2019/12/16(月) - 14:28
12月14・15日の2日間に渡って開催された宇都宮シクロクロス。2日目のエリート男子は前田公平と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)との3人のバトルを制したエミル・ヘケレ(チェコ、Zekof Team)が前日に続く勝利。女子エリートもスロバキアのジャンカ・ケセグステブコアが勝利、2人の招待選手が2日間連覇した。
土曜に続き12月と思えない暖かな日和となった日曜の宇都宮シクロクロス。2日目のプログラムも午後のUCIエリート男女でレースをメインに、午前からは各年齢&実力別カテゴリーレースが開催された。
男子エリートで前日のレースでリタイアした全日本CXチャンピオンの前田公平は階段セクションでスリップして足首を捻挫し、脚と足首にテーピングを施しての出走となる。歩行が困難な状態だが、コース試走を行い、レースギリギリまで出走すべきかどうか迷ったというが、今シーズン最後のビッグレースということで怪我をおしてスタートラインに並んだ。
前日のチャンピオンのヘケレを間に挟んだサンドイッチ状態でプッシュを続ける3人はそのまま順調にリードを開き出す。続いて小坂とウォーカーデンの2人。晴天でも緩んだ泥状態のキャンバーは乗車が難しく、上位陣さえも降車してのランでクリアする状況。つまり足首を痛めている前田にとっては周回を重ねるごとにダメージが積み重なるポイントとなる。
3人はそのままリードを続ける。テクニックに秀でた弱虫ペダルの2人はシケインもバニーホップでクリア。一方のヘケレはランでクリア。3段坂のTKC急登セクション、林間のバーム、キャンバーのドロップオフ&急勾配の登り返しなどマウンテンバイクのクロスカントリーコースに近いコースプロフィールではヘケレに対して弱虫ペダル2人のアドバンテージがある。
しかし強力なフィジカルで遅れないヘケレ。2人の執拗なアタックにすべて対処し、パワー区間では前に出て脚を見せつける。火花をちらし合うような3人の接戦が続く。ラスト2周、ヘケレが3段坂で一瞬遅れるシーンもあったが、結局は3人パックは崩れずに最終周回へ。勝負はゴールスプリントで決することが濃厚に。
泥キャンバーの上部でヘケレが先行。続く織田が後ろの前田にサインを送り、前に出す。織田よりもスプリント力のある前田で勝負をかける作戦だったという。
観客が固唾を飲んで待つホームグラウンドに入る手前、フライオーバーに差し掛かる時、手前の階段セクションでヘケレに並びかけようとした前田に対して、ヘケレは進路を譲らず、逆に前田にかぶせ返した。階段の脇には乗車したままクリアできるラインが1本だけあったが、前田は行き場を失って階段側に押しやられ、落車してしまう。
代わって織田で挑むことになった勝負。ヘケレが先行した状態で最終コーナーをクリアすると、ヘケレは渾身のスプリントで織田が並ぶことを許さず、2日間連続の勝利の雄叫びをあげた。
11月の関西クロス・マキノラウンド、ラファスーパークロス野辺山、そして宇都宮クロス初日に続き今シーズン日本で出場した4つのレースをすべて制したヘケレ。
「今日もまた勝ててハッピー!コウヘイとヒジリのふたりは本当にスーパーストロングだった。昨日は時差ボケもあって身体がうまく動かなかったけど今日はずいぶんマシになっていたのも良かった。宇都宮の素晴らしい大会に感謝している」と語り、拍手喝采を浴びた。表彰式ではファンクラブのTシャツを2枚、観客たちにプレゼント。
前田は「階段でエミルに被せられたときに避けることができずに転んでしまい、最後の展開に絡むことができなかった。彼にしてやられちゃった、というところですね。自分がかぶせ気味にいったのもあるんですが、巧くやられてしまった。それも含めてレースですから。最後に自分がスプリントでエミルに勝つ脚があったかどうかはわからないけれど、コーナーの立ち上がり加速には自信があるので、勝負したかったですね」と話す。
織田は「すごい悔しい。自分よりスプリントのある公平君に任せようと思っていた。公平君の今日の感じだとおそらく勝てたと思うので前に出したんですが、エミルがかぶせた時、『やってくれたなコイツ!』って思いました。負けはしたけど自分的にも出し切れたとは思うど、これが実力なので今後もレベルアップしてリベンジしたい」。
一触即発のインシデントだったようだが、3者は握手を交わし、非難しあうことはなかった。抜こうとする選手を巧みにブロックすることはシクロクロスでは高度なテクニックのひとつでもある。
世界選手権の日本代表メンバーに選ばれることが確実視されている織田は来週早々にヨーロッパに飛び、年始までワールドカップをはじめとした欧州シクロクロスの連戦に入る。「海外CXレースでしっかり走れるようになりたいです」と織田。
女子エリート 前日覇者ケセグステブコアに16歳の渡部春雅が対抗
女子エリートは前日に韓国から帰国したばかりのジュニアのCXナショナルチャンピオン、渡部春雅(駒澤大学高等学校)が出場、メンバーを少し変えてのレースとなった。
