2019/07/26(金) - 02:16
アルプス山脈を貫く208kmのクイーンステージで逃げグループの中から超級山岳ガリビエ峠で飛び出したナイロ・キンタナ(モビスター)が独走勝利。ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌを守り、32秒奪ったエガン・ベルナル(チームイネオス)が総合2位に浮上した。
7月25日(木)第18ステージ
アンブラン〜ヴァロワール
距離:200km
獲得標高差:4,700m
天候:晴れのち雨
気温:18〜32度
再び30名を超える選手たちが逃げ集団を形成
アルプス山岳3連戦の初日、第18ステージは今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)。美しいセールポンソン湖の畔に位置するアンブランをスタート後、渓谷に沿って高度を上げながら1級山岳ヴァル峠(距離9.3km/平均7.5%)と、岩肌が露出した独特の景観が広がる「カスデゼルト」が名物の超級山岳イゾアール峠(距離14.1km/平均7.4%)という標高2,100mオーバーの峠をクリアする。そして最後に待ち受けるのが、今大会2番目に高い標高2,642mの超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)だ。
登り中腹のロータレ峠を越えて右に曲がったところから勾配が増し、後半は7%前後の勾配を刻む名峰ガリビエ。「ボーナスポイント(ボーナスタイム8秒、5秒、2秒)」が設定された頂上を越えると、そこからフィニッシュ地点ヴァロワールの町までは距離19km/高低差1,223mのハイスピードダウンヒルが待っている。
この日はルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)とセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)がDNS。前日のレース後にルーク・ロウ(イギリス、チームイネオス)とトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)に与えられた失格処分は覆らず、156名が晴れ渡るアンブランをスタートする。スタート直後からペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)が逃げ形成のためのアタックを繰り返したが、最初の3級山岳を越えてもなおスピードは弱まらなかった。
やがてスプリントポイント(45km地点)が近づくとメイン集団は2つに割れる。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)らを含む強力な33名の集団が先行を開始した。総合で9分30秒遅れのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もこの逃げ集団に入ったが、ドゥクーニンク・クイックステップはこの動きを見送った。
逃げ集団を形成した33名
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)総合9分30秒遅れ
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)
ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
マティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
セルジュ・パウェルス(ベルギー、CCCチーム)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)
アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)
レナード・ケムナ(ドイツ、サンウェブ)
ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームイネオス)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ)
セルジオルイス・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)
マチュー・ラダニュ(フランス、グルパマFDJ)
アマエル・モワナール(フランス、アルケア・サムシック)
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
カルーゾとバルデを先頭に超級山岳イゾアール峠をクリア
バルデとの一騎打ちを制した1級山岳ヴァル峠の頂上を先頭通過したマイヨアポワのウェレンスが10ポイントを加算。メイン集団は7分40秒遅れでこの難所をクリアしていく。下り区間で飛び出したアルントを追い抜いたファンアーフェルマートとベルナールの2人が追走グループから2分のリードをもって、続く超級山岳イゾアール峠の登坂を開始した。
先頭でベルナールがファンアーフェルマートを千切った一方で、追走グループの中で積極的に動いたのはAイェーツやバルデ、キンタナ、ウッズら。「カスデゼルト」の短い下り区間を挟んで再び勾配が増すと先頭ベルナールはリードを失い、頂上手前で先頭に立ったカルーゾがバルデを押さえ込んで超級山岳イゾアール峠をクリアする。こうして先頭は9名(Aイェーツ、バルデ、カルーゾ、キンタナ、ウッズ、ルツェンコ、パウェルス、ベルナール、ケムナ)に再編成された一方で、6分後方のメイン集団ではモビスターによるペースアップが始まった。
フィニッシュまで100km近くを残したモビスターによるペースアップによってメイン集団は20名前後に絞られる。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を含むこの精鋭集団は先頭から5分10秒遅れで超級山岳イゾアール峠をクリア。集団コントロールを中止したモビスターに代わってチームイネオスがメイン集団の先頭に立ち、逃げグループから5分45秒遅れで残り50kmアーチを通過した。
縮小する逃げグループの中から超級山岳ガリビエ峠でキンタナが動く
先頭グループはウェレンスやファンアーフェルマートらの合流により16名まで人数を増やしたものの、超級山岳ガリビエ峠に向けた登りが徐々に始まると再び分裂。緩斜面でのアタック合戦の結果、バルデとルツェンコ、キンタナ、ウッズ、カルーゾの5名が飛び出した状態で超級山岳ガリビエ峠の本格的な登りへと入っていく。そして中腹のロータレ峠を通過後、頂上まで7.5kmを残してキンタナが動いた。
逃げメンバーを一発のアタックで振り切ったキンタナ。総合12位まで順位を下げていた2014年ジロ・デ・イタリア&2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者が、ステージ優勝と総合ジャンプアップを目指し、軽快な登坂力で超級山岳ガリビエ峠を駆け上がる。追走したバルデとルツェンコにすぐさま1分ものタイム差をつけたキンタナが先頭で標高2,642mの峠にたどり着いた。
