2019/09/22(日) - 06:56
9月21日から29日までの9日間にわたって、イギリス北部ヨークシャー地方でロード世界選手権が開催される。男女混成のチームTTミックスドリレーなど、大会前半を彩るタイムトライアル種目のコースや注目選手を紹介します。
イギリスのロードレースの中心地ヨークシャー
クリスティアン・プリュドム氏が「史上最高のグランデパール」と賞賛した2014年の大成功から5年。ツール・ド・フランスの開催を契機にイギリスにおけるロードレースの中心地となったと言っても過言ではないヨークシャー地方を舞台に、ロード世界選手権が開催される。イギリスでの世界選手権開催は1922年、1970年、1982年に続く4回目。同地方ではツールと同じASOが主催するツール・ド・ヨークシャーが2015年から毎年開催されており、2019年大会の観客動員数は200万人に達している。
地理的にはロンドンから北に350km、電車で3時間ほどのイングランド北部に位置するヨークシャー地方。厳密に言うと正式な地名はヨークシャーではなくノースヨークシャー地方で、同地方3位の人口(7万5000人)を誇るハロゲートの街を中心に世界選手権が開催される。ハロゲート市内に引かれたフィニッシュラインは共通だが、スタート地点は種目/カテゴリーによって異なるのが特徴。ヨークシャー各地をスタートし、田園風景の中を走りながらハロゲートを目指すレイアウトが採用された。
9月21日(土)にパラサイクリングの国際大会が開催され、9月22日(日)に世界選手権が本格始動する。8日間にわたる大会の前半はタイムトライアル。今回は合計6カテゴリー開催されるタイムトライアルのコースや注目選手を紹介していきます。
チームTTに代わって初開催される男女混成ミックスリレー
1995年までナショナルチームによる国対抗戦として開催され、2012年にトレードチームによる戦いとして復活したチームタイムトライアル。「世界最速チーム」の称号をかけたレースが7年間続いたものの、実質的に限られたチームのみ勝負に絡むことができないとして内外に大きな温度差があった。
2019年、UCIは従来のトレードチームによるチームタイムトライアルを廃止し、代わりにチームタイムトライアル・ミックスリレー(Mixed Relay)を新たに導入した。聞きなれないこの競技はチーム対抗戦ではなく国による対抗戦の男女の混成レース。男女が一緒に走るのではなく、その名の通りリレー形式で行われる。
まずは男子3名が隊列を組んで14kmの周回コース(ロードレースの周回と共通)を走り、2番目の選手がフィニッシュラインを通過したタイミングで女子3名がスタート。14kmの周回コースを走り終え、男子同様に2番目の選手がフィニッシュした時間がその国の成績となる。レースの全長は27.6km。1名しか脱落することが許されないため慎重なメンバー選考が鍵となる。
すでにヨーロッパ選手権では同じフォーマットでミックスリレーが開催され、オランダが勝利を収めている。オランダは世界選手権に向けてヨス・ファンエムデン(ユンボ・ヴィズマ)やバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、ルシンダ・ブランド(サンウェブ)らを招集。初代世界チャンピオンの座を狙う。
参加するのは10の国にUCIワールドサイクリングセンターを加えた11チーム。オランダの対抗馬と目されるのがトニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)やニルス・ポリッツ(カチューシャ・アルペシン)、リサ・ブレナウアー(WNTロータープロサイクリング)を揃えるドイツをはじめ、イギリスやデンマーク、ベルギーといった強豪国。ブエルタ・ア・エスパーニャを総合3位で終えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)もメンバー入りしている。
ログリッチェが個人TT優勝候補?欧州王者エヴェネプールにも注目
大会前半がクライマックスを迎えるのが水曜日の男子エリート個人タイムトライアル。ノーザラートンからハロゲートに向かって南下し、周回コースを走ることなくフィニッシュする54kmのコースはアップダウンの連続で、獲得標高差は684mある。いずれの登りも高低差100m以下だが、平坦区間が少ないコースはリズムを刻みにくい。
近年グランツールの個人タイムトライアルの距離が短くなりつつある中、54kmという距離は多くの選手にとって慣れないもの。さらに向かい風(南風)が予想されているため、レース時間は1時間をゆうに超える。TTスペシャリストたちがアルカンシェルを争うことになる。
2018年の世界チャンピオンに輝き、1年間アルカンシェルを着たローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)はツール・ド・フランス第12ステージ以来のレース出場。バーレーン・メリダを離脱すると見られたが現状デニスはチームに残留する見込み。久々のレース出場となるためそのコンディションは未知数だ。
2017年の優勝者トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)はジロ・デ・イタリアで痛めた膝が原因で早めにシーズンを終えており、さらにゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)も欠場する。そんな中、優勝候補の筆頭と見られるのがブエルタ覇者のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)。ブエルタの個人タイムトライアルで圧勝したログリッチェは2017年の世界選手権で2位に入っている。
