2019/07/09(火) - 03:38
終盤にかけて『シャンパーニュ』の丘陵を走るツール・ド・フランス第3ステージ。残り16km地点の3級山岳ミュティニー峠でアタックしたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がセンセーショナルな独走勝利でフランスに5年ぶりのマイヨジョーヌをもたらした。
7月8日(月)第3ステージ
バンシュ〜エペルネ
距離:215km
獲得標高差:2,400m
天候:晴れ
気温:17〜22度
7月8日(月)第3ステージ バンシュ〜エペルネ 215km photo:A.S.O.
7月8日(月)第3ステージ バンシュ〜エペルネ 215km photo:A.S.O.
バンシュのスタート地点に登場したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
第1ステージの落車の影響を感じさせないヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) photo:Kei Tsuji
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)と『鶴・ド・フランス』 photo:Kei Tsuji
ツールはベルギーからフランスへ ウェレンスが逃げに乗る
ベルギー南部ワロン地域のバンシュをスタートする『アルデンヌクラシック』のような215kmの丘陵コースが設定されたツール第3ステージ。スタート後すぐ、10km地点でベルギーに別れを告げてフランスに入国すると、そこからフィニッシュ地点エペルネまで一直線に南下する。ステージの大部分は平坦だが残り55kmを切ると大地は上下にうねり始め、ワイン畑に覆われた丘が登場。スパークリングワインのシャンパーニュ(日本ではシャンパンと呼ばれる)の産地であるシャンパーニュ地方の丘陵を通過する。
登場する4級、3級、3級、3級のカテゴリー山岳はいずれも短距離&急勾配。ワイン畑に覆われた丘を直登する最後の3級山岳ミュティニー峠は距離900mで平均勾配12.2%という難易度で、しかもその頂上はフィニッシュから16kmしか離れていない。この3級山岳ミュティニー峠は新たに採用された「ボーナスポイント(地図と高低図の黄色いB)」の今大会第1弾で、上位通過者3名に、8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与される(フィニッシュのボーナスタイムは変わらず10秒、6秒、4秒)。これらの登りに加え、ラスト500mから平均勾配8%の登りをこなすレイアウトはパンチャー向きだ。
スタート後すぐ、ワイルドカード出場のUCIプロコンチネンタルチームの4名に、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)を加えた5名がアタック。ベルギー・ワロン地域出身の母親をもつウェレンスが逃げに乗る。この5名のメンバー構成に納得したメイン集団がスピードを落としたため、ウェレンスが暫定マイヨジョーヌの状態でフランスに入国した。
逃げグループを形成した5名
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)1分09秒遅れ
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)1分52秒遅れ
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)2分11秒遅れ
アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)2分44秒遅れ
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)5分17秒遅れ
最大で6分15秒まで広がったタイム差を、トニー・マルティン(ドイツ)をはじめとするユンボ・ヴィズマの大柄なルーラーたちが削り取る。緩い北風に押されるように、レースは主催者の予想スピードを上回るペースで進行した。最初の2時間の平均スピードは45.7km/hに達している。
スタート後すぐに形成されたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)を含む逃げ photo:Kei Tsuji
ベルギーからフランスへと進むメイン集団 photo:Luca Bettini
マイヨジョーヌを着て走るマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Luca Bettini
フランス北部の平野を走るメイン集団 photo:Luca Bettini
ランスの街を通過するペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ら photo:Luca Bettini
落車やパンクが多発 連続山岳でマイヨジョーヌが遅れる
逃げグループから遅れること4分でスプリントポイント(102km地点)に差し掛かったメイン集団ではピュアスプリンターたちの本格バトルが繰り広げられ、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が10ポイントを獲得している。9ポイント獲得のサガンは暫定ポイント賞トップに立った。
ドゥクーニンク・クイックステップも牽引に加わったことでメイン集団のペースは上がり、残り74km地点でタイム差は2分を切る。そこからメイン集団内ではパンクや落車が多発し、終盤のアップダウン区間に向けてナーバスな状態となる。
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)やパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)らが相次いで落車し、フランスの期待を背負うティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)がパンクでホイール交換を行なっている。
こうしてメイン集団内がざわつく中、タイム差2分で残り48km地点に差し掛かった逃げグループの中からウェレンスがアタックした。「チームはカレブ・ユアンでステージ優勝を狙う作戦だった。でも今日はずっと追い風が吹いていて、徐々に逃げ切りによるステージ優勝の可能性を感じ始めたんだ」というウェレンスが独走を開始。ウェレンスが4級山岳と2つの3級山岳を先頭通過した一方で、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)はメイン集団から遅れ、マイヨジョーヌを着るマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)もやがては脱落した。
パンクしたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がメカニックに押されて再スタート photo:Luca Bettini
ボーラ・ハンスグローエがメイン集団をコントロール photo:Luca Bettini
独走で逃げ続けるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
最後の3級山岳ミュティニー峠に突入するメイン集団 photo:Kei Tsuji
急勾配の登りでアタックしたアラフィリップが16kmを独走
ボーラ・ハンスグローエとアスタナ、ドゥクーニンク・クイックステップが率いるメイン集団がウェレンスの1分後方に迫った状態で最後の3級山岳ミュティニー峠に突入する。逃げ切りに向けて独走を続けたウェレンスはパンクによって失速。急勾配の登りでリードを失うウェレンス目掛けて、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が飛び出した。
