2019/07/10(水) - 02:20
イタリア人選手と相性の良いナンシーにフィニッシュするツール・ド・フランス第4ステージでエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がステージ初勝利。リードアウト要員として勝利に貢献したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌ を守っている。
7月9日(火)第4ステージ
ランス〜ナンシー
距離:213.5km
獲得標高差:1,600m
天候:晴れ
気温:19〜25度
グラン・テスト地域圏を走るスプリンターのための1日
終着地パリまで車で1時間半ほどの距離のランスから、ツールはヴォージュ山脈に向かって東へ。第3ステージと同様に210kmオーバーのロングステージだが、前半はほとんど起伏のない平野で、後半もまたほとんど起伏がない。しかしすんなりとナンシーに向かうというと決してそうではなく、残り15km地点に4級山岳マロン峠(距離3.2km/平均5%)が設定された。登り基調だった第1ステージに対してこのフィニッシュはど平坦。4級山岳をフレッシュな状態でクリアしたピュアスプリンターたちがハイスピードバトルを繰り広げることが予想された。
ランスのカテドラル(大聖堂)をニュートラル走行し、郊外に出たところで正式なスタートが切られると3名がアタック。この日もすんなりとメイン集団は逃げの挑戦者たちを見送った。
逃げグループを形成した3名
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)
フレデリック・バカールト(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
レース時間が5時間を超えるロングステージにも関わらず、常に逃げトリオを射程圏内においたメイン集団。トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)、マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・スーダル)、イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がそれぞれエーススプリンターのためにメイン集団を牽引し、タイム差を3分前後に抑え込んだ。
独走に持ち込んだシェアーの健闘も虚しく勝負は集団スプリントへ
選手たちの進行方向左側から吹く緩い北風に集団を分断するような破壊力はなかったが、ラジオツール(競技無線)は常に落車やパンクの情報を告げる。タイム差が順調に縮小する中で差し掛かったスプリントポイント(147km地点)では、先行したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を撃ち落とす形でエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭通過する。
やがてタイム差が1分を切り、フィニッシュまで30kmを切ったところで逃げグループからシェアーがアタック。食らいつくバカールトを最後の4級山岳マロン峠で振り切ったシェアーが独走に持ち込むも、スプリンターチーム率いるメイン集団の勢いには敵わない。マロン峠の中腹で吸収されたシェアーはステージ敢闘賞を獲得している。
サンウェブが集団先頭に立ち、アタックを許さないペース&ピュアスプリンターを苦しめるペースを作る。平均勾配5%の登りを平均スピード30.7km/hで駆け上がったメイン集団。残り11km地点でアタックしたリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)も90km/hオーバーのハイスピードダウンヒルの末に吸収され、フィニッシュラインが引かれたナンシーの街中に突入した。
ハイスピード位置どり合戦の末にマイヨジョーヌが先頭に立つ
ラスト5kmからフィニッシュラインまで平均スピード58.2km/hで駆け抜ける。特に道幅が狭まる残り2kmのラウンドアバウト(ロータリー)に向けての位置取り争いは熾烈を極めた。70km/h近い高速巡航の末に、先頭でラウンドアバウトに突入したのはマイヨブランを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)。しかしユンボ・ヴィズマが完全に主導権を握るには至らず、フラムルージュ(残り1kmアーチ)通過とともにマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が集団先頭に躍り出た。
ドゥクーニンク・クイックステップはアラフィリップ→ミケル・モルコフ(デンマーク)→マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)→エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)という隊列を組んで勝負。アラフィリップ離脱後にしばらく先頭を引いたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)の後ろから、残り500mサインと同時にモルコフが発進する。教科書通りのリードアウトを見せたデンマークチャンピオンとアルゼンチンチャンピオンが、UAEチームエミレーツとロット・スーダルに先頭を譲ることなくヴィヴィアーニを発射。
フェンス際を突き進んだヴィヴィアーニに対抗したのはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、そしてカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。いずれの選手にも並ばせることなく、フィニッシュラインにハンドルを投げ込んだヴィヴィアーニが先着した。
ヴィヴィアーニのスプリント中のトップスピードは67.3km/h。トップスピード70.2km/hを記録したユアンが踏みやめたサガンを追い抜いてステージ3位でフィニッシュしている。
ヴィヴィアーニがジロとブエルタに続くステージ優勝を達成
