2019/08/19(月) - 11:52
フランドルクラシックを彷彿とさせるビンクバンク・ツアー最終日で、ミュールで自らアタックを仕掛け、スプリントでファンアーフェルマートを打ち負かしたオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)が勝利。二強に食らいついたローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が逆転総合優勝に輝いた。
フランドルらしいアップダウンコースを走るビンクバンク・ツアー最終ステージ photo:CorVos
7日間にわたって開催されたビンクバンク・ツアーを締めくくるのはベルギーのフランドル地方を駆け抜ける178.1kmの丘陵コース。首都ブリュッセルに近いサンピエール=ルウから西に向かい、後半にかけてヘラールツベルヘンを起点にした25.6kmの周回コースを3周する。
この25.6km周回コースには名物のミュール・ファン・ヘラールツベルヘン(全長1.1km/平均8%)やボスベルグ(全長1km/平均6%)、オンケルゼーレ(全長1.5km/平均3%)、デンデロールト(全長0.7km/平均8%)という4つの坂が詰め込まれており、カテゴリーが付けられた坂はステージ全体で14カ所。常に標高100m以下の丘陵地帯を走るコースだが、標高差は1,800mに達する。最後はミュール・ファン・ヘラールツベルヘンの中腹にフィニッシュする。
第6ステージ個人タイムトライアルを終えた時点で総合首位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)は総合2位マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)から8秒、総合3位ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)から12秒のリードを得ている状態。ステージ前半に形成された15名の先頭グループが大きなリードを得ることができないまま、レースは後半へと入っていく。
2018年ロンド・ファン・フラーンデレン2位のマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)らが先頭グループ内で積極的な動きを見せたが、最後のミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを前にドゥクーニンク・クイックステップやCCCチームが牽引するメイン集団が逃げメンバーのすぐ後ろに迫った。
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを走るティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)自ら先頭グループを率いる photo:CorVos
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンでゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やセップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)、そしてオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)がアタック。「ミュールは自分の遊び場なんだ。子供時代から毎週水曜日はヘラールツベルヘンに来て練習していた。100回以上はミュールを登っているし、石畳の一つ一つや穴を全て把握している」というナーセンのアタックによって集団は分裂し、頂上通過後も踏み続けた元ベルギーチャンピオンにグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)と総合3位ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が追いつく。フィニッシュまで24kmを残して3名が先行を開始した。
『ゴールデンキロメーター』でボーナスタイム7秒を獲得したデプルスは暫定的にリーダージャージのウェレンスから5秒差の総合2位に浮上する。ペースが上がらない追走集団は総合首位ウェレンスや総合2位ヒルシ自ら牽引したが、ステージ優勝&総合ジャンプアップという思惑が一致した先頭3名は45秒までリードを拡大。少しでも追走集団を引き離したいデプルスが先頭を引き続け、ヘラールツベルヘンのフィニッシュに向かう登りに突入した。
残り300mから平均691W/最大1,207Wで踏み続けたナーセンが、先に仕掛けたファンアーフェルマートをフィニッシュ手前でパス。総合優勝のために力を尽くしたデプルスの前で、ナーセンがファンアーフェルマートとの直接対決を制した。
3名の先頭グループを率いるグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:CorVos
追走グループを牽引するマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) photo:CorVos
登りスプリントでグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)を下したオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) photo:CorVos
「最終周回のミュールとボスベルグで全開アタックして、友人でもあるグレッグ(ファンアーフェルマート)とローレンス(デプルス)と先行する展開に。あらかじめ打ち合わせしてわけじゃなくて、集団から10秒のリードを奪った時点で自分たちが一番強いと確信した。今日のようなスプリントでグレッグに勝ったのは初めてだ」と、ステージ優勝を飾るとともに総合2位でレースを終えたナーセンは語る。
今シーズン、ナーセンはミラノ〜サンレモ2位、ヘント〜ウェヴェルヘム3位、ロンド・ファン・フラーンデレン7位、パリ〜ルーベ13位。安定した走りを見せながらも1年前のブルターニュクラシック以降勝てないレースが続いていた。「今日の勝利を誇りに思う。今シーズンここまで未勝利だったことは心苦しく、ようやく肩の荷が下りた気分だ」。
そしてナーセンと35秒差の総合優勝に輝いたのが23歳のデプルス。ライバルたちの攻撃を防ぐことができず、トップと41秒差のステージ19位で終えたウェレンスはファンアーフェルマートと1秒差で総合表彰台の座を守っている。