ホールショットを奪ったのは初日の覇者ジャンカ・ケセグステブコア(スロバキア、OUTSITERZ cycling) 。16歳の高校生ライダーの渡部がそれに続き、泥キャンバーセクションへは後続を大きく引き離して現れた。続くのは西山みゆき(Toyo Frame Field Model)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)。
ケセグステブコアに対してひるむことなくアタックする渡部。その走りに会場も沸く。ケセグステブコア同様に渡部もMTBクロスカントリーをメインに活動する選手で、テクニックに劣るところはない。しかし3周目以降、スロバキアチャンピオンジャージのパワーは追従を許さなかった。渡部が登れない3段坂も全乗車でクリア。パワーの差を見せつけた。
渡部を突き放すと、淡々と差を広げて約1分のタイム差を持って独走するケセグステブコア。昨日のようなリアメカのトラブルも今日は無し。25年のクロスカントリーレースキャリアを持つベテランは余裕の走りで観客たちのハイタッチに応えながらフィニッシュ。連覇を決めた。
渡部がフィニッシュすると「あなた一体いくつなの?」と質問するケセグステブコア。16歳、自身とは28歳差の母と娘のような年齢の違いの渡部の果敢な走りを称賛した。3位には西山を交わした唐見が入った。
渡部は韓国での日韓親善ロードレースに出場して昨日帰国、空港から宇都宮に直行し、昨日のレースは観戦した。「シクロクロスはまだ経験がほとんど無いので学ぶことばかりです。海外の選手と一緒に走ることがほとんどないので、本当に勉強になりました。今回の大会では多くの人に助けてもらったので、また今後のレースでいい走りをして恩返しがしたい」と話す。
エミル・ヘケレとジャンカ・ケセグステブコアの二人には表彰式の締めに2日間総合のチャンピオンジャージが贈られた。2日間で2レースの優勝、その賞金10万円かける2と、総合優勝のボーナス10万円を加えてそれぞれ賞金30万円を獲得した。
マスターズ
ジュニア
土曜に続き12月と思えない暖かな日和となった日曜の宇都宮シクロクロス。2日目のプログラムも午後のUCIエリート男女でレースをメインに、午前からは各年齢&実力別カテゴリーレースが開催された。
男子エリートで前日のレースでリタイアした全日本CXチャンピオンの前田公平は階段セクションでスリップして足首を捻挫し、脚と足首にテーピングを施しての出走となる。歩行が困難な状態だが、コース試走を行い、レースギリギリまで出走すべきかどうか迷ったというが、今シーズン最後のビッグレースということで怪我をおしてスタートラインに並んだ。
前日のチャンピオンのヘケレを間に挟んだサンドイッチ状態でプッシュを続ける3人はそのまま順調にリードを開き出す。続いて小坂とウォーカーデンの2人。晴天でも緩んだ泥状態のキャンバーは乗車が難しく、上位陣さえも降車してのランでクリアする状況。つまり足首を痛めている前田にとっては周回を重ねるごとにダメージが積み重なるポイントとなる。
3人はそのままリードを続ける。テクニックに秀でた弱虫ペダルの2人はシケインもバニーホップでクリア。一方のヘケレはランでクリア。3段坂のTKC急登セクション、林間のバーム、キャンバーのドロップオフ&急勾配の登り返しなどマウンテンバイクのクロスカントリーコースに近いコースプロフィールではヘケレに対して弱虫ペダル2人のアドバンテージがある。
しかし強力なフィジカルで遅れないヘケレ。2人の執拗なアタックにすべて対処し、パワー区間では前に出て脚を見せつける。火花をちらし合うような3人の接戦が続く。ラスト2周、ヘケレが3段坂で一瞬遅れるシーンもあったが、結局は3人パックは崩れずに最終周回へ。勝負はゴールスプリントで決することが濃厚に。
泥キャンバーの上部でヘケレが先行。続く織田が後ろの前田にサインを送り、前に出す。織田よりもスプリント力のある前田で勝負をかける作戦だったという。
観客が固唾を飲んで待つホームグラウンドに入る手前、フライオーバーに差し掛かる時、手前の階段セクションでヘケレに並びかけようとした前田に対して、ヘケレは進路を譲らず、逆に前田にかぶせ返した。階段の脇には乗車したままクリアできるラインが1本だけあったが、前田は行き場を失って階段側に押しやられ、落車してしまう。
代わって織田で挑むことになった勝負。ヘケレが先行した状態で最終コーナーをクリアすると、ヘケレは渾身のスプリントで織田が並ぶことを許さず、2日間連続の勝利の雄叫びをあげた。
11月の関西クロス・マキノラウンド、ラファスーパークロス野辺山、そして宇都宮クロス初日に続き今シーズン日本で出場した4つのレースをすべて制したヘケレ。
「今日もまた勝ててハッピー!コウヘイとヒジリのふたりは本当にスーパーストロングだった。昨日は時差ボケもあって身体がうまく動かなかったけど今日はずいぶんマシになっていたのも良かった。宇都宮の素晴らしい大会に感謝している」と語り、拍手喝采を浴びた。表彰式ではファンクラブのTシャツを2枚、観客たちにプレゼント。
前田は「階段でエミルに被せられたときに避けることができずに転んでしまい、最後の展開に絡むことができなかった。彼にしてやられちゃった、というところですね。自分がかぶせ気味にいったのもあるんですが、巧くやられてしまった。それも含めてレースですから。最後に自分がスプリントでエミルに勝つ脚があったかどうかはわからないけれど、コーナーの立ち上がり加速には自信があるので、勝負したかったですね」と話す。
