2019/12/29(日) - 14:31
2019年の国内レースシーンを全3回で振り返る「2019年プレーバック 国内レース編」。初回は、オールイス・アルベルト・アウラールと岡篤志が最終戦までタイトルを争ったJプロツアーの総集編。個人総合優勝したアウラールのコメントと併せて振り返る。
2019年3月、Jプロツアー開幕前に行われたプレスカンファレンスで、今年から新しくなるリーダージャージと、個人総合優勝者に贈られるトロフィーがお披露目された。あわせて、2021年にスタートする新リーグ構想が発表された。Jプロツアーを主催するJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)理事長の片山右京氏は、新リーグスタートに向けて2019年をキックオフの年と位置づけ、「世界への道筋となることを目指す」と宣言。競技レベルの向上のみならず、運営面においても国内最高峰を目指しての新たなシーズンがスタートした。
マトリックスパワータグ3連勝で開幕ダッシュ
3月16日、2020年東京オリンピックの会場となる日本サイクルスポーツセンターで行われた開幕第1戦は、3年ぶりにJプロツアーに復帰したチーム右京とマトリックスパワータグ(以下マトリックス)がレースをリード。終盤、チーム右京の2人と、マトリックスパワータグがベネズエラから招聘した新人・オールイス・アルベルト・アウラールの3人が抜け出す。2対1の不利な状況にもかかわらず、スプリントでチーム右京の2人を振り切ったアウラールが開幕戦優勝。早速その実力の片鱗を見せた。
翌日の第2戦は、初日の倍の距離となる120kmのレース。ここでは2018年シーズン終盤からマトリックスに加入したフランシスコ・マンセボがレースを動かした。序盤のアタック合戦に自ら参戦し、レース中盤に形成された逃げ集団からアイラン・フェルナンデス・カサソラと共に飛び出すと、食らいついたチーム右京の吉岡直哉を振り切って1-2フィニッシュ。マトリックスが開幕2連勝を決めた。
4月、第3戦「西日本ロードクラシック広島大会」は、今年のJプロツアーの行方を暗示するレースとなった。広島県中央森林公園の1周12.3kmのコースを12周147.6kmで行われたレースは、中盤に形成された10人ほどの逃げ集団をチームブリヂストンサイクリング(以下ブリヂストン)が追走。再構成された逃げ集団から、アウラールと岡篤志(宇都宮ブリッツェン)の2人が抜け出した。最終周回、広島の勝負所「三段坂」で岡を振り切ったアウラールは、早くもJプロツアー2勝目。マトリックスは開幕3連勝で幸先の良いシーズンスタートを切った。
レース後、「勝てない相手ではない」と手応えを語った岡は、アウラールと共に2019年のJプロツアーをリードしていくことになった。また、このレースを動かしたブリヂストンが、マトリックス、宇都宮ブリッツェンと並ぶ3大勢力として台頭。チーム総合優勝争いを繰り広げていく。
4月-6月 今村駿介と中井唯晶の初優勝・小野寺玲の連覇・ブリヂストン連勝
平成最後のレースとなった第4戦「東日本ロードクラシック群馬大会」は、マンセボとアウラールが海外遠征のため不在となり、落ち着いたレース展開に。僅差の集団スプリントに持ち込まれた勝負は、ブリヂストンの「トラック班」が組んだスプリント列車を押しのけた岡が今シーズン初優勝。リーダージャージを着用した。
5月、令和最初のレースは宇都宮市での2連戦。ジャパンカップの会場でもおなじみ宇都宮森林公園で行われた第5戦「宇都宮ロードレース」は、岡泰誠・篤志の兄弟エスケープを吸収したのち抜け出した6人のスプリント勝負となり、ブリヂストンの今村駿介がJプロツアー初優勝。窪木一茂が2位となってブリヂストンの1-2フィニッシュとなった。
翌日の第6戦「宇都宮クリテリウム」では、地元レースに大挙して集まったブリッツェン・サポーターの前で、小野寺玲が前年に続く連覇。新作の「オノデライダーポーズ」も飛び出した。
6月、第7戦「那須塩原クリテリウム」では、シマノレーシング加入1年目の中井唯晶がアウラールらを下して初優勝。翌日の第8戦「やいた片岡ロードレース」では、宇都宮ロードレースで初優勝したばかりの今村駿介が2勝目を挙げ、2位に窪木一茂が入ってブリヂストンが2度目の1-2フィニッシュを達成した。