頂上まで100m、最大15%程度に達する急勾配区間でアタックを仕掛けたアラフィリップがウェレンスに続いて3級山岳ミュティニー峠を通過する。ホイール交換のためにストップしたウェレンスに代わって、フィニッシュまで16kmを残してアラフィリップが先頭に立った。
3級山岳ミュティニー峠で2分50秒にわたって平均488Wを出力し、集団先頭(3番手)で頂上を越えたマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)がマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)らと追走グループを組織する。しかし、アラフィリップは下り区間でさらにリードを上乗せ。追走グループを形成したウッズや残り10km地点でウッズら4名は吸収され、アラフィリップが単独で35秒先行する状態となる。
チームイネオスとユンボ・ヴィズマがメイン集団を率いたものの、最大で50秒までリードを広げたアラフィリップを捕まえることはできない。残り4km地点の急坂をこなしたアラフィリップが、『シャンパーニュの首都』と呼ばれるエペルネのフィニッシュラインまで独走した。アラフィリップの独走中の平均スピードは47.2km/hだった。
約60名に絞られたメイン集団からはファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がパンクで脱落。メイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)を先頭に、アラフィリップから26秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。フィニッシュへの登りで集団が割れたため、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がその他の総合ライバルたちから5秒奪うことに成功している。
シャンパーニュの丘を逃げるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
3級山岳ミュティニー峠をハイスピードで駆け上がるメイン集団 photo:Kei Tsuji
急勾配の3級山岳ミュティニー峠を走るメイン集団 photo:Kei Tsuji
3級山岳ミュティニー峠でアタックするジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
残り16kmを独走するジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
独走のままフィニッシュにやってきたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
フランスに久々のマイヨジョーヌをもたらしたアラフィリップ
「言葉が出てこない。何が起こっているのかよくわからない」と、センセーショナルな独走勝利を飾ったアラフィリップ。当初から『アルデンヌクラシック』に通じるこの第3ステージはアラフィリップ向きだと見られていたが、ライバルたちを驚かす鋭いアタックと粘り強い独走でステージ通算3勝目を飾ってみせた。ドゥクーニンク・クイックステップは2013年以降7年連続ステージ優勝を飾っていることになる。
「このステージは自分向きだと思っていたので、落車やトラブルだけには巻き込まれないように心がけていた。調子の良さを感じて最後のミュティニー峠でアタックしたものの、独走に持ち込もうとは思っていなかったよ。でも単独で飛び出した形になったので、そこからは全開走行に切り替えた。有力候補という大きな期待に応えるのは簡単なことじゃないけど、やりきった。本当に嬉しい」。
アラフィリップはスタートの時点で総合11位/31秒遅れ。この日メイン集団に26秒をつけ、さらに合計15秒のボーナスタイムを獲得したアラフィリップがマイヨジョーヌを手にした。フランス人選手のマイヨジョーヌ着用は2014年7月13日のトニー・ガロパン(フランス)以来、実に5年ぶりとなる。アラフィリップは史上85人目のフランス人マイヨジョーヌ着用者となった。
第3ステージを終えて総合1位アラフィリップと総合2位のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)のタイム差は20秒。マイヨブランを着るファンアールトは「今日はマイク(テウニッセン)と自分でステージ優勝を狙う予定だったけど、マイクが調子の悪さを告げてきたので、自分ができる限り登りで集団に残って、チームとしてマイヨジョーヌを守るために走った。でも予想以上に最後の登りの勾配がきつく、マイヨジョーヌを逃す結果になってしまった。ユンボ・ヴィズマは完璧な走りをしたけど、ただアラフィリップが誰よりも強かった」と勝者を称えている。
この日は終盤にパンクしたファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)が1分22秒遅れ、さらにイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が3分51秒遅れ。逃げ吸収後にペースを弱め、先頭から9分32秒遅れでフィニッシュしたウェレンスがマイヨアポワとステージ敢闘賞を手にしている。
雄叫びをあげるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
2位争いのスプリントを繰り広げるマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:Luca Bettini
エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)の5秒前でフィニッシュ photo:Luca Bettini
5分近く遅れてフィニッシュしたマイヨジョーヌのマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Luca Bettini
逃げ切り勝利を果たし、マイヨジョーヌを獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
マイヨヴェールを手にしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Luca Bettini
逃げたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がマイヨアポワ獲得 photo:Luca Bettini
マイヨブランをキープしたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) photo:Luca Bettini
ステージ敢闘賞を獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
7月8日(月)第3ステージ
バンシュ〜エペルネ
距離:215km
獲得標高差:2,400m
天候:晴れ
気温:17〜22度
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ツールはベルギーからフランスへ ウェレンスが逃げに乗る
ベルギー南部ワロン地域のバンシュをスタートする『アルデンヌクラシック』のような215kmの丘陵コースが設定されたツール第3ステージ。スタート後すぐ、10km地点でベルギーに別れを告げてフランスに入国すると、そこからフィニッシュ地点エペルネまで一直線に南下する。ステージの大部分は平坦だが残り55kmを切ると大地は上下にうねり始め、ワイン畑に覆われた丘が登場。スパークリングワインのシャンパーニュ(日本ではシャンパンと呼ばれる)の産地であるシャンパーニュ地方の丘陵を通過する。