一方のメイン集団はチームイネオスの支配下に置かれた。逃げグループから下がったファンバーレやワウト・プールス(オランダ)がハイペースを刻み、そこから最初に動いたのは総合5位のエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)。マイヨブランを着る22歳が、切れ味鋭いアタックでライバルたちを置き去りにした。
超級山岳ガリビエ峠を快走したキンタナとベルナル
メイン集団を率いてベルナルを追いかけたのはドゥクーニンク・クイックステップとモビスター。エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がペースを作ったものの、ベルナルのリードは広がっていく。すると、頂上まで2kmを残して今度はゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)がアタック。徐々に遅れ始めたマイヨジョーヌのアラフィリップを含む総合ライバルたちをチームイネオスの2人が引き離しにかかる。
ベルナルは総合ライバルたちに40秒のタイム差をつけて超級山岳ガリビエ峠を登坂完了。しかしトーマスはティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)らに追いつかれ、揃って頂上をクリアした。登りで遅れたアラフィリップはマイヨジョーヌを失う危機に瀕しながらも得意の下りで挽回。最高88.1km/hというスピードで猛追したアラフィリップが残り8km地点でトーマス&ピノのグループに復帰している。
先頭キンタナはヴァロワールまで安全に下りきり、本格的に雨が降る前に独走のままフィニッシュ。ステージ2位には超級山岳ガリビエ峠を2番手通過したバルデが入り、ルツェンコがステージ3位に入っている。そして注目の総合争いは、ベルナルが4分46秒遅れのステージ8位。トーマスやピノ、アラフィリップを含むメイングループが5分18秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。
総合8位に浮上したキンタナと、総合2位に浮上したベルナル
「今朝の時点では逃げグループに入って、ミケル(ランダ)をアシストする作戦だった。狙い通り逃げグループに入ってイゾアール峠をクリア。そのまま逃げグループで走り続け、ステージ優勝のチャンスが巡ってきたんだ」と、ステージ通算3勝目を飾ったキンタナは喜ぶ。キンタナは超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)を平均スピード26.5km/hで駆け上がっている。
「とは言え状況は複雑で、アンドレイ・アマドールが全てのアタックを封じてくれた。ガリビエ峠では他の選手の疲れが見えたので、正しいタイミングでアタックしたんだ。ピレネー突入前の落車から回復するのに時間がかかったけど、標高のあるアルプスの峠でようやく自分の走りができた」。キンタナは総合12位から総合7位までジャンプアップに成功。チームメイトのミケル・ランダ(スペイン)は総合8位に順位を下げている。
そしてもう一人アタックを成功させたコロンビア人が、7歳年下のベルナル。総合5位から総合2位に順位を上げたベルナルは「コロンビアにとって美しい1日になった。コロンビアのロードレースの発展に大きく貢献してきたナイロ・キンタナの勝利を嬉しく思う」と先輩クライマーを讃える。「今日はゲラント・トーマスの指示で、レースを活性化させるためにアタックした。今日の作戦は成功したけど、明日も明後日も厳しい山岳ステージ。浮き足立つことなく、引き続き落ち着いて戦わないといけない」と、アラフィリップとの総合タイム差を1分30秒にまで縮めたベルナルは語っている。
マイヨジョーヌを守ったアラフィリップは「ガリビエ峠の頂上でジェルを補給し、10秒間リカバリーしてから下りを攻めた。リスクを負いながらも集中して、落車しないことだけに注意しながら下ったんだ。限界ギリギリだったけどライバルたちに追いつけて良かったよ」と振り返る。ベルナルを除く総合ライバルたちからタイムを失うことなくクイーンステージを終えた総合リーダーは「山岳では全力を尽くしたし、明日も明後日も全力を尽くす。この国が沸いていることを理解しているし、期待度はとても大きい。自分にできることは全力を尽くすことだけ。決して諦めることなく戦い続けたい」とコメントしている。
バルデはステージ優勝を逃したものの、2つの超級山岳を2番手通過した結果ウェレンスからマイヨアポワを奪うことに成功している。アラフィリップとピノが総合争いを繰り広げる中、バルデが山岳賞トップに躍り出た。
7月25日(木)第18ステージ
アンブラン〜ヴァロワール
距離:200km
獲得標高差:4,700m
天候:晴れのち雨
気温:18〜32度
再び30名を超える選手たちが逃げ集団を形成
アルプス山岳3連戦の初日、第18ステージは今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)。美しいセールポンソン湖の畔に位置するアンブランをスタート後、渓谷に沿って高度を上げながら1級山岳ヴァル峠(距離9.3km/平均7.5%)と、岩肌が露出した独特の景観が広がる「カスデゼルト」が名物の超級山岳イゾアール峠(距離14.1km/平均7.4%)という標高2,100mオーバーの峠をクリアする。そして最後に待ち受けるのが、今大会2番目に高い標高2,642mの超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)だ。
登り中腹のロータレ峠を越えて右に曲がったところから勾配が増し、後半は7%前後の勾配を刻む名峰ガリビエ。「ボーナスポイント(ボーナスタイム8秒、5秒、2秒)」が設定された頂上を越えると、そこからフィニッシュ地点ヴァロワールの町までは距離19km/高低差1,223mのハイスピードダウンヒルが待っている。
この日はルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)とセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)がDNS。前日のレース後にルーク・ロウ(イギリス、チームイネオス)とトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)に与えられた失格処分は覆らず、156名が晴れ渡るアンブランをスタートする。スタート直後からペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)が逃げ形成のためのアタックを繰り返したが、最初の3級山岳を越えてもなおスピードは弱まらなかった。
やがてスプリントポイント(45km地点)が近づくとメイン集団は2つに割れる。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)らを含む強力な33名の集団が先行を開始した。総合で9分30秒遅れのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もこの逃げ集団に入ったが、ドゥクーニンク・クイックステップはこの動きを見送った。
逃げ集団を形成した33名
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)総合9分30秒遅れ