「まだ信じられない。総合表彰台の時点で満足していた自分がまさか総合優勝するなんて。UCIワールドツアーレースでフランドルの石畳を走るのは初めてだった。実はスタート前にオリバー(ナーセン)に走り方を相談したんだけど、彼は問題ない、大丈夫だと言ってくれたんだ。そして突然彼とグレッグ(ファンアーフェルマート)と先行する展開に。彼らに食らいついた結果、後続とタイム差が付いて総合優勝が手元にやってきた。自宅のすぐ近くを走るステージで結果を残すことができて最高の気分だ」と、2016年にプロ入りし、プロレース初勝利を飾ったデプルスは語る。
デプルスはジロ・デ・イタリアでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)の山岳アシストを務めると期待されながらも体調不良でリタイアし、ツール・ド・フランスではステフェン・クライスヴァイク(オランダ)をアシストしながら総合23位。デプルスは2週間前に落車事故死した同世代のビョルグ・ランブレヒト(ベルギー)に勝利を捧げた。「ビョルグは良い友人だった。彼を失ってからこのレースを欠場することも考えたけど、結果的に総合優勝という形で締めくくることができた。ずっと彼のことを考えながら走っていたし、この勝利を彼に捧げることができて嬉しい。この花束は全て彼のものだ」。
この日だけで40名近くがリタイアする中、別府史之(トレック・セガフレード)はステージ98位でフィニッシュ。総合95位で4度目のベルギー/オランダレースを終えている。ポローニュから連戦出場した別府は8月25日にドイツで開催されるUCIワールドツアーレースのユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグに出場予定だ。
ヘラールツベルヘンの登りフィニッシュを制したオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) photo:CorVos
総合優勝に輝いたローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
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7日間にわたって開催されたビンクバンク・ツアーを締めくくるのはベルギーのフランドル地方を駆け抜ける178.1kmの丘陵コース。首都ブリュッセルに近いサンピエール=ルウから西に向かい、後半にかけてヘラールツベルヘンを起点にした25.6kmの周回コースを3周する。
この25.6km周回コースには名物のミュール・ファン・ヘラールツベルヘン(全長1.1km/平均8%)やボスベルグ(全長1km/平均6%)、オンケルゼーレ(全長1.5km/平均3%)、デンデロールト(全長0.7km/平均8%)という4つの坂が詰め込まれており、カテゴリーが付けられた坂はステージ全体で14カ所。常に標高100m以下の丘陵地帯を走るコースだが、標高差は1,800mに達する。最後はミュール・ファン・ヘラールツベルヘンの中腹にフィニッシュする。
第6ステージ個人タイムトライアルを終えた時点で総合首位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)は総合2位マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)から8秒、総合3位ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)から12秒のリードを得ている状態。ステージ前半に形成された15名の先頭グループが大きなリードを得ることができないまま、レースは後半へと入っていく。
2018年ロンド・ファン・フラーンデレン2位のマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)らが先頭グループ内で積極的な動きを見せたが、最後のミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを前にドゥクーニンク・クイックステップやCCCチームが牽引するメイン集団が逃げメンバーのすぐ後ろに迫った。
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ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンでゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やセップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)、そしてオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)がアタック。「ミュールは自分の遊び場なんだ。子供時代から毎週水曜日はヘラールツベルヘンに来て練習していた。100回以上はミュールを登っているし、石畳の一つ一つや穴を全て把握している」というナーセンのアタックによって集団は分裂し、頂上通過後も踏み続けた元ベルギーチャンピオンにグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)と総合3位ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が追いつく。フィニッシュまで24kmを残して3名が先行を開始した。
『ゴールデンキロメーター』でボーナスタイム7秒を獲得したデプルスは暫定的にリーダージャージのウェレンスから5秒差の総合2位に浮上する。ペースが上がらない追走集団は総合首位ウェレンスや総合2位ヒルシ自ら牽引したが、ステージ優勝&総合ジャンプアップという思惑が一致した先頭3名は45秒までリードを拡大。少しでも追走集団を引き離したいデプルスが先頭を引き続け、ヘラールツベルヘンのフィニッシュに向かう登りに突入した。
残り300mから平均691W/最大1,207Wで踏み続けたナーセンが、先に仕掛けたファンアーフェルマートをフィニッシュ手前でパス。総合優勝のために力を尽くしたデプルスの前で、ナーセンがファンアーフェルマートとの直接対決を制した。
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今シーズン、ナーセンはミラノ〜サンレモ2位、ヘント〜ウェヴェルヘム3位、ロンド・ファン・フラーンデレン7位、パリ〜ルーベ13位。安定した走りを見せながらも1年前のブルターニュクラシック以降勝てないレースが続いていた。「今日の勝利を誇りに思う。今シーズンここまで未勝利だったことは心苦しく、ようやく肩の荷が下りた気分だ」。
