2019/12/01(日) - 16:51
ビアンキのカーボンロードバイクに戦略的なミドルグレードレーサーが登場。往年の名車「SPRINT」の名を受け継ぎつつ、現代のトレンドを取り込んだレーシングテイストな1台をインプレッション。
ビアンキ SPRINT (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
130年以上の歴史を誇り、現存する世界最古の自転車ブランド、ビアンキ。コーポレートカラーのチェレステブルーをアイコンに、レーシングバイクからシティコミュ―ターに至るまで幅広い分野の自転車をラインアップする総合ブランドとして、多くの人々に親しまれてきた。
今シーズンも、ステファン・クライスヴァイクやプリモシュ・ログリッチェ、ロバート・ヘーシンクらユンボ・ヴィズマの選手らの走りを支え、ビッグレースで数多くの成績を収めてきた。彼らの勝利を支えてきたのは、トップモデルであるOltre XR4だが、そのフラッグシップモデルのフィロソフィーはビアンキのバイクラインアップに受け継がれている。
内蔵シートクランプやドロップドシートステーなどを採用
直線的なデザインのトップチューブ
エアロ形状のストレートフォーク、コラムまでフルカーボン仕様だ
大きく分けて、エアロロード、オールラウンダー、エンデュランスの3カテゴリーに分けられているビアンキのカーボンロードバイク。その中で、今回加わったSPRINTは、ミドルグレードのオールラウンドモデルに位置づけられる。
最先端の振動除去素材「カウンターヴェイル」をオミットすることで、コストパフォーマンスを向上させつつ、ビアンキフィーリングを維持しているのが、SPRINTの大きな特徴だ。1970年代にスチールフレームのベンチマークとして活躍した名車を現代のテクノロジーによって復活させた1台である。
チェレステカラーのサドルを採用する
ハンドル周りはオーソドックスな仕様
ビアンキロゴが透かしで入れられている
ケーブル類は内装式となる
シンプルでエッジが立った直線基調のフレームワークと、大出力を受け止めるにふさわしいボリュームのあるチュービングがSPRINTのルックス面での大きな特徴と言えるだろう。その中でも、現代のトレンドに即し、オールラウンドモデルながらエアロダイナミクスに配慮したディテールを採用している。
ドロップドシートステーを採用することで、コンパクトにまとまったリアトライアングルは、優れたパワー伝達性と快適性、さらにはエアロダイナミクスを向上させる最先端のデザイントレンド。前方投影面積を減らしたヘッドチューブや、フレームに内蔵されたシートクランプ、フォーククラウンのインテグレーテッドデザインといった要素が加わり、ミドルグレードの枠を超えた先進的なデザインを獲得している。
ストレートなチェーンステー
ヴィットリアのZaffiroを標準装備
ハイエンドモデルのDNAを受け継ぐレーシングジオメトリーを採用するが、ターゲットユーザーに合わせ、扱いやすさをプラスした調整が施されている。フォークは軽量なフルカーボン製となり、フォークブレードもエアロダイナミクスに優れたデザインを施しつつ、直進安定性に優れた設計となっている。
扱いやすさという意味では、ハンドルやステム、シートポストに関しては汎用的な規格を採用することで、乗り込んでいく中でのポジションの調整やそれに伴うパーツの変更も行いやすい。乗り方が定まらない、初中級者にとっては魅力的な仕様だろう。
コンパクトなリアトライアングル
ボリューミーなダウンチューブ
ヘッドチューブにはビアンキのアイコンである鷲のマークが
トラディショナルなリムブレーキモデルと、主流となりつつあるディスクブレーキモデルの2車種が用意されるSPRINT。基本的なスペックは同一ながら、タイヤクリアランスが異なっており、リムブレーキモデルでは28mm、ディスクブレーキモデルでは32mm幅まで対応する。
今回インプレッションするのはシマノ105仕様のリムブレーキモデルとなる。再びレースシーンで躍進を遂げる、老舗イタリアンブランドの中核を担う戦略モデルを2人のライダーはどう評価するのか。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「しなやかでロングライドに向いた一台」藤野智一(なるしまフレンド)
「しなやかでロングライドに向いた一台」藤野智一(なるしまフレンド)
エアロなイメージを取り込みつつも、実際のフィーリングとしては穏やかでロングライド向きのバイクですね。見た目やモデル名からはレーシーな印象を受けますが、加減速よりも巡航が得意な性格のロードバイクです。
登りでは軽いギアで回していっても、重めのギアを掛けていってもしっかり進んでくれるので、気持ちよく走ることが出来ます。ダンシングの振りも軽く、「シャッシャッ」と小気味よく前へ車体が進んでいくので、ヒルクライムは得意分野ですね。