窪木は、翌週の第9戦「群馬CSC交流戦6月大会」で優勝。石橋学が強力なアシストを見せたブリヂストンは上位6位までに4人を送り込んだ。一方、このレースにはE1の選手が出走出来るレースでもあったが、7人が完走。うち2人が10位以内に入る健闘を見せた。
7月 夏の連戦で岡篤志が首位の足場固め
シーズン中盤の7月、Jプロツアーは5戦が予定される過密月間を迎えた。
第10戦「東広島サイクルロードレース」は、広島大学の東広島キャンパス周辺の公道を使用して初めて開催されたレース。1周5.5kmと短めながら、最大斜度15%の登りや、コーナーが連続する下り区間など変化に富むコースレイアウトだ。レースは最後までアタックと吸収が繰り返される展開となったが、終盤に抜け出した岡が逃げ切って優勝した。
翌日の第11戦「広島クリテリウム」は2回目の開催。広島市内からほど近い会場に多くの観客が集まった。勝負は、ブリヂストンの黒枝士揮と沢田桂太郎、シマノレーシングの黒枝咲哉、宇都宮ブリッツェンの小野寺と、国内トップスプリンター同士の勝負となり、黒枝士揮が優勝。沢田が2位となり、ブリヂストンが今季3度目の1-2フィニッシュを達成した。
翌週の第12戦「石川サイクルロードレース」は、雨中のレースとなったこともあって異例の集団スプリントでの勝負に。勝ったのはリーダージャージを着る岡。これで今季3勝目となり、南米選手権などのため不在のアウラールに1000ポイント以上の差をつけた。
7月末、シーズンの折り返しとなる第13戦・第14戦は、渡良瀬遊水地を舞台に行われるタイムトライアル2連戦。しかし台風接近のため、第14戦の「個人タイムトライアルチャンピオンシップ」は中止となり、第13戦の「チームタイムトライアルチャンピオンシップ」のみが開催された。
台風による強風が吹き続ける悪条件の中、平均時速50kmオーバーで駆け抜けたブリヂストンが優勝。トラック種目のチームパーシュート日本代表メンバーを揃えるブリヂストンだが、その中核となる窪木と今村が不在にも関わらず、他チームを圧倒するタイムで優勝して見せた。ブリヂストンはチーム総合優勝争いでシーズン後半をリードしていく。
9月 アウラールとマトリックスパワータグの逆襲
約1ヶ月の休止期間を経て9月に再開したJプロツアーは、再び5戦が開催される過密月間となる。
第15戦と第16戦は、「群馬CSC交流戦9月大会」。ここに日本に戻ってきたアウラールが、同日開催のUCIレース「ツール・ド・北海道」をパスして出場。Jプロツアーの個人総合優勝を目指し、総合首位の岡とのポイント差を縮めるためだ。
初日のDay-1は78km。レース終盤の一瞬の隙をついたヴィクトワール広島の谷順成が初優勝。自身だけでなく、結成5年目のチームにJプロツアー初優勝を献上した。翌日のDay-2は、台風接近のため150kmを78kmに短縮して行われた。初日は2位に甘んじたアウラールだったが、この日は勝負所を見逃さずに優勝を決めた。
第17戦「南魚沼ロードレース」の11周132kmのレースは、事実上2周目に決まった。3人の飛び出しから独走に持ちこんだマンセボが、フィニッシュまで120kmを逃げ切った。昨年の南魚沼でもマンセボが段違いの強さを見せたが、今年も世界のトップクラスで戦った強さを見せつけて連覇した。
第18戦はJプロツアーの中で最もステータースの高いレース「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」。広島県中央森林公園を会場に172.2kmで予定されていたレースは、台風接近により159.9kmに短縮されたものの、Jプロツアー最長距離で争われた。
レースの主導権を握ったのはマトリックスパワータグ。終盤、アウラール、マンセボ、ホセ・ビセンテ・トリビオの3名を逃げ集団に送り込むと、同じ逃げ集団に乗った徳田優(ブリヂストン)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、入部正太朗(シマノレーシング)らを物ともせず、アウラールを先頭に1位から3位を独占。パンクで遅れた岡をアウラールが逆転して総合首位に立った。
アウラールは翌週の第19戦「まえばしクリテリウム」でも優勝。しかし翌日の第20戦「赤城山ヒルクライム」では岡がアウラールに先着。アウラールは首位を守ったものの、逆転可能な118ポイント差で最終戦を迎えることとなった。
10月 個人・チーム共に総合優勝決定の場となった山口ラウンド