そしてナーセンと35秒差の総合優勝に輝いたのが23歳のデプルス。ライバルたちの攻撃を防ぐことができず、トップと41秒差のステージ19位で終えたウェレンスはファンアーフェルマートと1秒差で総合表彰台の座を守っている。
「まだ信じられない。総合表彰台の時点で満足していた自分がまさか総合優勝するなんて。UCIワールドツアーレースでフランドルの石畳を走るのは初めてだった。実はスタート前にオリバー(ナーセン)に走り方を相談したんだけど、彼は問題ない、大丈夫だと言ってくれたんだ。そして突然彼とグレッグ(ファンアーフェルマート)と先行する展開に。彼らに食らいついた結果、後続とタイム差が付いて総合優勝が手元にやってきた。自宅のすぐ近くを走るステージで結果を残すことができて最高の気分だ」と、2016年にプロ入りし、プロレース初勝利を飾ったデプルスは語る。
デプルスはジロ・デ・イタリアでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)の山岳アシストを務めると期待されながらも体調不良でリタイアし、ツール・ド・フランスではステフェン・クライスヴァイク(オランダ)をアシストしながら総合23位。デプルスは2週間前に落車事故死した同世代のビョルグ・ランブレヒト(ベルギー)に勝利を捧げた。「ビョルグは良い友人だった。彼を失ってからこのレースを欠場することも考えたけど、結果的に総合優勝という形で締めくくることができた。ずっと彼のことを考えながら走っていたし、この勝利を彼に捧げることができて嬉しい。この花束は全て彼のものだ」。
この日だけで40名近くがリタイアする中、別府史之(トレック・セガフレード)はステージ98位でフィニッシュ。総合95位で4度目のベルギー/オランダレースを終えている。ポローニュから連戦出場した別府は8月25日にドイツで開催されるUCIワールドツアーレースのユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグに出場予定だ。
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ビンクバンク・ツアー2019第7ステージ結果
1位 | オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) | 3:52:40 |
2位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | |
3位 | ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:04 |
4位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) | 0:00:25 |
5位 | フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:26 |
6位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
7位 | ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、ディメンションデータ) | 0:00:35 |
8位 | イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ) | |
9位 | アモリー・カピオ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) | 0:00:38 |
10位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームイネオス) | |
15位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | 0:00:41 |
19位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | |
98位 | 別府史之(日本、トレック・セガフレード) | 0:07:40 |
個人総合成績
1位 | ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 21:29:55 |
2位 | オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) | 0:00:35 |
3位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:36 |
4位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 0:00:37 |
5位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | 0:00:44 |
6位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:06 |
7位 | イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:01:13 |
8位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | 0:01:16 |
9位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) | 0:01:19 |
10位 | ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、ディメンションデータ) | 0:01:23 |
ポイント賞
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 115pts |
2位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | 66pts |
3位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) | 62pts |
チーム総合成績
1位 | サンウェブ | 64:36:42 |
2位 | ユンボ・ヴィズマ | 0:01:15 |
3位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 0:01:22 |
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