ワールドツアー第2戦カデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレースは序盤から激しい展開で進み、最後はパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)との一騎打ちを制したドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がキャリア初のワールドツアー勝利。23位に入った新城幸也(バーレーン・マクラーレン)が五輪選考ランキングポイントを稼ぐことに成功している。



優勝候補の1人、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)優勝候補の1人、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) (c)CorVosスタートサインのステージに上がる様子をSNSにアップする新城幸也(バーレーン・マクラーレン)スタートサインのステージに上がる様子をSNSにアップする新城幸也(バーレーン・マクラーレン) (c)CorVos

ジーロングの街をスタートしていくジーロングの街をスタートしていく (c)CorVos
2月2日に開催されたワールドツアー第2戦、カデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレースは、その名の通りオーストラリア人として初のツール・ド・フランス制覇を成し遂げたカデル・エヴァンスの功績を称えて2015年から開催されているワンデーレース。

今年でワールドツアー4年目となり、ツアー・ダウンアンダーを終えた各チームがトレーニングキャンプを経てそのまま出場するのが恒例だ。レース主催者によれば、難関登坂チャランブラ・クレセント(距離1.2km/平均勾配8.4%/最大勾配22%)が合計4回登場する16.8kmの周回コースは「シーズン序盤であることを念頭に置き、エヴァンスと協議を重ねた」もの。2010年に世界選手権を迎えたジーロングのコースに向けて、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)やチームイネオス新加入のキャメロン・ワーフ(オーストラリア)を含む1団がスタートした。

この日序盤に逃げたのは、コルダメンサ・リアルエステートオーストラリア(豪ナショナルチーム)の3名(コナー・リーヒー、ルディ・ポーター、カーター・ターンブル)。若い3名がチームTT状態で1分程度の差を築いたものの、チームイネオスが海岸線で横風分断作戦を繰り出したことでリードは急速に縮まった。

序盤、チームイネオスによる横風分断が行われる序盤、チームイネオスによる横風分断が行われる (c)CorVos
このペースアップによって大会史上初の2連覇を狙うエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)やサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)らが被害を受けた。一時追走グループは1分近くのビハインドを負ったものの、風向きが変わったことで再び合流に成功する。沈静化した集団からは豪州ナショナルジャージに袖を通すターンブルとエリオット・シュルツが再び飛び出した。

ジーロングに向かうメイン集団では再度イネオス勢が活性化を試みたものの、2度目のペースアップとあって有力勢は千切れない。2度目のチャランブラ・クレセントではメイン集団からアレクサンダー・カタフォード(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)を含む5名が飛び出してターンブルとシュルツを吸収し、ローテーションを回して逃げ続けた。

サーティーンスビーチを通過するプロトンサーティーンスビーチを通過するプロトン (c)CorVos
ツアー・ダウンアンダーを制したばかりのリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)ツアー・ダウンアンダーを制したばかりのリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) (c)CorVosアルカンシエルを着用するマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)アルカンシエルを着用するマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) (c)CorVos

急勾配のチャランブラクレセントをメイン集団がよじ登る急勾配のチャランブラクレセントをメイン集団がよじ登る (c)CorVos
レース終盤に入るとメイン集団が活性化し、残り10kmを切って登場する最後のチャランブラ・クレセントで有力選手が次々とアタックを繰り出した結果、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)とドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)、イェンス・クークレール(ベルギー、EFプロサイクリング)、ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)、ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)、そしてサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)という先頭グループが形成される。すると「誰もが限界だということが分かった。あのグループにいる限り自分のチャンスは少ないので、勝つためにはアタックするしかなかった」と言うシヴァコフが残り5.5km地点で加速した。

シヴァコフのアタックに唯一食らいついたのはデヴェナインスで、2人は10秒ほどのリードを保ったまま4人を振り切ってフィニッシュ地点へ。シヴァコフの背後から加速した36歳のデヴェナインスが、キャリア14年目にして初のワールドツアー勝利を挙げた。

パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)との一騎打ちを制したドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)	パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)との一騎打ちを制したドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
「最初から激しい展開のレースで一度中切れに巻き込まれたけれど、落ち着いて再びメイン集団に戻るタイミングを待った。残り2周回で起きた集団分断の時には前に残ることができたんだ。活性化した時にいくつかのチームが複数名を残していたけれど、今日は脚があると分かっていたのでアタック合戦が激しくなった時も自信を保ち続けた。シヴァコフのアタックには全力で対応。彼がどれだけスプリントできるかは分からなかったけれどベストを尽くした」と、普段はクラシックエースのためにアシスト役を担うデヴェナインスは語る。ドゥクーニンク・クイックステップにとっては2003年のチーム設立から数えて750勝目という節目の勝利であり、デヴェナインスも「この素晴らしいチームの歴史に名前を残せたということにも嬉しく思っている」と話した。

デヴェナインスとシヴァコフに4秒届かなかった追走グループではインピーが先着し、25秒遅れの第3グループではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が頭を獲り全体の7位に入った。

オーストラリアらしい優勝トロフィーを掲げるドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)オーストラリアらしい優勝トロフィーを掲げるドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
また、50秒遅れの大集団内で着順争いに加わった新城は23位に入りUCIポイント12点を獲得。東京五輪代表選考においてワールドツアーの係数はx6であり、選考ランキングポイントを72点加算して2位以下との差を広げることに成功した。以下は新城のコメント。

「チームとしてはトップ10が目標でした。このレースでのチームリーダーはマルコ・ハラー(オーストリア)。周回がアップダウンの繰り返しなので、スプリンターのいないチームが動く事もあるので、どちらでも対応するようにと。

この周回は2010年の世界選手権(9位だった)の時とほとんど同じ様な周回だったので、自分の脚には合っている事は解っていた。しかし、今日は風が吹いていて、周回前の110kmの大きなループで脚を使う展開となった。それはどの選手も同じで、自分は周回中は楽に走る事が出来た(10年前に成績が良かった自信かな?(笑)

残り2周回でマルコとへーマンをチームメイト2人を含む逃げが出来た。チームとしてはリーダーがホカノスプリンター達と前に行ってくれたので、一安心。残り1周はもし、逃げ捕まった場合に自分の為にと脚を貯めたが、逃げは逃げ切り、逃げに入っていた2選手が8位と11位とチームは納得の成績を収めた。自分自身も少しでも良い順位をと思ったが、集団で11番目だった。
 
これで、3週間のオーストラリア遠征が終わりました。合宿に始まり、ツアーダウンアンダー、トーキー、カデルエバンスと3つレースを走り、毎日、マッサージも受けられてコンディションも良くなって、最高な結果!ではなかったものの、11月にトレーニングを始めて、これまで準備してきて良かった。これからもっともっと上げる感触を得られたし、2020シーズン良い走り出しとなった」。
カデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレース2020結果
1位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4;:05:49
2位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) 0:04
4位 イェンス・クークレール(ベルギー、EFプロサイクリング)
5位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームイネオス)
6位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 0:25
8位 マルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・マクラーレン)
9位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
10位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
23位 新城幸也(バーレーン・マクラーレン) 0:50
Text:So.Isobe
Photo:CorVos

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