10月5日、初開催となる第21戦「維新やまぐちタイムトライアル」は、山口市の山口きらら博記念公園でのチームタイムトライアル。1周2.6kmという短周回コースでのタイムトライアルでも、ブリヂストンがチーム力を見せて他を圧倒して優勝。チーム総合優勝逆転に望みをつなげた。
最終戦となる第22戦は「秋吉台カルストロードレース」。Jプロツアー屈指の難コースが、チャンピオンシップ決定の場となった。2019年シーズンをリードしてきたマトリックスパワータグ、宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリングの3チームが三つ巴の争いを繰り広げ、最後は個人総合優勝を争うアウラールと岡の一騎打ちに。アウラールは岡を下して優勝し、個人総合優勝を自ら決めた。マトリックスはチーム総合優勝も決め、2年ぶりにJプロツアーダブルタイトルを獲得した。
◾️Jプロツアー2019チャンピオン オールイス・アルベルト・アウラール コメント
「日本でとてもすばらしい経験をしました。異文化を知るチャンスもあってとても良かったと思います。安原監督には感謝の気持ちでいっぱいです。監督のおかげで日本で活躍することが出来ました。ヨーロッパでは2017年と18年に走っていて、ヨーロッパでの経験も好きだが、アジアもレベルが高く、とても良い経験になりました。アジアで活躍したおかげで次に行くスペインのチームに関心を持ってもらえました。
日本に来る前は文化がかなり違うので、早く慣れることが出来るか不安でした。良いシーズンにしたいと思い日本に来たが、その目標も達成出来ました。たぶん、自分は異文化に早く慣れることができるのだと思いますが、それもチームのみなさんが親切にしてくれたおかげです。
来年は大きな変化になると思います。ヨーロッパではまた違う自転車のスタイルがあるし、アジアより強いところもあるので今から全力を尽くして準備しないといけないと思っています。
東京オリンピックでベネズエラを代表できる自転車選手は1人だけ。私の今までのUCIポイントを考えれば私が選ばれる可能性が高いと思います。東京オリンピックに向けてモチベーションが上がるし、オリンピックは自転車選手の夢でもあるので、それに向けて頑張ります。来年東京で会いましょう」
次回はツール・ド・とちぎからツール・ド・おきなわまで国内UCIレースを振り返ります。
text:Satoru Kato
2019年3月、Jプロツアー開幕前に行われたプレスカンファレンスで、今年から新しくなるリーダージャージと、個人総合優勝者に贈られるトロフィーがお披露目された。あわせて、2021年にスタートする新リーグ構想が発表された。Jプロツアーを主催するJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)理事長の片山右京氏は、新リーグスタートに向けて2019年をキックオフの年と位置づけ、「世界への道筋となることを目指す」と宣言。競技レベルの向上のみならず、運営面においても国内最高峰を目指しての新たなシーズンがスタートした。
マトリックスパワータグ3連勝で開幕ダッシュ
3月16日、2020年東京オリンピックの会場となる日本サイクルスポーツセンターで行われた開幕第1戦は、3年ぶりにJプロツアーに復帰したチーム右京とマトリックスパワータグ(以下マトリックス)がレースをリード。終盤、チーム右京の2人と、マトリックスパワータグがベネズエラから招聘した新人・オールイス・アルベルト・アウラールの3人が抜け出す。2対1の不利な状況にもかかわらず、スプリントでチーム右京の2人を振り切ったアウラールが開幕戦優勝。早速その実力の片鱗を見せた。
翌日の第2戦は、初日の倍の距離となる120kmのレース。ここでは2018年シーズン終盤からマトリックスに加入したフランシスコ・マンセボがレースを動かした。序盤のアタック合戦に自ら参戦し、レース中盤に形成された逃げ集団からアイラン・フェルナンデス・カサソラと共に飛び出すと、食らいついたチーム右京の吉岡直哉を振り切って1-2フィニッシュ。マトリックスが開幕2連勝を決めた。
4月、第3戦「西日本ロードクラシック広島大会」は、今年のJプロツアーの行方を暗示するレースとなった。広島県中央森林公園の1周12.3kmのコースを12周147.6kmで行われたレースは、中盤に形成された10人ほどの逃げ集団をチームブリヂストンサイクリング(以下ブリヂストン)が追走。再構成された逃げ集団から、アウラールと岡篤志(宇都宮ブリッツェン)の2人が抜け出した。最終周回、広島の勝負所「三段坂」で岡を振り切ったアウラールは、早くもJプロツアー2勝目。マトリックスは開幕3連勝で幸先の良いシーズンスタートを切った。