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)
ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
マティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
セルジュ・パウェルス(ベルギー、CCCチーム)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)
アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)
レナード・ケムナ(ドイツ、サンウェブ)
ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームイネオス)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ)
セルジオルイス・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)
マチュー・ラダニュ(フランス、グルパマFDJ)
アマエル・モワナール(フランス、アルケア・サムシック)
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
カルーゾとバルデを先頭に超級山岳イゾアール峠をクリア
バルデとの一騎打ちを制した1級山岳ヴァル峠の頂上を先頭通過したマイヨアポワのウェレンスが10ポイントを加算。メイン集団は7分40秒遅れでこの難所をクリアしていく。下り区間で飛び出したアルントを追い抜いたファンアーフェルマートとベルナールの2人が追走グループから2分のリードをもって、続く超級山岳イゾアール峠の登坂を開始した。
先頭でベルナールがファンアーフェルマートを千切った一方で、追走グループの中で積極的に動いたのはAイェーツやバルデ、キンタナ、ウッズら。「カスデゼルト」の短い下り区間を挟んで再び勾配が増すと先頭ベルナールはリードを失い、頂上手前で先頭に立ったカルーゾがバルデを押さえ込んで超級山岳イゾアール峠をクリアする。こうして先頭は9名(Aイェーツ、バルデ、カルーゾ、キンタナ、ウッズ、ルツェンコ、パウェルス、ベルナール、ケムナ)に再編成された一方で、6分後方のメイン集団ではモビスターによるペースアップが始まった。
フィニッシュまで100km近くを残したモビスターによるペースアップによってメイン集団は20名前後に絞られる。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を含むこの精鋭集団は先頭から5分10秒遅れで超級山岳イゾアール峠をクリア。集団コントロールを中止したモビスターに代わってチームイネオスがメイン集団の先頭に立ち、逃げグループから5分45秒遅れで残り50kmアーチを通過した。
縮小する逃げグループの中から超級山岳ガリビエ峠でキンタナが動く
先頭グループはウェレンスやファンアーフェルマートらの合流により16名まで人数を増やしたものの、超級山岳ガリビエ峠に向けた登りが徐々に始まると再び分裂。緩斜面でのアタック合戦の結果、バルデとルツェンコ、キンタナ、ウッズ、カルーゾの5名が飛び出した状態で超級山岳ガリビエ峠の本格的な登りへと入っていく。そして中腹のロータレ峠を通過後、頂上まで7.5kmを残してキンタナが動いた。
逃げメンバーを一発のアタックで振り切ったキンタナ。総合12位まで順位を下げていた2014年ジロ・デ・イタリア&2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者が、ステージ優勝と総合ジャンプアップを目指し、軽快な登坂力で超級山岳ガリビエ峠を駆け上がる。追走したバルデとルツェンコにすぐさま1分ものタイム差をつけたキンタナが先頭で標高2,642mの峠にたどり着いた。
一方のメイン集団はチームイネオスの支配下に置かれた。逃げグループから下がったファンバーレやワウト・プールス(オランダ)がハイペースを刻み、そこから最初に動いたのは総合5位のエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)。マイヨブランを着る22歳が、切れ味鋭いアタックでライバルたちを置き去りにした。
超級山岳ガリビエ峠を快走したキンタナとベルナル
メイン集団を率いてベルナルを追いかけたのはドゥクーニンク・クイックステップとモビスター。エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がペースを作ったものの、ベルナルのリードは広がっていく。すると、頂上まで2kmを残して今度はゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)がアタック。徐々に遅れ始めたマイヨジョーヌのアラフィリップを含む総合ライバルたちをチームイネオスの2人が引き離しにかかる。
ベルナルは総合ライバルたちに40秒のタイム差をつけて超級山岳ガリビエ峠を登坂完了。しかしトーマスはティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)らに追いつかれ、揃って頂上をクリアした。登りで遅れたアラフィリップはマイヨジョーヌを失う危機に瀕しながらも得意の下りで挽回。最高88.1km/hというスピードで猛追したアラフィリップが残り8km地点でトーマス&ピノのグループに復帰している。
先頭キンタナはヴァロワールまで安全に下りきり、本格的に雨が降る前に独走のままフィニッシュ。ステージ2位には超級山岳ガリビエ峠を2番手通過したバルデが入り、ルツェンコがステージ3位に入っている。そして注目の総合争いは、ベルナルが4分46秒遅れのステージ8位。トーマスやピノ、アラフィリップを含むメイングループが5分18秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。
総合8位に浮上したキンタナと、総合2位に浮上したベルナル
「今朝の時点では逃げグループに入って、ミケル(ランダ)をアシストする作戦だった。狙い通り逃げグループに入ってイゾアール峠をクリア。そのまま逃げグループで走り続け、ステージ優勝のチャンスが巡ってきたんだ」と、ステージ通算3勝目を飾ったキンタナは喜ぶ。キンタナは超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)を平均スピード26.5km/hで駆け上がっている。
「とは言え状況は複雑で、アンドレイ・アマドールが全てのアタックを封じてくれた。ガリビエ峠では他の選手の疲れが見えたので、正しいタイミングでアタックしたんだ。ピレネー突入前の落車から回復するのに時間がかかったけど、標高のあるアルプスの峠でようやく自分の走りができた」。キンタナは総合12位から総合7位までジャンプアップに成功。チームメイトのミケル・ランダ(スペイン)は総合8位に順位を下げている。