平坦ではスピードに乗せるまでの加速が非常に滑らかです。直進安定性の高さもあり、初心者でも巡航しやすいバイクです。ただ、中速域からさらに踏み込んでいくと、少しタメるような。モデル名のスプリントに関しては、反応が一歩遅れる印象です。一旦速度に乗せてしまえばキープしやすいですね。ボリューミーなダウンチューブの生み出す伝達効率の良さを感じました。
少し気になるのは、フロントフォークでしょうか。ダウンチューブをはじめ、フレームのチュービングはしっかりとしたボリュームがあるのですが、フォークブレードはかなり細身で、もう少し剛性感が欲しいですね。ハンドリングはアンダー気味で、バイクを倒し込んでいった時の挙動も少し癖があるので、慣れが必要だと感じます。
BB周辺の剛性はしっかりと確保されていますが、全体的にはしなりを感じるので、脚にダメージを与えづらいバイクだと感じました。フォークやチェーンステーの剛性が控えめですので、車体全体をたわませるような大出力は苦手な分野ですね。なので、急な加減速のあるレースよりも、ペースで走ることのできるロングライドが得意なバイクです。
「スムーズなフィーリングが魅力的なオールラウンドモデル」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
「スムーズなフィーリングが魅力的なオールラウンドモデル」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店) 全てにおいて非常にスムーズなフィーリングのバイクですね。平坦での直進性も抜群だし、登りも軽やかに進んでいく。振った時にスーッと進むんですが、ホイールが足を引っ張っている印象です。もっと軽いものに変えてあげればよりキレを増すでしょう。
下りはアンダーステア気味ですが、慣れの範疇ですし、振動吸収性もしっかりと確保されている。全体的にみて非常にバランスの取れたオールラウンドモデルで、レースにも十分対応するポテンシャルを持った一台です。
剛性感は十分で、かといって硬すぎない。程よくしなる部分がありつつも、力が逃げるような感覚ではない。長距離で乗っても脚の疲れはかなり抑えられると思います。長いレースであればあるほど、最終局面で力を発揮することができるはずです。
そこまでエアロダイナミクスを前面に出したデザインではないですが、実際に走ってみると意外に効いているようで、平坦でも巡航速度を維持しやすいですね。モデル名がスプリントですが、40km/hからさらに加速、というシチュエーションでもしっかりと応えてくれます。もちろん、ハイエンドモデルに比べると一歩劣る部分もありますが、同価格帯のライバルに対してはアドバンテージとなるでしょう。
ハンドリング自体は安定志向なので、もがいている時でも安心感がありますね。コーナーリングに関して言えば、ヘアピンの九十九折れが続くようなダウンヒルより、高速で周っていくようなシーンが得意ですね。
ホイールをグレードアップするのであれば、扱いやすさをそのままに全体的に性能を底上げできるアルミのハイエンドホイールがベストではないでしょうか。マヴィックのKSYRIUM PROやカンパニョーロのEURUSやSHAMALなどを履かせれば、ワンランク上の走りが味わえると思います。
ビアンキの透かしロゴが全面に入るなど、グラフィックもこだわっているのも好印象。ビアンキらしいチェレステカラーのバイクが欲しい人で、いくいくはレースイベントにも出てみたいという方にとっては、非常に魅力的な選択となるのではないでしょうか。
ビアンキ SPRINT (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ビアンキ SPRINT
フレーム&フォーク:カーボン
BB:PF86
コンポーネント:シマノ105
カラー:1D - CK16/Black Full Glossy、5F - Black/CK16 Full Glossy
サイズ:44, 47, 50, 53, 55, 57 cm(リム)
47, 50, 53, 55, 57 cm(ディスク)
価格:228,000円(税抜、リム)
278,000円(税抜、ディスク)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド) 藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店) 藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
大学時代に浅田顕監督の元で経験を積んだ後、スペインへ遠征し2年半ほど本場ヨーロッパのロードレースに挑戦。トップ選手らとしのぎを削った経験を活かし、トレーニングやレース機材のアドバイスを得意とする。現在はワイズロードの中でも最もロードに特化した「上野アサゾー店」の店長を務める。店内に所狭しと並んだ3万~4万点ものパーツを管理し、スモールパーツからマニアックな製品まであらゆるロードレーサーのニーズを満たすラインアップを揃える。
ワイズロード上野アサゾー店
