2019/10/05(土) - 15:53
初開催のセルフディスカバリーチャレンジ王滝のグラベルクラス。参加者たちのバイクのカスタマイズを紹介する記事の続編。今回はグラベル100kmに優勝した選手や北米のグラベルバイクの最先端を感じさせるバイクもご紹介します。
キャノンデールTOPSTONE CARBON にショートストローク化したFサスをインストール
100kmクラス優勝 岡理裕さん(バイシクルわたなべ浜松)
グラベル100kmクラスの栄光の初代王者となった岡理裕さん(バイシクルわたなべ浜松)が駆るのは、キャノンデールTOPSTONE CARBON FORCE ETAP AXS。42km優勝者の山本朋貴さんと同じモデルだ。
春大会のMTB100kmクラスで4位になっているが、どうしても「王滝優勝」のタイトルが欲しくてグラベルクラスを選択。バイクを王滝専用とも言える状態までチューンナップした。
まず目を引くのはを持つMTBのクロスカントリー用のフロントサスペンションフォークを、100mmストロークから40mmのショートストロークに改造してインストールしていること。
「最初はリジッドの初期状態でテストしていたんですが、路面がガレた王滝のコースを想定すると、やはり下りでどうしてもFサスが欲しかったんです。それでもMTBに比べて速度を殺さなくてはいけないけれど、少し気をつければ下れるようになるだろう、と。本来のジオメトリーからは少し変わってしまいますが、ネガティブな要素を打ち消して余りあるメリット=振動吸収性を手に入れることができました」。と言う。岡さんはサイクルショップ「バイシクルわたなべ」浜松店に勤める店員だから、こうした作業も自分でできる。
「リアはソフトテールサスなので登りもトラクションが稼げます。ギア比はF40Tでリア50T。このレースのためにスラムAXSを購入してインストールしました。MTB用のEAGLE50Tスプロケットと組み合わせて最軽レシオを実現しました。MTBとほぼ同じ登攀力で、どこでも登れますね。タイヤが細いのでギア比が軽すぎるとトラクションがかけにくいんですが、保険的な意味でも安心できます。ガレている激登りパートなどで40×50Tを使うことはあるんです。
クランクはローターインパワーの初期型を使用。タイヤはフロント、リアともにマキシスがグラベル専用タイヤとしてリリースしたRAMBLER 40Cだ。
レース後、前日の宣言通りみごと優勝した岡さんに話を聞いた。「バイクは最高でした。やはりFサス、軽めのギア設定が良かった。でもチャレンジという意味ではいいんですが、今回の路面はガレすぎでグラベルバイクで走るコースじゃなかったですね。MTBの人も苦労しているぐらいでしたから。フロントサスペンションがあってよかった」。
しかし来年の挑戦者に向けてはこうフォローする。「コースは毎年変化するので、昨年の状態だとそれほどでもなかったんです。だから王滝でグラベルレースなんてと、恐れることはないでしょう。来年も楽しみです!」。
北米のグラベルライドの最先端をカタチにしたバイクで参戦
100kmクラス 北澤肯さん
グラベルバイク部門の監修とアドバイザー、そして検車担当もした北澤肯さんはWolftoothなどのMTBやグラベル系パーツやバイクパッキング系グッズに強い輸入代理店「オルタナティブ バイシクルズ」の代表でもある。
北澤さんのバイクはWolftoothがプロデュースするフレームブランド「OTSO」のカーボンバイク、「WAHEELA」だ。北米の最新のグラベル事情を反映させた設計だというこのモデルは、昨今のトレイルMTBと同じでステムに45mmという短いものを使用する前提でジオメトリーが引かれているという。トップ長が長く、ステムが短いほうが自然なハンドリングが可能だとのことで、グラベルの世界でもこうした設計が最新トレンドになっていると言う。
そしてリアエンドは3段階の可変式機構を備え、チェーンステイ長を長くしたり・縮めたりが可能。650bを使用することもできるが、今回は700Cを用いつつ短くして旋回性能を向上させる設定(逆に長くすれば直進安定性が高まる)。1台のバイクで遊び方に応じて性格・特性を変化させることができるのだ。
