2010/04/20(火) - 12:01
最大勾配が26%に達する「ユイの壁(Mur de Huy)」にゴールするアルデンヌ・クラシック第2戦、第74回フレーシュ・ワロンヌ(UCIヒストリカル)が4月21日に開催される。アルデンヌ屈指の激坂を最速で駆け上がり、伝統のタイトルを手にするのは果たして誰だ?
ユイの壁を含む10の上りが待ち構える
アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュの間に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。
レースの舞台となるのはベルギー南部のワロン地域。他の2レース(アムステルとリエージュ)と同じく、距離の短い上りが連続して登場する。コース全長は200kmに満たない198kmで、数あるワンディクラシックの中では短めの部類に入る。
シャルルロワをスタートした一行は、リエージュ方向に向かって平坦な67kmのコースを東進。そこから「ユイの壁」を起点とした大小2種類の周回コースに入る。
合計10カ所の上りは、いずれも長さが1〜3kmほどで、平均勾配は3〜9%。登坂距離と上りの数だけを見ると、他の2レースより難易度は低い。しかしそれはレースの高速化を意味している。
数ある上り坂の中でもやはり注目は、合計3回通過し、ゴール地点でもある「ユイの壁」だ。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の上りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%に達する後半部分にある。上りが進むにつれて勾配が増し、頂上手前でマックスに。アムステルで登場したカウベルグ(最大勾配12%)よりも、断然その難易度は高い。
昨年までは1周30kmの小周回をこなし、「ユイの壁」通過後に大周回を回ってゴールだったが、今年はその大小の順序が入れ替わった。
まず大周回をこなし、次に30kmの小周回が登場。つまり、2回目の「ユイの壁」がよりゴールに近くなった。レース主催者は「コース変更により、終盤の展開がますます刺激的なものになる」と予想する。
周回コースの順序変更により、ゴールの11km手前に登場することとなったイレフ峠は、登坂距離2000mで平均勾配が5.9%。ここでは集団は破壊するような攻撃的な動きが生まれるはずだ。ここで形成された少人数グループが「ユイの壁」に突入し、激坂で最後のバトルが繰り広げる。中盤からのアップダウンを攻略して重要な動きに反応し、最速で「壁」を駆け上がった選手が栄光を掴む。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 67.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 106.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 112.0km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 137.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 143.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 146.0km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 157.0km地点 Cote d'Ahin 2300m・6.5%
8 168.0km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
9 187.0km地点 Cote d'Ereffe 2000m・5.9%
10 198.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
コンタドール出場で激戦必至 激坂を制するのは誰?
アルデンヌ・クラシックの中で最も急勾配の上りにゴールするだけに、優れた登坂力をもつクライマー系選手が優勝候補に挙げられる。今年もグランツールで総合優勝を狙うようなオールラウンダーが顔を揃える。
今年はブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで総合優勝したばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が参戦。コンタドールは2006年と2007年にアルデンヌを転戦したことがあるが、大きな結果は残していない。グランツールの山岳で発揮される圧倒的な登坂力がユイの壁で発揮されるのか。
アムステルを制したばかりのフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を優勝候補に挙げたいところだが、ジルベールはレース後のインタビューで「フレーシュは僕のレースではない」と自信なさげなコメント。だが「2回目のユイがゴールに近くなったのでチャンスがあるかも」とも語っている。アムステルで見せたその爆発力に注目したい。
2006年大会の優勝者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、アイルランドの火山噴火に伴う空港閉鎖&フライトキャンセルによりアムステルを欠場。何とか陸路でベルギー入りした。同じくアムステルを欠場したルイスレオン・サンチェス(スペイン)を従え、4年ぶりの大会制覇を目指す。
アムステルで積極的な走りが光りながらも、ジルベールに敗れ去ったシュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)は、このフレーシュでリベンジを誓う。弟アンディは昨年このフレーシュで2位に入り、その勢いのままリエージュ初制覇を成し遂げている。再びアンディとフランクの交互アタックが見られるだろう。
出場チーム中、トップクラスの戦力を有するのが、2008年大会覇者のキム・キルシェン(ルクセンブルク)擁するカチューシャだ。アムステルでは終盤まで人数を揃えてレースをリードした。激坂レースで数々の勝利を収めているホアキン・ロドリゲス(スペイン)やセルゲイ・イワノフ(ロシア)、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)らがキルシェンをバックアップする。
このフレーシュで2008年から2年連続で3位に入ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)や、アムステル2位のライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合優勝者クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)らも上位に絡んでくるだろう。
ツアー・オブ・ターキーで果敢な走りを見せたエストニアチャンピオンのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)も伏兵として注目したい。
現世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は、2008年大会で2位に入り、オーストラリア人として初めてフレーシュの表彰台に上がった。アルカンシェルを着るエヴァンスは、カルステン・クローン(オランダ)のアシストとして出場したアムステルで好調をアピールしている。
エヴァンスと同じくオーストラリア人初優勝を狙うのが、新生チームスカイのサイモン・ジェランス(オーストラリア)だ。チームにはトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)を始め、アルデンヌ向きの選手が揃っている。ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)の存在も不気味だ。
シクロワイアードではフレーシュ・ワロンヌのテキストライブを4月21日(水)21時からお届けする予定です!
