2019/10/25(金) - 13:45
10月19日に栃木県宇都宮市で開催されたジャパンカップクリテリウム。シクロワイアード編集部員/東京ヴェントス所属の高木三千成がクリテリウム・スペシャル・ライダーズのメンバーとして出場、バイクに車載カメラを取り付けてレースの様子を記録した。その車載動画によるムービーと共にレースを振り返ってレポートする。
こんにちは! シクロワイアード編集部員/東京ヴェントス所属の高木三千成です。と言いましても、「高木三千成って誰?」と思われている方がいると思うので自己紹介をします。名前はたかぎみちなり、友人やファンの方からはみっちーと呼ばれています。26歳、自転車競技歴は高校生ではじめ今年で10年目で、ロードレースやトラックレース、シクロクロスの3つの自転車競技に取り組んでいます。チーム歴は浦和北高等学校、立教大学、那須ブラーゼン、東京ヴェントスに所属して走ってきました。
今年の7月からシクロワイアード編集部で社員として働いています。サラリーマンライダーとなりフルタイムで仕事をしながら、早朝や夜の時間帯にトレーニングをしてコンディションを高めながら選手活動も継続しています。そしてこの度、ジャパンカップに「クリテリウム・スペシャルライダーズチーム」のメンバーに選ばれ、参戦しました。
「クリテリウムスペシャルライダーズ」はジャパンカップクリテリウムのためだけに集められた選手によるスペシャルチームで、チームメイトには2011年と2014年にジャパンカップで優勝しているネイサン・ハース選手(オーストラリア)と、2011年と2013年にクリテリウムで優勝しているスティール・ヴォン・ホフ選手(オーストラリア)。日本選手権優勝4回、グランプリ優勝2回を誇る競輪のレジェンド 村上義弘選手。競輪S級選手の渡辺正光選手。そこに東日本トラックポイントレースで優勝した私・高木三千成(東京ヴェントス)の5名によるチーム編成です。
スティール・ヴォン・ホフ選手との初対面は夕食の時でした。スティールはガールフレンドのエマさんと一緒に来日し、お互い挨拶をし、日本やオーストラリアのことについて話しました。夕食はビュッフェスタイルで、うどんや野菜のてんぷら、ミニケーキを気に入って食べていましたね。ジャパンカップが終わった後、東京観光をしたあと帰国するらしく、東京の観光名所やお食事処などを紹介しました。
ネイサン・ハース選手は急に決まった来日で、チームプレゼンの3時間前に到着。合流してすぐ、オリオンスクウェアのチームプレゼンへ。
2010年に初開催されたジャパンカップクリテリウムが今年は記念すべき10年目を迎えた記念大会となり、宇都宮市が街をあげて力を入れているのが感じ取れる雰囲気でした。自分の過去のジャパンカップ出場は2016年大会で那須ブラーゼンに所属していた時で、その時はロードレースのみの出場だったので、クリテリウムは今回が初出場となりました。
ジャパンカップクリテリウムは宇都宮大通り西側のUターンを本町交差点から池上町交差点の手前までの1周2.25kmの周回コースが舞台。周回数は15周でレース距離は33.75km。4周、8周、12周目のフィニッシュ地点で周回賞が設定され、常にアタックのかかる動きのあるレース展開になるだろうという予想でした。
ジャパンカップクリテリウムに使用したバイクはカレラ ERAKLE AIR。前後に車載カメラを搭載し、パレードからレースまで録画したので、動画を元にレース展開を序盤(1~5周回)、中盤(6~10周回)、終盤(11~15周回)とレースを振り返っていきます。またパイオニアのペダリングモニターを搭載しているので、記事の後半でログデータも公開します。ぜひテキストレポートとあわせて迫力のムービーとデータをご覧ください。
レーススタート前は宇都宮市役所からパレード走行を開始し、走りながらのグッズ配りや観客たちとのハイタッチ、ファンとの写真撮影を楽しみながら周回コースを2周しました。
【序盤】”ジャパンカップクリテリウムスタート”
パレードには一番最後の登場だったということもあって、スタートは最後尾になってしまった。クリテリウムで後ろにいると、集団前方にいる選手はコーナーの立ち上がりで加速する時に短い時間で済むが、集団後方になるほど加速時間が長くなり、体力の消耗が激しくなる。周回賞や最後のゴール勝負を考えると、体力を必要な時まで残しておきたいので、集団先頭へとポジションを上げていく。