ギア比はフロント36Tでリアが11〜40Tのワンバイ仕様。余った左STIレバーをドロッパーポストの作動レバーに割り当てている。タイヤは「ルネエルス」ブランドのスノコルミーパスというスリック系タイヤを用いる。
「ノブのないスリックトレッドですが、しなやかで空気量があるためこれで登りも下りもバッチリなんです。春大会ではエクストラライトという軽量モデルを使用して岩にヒットさせてパンクさせたので、今回はエンデュランス+ケーシングのタフなモデルを選択しました。でも普通のグラベル遊びなら軽いしなやかなケーシングのほうが楽しいです」。
グラナイトデザインのロックバンドでチューブ2本とco2ボンベを付けて、他のグッズや補給食はウルフトゥースのロールトップバッグと、レベレイトのフィードバッグに収納。「モノを落とさないように、シンプルな装備を心がけています」とのこと。そしてハンドルのドロップ部に指を引っ掛かける「ロードTOGS」を装着。
春大会の経験から準備万端だった北澤さんだが、レース途中で転倒して負傷した選手の介抱にあたり、タイムアウトとなってしまった。その選手は肋骨を複数箇所折る重症で、北澤さんのおかげで医療班に引き継ぐことができたという。完走よりも尊い行為はグラベルライダーのお手本となるものだ。
ピナレロGREVILをシマノGRX DI2&XT&スラムのミックスコンポで組み上げた
42kmクラス 20位 名越裕晃さん
参加者中2台目のピナレロGREVILに乗る名越さんは、オフロード系のバイクも得意とする岡山県岡山市のショップ「BICYCLE PRO SHOPなかやま」のスタッフとあって、相当メカに凝ったカスタムを施す。T700素材のセカンドグレードフレームにシマノの新型グラベルコンポのGRXのDI2シフターを早速インストール。しかしリアメカはXTで、リアスプロケットにはスラムの10-42T が組み合わされている。
「もともとGRXが最大ギア42Tまでなので、シマノのMTBスプロケットの11〜46Tを使えるようなキャパシティをもたせるためにロングケージのRDを使っています。GRXのDI2レバーにXTのリアメカを使うのはOK、スラムのカセットを使用するのは本来メーカー的にはNGが出そうですが、実用上問題ないです。ただし現物合わせになりますね。10Tトップでハイギアを稼ぐのが目的です。スラムがAXSシステムのセット販売にこだわらずにパーツをバラ売りしてくれていれば、AXSのレバーにEAGLEのリアメカで50Tまでの仕様にしたかったんですが、現状はバラ入手不可のためこうしています」とのこと。
「GRXのレバーはグラベルの操作のときに本当に使いやすい形状で、補助スイッチ設定が上の横部分に割り当てられるので、道が荒れていてもタッチしやすいですね。よく考えられたコンポです」とGRXレバーの良さを強調。チェーンホイールにはローターIN POWERの第1世代のパワーメータークランクを用い、ROVAL C38ホイールをチューブレスで運用する。
MTBにCXフォークをインストールしたミックスバイク
100kmクラス 中村敬さん
WINSPACEというマウンテンバイクのフレームにメリダのシクロクロスのフォークをインストールしたミックスバイクで走った中村さん。シマノのXTR&XTの10速用駆動系を使用し、MTBコンポのディレイラーをSTIレバーで引ける(レバー比を変換する)「ギブネイル(TKCプロダクションズ扱い)」というパーツを用いて操作している。「MTBではやや重いフロント44Tですが、グラベルには脚に丁度良いギア比です」と言う。
ディスクブレーキ本体はメカニカルのTRP HYRDを使用している。ハンドルは振動で手が痛くならないようにクッション性の素材をバーテープに巻き込んでいる。ホイールのリアハブには135mmのGOKISOハブを使用、フロントは15mmスルーアクスルハブがGOKISOには無いため、シマノのハブを用いて手組みホイールとしている。
「MTBフレームにCXフォークなら”モンスタークロス”的なバイクにできるんじゃないかと思い、組み合わせて見ました。40Cタイヤで林道を走ってみたんですがやはり厳しくて、山中真さんのアドバイスで王滝には45Cが要るな、と。タイヤはグラベルに詳しい人に聞いて選定し、チューブレス仕様で空気圧は前2.0、後ろ2.1です」。
なお中村さんは100kmクラスでCP3までを21位でクリアしながら、最終的にはリタイアに終わっている。