ドゥクーニンク・クイックステップがステージ2連勝。ヴィヴィアーニは「ミケル・モルコフとマキシミリアーノ・リケーゼが完璧なリードアウトをしてくれた。自分がやったことといえば、残り180mからスプリントしただけ。アレクサンドル・クリストフが右側から先に仕掛けようとしているのが見えたけど、自分のスプリントに持ち込むことができた」と勝利を振り返る。
ジロ・デ・イタリアでステージ5勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を飾っているヴィヴィアーニにとってこれがツールステージ初優勝。「この勝利はとても大きな意味を持つ。シーズン最大の目標レースで勝利することができた。第1ステージのチャンスを逃したものの、ジュリアン(アラフィリップ)の勝利でチームのスイッチが切り替わった。ジロとブエルタに続くステージ優勝で、ミッションを完遂した気分だ」とヴィヴィアーニ。
過去に15回登場したナンシーのフィニッシュのうち、イタリア人選手がステージ優勝したのは5回。ファウスト・コッピ、アルド・パレッキーニ、ロレンツォ・ベルヌッチ、マッテオ・トレンティンらに続くステージ優勝者として、ヴィヴィアーニがイタリアの伝統を引き継いだ。なお、ツールの大集団スプリントでのイタリアンスプリンターの勝利は2010年ツール第4ステージのアレッサンドロ・ペタッキ以来9年ぶり。
勝利に貢献したアラフィリップはマイヨジョーヌを守り、マイヨヴェール(サガン)、マイヨアポワ(ウェレンス)、マイヨブラン(ファンアールト)も動かず。ツールは翌日から2日間ヴォージュ山脈を駆け抜ける。
7月9日(火)第4ステージ
ランス〜ナンシー
距離:213.5km
獲得標高差:1,600m
天候:晴れ
気温:19〜25度
グラン・テスト地域圏を走るスプリンターのための1日
終着地パリまで車で1時間半ほどの距離のランスから、ツールはヴォージュ山脈に向かって東へ。第3ステージと同様に210kmオーバーのロングステージだが、前半はほとんど起伏のない平野で、後半もまたほとんど起伏がない。しかしすんなりとナンシーに向かうというと決してそうではなく、残り15km地点に4級山岳マロン峠(距離3.2km/平均5%)が設定された。登り基調だった第1ステージに対してこのフィニッシュはど平坦。4級山岳をフレッシュな状態でクリアしたピュアスプリンターたちがハイスピードバトルを繰り広げることが予想された。
ランスのカテドラル(大聖堂)をニュートラル走行し、郊外に出たところで正式なスタートが切られると3名がアタック。この日もすんなりとメイン集団は逃げの挑戦者たちを見送った。
逃げグループを形成した3名
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)
フレデリック・バカールト(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
レース時間が5時間を超えるロングステージにも関わらず、常に逃げトリオを射程圏内においたメイン集団。トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)、マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・スーダル)、イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がそれぞれエーススプリンターのためにメイン集団を牽引し、タイム差を3分前後に抑え込んだ。
独走に持ち込んだシェアーの健闘も虚しく勝負は集団スプリントへ
選手たちの進行方向左側から吹く緩い北風に集団を分断するような破壊力はなかったが、ラジオツール(競技無線)は常に落車やパンクの情報を告げる。タイム差が順調に縮小する中で差し掛かったスプリントポイント(147km地点)では、先行したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を撃ち落とす形でエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭通過する。
やがてタイム差が1分を切り、フィニッシュまで30kmを切ったところで逃げグループからシェアーがアタック。食らいつくバカールトを最後の4級山岳マロン峠で振り切ったシェアーが独走に持ち込むも、スプリンターチーム率いるメイン集団の勢いには敵わない。マロン峠の中腹で吸収されたシェアーはステージ敢闘賞を獲得している。
サンウェブが集団先頭に立ち、アタックを許さないペース&ピュアスプリンターを苦しめるペースを作る。平均勾配5%の登りを平均スピード30.7km/hで駆け上がったメイン集団。残り11km地点でアタックしたリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)も90km/hオーバーのハイスピードダウンヒルの末に吸収され、フィニッシュラインが引かれたナンシーの街中に突入した。
ハイスピード位置どり合戦の末にマイヨジョーヌが先頭に立つ
ラスト5kmからフィニッシュラインまで平均スピード58.2km/hで駆け抜ける。特に道幅が狭まる残り2kmのラウンドアバウト(ロータリー)に向けての位置取り争いは熾烈を極めた。70km/h近い高速巡航の末に、先頭でラウンドアバウトに突入したのはマイヨブランを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)。しかしユンボ・ヴィズマが完全に主導権を握るには至らず、フラムルージュ(残り1kmアーチ)通過とともにマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が集団先頭に躍り出た。
ドゥクーニンク・クイックステップはアラフィリップ→ミケル・モルコフ(デンマーク)→マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)→エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)という隊列を組んで勝負。アラフィリップ離脱後にしばらく先頭を引いたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)の後ろから、残り500mサインと同時にモルコフが発進する。教科書通りのリードアウトを見せたデンマークチャンピオンとアルゼンチンチャンピオンが、UAEチームエミレーツとロット・スーダルに先頭を譲ることなくヴィヴィアーニを発射。
