァベル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
6位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール) | |
7位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | |
56位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:48 |
個人総合成績
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 7:47:19 |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:12 |
3位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:16 |
4位 | ニコライ・チェルカーソフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) | 0:00:17 |
5位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 0:00:19 |
6位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:20 |
7位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール) | |
8位 | リック・ツァベル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
9位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | |
10位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) |
その他の特別賞
ポイント賞 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) |
ヤングライダー賞 | ニコライ・チェルカーソフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) |
中間スプリント賞 | ヴェリコ・ストイニッツ(セルビア、ヴィーニザブKTM) |
チーム総合成績 | ドゥクーニンク・クイックステップ |
text:Kei Tsuji
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