織田は「すごい悔しい。自分よりスプリントのある公平君に任せようと思っていた。公平君の今日の感じだとおそらく勝てたと思うので前に出したんですが、エミルがかぶせた時、『やってくれたなコイツ!』って思いました。負けはしたけど自分的にも出し切れたとは思うど、これが実力なので今後もレベルアップしてリベンジしたい」。
一触即発のインシデントだったようだが、3者は握手を交わし、非難しあうことはなかった。抜こうとする選手を巧みにブロックすることはシクロクロスでは高度なテクニックのひとつでもある。
世界選手権の日本代表メンバーに選ばれることが確実視されている織田は来週早々にヨーロッパに飛び、年始までワールドカップをはじめとした欧州シクロクロスの連戦に入る。「海外CXレースでしっかり走れるようになりたいです」と織田。
女子エリート 前日覇者ケセグステブコアに16歳の渡部春雅が対抗
女子エリートは前日に韓国から帰国したばかりのジュニアのCXナショナルチャンピオン、渡部春雅(駒澤大学高等学校)が出場、メンバーを少し変えてのレースとなった。
ホールショットを奪ったのは初日の覇者ジャンカ・ケセグステブコア(スロバキア、OUTSITERZ cycling) 。16歳の高校生ライダーの渡部がそれに続き、泥キャンバーセクションへは後続を大きく引き離して現れた。続くのは西山みゆき(Toyo Frame Field Model)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)。
ケセグステブコアに対してひるむことなくアタックする渡部。その走りに会場も沸く。ケセグステブコア同様に渡部もMTBクロスカントリーをメインに活動する選手で、テクニックに劣るところはない。しかし3周目以降、スロバキアチャンピオンジャージのパワーは追従を許さなかった。渡部が登れない3段坂も全乗車でクリア。パワーの差を見せつけた。
渡部を突き放すと、淡々と差を広げて約1分のタイム差を持って独走するケセグステブコア。昨日のようなリアメカのトラブルも今日は無し。25年のクロスカントリーレースキャリアを持つベテランは余裕の走りで観客たちのハイタッチに応えながらフィニッシュ。連覇を決めた。
渡部がフィニッシュすると「あなた一体いくつなの?」と質問するケセグステブコア。16歳、自身とは28歳差の母と娘のような年齢の違いの渡部の果敢な走りを称賛した。3位には西山を交わした唐見が入った。
渡部は韓国での日韓親善ロードレースに出場して昨日帰国、空港から宇都宮に直行し、昨日のレースは観戦した。「シクロクロスはまだ経験がほとんど無いので学ぶことばかりです。海外の選手と一緒に走ることがほとんどないので、本当に勉強になりました。今回の大会では多くの人に助けてもらったので、また今後のレースでいい走りをして恩返しがしたい」と話す。
エミル・ヘケレとジャンカ・ケセグステブコアの二人には表彰式の締めに2日間総合のチャンピオンジャージが贈られた。2日間で2レースの優勝、その賞金10万円かける2と、総合優勝のボーナス10万円を加えてそれぞれ賞金30万円を獲得した。
マスターズ
ジュニア
男子エリート結果
1位 | エミル・ヘケレ(チェコ、Zekof Team) | 0:58:41 |
2位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 0:58:42 |
3位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 0:59:26 |
4位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェン) | 1:00:55 |
5位 | ベン・ウォーカーデン (フランダース・ヘルス.com) | 1:01:26 |
女子エリート
1位 | ジャンカ・ケセグステブコア(スロバキア、OUTSITERZ cycling) | 0:47:09 |
2位 | 渡部春雅(駒澤大学高等学校) | 0:48:02 |
3位 | 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 0:49:26 |
4位 | 西山みゆき(Toyo Frame Field Model) | 0:51:00 |
5位 | 川崎路子(PAXProject) | 0:51:49 |
男子ジュニア
1位 | 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN ) | 0:43:11 |
2位 | 鈴木来人(BonneChance) | 0:43:15 |
3位 | 中島 渉(TRIGON with KURE/BOUNCE) | 0:43:37 |
photo&text:Makoto.AYANO
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