フェンス際を突き進んだヴィヴィアーニに対抗したのはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、そしてカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。いずれの選手にも並ばせることなく、フィニッシュラインにハンドルを投げ込んだヴィヴィアーニが先着した。
ヴィヴィアーニのスプリント中のトップスピードは67.3km/h。トップスピード70.2km/hを記録したユアンが踏みやめたサガンを追い抜いてステージ3位でフィニッシュしている。
ヴィヴィアーニがジロとブエルタに続くステージ優勝を達成
ドゥクーニンク・クイックステップがステージ2連勝。ヴィヴィアーニは「ミケル・モルコフとマキシミリアーノ・リケーゼが完璧なリードアウトをしてくれた。自分がやったことといえば、残り180mからスプリントしただけ。アレクサンドル・クリストフが右側から先に仕掛けようとしているのが見えたけど、自分のスプリントに持ち込むことができた」と勝利を振り返る。
ジロ・デ・イタリアでステージ5勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を飾っているヴィヴィアーニにとってこれがツールステージ初優勝。「この勝利はとても大きな意味を持つ。シーズン最大の目標レースで勝利することができた。第1ステージのチャンスを逃したものの、ジュリアン(アラフィリップ)の勝利でチームのスイッチが切り替わった。ジロとブエルタに続くステージ優勝で、ミッションを完遂した気分だ」とヴィヴィアーニ。
過去に15回登場したナンシーのフィニッシュのうち、イタリア人選手がステージ優勝したのは5回。ファウスト・コッピ、アルド・パレッキーニ、ロレンツォ・ベルヌッチ、マッテオ・トレンティンらに続くステージ優勝者として、ヴィヴィアーニがイタリアの伝統を引き継いだ。なお、ツールの大集団スプリントでのイタリアンスプリンターの勝利は2010年ツール第4ステージのアレッサンドロ・ペタッキ以来9年ぶり。
勝利に貢献したアラフィリップはマイヨジョーヌを守り、マイヨヴェール(サガン)、マイヨアポワ(ウェレンス)、マイヨブラン(ファンアールト)も動かず。ツールは翌日から2日間ヴォージュ山脈を駆け抜ける。
ツール・ド・フランス2019第4ステージ結果
1位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 5:09:20 |
2位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
6位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
7位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ) | |
8位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
9位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
10位 | クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 14:41:39 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:20 |
3位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:25 |
4位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | |
5位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 0:00:40 |
6位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | |
7位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:00:45 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:46 |
9位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 0:00:51 |
10位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 104pts |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 81pts |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 75pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 7pts |
2位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | 3pts |
3位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 2pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 14:41:59 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:20 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:26 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィズマ | 44:35:04 |
2位 | サンウェブ | 0:01:44 |
3位 | EFエデュケーションファースト | 0:01:57 |
text&photo:Kei Tsuji in Nancy, France
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