1年前に圧倒的な力でジュニア世界王者に輝いたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)は19歳ながらヨーロッパ選手権のエリート個人タイムトライアルで優勝。ベルギーは他にも好調なイヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)やアワーレコード記録保持者のヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)を揃えている。
他にもカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)やシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)、アレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)、チャド・ハガ(アメリカ、サンウェブ)、ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームイネオス)、フィリッポ・ガンナ(イタリア、チームイネオス)らが上位入賞候補だ。
女子エリートは2017年から2年連続で優勝しているアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が大会3連覇を狙う。対抗馬としては同じオランダのアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールスドルマンス)や2014年の優勝者で直前のマドリードチャレンジを制したリサ・ブレナウアー(WNTロータープロサイクリング)らの名前が挙がる。
日本ナショナルチームの中で個人タイムトライアルにエントリーしているのは、過去に14位という成績を残している女子エリートの與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ)、男子U23の松田祥位(EQADS)と今村駿介(ブリヂストンサイクリング)、男子ジュニアの津田悠義(EQADS/愛知県立三好高校)と山田拓海(飯田風越高等学校)の5名。男子エリートへの出場予定はない。
イギリスのロードレースの中心地ヨークシャー
クリスティアン・プリュドム氏が「史上最高のグランデパール」と賞賛した2014年の大成功から5年。ツール・ド・フランスの開催を契機にイギリスにおけるロードレースの中心地となったと言っても過言ではないヨークシャー地方を舞台に、ロード世界選手権が開催される。イギリスでの世界選手権開催は1922年、1970年、1982年に続く4回目。同地方ではツールと同じASOが主催するツール・ド・ヨークシャーが2015年から毎年開催されており、2019年大会の観客動員数は200万人に達している。
地理的にはロンドンから北に350km、電車で3時間ほどのイングランド北部に位置するヨークシャー地方。厳密に言うと正式な地名はヨークシャーではなくノースヨークシャー地方で、同地方3位の人口(7万5000人)を誇るハロゲートの街を中心に世界選手権が開催される。ハロゲート市内に引かれたフィニッシュラインは共通だが、スタート地点は種目/カテゴリーによって異なるのが特徴。ヨークシャー各地をスタートし、田園風景の中を走りながらハロゲートを目指すレイアウトが採用された。
9月21日(土)にパラサイクリングの国際大会が開催され、9月22日(日)に世界選手権が本格始動する。8日間にわたる大会の前半はタイムトライアル。今回は合計6カテゴリー開催されるタイムトライアルのコースや注目選手を紹介していきます。
チームTTに代わって初開催される男女混成ミックスリレー
1995年までナショナルチームによる国対抗戦として開催され、2012年にトレードチームによる戦いとして復活したチームタイムトライアル。「世界最速チーム」の称号をかけたレースが7年間続いたものの、実質的に限られたチームのみ勝負に絡むことができないとして内外に大きな温度差があった。
2019年、UCIは従来のトレードチームによるチームタイムトライアルを廃止し、代わりにチームタイムトライアル・ミックスリレー(Mixed Relay)を新たに導入した。聞きなれないこの競技はチーム対抗戦ではなく国による対抗戦の男女の混成レース。男女が一緒に走るのではなく、その名の通りリレー形式で行われる。
まずは男子3名が隊列を組んで14kmの周回コース(ロードレースの周回と共通)を走り、2番目の選手がフィニッシュラインを通過したタイミングで女子3名がスタート。14kmの周回コースを走り終え、男子同様に2番目の選手がフィニッシュした時間がその国の成績となる。レースの全長は27.6km。1名しか脱落することが許されないため慎重なメンバー選考が鍵となる。
すでにヨーロッパ選手権では同じフォーマットでミックスリレーが開催され、オランダが勝利を収めている。オランダは世界選手権に向けてヨス・ファンエムデン(ユンボ・ヴィズマ)やバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、ルシンダ・ブランド(サンウェブ)らを招集。初代世界チャンピオンの座を狙う。
参加するのは10の国にUCIワールドサイクリングセンターを加えた11チーム。オランダの対抗馬と目されるのがトニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)やニルス・ポリッツ(カチューシャ・アルペシン)、リサ・ブレナウアー(WNTロータープロサイクリング)を揃えるドイツをはじめ、イギリスやデンマーク、ベルギーといった強豪国。ブエルタ・ア・エスパーニャを総合3位で終えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)もメンバー入りしている。
ログリッチェが個人TT優勝候補?欧州王者エヴェネプールにも注目