バックストレートでは前方にマイケル・ウッズ選手(カナダ、EFエデュケーションファースト)、別府史之選手(日本、トレック・セガフレード)、後方にはバウケ・モレマ選手(オランダ、トレック・セガフレード)がいる位置で走った。それでも集団真ん中なので更にポジションアップを試みる。後ろにいたセップ・クス選手(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)もポジションを上げたいようで、右側から加速していくも集団がコースいっぱいに広がり、上がれずにいた。
2周目の第一コーナーではウッズ選手がブレーキングを遅らせて、スピードを乗せたままアウトから自分を追い抜いていく様子が録画されています。さすがワールドツアー選手のテクニック。コーナーを立ち上がるとロベルト・ヘーシンク選手(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が左から加速していくが、自分も負けじと加速してロバート・スタナード選手(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)パス。
3周目のバックストレートではチームメイトのネイサン・ハース選手と合流できたので、脚の調子などお互いにコンディションを確かめ合った。最終コーナーでは別府選手の後ろでコーナーに進入して立ち上がっていき、後ろのテイラー・フィニー選手(アメリカ、EFエデュケーションファースト)が後方で加速していく。
4周目のスタート/フィニッシュ地点では周回賞のラップを知らせるブザーがなり、集団の雰囲気が一気に戦闘モードに変わっていく。集団の密度が高まっていき、前方では接触するような混沌とした状態になっていった。第一コーナーを立ちあがっていくと、後方には初山翔選手(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)がぴったりと付いていた。4周目の周回賞はニールソン・ポーレス選手(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)が獲得。
周回賞の周回が終わり、集団は少し落ち着く。裏を返せばこれがアタックポイントだが、集団に埋もれてしまっているためアタックは出来なかった。
【中盤】”集団落車発生”
7周目の第一コーナーでスティ―ル選手と合流できたので、脚の調子などお互いにコンディションを確かめ合った。バックストレートにあるチームカ―ピットのエリアはコース幅が狭まるが、そのタイミングを狙って外から加速していく選手を多く見かけるが、車と接触したくないのでリスク回避のため集団左側にいたが、周りを見ながら集団中ほどへ移動した。
8周目に差し掛かるとスタート/フィニッシュ地点では周回賞のラップを知らせるブザーがなり、集団の雰囲気がまた一気に戦闘モードに変わる。前方ではまたもや接触が発生する状態に。最終コーナーではテールライトを点灯した「インザスカイSANO」こと佐野淳哉選手(マトリックスパワータグ)の後ろでコーナーを立ちあがっていく。8周目の周回賞はフランシスコ・マンセボ選手(スペイン、マトリックスパワータグ)が獲得したことをアナウンスで知った。
落車発生! コース上はカオスに
9周目に入り、周回賞が終わったタイミングで集団が少し落ち着くなか、ポジションアップしたくて右側から上がっていく。最終コーナーを立ち上がり、加速していくなかで次の12周回目の周回賞を狙っていたので、ホームストレートで更に右側から上がっていくと、左前方で落車が発生!。そのため前方の選手たちが突然右側に寄ってきて、チームメイトのスティ―ル選手の前輪にヒット。その前の選手のバイクが真横を向いてしまい、ふさがれるような形で集団大落車が発生してしまう。ハイスピードで回避することもできず、そのまま自分もクラッシュし、バイクから投げ出されてしまう。この瞬間、スーパースローモーションになりました。後ろを振り返ると後続の選手も次々と転び、選手やバイクが飛んで来ていたので、いったん落ち着いてから立ちあがり、吹っ飛んだボトルを拾ってコースサイドへ安全回避した。
ジャパンカップクリテリウム2019ダイジェストムービー(フル版は記事の下部にあります)
自分のバイクを確認してみるとリアエンドが曲がり、リアディレーラーが動かず、後ろから突っ込まれたことで後輪が振れてしまい、タイヤもパンクして走行不能に。怪我もあったが、シマノカーから受け取ったニュートラルバイクに乗り換えてスタート/フィニッシュ地点へ向かった。
レースは一時中断になり、しばらく時間があったので、シマノの青いバイクのサドル高を合わせたりしていたが、いつもよりハンドル位置が高く近く、ポジションが合わなかった。そしてブレーキがリムではなくディスクブレーキで、オンロードでは初めて使用するのでどれくらい効くのか、タイヤはどれくらいグリップするのか分からない不安要素が残る状態。