text&photo:Makoto.AYANO
キャノンデールTOPSTONE CARBON にショートストローク化したFサスをインストール
100kmクラス優勝 岡理裕さん(バイシクルわたなべ浜松)
グラベル100kmクラスの栄光の初代王者となった岡理裕さん(バイシクルわたなべ浜松)が駆るのは、キャノンデールTOPSTONE CARBON FORCE ETAP AXS。42km優勝者の山本朋貴さんと同じモデルだ。
春大会のMTB100kmクラスで4位になっているが、どうしても「王滝優勝」のタイトルが欲しくてグラベルクラスを選択。バイクを王滝専用とも言える状態までチューンナップした。
まず目を引くのはを持つMTBのクロスカントリー用のフロントサスペンションフォークを、100mmストロークから40mmのショートストロークに改造してインストールしていること。
「最初はリジッドの初期状態でテストしていたんですが、路面がガレた王滝のコースを想定すると、やはり下りでどうしてもFサスが欲しかったんです。それでもMTBに比べて速度を殺さなくてはいけないけれど、少し気をつければ下れるようになるだろう、と。本来のジオメトリーからは少し変わってしまいますが、ネガティブな要素を打ち消して余りあるメリット=振動吸収性を手に入れることができました」。と言う。岡さんはサイクルショップ「バイシクルわたなべ」浜松店に勤める店員だから、こうした作業も自分でできる。
「リアはソフトテールサスなので登りもトラクションが稼げます。ギア比はF40Tでリア50T。このレースのためにスラムAXSを購入してインストールしました。MTB用のEAGLE50Tスプロケットと組み合わせて最軽レシオを実現しました。MTBとほぼ同じ登攀力で、どこでも登れますね。タイヤが細いのでギア比が軽すぎるとトラクションがかけにくいんですが、保険的な意味でも安心できます。ガレている激登りパートなどで40×50Tを使うことはあるんです。
クランクはローターインパワーの初期型を使用。タイヤはフロント、リアともにマキシスがグラベル専用タイヤとしてリリースしたRAMBLER 40Cだ。
レース後、前日の宣言通りみごと優勝した岡さんに話を聞いた。「バイクは最高でした。やはりFサス、軽めのギア設定が良かった。でもチャレンジという意味ではいいんですが、今回の路面はガレすぎでグラベルバイクで走るコースじゃなかったですね。MTBの人も苦労しているぐらいでしたから。フロントサスペンションがあってよかった」。
しかし来年の挑戦者に向けてはこうフォローする。「コースは毎年変化するので、昨年の状態だとそれほどでもなかったんです。だから王滝でグラベルレースなんてと、恐れることはないでしょう。来年も楽しみです!」。
北米のグラベルライドの最先端をカタチにしたバイクで参戦
100kmクラス 北澤肯さん
グラベルバイク部門の監修とアドバイザー、そして検車担当もした北澤肯さんはWolftoothなどのMTBやグラベル系パーツやバイクパッキング系グッズに強い輸入代理店「オルタナティブ バイシクルズ」の代表でもある。
北澤さんのバイクはWolftoothがプロデュースするフレームブランド「OTSO」のカーボンバイク、「WAHEELA」だ。北米の最新のグラベル事情を反映させた設計だというこのモデルは、昨今のトレイルMTBと同じでステムに45mmという短いものを使用する前提でジオメトリーが引かれているという。トップ長が長く、ステムが短いほうが自然なハンドリングが可能だとのことで、グラベルの世界でもこうした設計が最新トレンドになっていると言う。
そしてリアエンドは3段階の可変式機構を備え、チェーンステイ長を長くしたり・縮めたりが可能。650bを使用することもできるが、今回は700Cを用いつつ短くして旋回性能を向上させる設定(逆に長くすれば直進安定性が高まる)。1台のバイクで遊び方に応じて性格・特性を変化させることができるのだ。
ギア比はフロント36Tでリアが11〜40Tのワンバイ仕様。余った左STIレバーをドロッパーポストの作動レバーに割り当てている。タイヤは「ルネエルス」ブランドのスノコルミーパスというスリック系タイヤを用いる。