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:イザドア
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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130年以上の歴史を誇り、現存する世界最古の自転車ブランド、ビアンキ。コーポレートカラーのチェレステブルーをアイコンに、レーシングバイクからシティコミュ―ターに至るまで幅広い分野の自転車をラインアップする総合ブランドとして、多くの人々に親しまれてきた。
今シーズンも、ステファン・クライスヴァイクやプリモシュ・ログリッチェ、ロバート・ヘーシンクらユンボ・ヴィズマの選手らの走りを支え、ビッグレースで数多くの成績を収めてきた。彼らの勝利を支えてきたのは、トップモデルであるOltre XR4だが、そのフラッグシップモデルのフィロソフィーはビアンキのバイクラインアップに受け継がれている。
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大きく分けて、エアロロード、オールラウンダー、エンデュランスの3カテゴリーに分けられているビアンキのカーボンロードバイク。その中で、今回加わったSPRINTは、ミドルグレードのオールラウンドモデルに位置づけられる。
最先端の振動除去素材「カウンターヴェイル」をオミットすることで、コストパフォーマンスを向上させつつ、ビアンキフィーリングを維持しているのが、SPRINTの大きな特徴だ。1970年代にスチールフレームのベンチマークとして活躍した名車を現代のテクノロジーによって復活させた1台である。
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シンプルでエッジが立った直線基調のフレームワークと、大出力を受け止めるにふさわしいボリュームのあるチュービングがSPRINTのルックス面での大きな特徴と言えるだろう。その中でも、現代のトレンドに即し、オールラウンドモデルながらエアロダイナミクスに配慮したディテールを採用している。
ドロップドシートステーを採用することで、コンパクトにまとまったリアトライアングルは、優れたパワー伝達性と快適性、さらにはエアロダイナミクスを向上させる最先端のデザイントレンド。前方投影面積を減らしたヘッドチューブや、フレームに内蔵されたシートクランプ、フォーククラウンのインテグレーテッドデザインといった要素が加わり、ミドルグレードの枠を超えた先進的なデザインを獲得している。
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ハイエンドモデルのDNAを受け継ぐレーシングジオメトリーを採用するが、ターゲットユーザーに合わせ、扱いやすさをプラスした調整が施されている。フォークは軽量なフルカーボン製となり、フォークブレードもエアロダイナミクスに優れたデザインを施しつつ、直進安定性に優れた設計となっている。
扱いやすさという意味では、ハンドルやステム、シートポストに関しては汎用的な規格を採用することで、乗り込んでいく中でのポジションの調整やそれに伴うパーツの変更も行いやすい。乗り方が定まらない、初中級者にとっては魅力的な仕様だろう。
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トラディショナルなリムブレーキモデルと、主流となりつつあるディスクブレーキモデルの2車種が用意されるSPRINT。基本的なスペックは同一ながら、タイヤクリアランスが異なっており、リムブレーキモデルでは28mm、ディスクブレーキモデルでは32mm幅まで対応する。
今回インプレッションするのはシマノ105仕様のリムブレーキモデルとなる。再びレースシーンで躍進を遂げる、老舗イタリアンブランドの中核を担う戦略モデルを2人のライダーはどう評価するのか。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「しなやかでロングライドに向いた一台」藤野智一(なるしまフレンド)
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エアロなイメージを取り込みつつも、実際のフィーリングとしては穏やかでロングライド向きのバイクですね。見た目やモデル名からはレーシーな印象を受けますが、加減速よりも巡航が得意な性格のロードバイクです。
登りでは軽いギアで回していっても、重めのギアを掛けていってもしっかり進んでくれるので、気持ちよく走ることが出来ます。ダンシングの振りも軽く、「シャッシャッ」と小気味よく前へ車体が進んでいくので、ヒルクライムは得意分野ですね。