右腕の打ちつけた部位が腫れ上がり、膝も打ち擦過傷もある状態。なんとか走れそうだったので痛みを堪えて再スタートに備えた。するとアナウンスがあり、「残り5周からリスタート、周回賞3回目は無し」と。周回賞を狙っていたのに残念でした。ちなみにマイバイクはシマノカーの上に搭載されてしまったので、ムービーの最後はシマノカーの上にあるマイバイクからの車載動画になっています。
【終盤】”渾身のアタック”
11周目にリスタートを切り、初めて乗るディスクロードなのでブレーキのフィーリングを確かめながら第一コーナーへ進入していく。ブレーキレバーの位置がいつもと違うのと、ディスクブレーキにすぐには慣れない。そしてタイヤの空気圧が高く、ほぼ新品タイヤのようで、あまりバイクを倒してコーナーを曲がることができない状態だった。
「初めて乗るバイクでレースするのは厳しいな」と思いながらも、集団前方を位置取ることができ、最終コーナー手前で右側がガラ空きになるラインが見えて、一気に加速して単独の渾身のアタックをかけた。「アタックついでに前方を位置取ることが出来ればラッキー」と思いながら、最終コーナーのブレーキングポイント手前で先頭に立ち、最終コーナーに進入していく。
安全なラインを攻めながら、コーナー立ちあがりでも一気に加速。振り返ると後ろは少し離れているが、後ろに迫ってくるのはトレック・セガフレードの列車。しばらくして捕らえられてしまい、スタートゴール地点まで先頭で駆け抜けたが、ポジションの出ていないニュートラルバイクではハイペースをキープするのに精一杯。フィニッシュライン手前でトレックの選手が加速し、集団は活性化していった。
12周回目に入り集団に吸収されながら第一コーナーをクリアし、コーナーを立ちあがっていくと集団が縦に伸びている。ペースが更に上がり、13周目には一列棒状でところどころで中切れている様子。しかしなんとか食らいついていくが、落車のダメージで上手く力が入らなくなってしまい、14周目のバックストレートで発生した中切れの差を埋めることができず遅れてしまった。
ラスト1周の15周目のラインをグルペットで通過し、ゴールを目指す。シマノカーの屋根からの車載動画には、EFエデュケーション・ファースト、トレック・セガフレード、バーレーン・メリダのアシストの選手たちが最終コーナーに設置してある大型ビジョンの前で停まってフィニッシュ映像を見守る様子が映っている。その後、反対車線で展開するゴールスプリントの様子を見ながら、最終コーナーをクリアしてフィニッシュラインへと向かった。
ゴール後は沿道の観客の皆さんとハイタッチ。応援してくれたことに感謝しながらチームカーまで戻りました。最後にクリテリウムスペシャルライダーズの選手とスタッフ全員で健闘を讃え、集合写真を撮り、ジャパンカップクリテリウムを終えた。
パイオニアのペダリングモニターの解析ソフト、シクロスフィアで走行ログデータを確認すると、集団落車が発生するまでのログはしっかり取れていた。平均スピードは45.1km/h、最大スピードは62.2km/hで、全開でのスプリントはしていなかったが、時系列グラフを見る限りはコーナーの立ち上がりで毎回800~956.7Wを出していたことになる。このコースであればインターバルでダッシュを繰り返すトレーニングをしていればゴールすることができると思うが、集団の位置取りやアタックして逃げて勝つことを考えると、ダッシュした後に踏み続ける耐乳酸系のトレーニングも必要になっていることが分かる。
日曜日はロードレースの会場まで選手バスで一緒に宇都宮森林公園まで移動し、スティ―ルとネイサン、スポーツ実況でお馴染みのサッシャさんと4人でレース観戦しました。レース中にはステージでクリテリウムスペシャルライダーズのトークショーがあり、スティ―ルとネイサンと3人でステージに登壇し、ジャパンカップについて話しました。
クリテリウムスペシャルライダーズのメンバーの一員としてジャパンカップに参加し、ネイサン・ハース選手、スティール・ヴォン・ホフ選手、村上義弘選手、渡辺正光選手やチームスタッフの皆さんと過ごした時間はとても貴重な経験となりました。
チームメイトとスタッフの皆さん、応援してくれたファンや観客の皆様、ありがとうございました! そして台風の被害を受け、一所懸命に復旧作業をしてくれ、ジャパンカップ開催にこぎつけてくれた栃木、宇都宮の関係者の皆様、ありがとうございました! またこのジャパンカップの大舞台に帰ってこれるようにこれからも全力で頑張ります。これからも応援よろしくお願いします!
