2020/01/20(月) - 11:43
新体制のNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスに加入した別府史之へのインタビューを紹介する。「今まで以上にシンプルにレースに向き合える」と語る、別府が2020年に見据えるものとは。レースプランや五輪出場について、そして今後の果たすべき役割とは?
NIPPOがタイトルスポンサーに就き、岡篤志、中根英登、別府史之、石上優大と4名の日本人選手が加入した新体制NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスのシーズン初戦はもう目前。今回はトレック・セガフレードから、第二の故郷でもあるマルセイユの同チームに移籍した別府史之のインタビューを紹介する。新天地を走る36歳のベテラン選手が移籍を決めた理由、2020年、そしてその先に見据えることとは。
― まずは今回、トレック・セガフレードから移籍した意図、そしてマルセイユのこのチームを選んだ理由について教えて下さい。
長年ワールドツアーで走ってきましたが、年齢的にもタイミング的にも将来のことを考える時期であり、2020年はちょうど東京オリンピックがある区切りの年でした。トレックとは2019年からの2年契約だったので、もう1年残る選択肢もあったし、それが普通の流れではあったけど、「新しいチャレンジをするなら今だ」と思いました。チームがいいか悪いかということではなく、ロードレースのプロ選手として、とにかく新しいチャレンジをしたかった。
そう思っていたときにフレッド(ゼネラルマネージャーのフレデリック・ロスタン)が「うちに来ないか?」と言ってくれ、マルセイユは高校を卒業した自分が初めて来たヨーロッパの街であり、ヨーロッパのプロとして旅立てた場所。ただ、この移籍は単純に“古巣に戻る”というのではなく、ここなら新しいことができると確信があったんです。たとえば、このチームには若い選手もいるし、NIPPOとタッグを組んだことで日本の優秀な選手も来た。今後そういった選手のために自分の経験を伝えることができます。いろいろ考えると自分にとってプラスしかなく、今回の移籍に至りました。
― 2020シーズンの主だったレーススケジュールを教えてもらえますか?
基本的にはワンデーレースを狙います。北のクラシックレースや、フランスカップを回ることになるでしょう。シーズン最初のゴールは自分が好きなパリ〜ルーベ。チームはパリ〜ニースへの招待をもらっていますが、自分が出たいのはやっぱりルーベですね。ベルギーのクラシックレースもそうですが、100年以上の長い歴史の上に成り立っているレースであり、いままで何百人、何万人という選手が走っているコースを辿るんです。コース上にはいろいろなことが詰まっているし、これってすごいことだと思うんです。ロードレースで石畳の上を走るというのは信じられないほど過酷なものですが、そこには強いパッションが存在するんです。だから僕はパリ〜ルーベが数あるなかでも一番好きなレースです。
― 東京五輪についてはいかがでしょう。移籍発表のタイミングから出場を語っていますが、現在のJCFの選考ランキングではまだ下位です。
国内選考のランキングではまだ下位ではあるものの、順当にいけば出られないとは思っていません。逆転できる可能性はある。オリンピックにはコンディションのいい選手が出るべきですが、ヨーロッパのレースで成績を残すということを考えながら、選考期限の5月下旬までしっかりと走りたいですね。そこがシーズン1番の山場で、メインゴールとなるでしょう。
― トレックから移籍したことでチーム内ポジションに変化はあるのでしょうか?
チームは変わってもプロチームの一員としてやることは決まっています。仕事をして、成績を狙う。ワールドチームからプロチームにチームカテゴリーが下がったことで、ネガティブなことを言えばレースの質や量は劣るかもしれませんが、逆に自分の成績を狙う機会は増えてくる。ワールドツアーレースに出るにはワイルドカード(レース主催者の定めるチーム招待枠)が必要ですが、それ以外でもいいレースはたくさんあって、そこには大きなチャンスがある。だからその点は気にしていません。
チームには自分の特性を生かしたレースプログラムを用意してもらっています。スプリンターのための牽引だったり、自身のスプリントだったり、ちょっとした丘でも勝負することができる。期待されているのは得意なスピードレースでの活躍で、今までのように全部こなさなくて良くなったので、シンプルにレースに向き合うことができるはずです。
― これから自分が果たすべき役割とはどのようなことだと考えていますか?