大会前半がクライマックスを迎えるのが水曜日の男子エリート個人タイムトライアル。ノーザラートンからハロゲートに向かって南下し、周回コースを走ることなくフィニッシュする54kmのコースはアップダウンの連続で、獲得標高差は684mある。いずれの登りも高低差100m以下だが、平坦区間が少ないコースはリズムを刻みにくい。
近年グランツールの個人タイムトライアルの距離が短くなりつつある中、54kmという距離は多くの選手にとって慣れないもの。さらに向かい風(南風)が予想されているため、レース時間は1時間をゆうに超える。TTスペシャリストたちがアルカンシェルを争うことになる。
2018年の世界チャンピオンに輝き、1年間アルカンシェルを着たローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)はツール・ド・フランス第12ステージ以来のレース出場。バーレーン・メリダを離脱すると見られたが現状デニスはチームに残留する見込み。久々のレース出場となるためそのコンディションは未知数だ。
2017年の優勝者トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)はジロ・デ・イタリアで痛めた膝が原因で早めにシーズンを終えており、さらにゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)も欠場する。そんな中、優勝候補の筆頭と見られるのがブエルタ覇者のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)。ブエルタの個人タイムトライアルで圧勝したログリッチェは2017年の世界選手権で2位に入っている。
1年前に圧倒的な力でジュニア世界王者に輝いたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)は19歳ながらヨーロッパ選手権のエリート個人タイムトライアルで優勝。ベルギーは他にも好調なイヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)やアワーレコード記録保持者のヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)を揃えている。
他にもカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)やシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)、アレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)、チャド・ハガ(アメリカ、サンウェブ)、ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームイネオス)、フィリッポ・ガンナ(イタリア、チームイネオス)らが上位入賞候補だ。
女子エリートは2017年から2年連続で優勝しているアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が大会3連覇を狙う。対抗馬としては同じオランダのアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールスドルマンス)や2014年の優勝者で直前のマドリードチャレンジを制したリサ・ブレナウアー(WNTロータープロサイクリング)らの名前が挙がる。
日本ナショナルチームの中で個人タイムトライアルにエントリーしているのは、過去に14位という成績を残している女子エリートの與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ)、男子U23の松田祥位(EQADS)と今村駿介(ブリヂストンサイクリング)、男子ジュニアの津田悠義(EQADS/愛知県立三好高校)と山田拓海(飯田風越高等学校)の5名。男子エリートへの出場予定はない。
ロード世界選手権2019スケジュール
日時 | 種目 | 距離 | 獲得標高差 | 日本人選手(暫定) | |
---|---|---|---|---|---|
9月21日(土) | 12pm | パラサイクリングインターナショナル | |||
9月22日(日) | 1:10pm | チームタイムトライアルミックスリレー | 28km | 492m | |
9月23日(月) | 10:10am | 女子ジュニア個人タイムトライアル | 14km | 246m | |
1:10pm | 男子ジュニア個人タイムトライアル | 28km | 492m | 津田/山田 | |
9月24日(火) | 10:10am | 男子U23個人タイムトライアル | 30km | 474m | 松田/今村 |
2:40pm | 女子エリート個人タイムトライアル | 30km | 474m | 與那嶺 | |
9月25日(水) | 11:10am | 男子エリート個人タイムトライアル | 54km | 684m | |
9月26日(木) | 12:10pm | 男子ジュニアロードレース | 148km | 2171m | 津田/山田 |
9月27日(金) | 8:40am | 女子ジュニアロードレース | 92km | 622m | 岩元 |
2:10pm | 男子U23ロードレース | 192km | 1766m | 石上/松田/今村 | |
9月28日(土) | 11:40am | 女子エリートロードレース | 150km | 2394m | 與那嶺/金子 |
9月29日(日) | 8:40am | 男子エリートロードレース | 285km | 3645m | 新城/中根 |
text:Kei Tsuji in Harrogate, UK
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