ジャパンカップクリテリウム2019フルムービー
text:Michinari.TAKAGI
photo:Makoto.AYANO,Michinari.TAKAGI,Hideaki TAKAGI
こんにちは! シクロワイアード編集部員/東京ヴェントス所属の高木三千成です。と言いましても、「高木三千成って誰?」と思われている方がいると思うので自己紹介をします。名前はたかぎみちなり、友人やファンの方からはみっちーと呼ばれています。26歳、自転車競技歴は高校生ではじめ今年で10年目で、ロードレースやトラックレース、シクロクロスの3つの自転車競技に取り組んでいます。チーム歴は浦和北高等学校、立教大学、那須ブラーゼン、東京ヴェントスに所属して走ってきました。
今年の7月からシクロワイアード編集部で社員として働いています。サラリーマンライダーとなりフルタイムで仕事をしながら、早朝や夜の時間帯にトレーニングをしてコンディションを高めながら選手活動も継続しています。そしてこの度、ジャパンカップに「クリテリウム・スペシャルライダーズチーム」のメンバーに選ばれ、参戦しました。
「クリテリウムスペシャルライダーズ」はジャパンカップクリテリウムのためだけに集められた選手によるスペシャルチームで、チームメイトには2011年と2014年にジャパンカップで優勝しているネイサン・ハース選手(オーストラリア)と、2011年と2013年にクリテリウムで優勝しているスティール・ヴォン・ホフ選手(オーストラリア)。日本選手権優勝4回、グランプリ優勝2回を誇る競輪のレジェンド 村上義弘選手。競輪S級選手の渡辺正光選手。そこに東日本トラックポイントレースで優勝した私・高木三千成(東京ヴェントス)の5名によるチーム編成です。
スティール・ヴォン・ホフ選手との初対面は夕食の時でした。スティールはガールフレンドのエマさんと一緒に来日し、お互い挨拶をし、日本やオーストラリアのことについて話しました。夕食はビュッフェスタイルで、うどんや野菜のてんぷら、ミニケーキを気に入って食べていましたね。ジャパンカップが終わった後、東京観光をしたあと帰国するらしく、東京の観光名所やお食事処などを紹介しました。
ネイサン・ハース選手は急に決まった来日で、チームプレゼンの3時間前に到着。合流してすぐ、オリオンスクウェアのチームプレゼンへ。
2010年に初開催されたジャパンカップクリテリウムが今年は記念すべき10年目を迎えた記念大会となり、宇都宮市が街をあげて力を入れているのが感じ取れる雰囲気でした。自分の過去のジャパンカップ出場は2016年大会で那須ブラーゼンに所属していた時で、その時はロードレースのみの出場だったので、クリテリウムは今回が初出場となりました。
ジャパンカップクリテリウムは宇都宮大通り西側のUターンを本町交差点から池上町交差点の手前までの1周2.25kmの周回コースが舞台。周回数は15周でレース距離は33.75km。4周、8周、12周目のフィニッシュ地点で周回賞が設定され、常にアタックのかかる動きのあるレース展開になるだろうという予想でした。
ジャパンカップクリテリウムに使用したバイクはカレラ ERAKLE AIR。前後に車載カメラを搭載し、パレードからレースまで録画したので、動画を元にレース展開を序盤(1~5周回)、中盤(6~10周回)、終盤(11~15周回)とレースを振り返っていきます。またパイオニアのペダリングモニターを搭載しているので、記事の後半でログデータも公開します。ぜひテキストレポートとあわせて迫力のムービーとデータをご覧ください。
レーススタート前は宇都宮市役所からパレード走行を開始し、走りながらのグッズ配りや観客たちとのハイタッチ、ファンとの写真撮影を楽しみながら周回コースを2周しました。
【序盤】”ジャパンカップクリテリウムスタート”
パレードには一番最後の登場だったということもあって、スタートは最後尾になってしまった。クリテリウムで後ろにいると、集団前方にいる選手はコーナーの立ち上がりで加速する時に短い時間で済むが、集団後方になるほど加速時間が長くなり、体力の消耗が激しくなる。周回賞や最後のゴール勝負を考えると、体力を必要な時まで残しておきたいので、集団先頭へとポジションを上げていく。
バックストレートでは前方にマイケル・ウッズ選手(カナダ、EFエデュケーションファースト)、別府史之選手(日本、トレック・セガフレード)、後方にはバウケ・モレマ選手(オランダ、トレック・セガフレード)がいる位置で走った。それでも集団真ん中なので更にポジションアップを試みる。後ろにいたセップ・クス選手(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)もポジションを上げたいようで、右側から加速していくも集団がコースいっぱいに広がり、上がれずにいた。
