2019/08/31(土) - 10:00
最大25%もの勾配で繰り広げられた激坂山岳決戦。ライバルの加速に耐え抜いてゴール勝負に持ち込んだ最年長,アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がステージ優勝。好調ぶりを誇示したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が早くもマイヨロホに返り咲いた。
3日連続で登場する山頂フィニッシュの最終日は誰もが恐れる激坂バトル。オンダから8の字を描いて山岳地帯を目指すコース距離は183.2kmで、その内容は前半がオールフラット、後半が怒涛のカテゴリー山岳連発区間とはっきり分かれる。
スタートから約80kmにわたって続く平坦路が終わるとカテゴリー2級と3級の山岳が4つ連続し、そのうち残り22km地点でピークを迎える2級山岳サルト・デル・カバッロ峠は全長が10.4kmに及ぶ長い登りであり、最後には登坂距離4.1kmながら、最大勾配25%、平均勾配は12.3%という激坂ぶりを誇るマス・デラ・コスタが登場する。後半区間は常に10〜15%、ところによって17.5%に跳ね上がる勾配はまさに「壁」と呼ぶのがふさわしい。
前日に峠の下りで落車し負傷しながら最下位でフィニッシュしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト) と、メイン集団の大落車に巻き込まれたイタリア王者ダヴィデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグローエ)は出走せず。逃げ切りにもチャンスがあるステージだけに、この日はアタック合戦が長期化し、最終的に10名の強力な逃げグループが生まれた。
逃げグループを形成した10名
イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)
フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
カンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼル)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)
マイケル・ストーナー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームイネオス)
シリル・バルテ(フランス、エウスカディ・バスクカントリー)
トーマス・マルチンスキー(ポーラント、ロット・スーダル)
序盤から積極的にアタックしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、セルジオとセバスティアンの従兄弟コンビ、逃げの名手ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)やトーマス・マルチンスキー(ポーラント、ロット・スーダル)を含む逃げグループは5分程度のリードを得て巡航体制を組む。メイン集団ではマイヨホロを獲得したディラン・トゥーンス(ベルギー)のバーレーン・メリダがコントロールを担った。
総合級選手が軒並みリタイアに追い込まれた波乱の昨日とは違い、後半に入るまで淡々と距離を消化していく平穏な展開。逃げグループ内でステージ優勝に向けたふるい落としがかかったのはフィニッシュまで30km地点だった。2級山岳サルト・デル・カバッロ峠の前半区間で過去にブエルタステージ2勝を飾っているマルチンスキーがアタックし、ここに反応したセルジオ・エナオとジルベールが先行する形となる。時間を置いてジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)とセバスティアン・エナオが追いつき、4名が先頭グループを形成して下りに入った。
一方、最終山岳決戦に向けて緊張感を高めるメイン集団はモビスターがコントロールを行った。屈強なメンバーを揃えたスペインチームがテンポを刻んだことで力を使った選手たちが次々とちぎれ、その中にはマイヨロホを着用するトゥーンスの姿も。トゥーンスは総合首位を守るべく粘り強く追走したものの、前日の逃げ切りで力を使っていたためメイン集団の距離はじわじわと開くばかり。この脱落でマイヨロホの行方は総合勢に委ねられた。
サルト・デル・カバッロのダウンヒルでは、前日に壊滅的な打撃を受けたEFエデュケーションファーストに再び衝撃が襲いかかる。ヤングライダー賞3位につけていたセルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)が落車し、レースに復帰したものの大きく差をつけられ実質的に総合争いから脱落してしまった。
先頭グループではジルベールが独走に持ち込んだが、アスタナが強烈にペースアップする集団を振り切るには至らない。「マス・デラ・コスタの登り口で3,4分維持していればステージ優勝のチャンスはあったけれど、今日は総合勢が激しく動いていたのでチャンスはなかった」と語るジルベール、そしてセルジオ・エナオは25%の勾配が含まれるマス・デラ・コスタの序盤区間で捕らえられた。
ユンボ・ヴィズマがプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)のためにペースアップを行い、残り3.6km地点で「自分がライバルの様子を伺うためにアタックし、アレハンドロ(バルベルデ)はステージ優勝のために力を温存する取り決めだった」と言う総合5位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタックする。淡々とペースを刻むキンタナをフォローできたのはログリッチェとバルベルデ、そして前日に総合首位を明け渡したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)の3名のみだった。
キンタナとログリッチェが積極的にペースメイクを行い、涼しげな表情のロペスと、ログリッチェの加速をイーブンペースで乗り切るバルベルデがその後方。勾配が跳ね上がる残り1km地点でキンタナがアタックするも抜け出すには至らず、4名が一かたまりとなってフィニッシュ前に到達。ここから幾多の激坂決戦を制してきたバルベルデが主導権を握った。
ライバルの様子を観察しながら先行する世界王者は、追従するログリッチェの動きに合わせて加速し、残り100mからスプリントを開始する。得意パターンに持ち込んだバルベルデが他を寄せ付けずに先着し、ログリッチェがタイム差なしの2位、6秒遅れでキンタナと共にフィニッシュしたロペスがわずか1日でマイヨロホへと返り咲いた。