平坦ではスピードに乗せるまでの加速が非常に滑らかです。直進安定性の高さもあり、初心者でも巡航しやすいバイクです。ただ、中速域からさらに踏み込んでいくと、少しタメるような。モデル名のスプリントに関しては、反応が一歩遅れる印象です。一旦速度に乗せてしまえばキープしやすいですね。ボリューミーなダウンチューブの生み出す伝達効率の良さを感じました。
少し気になるのは、フロントフォークでしょうか。ダウンチューブをはじめ、フレームのチュービングはしっかりとしたボリュームがあるのですが、フォークブレードはかなり細身で、もう少し剛性感が欲しいですね。ハンドリングはアンダー気味で、バイクを倒し込んでいった時の挙動も少し癖があるので、慣れが必要だと感じます。
BB周辺の剛性はしっかりと確保されていますが、全体的にはしなりを感じるので、脚にダメージを与えづらいバイクだと感じました。フォークやチェーンステーの剛性が控えめですので、車体全体をたわませるような大出力は苦手な分野ですね。なので、急な加減速のあるレースよりも、ペースで走ることのできるロングライドが得意なバイクです。
「スムーズなフィーリングが魅力的なオールラウンドモデル」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
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下りはアンダーステア気味ですが、慣れの範疇ですし、振動吸収性もしっかりと確保されている。全体的にみて非常にバランスの取れたオールラウンドモデルで、レースにも十分対応するポテンシャルを持った一台です。
剛性感は十分で、かといって硬すぎない。程よくしなる部分がありつつも、力が逃げるような感覚ではない。長距離で乗っても脚の疲れはかなり抑えられると思います。長いレースであればあるほど、最終局面で力を発揮することができるはずです。
そこまでエアロダイナミクスを前面に出したデザインではないですが、実際に走ってみると意外に効いているようで、平坦でも巡航速度を維持しやすいですね。モデル名がスプリントですが、40km/hからさらに加速、というシチュエーションでもしっかりと応えてくれます。もちろん、ハイエンドモデルに比べると一歩劣る部分もありますが、同価格帯のライバルに対してはアドバンテージとなるでしょう。
ハンドリング自体は安定志向なので、もがいている時でも安心感がありますね。コーナーリングに関して言えば、ヘアピンの九十九折れが続くようなダウンヒルより、高速で周っていくようなシーンが得意ですね。
ホイールをグレードアップするのであれば、扱いやすさをそのままに全体的に性能を底上げできるアルミのハイエンドホイールがベストではないでしょうか。マヴィックのKSYRIUM PROやカンパニョーロのEURUSやSHAMALなどを履かせれば、ワンランク上の走りが味わえると思います。
ビアンキの透かしロゴが全面に入るなど、グラフィックもこだわっているのも好印象。ビアンキらしいチェレステカラーのバイクが欲しい人で、いくいくはレースイベントにも出てみたいという方にとっては、非常に魅力的な選択となるのではないでしょうか。
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ビアンキ SPRINT
フレーム&フォーク:カーボン
BB:PF86
コンポーネント:シマノ105
カラー:1D - CK16/Black Full Glossy、5F - Black/CK16 Full Glossy
サイズ:44, 47, 50, 53, 55, 57 cm(リム)
47, 50, 53, 55, 57 cm(ディスク)
価格:228,000円(税抜、リム)
278,000円(税抜、ディスク)
インプレッションライダーのプロフィール
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92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
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大学時代に浅田顕監督の元で経験を積んだ後、スペインへ遠征し2年半ほど本場ヨーロッパのロードレースに挑戦。トップ選手らとしのぎを削った経験を活かし、トレーニングやレース機材のアドバイスを得意とする。現在はワイズロードの中でも最もロードに特化した「上野アサゾー店」の店長を務める。店内に所狭しと並んだ3万~4万点ものパーツを管理し、スモールパーツからマニアックな製品まであらゆるロードレーサーのニーズを満たすラインアップを揃える。
ワイズロード上野アサゾー店
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:イザドア
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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