2周目の第一コーナーではウッズ選手がブレーキングを遅らせて、スピードを乗せたままアウトから自分を追い抜いていく様子が録画されています。さすがワールドツアー選手のテクニック。コーナーを立ち上がるとロベルト・ヘーシンク選手(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が左から加速していくが、自分も負けじと加速してロバート・スタナード選手(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)パス。
3周目のバックストレートではチームメイトのネイサン・ハース選手と合流できたので、脚の調子などお互いにコンディションを確かめ合った。最終コーナーでは別府選手の後ろでコーナーに進入して立ち上がっていき、後ろのテイラー・フィニー選手(アメリカ、EFエデュケーションファースト)が後方で加速していく。
4周目のスタート/フィニッシュ地点では周回賞のラップを知らせるブザーがなり、集団の雰囲気が一気に戦闘モードに変わっていく。集団の密度が高まっていき、前方では接触するような混沌とした状態になっていった。第一コーナーを立ちあがっていくと、後方には初山翔選手(日本、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)がぴったりと付いていた。4周目の周回賞はニールソン・ポーレス選手(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)が獲得。
周回賞の周回が終わり、集団は少し落ち着く。裏を返せばこれがアタックポイントだが、集団に埋もれてしまっているためアタックは出来なかった。
【中盤】”集団落車発生”
7周目の第一コーナーでスティ―ル選手と合流できたので、脚の調子などお互いにコンディションを確かめ合った。バックストレートにあるチームカ―ピットのエリアはコース幅が狭まるが、そのタイミングを狙って外から加速していく選手を多く見かけるが、車と接触したくないのでリスク回避のため集団左側にいたが、周りを見ながら集団中ほどへ移動した。
8周目に差し掛かるとスタート/フィニッシュ地点では周回賞のラップを知らせるブザーがなり、集団の雰囲気がまた一気に戦闘モードに変わる。前方ではまたもや接触が発生する状態に。最終コーナーではテールライトを点灯した「インザスカイSANO」こと佐野淳哉選手(マトリックスパワータグ)の後ろでコーナーを立ちあがっていく。8周目の周回賞はフランシスコ・マンセボ選手(スペイン、マトリックスパワータグ)が獲得したことをアナウンスで知った。
落車発生! コース上はカオスに
9周目に入り、周回賞が終わったタイミングで集団が少し落ち着くなか、ポジションアップしたくて右側から上がっていく。最終コーナーを立ち上がり、加速していくなかで次の12周回目の周回賞を狙っていたので、ホームストレートで更に右側から上がっていくと、左前方で落車が発生!。そのため前方の選手たちが突然右側に寄ってきて、チームメイトのスティ―ル選手の前輪にヒット。その前の選手のバイクが真横を向いてしまい、ふさがれるような形で集団大落車が発生してしまう。ハイスピードで回避することもできず、そのまま自分もクラッシュし、バイクから投げ出されてしまう。この瞬間、スーパースローモーションになりました。後ろを振り返ると後続の選手も次々と転び、選手やバイクが飛んで来ていたので、いったん落ち着いてから立ちあがり、吹っ飛んだボトルを拾ってコースサイドへ安全回避した。
ジャパンカップクリテリウム2019ダイジェストムービー(フル版は記事の下部にあります)
自分のバイクを確認してみるとリアエンドが曲がり、リアディレーラーが動かず、後ろから突っ込まれたことで後輪が振れてしまい、タイヤもパンクして走行不能に。怪我もあったが、シマノカーから受け取ったニュートラルバイクに乗り換えてスタート/フィニッシュ地点へ向かった。
レースは一時中断になり、しばらく時間があったので、シマノの青いバイクのサドル高を合わせたりしていたが、いつもよりハンドル位置が高く近く、ポジションが合わなかった。そしてブレーキがリムではなくディスクブレーキで、オンロードでは初めて使用するのでどれくらい効くのか、タイヤはどれくらいグリップするのか分からない不安要素が残る状態。