「全てのチームメイトと、特に厳しい山岳で素晴らしい走りをしてくれたナイロに感謝したい。ログリッチェとロペスを置き去りにしようと試みたけれど、実力が拮抗していたので一定ペースで走ることに切り替えた。それで僕にステージ優勝のチャンスが回ってきたんだ。上手く走れていたし、あの展開では最悪でも4位は確保できる。 あのメンバーの中では一番スプリントがあると分かっていたので状況をコントロールすることに努めた。まだまだフィニッシュまでは長い道のりだけど、現時点で僕とナイロは今回トップ4の登坂力があることが明らかになったね」と語る今大会最年長39歳のバルベルデ。ブエルタでは2003年に初勝利してからステージ通算13勝目であり、プロ通算勝利数を128に伸ばすこととなった。
「あまりにも急勾配で僕にぴったりな登りとは言えなかったけれど、ベストを尽くしたし、自分のパフォーマンスにハッピーだ。この登りは知っていたし、誰にとっても試練になることも分かっていた。スタートの段階から速い展開で進んだので登りに辿り着いた時には誰もが疲労を感じていたと思う。最後はチームメイト4名でペースアップを行ったけれど、あの勾配では完全に主導権を得るまで至らなかった。今日はバルベルデが最強だと思っていたよ。とにかく今はマイヨロホを取り戻せたので嬉しく思っているんだ」と、再び総合首位に浮上したロペスは語っている。
3日連続で登場する山頂フィニッシュの最終日は誰もが恐れる激坂バトル。オンダから8の字を描いて山岳地帯を目指すコース距離は183.2kmで、その内容は前半がオールフラット、後半が怒涛のカテゴリー山岳連発区間とはっきり分かれる。
スタートから約80kmにわたって続く平坦路が終わるとカテゴリー2級と3級の山岳が4つ連続し、そのうち残り22km地点でピークを迎える2級山岳サルト・デル・カバッロ峠は全長が10.4kmに及ぶ長い登りであり、最後には登坂距離4.1kmながら、最大勾配25%、平均勾配は12.3%という激坂ぶりを誇るマス・デラ・コスタが登場する。後半区間は常に10〜15%、ところによって17.5%に跳ね上がる勾配はまさに「壁」と呼ぶのがふさわしい。
前日に峠の下りで落車し負傷しながら最下位でフィニッシュしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト) と、メイン集団の大落車に巻き込まれたイタリア王者ダヴィデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグローエ)は出走せず。逃げ切りにもチャンスがあるステージだけに、この日はアタック合戦が長期化し、最終的に10名の強力な逃げグループが生まれた。
逃げグループを形成した10名
イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)
フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
カンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼル)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)
マイケル・ストーナー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームイネオス)
シリル・バルテ(フランス、エウスカディ・バスクカントリー)
トーマス・マルチンスキー(ポーラント、ロット・スーダル)
序盤から積極的にアタックしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、セルジオとセバスティアンの従兄弟コンビ、逃げの名手ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)やトーマス・マルチンスキー(ポーラント、ロット・スーダル)を含む逃げグループは5分程度のリードを得て巡航体制を組む。メイン集団ではマイヨホロを獲得したディラン・トゥーンス(ベルギー)のバーレーン・メリダがコントロールを担った。
総合級選手が軒並みリタイアに追い込まれた波乱の昨日とは違い、後半に入るまで淡々と距離を消化していく平穏な展開。逃げグループ内でステージ優勝に向けたふるい落としがかかったのはフィニッシュまで30km地点だった。2級山岳サルト・デル・カバッロ峠の前半区間で過去にブエルタステージ2勝を飾っているマルチンスキーがアタックし、ここに反応したセルジオ・エナオとジルベールが先行する形となる。時間を置いてジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)とセバスティアン・エナオが追いつき、4名が先頭グループを形成して下りに入った。
一方、最終山岳決戦に向けて緊張感を高めるメイン集団はモビスターがコントロールを行った。屈強なメンバーを揃えたスペインチームがテンポを刻んだことで力を使った選手たちが次々とちぎれ、その中にはマイヨロホを着用するトゥーンスの姿も。トゥーンスは総合首位を守るべく粘り強く追走したものの、前日の逃げ切りで力を使っていたためメイン集団の距離はじわじわと開くばかり。この脱落でマイヨロホの行方は総合勢に委ねられた。
サルト・デル・カバッロのダウンヒルでは、前日に壊滅的な打撃を受けたEFエデュケーションファーストに再び衝撃が襲いかかる。ヤングライダー賞3位につけていたセルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)が落車し、レースに復帰したものの大きく差をつけられ実質的に総合争いから脱落してしまった。
先頭グループではジルベールが独走に持ち込んだが、アスタナが強烈にペースアップする集団を振り切るには至らない。「マス・デラ・コスタの登り口で3,4分維持していればステージ優勝のチャンスはあったけれど、今日は総合勢が激しく動いていたのでチャンスはなかった」と語るジルベール、そしてセルジオ・エナオは25%の勾配が含まれるマス・デラ・コスタの序盤区間で捕らえられた。
ユンボ・ヴィズマがプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)のためにペースアップを行い、残り3.6km地点で「自分がライバルの様子を伺うためにアタックし、アレハンドロ(バルベルデ)はステージ優勝のために力を温存する取り決めだった」と言う総合5位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタックする。淡々とペースを刻むキンタナをフォローできたのはログリッチェとバルベルデ、そして前日に総合首位を明け渡したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)の3名のみだった。
キンタナとログリッチェが積極的にペースメイクを行い、涼しげな表情のロペスと、ログリッチェの加速をイーブンペースで乗り切るバルベルデがその後方。勾配が跳ね上がる残り1km地点でキンタナがアタックするも抜け出すには至らず、4名が一かたまりとなってフィニッシュ前に到達。ここから幾多の激坂決戦を制してきたバルベルデが主導権を握った。