登場する4級、3級、3級、3級のカテゴリー山岳はいずれも短距離&急勾配。ワイン畑に覆われた丘を直登する最後の3級山岳ミュティニー峠は距離900mで平均勾配12.2%という難易度で、しかもその頂上はフィニッシュから16kmしか離れていない。この3級山岳ミュティニー峠は新たに採用された「ボーナスポイント(地図と高低図の黄色いB)」の今大会第1弾で、上位通過者3名に、8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与される(フィニッシュのボーナスタイムは変わらず10秒、6秒、4秒)。これらの登りに加え、ラスト500mから平均勾配8%の登りをこなすレイアウトはパンチャー向きだ。
スタート後すぐ、ワイルドカード出場のUCIプロコンチネンタルチームの4名に、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)を加えた5名がアタック。ベルギー・ワロン地域出身の母親をもつウェレンスが逃げに乗る。この5名のメンバー構成に納得したメイン集団がスピードを落としたため、ウェレンスが暫定マイヨジョーヌの状態でフランスに入国した。
逃げグループを形成した5名
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)1分09秒遅れ
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)1分52秒遅れ
ヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)2分11秒遅れ
アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)2分44秒遅れ
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)5分17秒遅れ
最大で6分15秒まで広がったタイム差を、トニー・マルティン(ドイツ)をはじめとするユンボ・ヴィズマの大柄なルーラーたちが削り取る。緩い北風に押されるように、レースは主催者の予想スピードを上回るペースで進行した。最初の2時間の平均スピードは45.7km/hに達している。
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落車やパンクが多発 連続山岳でマイヨジョーヌが遅れる
逃げグループから遅れること4分でスプリントポイント(102km地点)に差し掛かったメイン集団ではピュアスプリンターたちの本格バトルが繰り広げられ、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が10ポイントを獲得している。9ポイント獲得のサガンは暫定ポイント賞トップに立った。
ドゥクーニンク・クイックステップも牽引に加わったことでメイン集団のペースは上がり、残り74km地点でタイム差は2分を切る。そこからメイン集団内ではパンクや落車が多発し、終盤のアップダウン区間に向けてナーバスな状態となる。
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)やパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)らが相次いで落車し、フランスの期待を背負うティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)がパンクでホイール交換を行なっている。
こうしてメイン集団内がざわつく中、タイム差2分で残り48km地点に差し掛かった逃げグループの中からウェレンスがアタックした。「チームはカレブ・ユアンでステージ優勝を狙う作戦だった。でも今日はずっと追い風が吹いていて、徐々に逃げ切りによるステージ優勝の可能性を感じ始めたんだ」というウェレンスが独走を開始。ウェレンスが4級山岳と2つの3級山岳を先頭通過した一方で、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)はメイン集団から遅れ、マイヨジョーヌを着るマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)もやがては脱落した。
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急勾配の登りでアタックしたアラフィリップが16kmを独走
ボーラ・ハンスグローエとアスタナ、ドゥクーニンク・クイックステップが率いるメイン集団がウェレンスの1分後方に迫った状態で最後の3級山岳ミュティニー峠に突入する。逃げ切りに向けて独走を続けたウェレンスはパンクによって失速。急勾配の登りでリードを失うウェレンス目掛けて、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が飛び出した。
頂上まで100m、最大15%程度に達する急勾配区間でアタックを仕掛けたアラフィリップがウェレンスに続いて3級山岳ミュティニー峠を通過する。ホイール交換のためにストップしたウェレンスに代わって、フィニッシュまで16kmを残してアラフィリップが先頭に立った。
3級山岳ミュティニー峠で2分50秒にわたって平均488Wを出力し、集団先頭(3番手)で頂上を越えたマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)がマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)らと追走グループを組織する。しかし、アラフィリップは下り区間でさらにリードを上乗せ。追走グループを形成したウッズや残り10km地点でウッズら4名は吸収され、アラフィリップが単独で35秒先行する状態となる。
チームイネオスとユンボ・ヴィズマがメイン集団を率いたものの、最大で50秒までリードを広げたアラフィリップを捕まえることはできない。残り4km地点の急坂をこなしたアラフィリップが、『シャンパーニュの首都』と呼ばれるエペルネのフィニッシュラインまで独走した。アラフィリップの独走中の平均スピードは47.2km/hだった。
約60名に絞られたメイン集団からはファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がパンクで脱落。メイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)を先頭に、アラフィリップから26秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。フィニッシュへの登りで集団が割れたため、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がその他の総合ライバルたちから5秒奪うことに成功している。
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フランスに久々のマイヨジョーヌをもたらしたアラフィリップ
「言葉が出てこない。何が起こっているのかよくわからない」と、センセーショナルな独走勝利を飾ったアラフィリップ。当初から『アルデンヌクラシック』に通じるこの第3ステージはアラフィリップ向きだと見られていたが、ライバルたちを驚かす鋭いアタックと粘り強い独走でステージ通算3勝目を飾ってみせた。ドゥクーニンク・クイックステップは2013年以降7年連続ステージ優勝を飾っていることになる。
「このステージは自分向きだと思っていたので、落車やトラブルだけには巻き込まれないように心がけていた。調子の良さを感じて最後のミュティニー峠でアタックしたものの、独走に持ち込もうとは思っていなかったよ。でも単独で飛び出した形になったので、そこからは全開走行に切り替えた。有力候補という大きな期待に応えるのは簡単なことじゃないけど、やりきった。本当に嬉しい」。