「ノブのないスリックトレッドですが、しなやかで空気量があるためこれで登りも下りもバッチリなんです。春大会ではエクストラライトという軽量モデルを使用して岩にヒットさせてパンクさせたので、今回はエンデュランス+ケーシングのタフなモデルを選択しました。でも普通のグラベル遊びなら軽いしなやかなケーシングのほうが楽しいです」。
グラナイトデザインのロックバンドでチューブ2本とco2ボンベを付けて、他のグッズや補給食はウルフトゥースのロールトップバッグと、レベレイトのフィードバッグに収納。「モノを落とさないように、シンプルな装備を心がけています」とのこと。そしてハンドルのドロップ部に指を引っ掛かける「ロードTOGS」を装着。
春大会の経験から準備万端だった北澤さんだが、レース途中で転倒して負傷した選手の介抱にあたり、タイムアウトとなってしまった。その選手は肋骨を複数箇所折る重症で、北澤さんのおかげで医療班に引き継ぐことができたという。完走よりも尊い行為はグラベルライダーのお手本となるものだ。
ピナレロGREVILをシマノGRX DI2&XT&スラムのミックスコンポで組み上げた
42kmクラス 20位 名越裕晃さん
参加者中2台目のピナレロGREVILに乗る名越さんは、オフロード系のバイクも得意とする岡山県岡山市のショップ「BICYCLE PRO SHOPなかやま」のスタッフとあって、相当メカに凝ったカスタムを施す。T700素材のセカンドグレードフレームにシマノの新型グラベルコンポのGRXのDI2シフターを早速インストール。しかしリアメカはXTで、リアスプロケットにはスラムの10-42T が組み合わされている。
「もともとGRXが最大ギア42Tまでなので、シマノのMTBスプロケットの11〜46Tを使えるようなキャパシティをもたせるためにロングケージのRDを使っています。GRXのDI2レバーにXTのリアメカを使うのはOK、スラムのカセットを使用するのは本来メーカー的にはNGが出そうですが、実用上問題ないです。ただし現物合わせになりますね。10Tトップでハイギアを稼ぐのが目的です。スラムがAXSシステムのセット販売にこだわらずにパーツをバラ売りしてくれていれば、AXSのレバーにEAGLEのリアメカで50Tまでの仕様にしたかったんですが、現状はバラ入手不可のためこうしています」とのこと。
「GRXのレバーはグラベルの操作のときに本当に使いやすい形状で、補助スイッチ設定が上の横部分に割り当てられるので、道が荒れていてもタッチしやすいですね。よく考えられたコンポです」とGRXレバーの良さを強調。チェーンホイールにはローターIN POWERの第1世代のパワーメータークランクを用い、ROVAL C38ホイールをチューブレスで運用する。
MTBにCXフォークをインストールしたミックスバイク
100kmクラス 中村敬さん
WINSPACEというマウンテンバイクのフレームにメリダのシクロクロスのフォークをインストールしたミックスバイクで走った中村さん。シマノのXTR&XTの10速用駆動系を使用し、MTBコンポのディレイラーをSTIレバーで引ける(レバー比を変換する)「ギブネイル(TKCプロダクションズ扱い)」というパーツを用いて操作している。「MTBではやや重いフロント44Tですが、グラベルには脚に丁度良いギア比です」と言う。
ディスクブレーキ本体はメカニカルのTRP HYRDを使用している。ハンドルは振動で手が痛くならないようにクッション性の素材をバーテープに巻き込んでいる。ホイールのリアハブには135mmのGOKISOハブを使用、フロントは15mmスルーアクスルハブがGOKISOには無いため、シマノのハブを用いて手組みホイールとしている。
「MTBフレームにCXフォークなら”モンスタークロス”的なバイクにできるんじゃないかと思い、組み合わせて見ました。40Cタイヤで林道を走ってみたんですがやはり厳しくて、山中真さんのアドバイスで王滝には45Cが要るな、と。タイヤはグラベルに詳しい人に聞いて選定し、チューブレス仕様で空気圧は前2.0、後ろ2.1です」。
なお中村さんは100kmクラスでCP3までを21位でクリアしながら、最終的にはリタイアに終わっている。
text&photo:Makoto.AYANO
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