レース後、「勝てない相手ではない」と手応えを語った岡は、アウラールと共に2019年のJプロツアーをリードしていくことになった。また、このレースを動かしたブリヂストンが、マトリックス、宇都宮ブリッツェンと並ぶ3大勢力として台頭。チーム総合優勝争いを繰り広げていく。
4月-6月 今村駿介と中井唯晶の初優勝・小野寺玲の連覇・ブリヂストン連勝
平成最後のレースとなった第4戦「東日本ロードクラシック群馬大会」は、マンセボとアウラールが海外遠征のため不在となり、落ち着いたレース展開に。僅差の集団スプリントに持ち込まれた勝負は、ブリヂストンの「トラック班」が組んだスプリント列車を押しのけた岡が今シーズン初優勝。リーダージャージを着用した。
5月、令和最初のレースは宇都宮市での2連戦。ジャパンカップの会場でもおなじみ宇都宮森林公園で行われた第5戦「宇都宮ロードレース」は、岡泰誠・篤志の兄弟エスケープを吸収したのち抜け出した6人のスプリント勝負となり、ブリヂストンの今村駿介がJプロツアー初優勝。窪木一茂が2位となってブリヂストンの1-2フィニッシュとなった。
翌日の第6戦「宇都宮クリテリウム」では、地元レースに大挙して集まったブリッツェン・サポーターの前で、小野寺玲が前年に続く連覇。新作の「オノデライダーポーズ」も飛び出した。
6月、第7戦「那須塩原クリテリウム」では、シマノレーシング加入1年目の中井唯晶がアウラールらを下して初優勝。翌日の第8戦「やいた片岡ロードレース」では、宇都宮ロードレースで初優勝したばかりの今村駿介が2勝目を挙げ、2位に窪木一茂が入ってブリヂストンが2度目の1-2フィニッシュを達成した。
窪木は、翌週の第9戦「群馬CSC交流戦6月大会」で優勝。石橋学が強力なアシストを見せたブリヂストンは上位6位までに4人を送り込んだ。一方、このレースにはE1の選手が出走出来るレースでもあったが、7人が完走。うち2人が10位以内に入る健闘を見せた。
7月 夏の連戦で岡篤志が首位の足場固め
シーズン中盤の7月、Jプロツアーは5戦が予定される過密月間を迎えた。
第10戦「東広島サイクルロードレース」は、広島大学の東広島キャンパス周辺の公道を使用して初めて開催されたレース。1周5.5kmと短めながら、最大斜度15%の登りや、コーナーが連続する下り区間など変化に富むコースレイアウトだ。レースは最後までアタックと吸収が繰り返される展開となったが、終盤に抜け出した岡が逃げ切って優勝した。
翌日の第11戦「広島クリテリウム」は2回目の開催。広島市内からほど近い会場に多くの観客が集まった。勝負は、ブリヂストンの黒枝士揮と沢田桂太郎、シマノレーシングの黒枝咲哉、宇都宮ブリッツェンの小野寺と、国内トップスプリンター同士の勝負となり、黒枝士揮が優勝。沢田が2位となり、ブリヂストンが今季3度目の1-2フィニッシュを達成した。
翌週の第12戦「石川サイクルロードレース」は、雨中のレースとなったこともあって異例の集団スプリントでの勝負に。勝ったのはリーダージャージを着る岡。これで今季3勝目となり、南米選手権などのため不在のアウラールに1000ポイント以上の差をつけた。
7月末、シーズンの折り返しとなる第13戦・第14戦は、渡良瀬遊水地を舞台に行われるタイムトライアル2連戦。しかし台風接近のため、第14戦の「個人タイムトライアルチャンピオンシップ」は中止となり、第13戦の「チームタイムトライアルチャンピオンシップ」のみが開催された。
台風による強風が吹き続ける悪条件の中、平均時速50kmオーバーで駆け抜けたブリヂストンが優勝。トラック種目のチームパーシュート日本代表メンバーを揃えるブリヂストンだが、その中核となる窪木と今村が不在にも関わらず、他チームを圧倒するタイムで優勝して見せた。ブリヂストンはチーム総合優勝争いでシーズン後半をリードしていく。
9月 アウラールとマトリックスパワータグの逆襲
約1ヶ月の休止期間を経て9月に再開したJプロツアーは、再び5戦が開催される過密月間となる。
第15戦と第16戦は、「群馬CSC交流戦9月大会」。ここに日本に戻ってきたアウラールが、同日開催のUCIレース「ツール・ド・北海道」をパスして出場。Jプロツアーの個人総合優勝を目指し、総合首位の岡とのポイント差を縮めるためだ。