そしてもう一人アタックを成功させたコロンビア人が、7歳年下のベルナル。総合5位から総合2位に順位を上げたベルナルは「コロンビアにとって美しい1日になった。コロンビアのロードレースの発展に大きく貢献してきたナイロ・キンタナの勝利を嬉しく思う」と先輩クライマーを讃える。「今日はゲラント・トーマスの指示で、レースを活性化させるためにアタックした。今日の作戦は成功したけど、明日も明後日も厳しい山岳ステージ。浮き足立つことなく、引き続き落ち着いて戦わないといけない」と、アラフィリップとの総合タイム差を1分30秒にまで縮めたベルナルは語っている。
マイヨジョーヌを守ったアラフィリップは「ガリビエ峠の頂上でジェルを補給し、10秒間リカバリーしてから下りを攻めた。リスクを負いながらも集中して、落車しないことだけに注意しながら下ったんだ。限界ギリギリだったけどライバルたちに追いつけて良かったよ」と振り返る。ベルナルを除く総合ライバルたちからタイムを失うことなくクイーンステージを終えた総合リーダーは「山岳では全力を尽くしたし、明日も明後日も全力を尽くす。この国が沸いていることを理解しているし、期待度はとても大きい。自分にできることは全力を尽くすことだけ。決して諦めることなく戦い続けたい」とコメントしている。
バルデはステージ優勝を逃したものの、2つの超級山岳を2番手通過した結果ウェレンスからマイヨアポワを奪うことに成功している。アラフィリップとピノが総合争いを繰り広げる中、バルデが山岳賞トップに躍り出た。
ツール・ド・フランス2019第18ステージ結果
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 5:34:15 |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:01:35 |
3位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 0:02:28 |
4位 | レナード・ケムナ(ドイツ、サンウェブ) | 0:02:58 |
5位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:03:00 |
6位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) | 0:04:46 |
7位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) | |
8位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | |
9位 | セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ) | |
10位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:05:18 |
11位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
12位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | |
13位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | |
14位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
15位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | |
16位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
17位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
19位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:06:16 |
DNS | セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ) | |
DNS | ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 75:18:49 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:01:30 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:01:35 |
4位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:47 |
5位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:01:50 |
6位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:14 |
7位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:03:54 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:04:54 |
9位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:05:33 |
10位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:05:58 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 309pts |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 224pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 203pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 86pts |
2位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 74pts |
3位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 60pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 75:20:19 |
2位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:17:07 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:48:11 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 226:02:13 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:20:38 |
3位 | EFエデュケーションファースト | 0:59:11 |
text:Kei Tsuji in Col du Galibier, France
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