アラフィリップはスタートの時点で総合11位/31秒遅れ。この日メイン集団に26秒をつけ、さらに合計15秒のボーナスタイムを獲得したアラフィリップがマイヨジョーヌを手にした。フランス人選手のマイヨジョーヌ着用は2014年7月13日のトニー・ガロパン(フランス)以来、実に5年ぶりとなる。アラフィリップは史上85人目のフランス人マイヨジョーヌ着用者となった。
第3ステージを終えて総合1位アラフィリップと総合2位のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)のタイム差は20秒。マイヨブランを着るファンアールトは「今日はマイク(テウニッセン)と自分でステージ優勝を狙う予定だったけど、マイクが調子の悪さを告げてきたので、自分ができる限り登りで集団に残って、チームとしてマイヨジョーヌを守るために走った。でも予想以上に最後の登りの勾配がきつく、マイヨジョーヌを逃す結果になってしまった。ユンボ・ヴィズマは完璧な走りをしたけど、ただアラフィリップが誰よりも強かった」と勝者を称えている。
この日は終盤にパンクしたファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)が1分22秒遅れ、さらにイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が3分51秒遅れ。逃げ吸収後にペースを弱め、先頭から9分32秒遅れでフィニッシュしたウェレンスがマイヨアポワとステージ敢闘賞を手にしている。
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




ツール・ド・フランス2019第3ステージ結果
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 4:40:29 |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 0:00:26 |
3位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
4位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | |
5位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
7位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
8位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | |
9位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | |
10位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | |
12位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | |
13位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:00:31 |
14位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | |
16位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
17位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
21位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | |
23位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
25位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
28位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
29位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
35位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | |
37位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
38位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
71位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 0:03:51 |
80位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:04:54 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 9:32:19 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:20 |
3位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:25 |
4位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | |
5位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 0:00:40 |
6位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | |
7位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:00:45 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:46 |
9位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 0:00:51 |
10位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 76pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 59pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 54pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 7pts |
2位 | クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | 3pts |
3位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 2pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 9:32:39 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:20 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:26 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィズマ | 29:07:04 |
2位 | サンウェブ | 0:01:44 |
3位 | EFエデュケーションファースト | 0:01:57 |
text&photo:Kei Tsuji in Epernay, France
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