初日のDay-1は78km。レース終盤の一瞬の隙をついたヴィクトワール広島の谷順成が初優勝。自身だけでなく、結成5年目のチームにJプロツアー初優勝を献上した。翌日のDay-2は、台風接近のため150kmを78kmに短縮して行われた。初日は2位に甘んじたアウラールだったが、この日は勝負所を見逃さずに優勝を決めた。
第17戦「南魚沼ロードレース」の11周132kmのレースは、事実上2周目に決まった。3人の飛び出しから独走に持ちこんだマンセボが、フィニッシュまで120kmを逃げ切った。昨年の南魚沼でもマンセボが段違いの強さを見せたが、今年も世界のトップクラスで戦った強さを見せつけて連覇した。
第18戦はJプロツアーの中で最もステータースの高いレース「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」。広島県中央森林公園を会場に172.2kmで予定されていたレースは、台風接近により159.9kmに短縮されたものの、Jプロツアー最長距離で争われた。
レースの主導権を握ったのはマトリックスパワータグ。終盤、アウラール、マンセボ、ホセ・ビセンテ・トリビオの3名を逃げ集団に送り込むと、同じ逃げ集団に乗った徳田優(ブリヂストン)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、入部正太朗(シマノレーシング)らを物ともせず、アウラールを先頭に1位から3位を独占。パンクで遅れた岡をアウラールが逆転して総合首位に立った。
アウラールは翌週の第19戦「まえばしクリテリウム」でも優勝。しかし翌日の第20戦「赤城山ヒルクライム」では岡がアウラールに先着。アウラールは首位を守ったものの、逆転可能な118ポイント差で最終戦を迎えることとなった。
10月 個人・チーム共に総合優勝決定の場となった山口ラウンド
10月5日、初開催となる第21戦「維新やまぐちタイムトライアル」は、山口市の山口きらら博記念公園でのチームタイムトライアル。1周2.6kmという短周回コースでのタイムトライアルでも、ブリヂストンがチーム力を見せて他を圧倒して優勝。チーム総合優勝逆転に望みをつなげた。
最終戦となる第22戦は「秋吉台カルストロードレース」。Jプロツアー屈指の難コースが、チャンピオンシップ決定の場となった。2019年シーズンをリードしてきたマトリックスパワータグ、宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリングの3チームが三つ巴の争いを繰り広げ、最後は個人総合優勝を争うアウラールと岡の一騎打ちに。アウラールは岡を下して優勝し、個人総合優勝を自ら決めた。マトリックスはチーム総合優勝も決め、2年ぶりにJプロツアーダブルタイトルを獲得した。
◾️Jプロツアー2019チャンピオン オールイス・アルベルト・アウラール コメント
「日本でとてもすばらしい経験をしました。異文化を知るチャンスもあってとても良かったと思います。安原監督には感謝の気持ちでいっぱいです。監督のおかげで日本で活躍することが出来ました。ヨーロッパでは2017年と18年に走っていて、ヨーロッパでの経験も好きだが、アジアもレベルが高く、とても良い経験になりました。アジアで活躍したおかげで次に行くスペインのチームに関心を持ってもらえました。
日本に来る前は文化がかなり違うので、早く慣れることが出来るか不安でした。良いシーズンにしたいと思い日本に来たが、その目標も達成出来ました。たぶん、自分は異文化に早く慣れることができるのだと思いますが、それもチームのみなさんが親切にしてくれたおかげです。
来年は大きな変化になると思います。ヨーロッパではまた違う自転車のスタイルがあるし、アジアより強いところもあるので今から全力を尽くして準備しないといけないと思っています。
東京オリンピックでベネズエラを代表できる自転車選手は1人だけ。私の今までのUCIポイントを考えれば私が選ばれる可能性が高いと思います。東京オリンピックに向けてモチベーションが上がるし、オリンピックは自転車選手の夢でもあるので、それに向けて頑張ります。来年東京で会いましょう」
次回はツール・ド・とちぎからツール・ド・おきなわまで国内UCIレースを振り返ります。
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