自分個人だけでなく、今後の日本の自転車界にとって、そしてNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスにとっても、今回の移籍は大きな意味があると思います。自分にとっては新しいチャレンジですが、周りの環境などもすべて踏まえての移籍です。今年は東京オリンピックがあって、2024年はパリオリンピックがある。日本とフランスは切っても切り離せない関係にある。これまでの経験や人脈を活かして、今後も両国をつなぐ架け橋のような存在になりたいと考えています。
― もうシーズン開幕は間も無くですね。新しいチームの雰囲気はいかがですか?
12月と1月のトレーニングキャンプでは有意義な時間を過ごせました。言葉もフランス語がメインで、若くてフレッシュな顔ぶれのなかにはラムナス(ナヴァルダスカス)のようなベテラン選手もいます。今までにないくらいみんなと伸び伸びと走れている感覚ですし、日本の選手も3人いる。これまでチーム内で日本語を話すことはなかったので、食事のテーブルなどで日本語を話すことに違和感も感じるけれど、ヨーロッパで母国語を話せることは新鮮です。
機材の面で去年と変わったのは、ディスクブレーキからリムブレーキになったこと。バイクブランドもトレックからルックに変わりました。ルックはフランスのトップブランドですし、とても良いですね。機材にも満足していますし、選手にとって必要なものは全部揃っています。あとはしっかりとトレーニングと調整をして、普段どおりのレースができれば結果に繋がるはずです。
― 初戦はガボンの「ラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ」と聞いています。今の抱負を教えて下さい。
アフリカには初上陸ですね! どんな土地なのか、現地の選手のポテンシャルも未知数で、ベテラン選手の自分にとって“初めて”というのは良い経験になるはず。ワクワクした気持ちで新しいシーズンのスタートを切ることができて嬉しく思います。
interview:Sonoko.Tanaka
NIPPOがタイトルスポンサーに就き、岡篤志、中根英登、別府史之、石上優大と4名の日本人選手が加入した新体制NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスのシーズン初戦はもう目前。今回はトレック・セガフレードから、第二の故郷でもあるマルセイユの同チームに移籍した別府史之のインタビューを紹介する。新天地を走る36歳のベテラン選手が移籍を決めた理由、2020年、そしてその先に見据えることとは。
― まずは今回、トレック・セガフレードから移籍した意図、そしてマルセイユのこのチームを選んだ理由について教えて下さい。
長年ワールドツアーで走ってきましたが、年齢的にもタイミング的にも将来のことを考える時期であり、2020年はちょうど東京オリンピックがある区切りの年でした。トレックとは2019年からの2年契約だったので、もう1年残る選択肢もあったし、それが普通の流れではあったけど、「新しいチャレンジをするなら今だ」と思いました。チームがいいか悪いかということではなく、ロードレースのプロ選手として、とにかく新しいチャレンジをしたかった。
そう思っていたときにフレッド(ゼネラルマネージャーのフレデリック・ロスタン)が「うちに来ないか?」と言ってくれ、マルセイユは高校を卒業した自分が初めて来たヨーロッパの街であり、ヨーロッパのプロとして旅立てた場所。ただ、この移籍は単純に“古巣に戻る”というのではなく、ここなら新しいことができると確信があったんです。たとえば、このチームには若い選手もいるし、NIPPOとタッグを組んだことで日本の優秀な選手も来た。今後そういった選手のために自分の経験を伝えることができます。いろいろ考えると自分にとってプラスしかなく、今回の移籍に至りました。
― 2020シーズンの主だったレーススケジュールを教えてもらえますか?