ライバルの様子を観察しながら先行する世界王者は、追従するログリッチェの動きに合わせて加速し、残り100mからスプリントを開始する。得意パターンに持ち込んだバルベルデが他を寄せ付けずに先着し、ログリッチェがタイム差なしの2位、6秒遅れでキンタナと共にフィニッシュしたロペスがわずか1日でマイヨロホへと返り咲いた。
「全てのチームメイトと、特に厳しい山岳で素晴らしい走りをしてくれたナイロに感謝したい。ログリッチェとロペスを置き去りにしようと試みたけれど、実力が拮抗していたので一定ペースで走ることに切り替えた。それで僕にステージ優勝のチャンスが回ってきたんだ。上手く走れていたし、あの展開では最悪でも4位は確保できる。 あのメンバーの中では一番スプリントがあると分かっていたので状況をコントロールすることに努めた。まだまだフィニッシュまでは長い道のりだけど、現時点で僕とナイロは今回トップ4の登坂力があることが明らかになったね」と語る今大会最年長39歳のバルベルデ。ブエルタでは2003年に初勝利してからステージ通算13勝目であり、プロ通算勝利数を128に伸ばすこととなった。
「あまりにも急勾配で僕にぴったりな登りとは言えなかったけれど、ベストを尽くしたし、自分のパフォーマンスにハッピーだ。この登りは知っていたし、誰にとっても試練になることも分かっていた。スタートの段階から速い展開で進んだので登りに辿り着いた時には誰もが疲労を感じていたと思う。最後はチームメイト4名でペースアップを行ったけれど、あの勾配では完全に主導権を得るまで至らなかった。今日はバルベルデが最強だと思っていたよ。とにかく今はマイヨロホを取り戻せたので嬉しく思っているんだ」と、再び総合首位に浮上したロペスは語っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第7ステージ結果
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 4:34:11 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:06 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | |
4位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:42 |
5位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:48 |
6位 | ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ) | 0:00:51 |
7位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
8位 | ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 0:01:07 |
9位 | ジョージ・ベネット(オーストラリア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:20 |
10位 | オスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー) | 0:01:25 |
151位 | 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) | 0:28:42 |
DNF | ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト) | |
DNS | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) |
個人総合成績
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 28:19:13 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:06 |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:16 |
4位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:27 |
5位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:58 |
6位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:02:36 |
7位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 0:02:52 |
8位 | ジョージ・ベネット(オーストラリア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:03:34 |
9位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:03:36 |
10位 | ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) |
ポイント賞
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 50pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 48pts |
3位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 45pts |
山岳賞
1位 | アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) | 29pts |
2位 | セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 17pts |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 16pts |
ヤングライダー賞
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 28:19:13 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:02:36 |
3位 | オスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー) | 0:04:55 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 84:28:05 |
2位 | ユンボ・ヴィズマ | 0:03:07 |
3位 | アスタナ | 0:15:11 |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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