右腕の打ちつけた部位が腫れ上がり、膝も打ち擦過傷もある状態。なんとか走れそうだったので痛みを堪えて再スタートに備えた。するとアナウンスがあり、「残り5周からリスタート、周回賞3回目は無し」と。周回賞を狙っていたのに残念でした。ちなみにマイバイクはシマノカーの上に搭載されてしまったので、ムービーの最後はシマノカーの上にあるマイバイクからの車載動画になっています。
【終盤】”渾身のアタック”
11周目にリスタートを切り、初めて乗るディスクロードなのでブレーキのフィーリングを確かめながら第一コーナーへ進入していく。ブレーキレバーの位置がいつもと違うのと、ディスクブレーキにすぐには慣れない。そしてタイヤの空気圧が高く、ほぼ新品タイヤのようで、あまりバイクを倒してコーナーを曲がることができない状態だった。
「初めて乗るバイクでレースするのは厳しいな」と思いながらも、集団前方を位置取ることができ、最終コーナー手前で右側がガラ空きになるラインが見えて、一気に加速して単独の渾身のアタックをかけた。「アタックついでに前方を位置取ることが出来ればラッキー」と思いながら、最終コーナーのブレーキングポイント手前で先頭に立ち、最終コーナーに進入していく。
安全なラインを攻めながら、コーナー立ちあがりでも一気に加速。振り返ると後ろは少し離れているが、後ろに迫ってくるのはトレック・セガフレードの列車。しばらくして捕らえられてしまい、スタートゴール地点まで先頭で駆け抜けたが、ポジションの出ていないニュートラルバイクではハイペースをキープするのに精一杯。フィニッシュライン手前でトレックの選手が加速し、集団は活性化していった。
12周回目に入り集団に吸収されながら第一コーナーをクリアし、コーナーを立ちあがっていくと集団が縦に伸びている。ペースが更に上がり、13周目には一列棒状でところどころで中切れている様子。しかしなんとか食らいついていくが、落車のダメージで上手く力が入らなくなってしまい、14周目のバックストレートで発生した中切れの差を埋めることができず遅れてしまった。
ラスト1周の15周目のラインをグルペットで通過し、ゴールを目指す。シマノカーの屋根からの車載動画には、EFエデュケーション・ファースト、トレック・セガフレード、バーレーン・メリダのアシストの選手たちが最終コーナーに設置してある大型ビジョンの前で停まってフィニッシュ映像を見守る様子が映っている。その後、反対車線で展開するゴールスプリントの様子を見ながら、最終コーナーをクリアしてフィニッシュラインへと向かった。
ゴール後は沿道の観客の皆さんとハイタッチ。応援してくれたことに感謝しながらチームカーまで戻りました。最後にクリテリウムスペシャルライダーズの選手とスタッフ全員で健闘を讃え、集合写真を撮り、ジャパンカップクリテリウムを終えた。
パイオニアのペダリングモニターの解析ソフト、シクロスフィアで走行ログデータを確認すると、集団落車が発生するまでのログはしっかり取れていた。平均スピードは45.1km/h、最大スピードは62.2km/hで、全開でのスプリントはしていなかったが、時系列グラフを見る限りはコーナーの立ち上がりで毎回800~956.7Wを出していたことになる。このコースであればインターバルでダッシュを繰り返すトレーニングをしていればゴールすることができると思うが、集団の位置取りやアタックして逃げて勝つことを考えると、ダッシュした後に踏み続ける耐乳酸系のトレーニングも必要になっていることが分かる。
日曜日はロードレースの会場まで選手バスで一緒に宇都宮森林公園まで移動し、スティ―ルとネイサン、スポーツ実況でお馴染みのサッシャさんと4人でレース観戦しました。レース中にはステージでクリテリウムスペシャルライダーズのトークショーがあり、スティ―ルとネイサンと3人でステージに登壇し、ジャパンカップについて話しました。
クリテリウムスペシャルライダーズのメンバーの一員としてジャパンカップに参加し、ネイサン・ハース選手、スティール・ヴォン・ホフ選手、村上義弘選手、渡辺正光選手やチームスタッフの皆さんと過ごした時間はとても貴重な経験となりました。
チームメイトとスタッフの皆さん、応援してくれたファンや観客の皆様、ありがとうございました! そして台風の被害を受け、一所懸命に復旧作業をしてくれ、ジャパンカップ開催にこぎつけてくれた栃木、宇都宮の関係者の皆様、ありがとうございました! またこのジャパンカップの大舞台に帰ってこれるようにこれからも全力で頑張ります。これからも応援よろしくお願いします!
ジャパンカップクリテリウム2019フルムービー
text:Michinari.TAKAGI
photo:Makoto.AYANO,Michinari.TAKAGI,Hideaki TAKAGI
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