基本的にはワンデーレースを狙います。北のクラシックレースや、フランスカップを回ることになるでしょう。シーズン最初のゴールは自分が好きなパリ〜ルーベ。チームはパリ〜ニースへの招待をもらっていますが、自分が出たいのはやっぱりルーベですね。ベルギーのクラシックレースもそうですが、100年以上の長い歴史の上に成り立っているレースであり、いままで何百人、何万人という選手が走っているコースを辿るんです。コース上にはいろいろなことが詰まっているし、これってすごいことだと思うんです。ロードレースで石畳の上を走るというのは信じられないほど過酷なものですが、そこには強いパッションが存在するんです。だから僕はパリ〜ルーベが数あるなかでも一番好きなレースです。
― 東京五輪についてはいかがでしょう。移籍発表のタイミングから出場を語っていますが、現在のJCFの選考ランキングではまだ下位です。
国内選考のランキングではまだ下位ではあるものの、順当にいけば出られないとは思っていません。逆転できる可能性はある。オリンピックにはコンディションのいい選手が出るべきですが、ヨーロッパのレースで成績を残すということを考えながら、選考期限の5月下旬までしっかりと走りたいですね。そこがシーズン1番の山場で、メインゴールとなるでしょう。
― トレックから移籍したことでチーム内ポジションに変化はあるのでしょうか?
チームは変わってもプロチームの一員としてやることは決まっています。仕事をして、成績を狙う。ワールドチームからプロチームにチームカテゴリーが下がったことで、ネガティブなことを言えばレースの質や量は劣るかもしれませんが、逆に自分の成績を狙う機会は増えてくる。ワールドツアーレースに出るにはワイルドカード(レース主催者の定めるチーム招待枠)が必要ですが、それ以外でもいいレースはたくさんあって、そこには大きなチャンスがある。だからその点は気にしていません。
チームには自分の特性を生かしたレースプログラムを用意してもらっています。スプリンターのための牽引だったり、自身のスプリントだったり、ちょっとした丘でも勝負することができる。期待されているのは得意なスピードレースでの活躍で、今までのように全部こなさなくて良くなったので、シンプルにレースに向き合うことができるはずです。
― これから自分が果たすべき役割とはどのようなことだと考えていますか?
自分個人だけでなく、今後の日本の自転車界にとって、そしてNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスにとっても、今回の移籍は大きな意味があると思います。自分にとっては新しいチャレンジですが、周りの環境などもすべて踏まえての移籍です。今年は東京オリンピックがあって、2024年はパリオリンピックがある。日本とフランスは切っても切り離せない関係にある。これまでの経験や人脈を活かして、今後も両国をつなぐ架け橋のような存在になりたいと考えています。
― もうシーズン開幕は間も無くですね。新しいチームの雰囲気はいかがですか?
12月と1月のトレーニングキャンプでは有意義な時間を過ごせました。言葉もフランス語がメインで、若くてフレッシュな顔ぶれのなかにはラムナス(ナヴァルダスカス)のようなベテラン選手もいます。今までにないくらいみんなと伸び伸びと走れている感覚ですし、日本の選手も3人いる。これまでチーム内で日本語を話すことはなかったので、食事のテーブルなどで日本語を話すことに違和感も感じるけれど、ヨーロッパで母国語を話せることは新鮮です。
機材の面で去年と変わったのは、ディスクブレーキからリムブレーキになったこと。バイクブランドもトレックからルックに変わりました。ルックはフランスのトップブランドですし、とても良いですね。機材にも満足していますし、選手にとって必要なものは全部揃っています。あとはしっかりとトレーニングと調整をして、普段どおりのレースができれば結果に繋がるはずです。
― 初戦はガボンの「ラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ」と聞いています。今の抱負を教えて下さい。
アフリカには初上陸ですね! どんな土地なのか、現地の選手のポテンシャルも未知数で、ベテラン選手の自分にとって“初めて”というのは良い経験になるはず。ワクワクした気持ちで新しいシーズンのスタートを切ることができて嬉しく思います。
interview:Sonoko.Tanaka
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