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
ユイの壁を含む10の上りが待ち構える
アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュの間に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。
レースの舞台となるのはベルギー南部のワロン地域。他の2レース(アムステルとリエージュ)と同じく、距離の短い上りが連続して登場する。コース全長は200kmに満たない198kmで、数あるワンディクラシックの中では短めの部類に入る。
シャルルロワをスタートした一行は、リエージュ方向に向かって平坦な67kmのコースを東進。そこから「ユイの壁」を起点とした大小2種類の周回コースに入る。
合計10カ所の上りは、いずれも長さが1〜3kmほどで、平均勾配は3〜9%。登坂距離と上りの数だけを見ると、他の2レースより難易度は低い。しかしそれはレースの高速化を意味している。
数ある上り坂の中でもやはり注目は、合計3回通過し、ゴール地点でもある「ユイの壁」だ。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の上りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%に達する後半部分にある。上りが進むにつれて勾配が増し、頂上手前でマックスに。アムステルで登場したカウベルグ(最大勾配12%)よりも、断然その難易度は高い。
昨年までは1周30kmの小周回をこなし、「ユイの壁」通過後に大周回を回ってゴールだったが、今年はその大小の順序が入れ替わった。
まず大周回をこなし、次に30kmの小周回が登場。つまり、2回目の「ユイの壁」がよりゴールに近くなった。レース主催者は「コース変更により、終盤の展開がますます刺激的なものになる」と予想する。
周回コースの順序変更により、ゴールの11km手前に登場することとなったイレフ峠は、登坂距離2000mで平均勾配が5.9%。ここでは集団は破壊するような攻撃的な動きが生まれるはずだ。ここで形成された少人数グループが「ユイの壁」に突入し、激坂で最後のバトルが繰り広げる。中盤からのアップダウンを攻略して重要な動きに反応し、最速で「壁」を駆け上がった選手が栄光を掴む。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 67.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 106.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 112.0km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 137.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 143.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 146.0km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 157.0km地点 Cote d'Ahin 2300m・6.5%
8 168.0km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
9 187.0km地点 Cote d'Ereffe 2000m・5.9%
10 198.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
コンタドール出場で激戦必至 激坂を制するのは誰?
アルデンヌ・クラシックの中で最も急勾配の上りにゴールするだけに、優れた登坂力をもつクライマー系選手が優勝候補に挙げられる。今年もグランツールで総合優勝を狙うようなオールラウンダーが顔を揃える。
今年はブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで総合優勝したばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が参戦。コンタドールは2006年と2007年にアルデンヌを転戦したことがあるが、大きな結果は残していない。グランツールの山岳で発揮される圧倒的な登坂力がユイの壁で発揮されるのか。
アムステルを制したばかりのフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を優勝候補に挙げたいところだが、ジルベールはレース後のインタビューで「フレーシュは僕のレースではない」と自信なさげなコメント。だが「2回目のユイがゴールに近くなったのでチャンスがあるかも」とも語っている。アムステルで見せたその爆発力に注目したい。
2006年大会の優勝者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、アイルランドの火山噴火に伴う空港閉鎖&フライトキャンセルによりアムステルを欠場。何とか陸路でベルギー入りした。同じくアムステルを欠場したルイスレオン・サンチェス(スペイン)を従え、4年ぶりの大会制覇を目指す。
アムステルで積極的な走りが光りながらも、ジルベールに敗れ去ったシュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)は、このフレーシュでリベンジを誓う。弟アンディは昨年このフレーシュで2位に入り、その勢いのままリエージュ初制覇を成し遂げている。再びアンディとフランクの交互アタックが見られるだろう。
出場チーム中、トップクラスの戦力を有するのが、2008年大会覇者のキム・キルシェン(ルクセンブルク)擁するカチューシャだ。アムステルでは終盤まで人数を揃えてレースをリードした。激坂レースで数々の勝利を収めているホアキン・ロドリゲス(スペイン)やセルゲイ・イワノフ(ロシア)、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)らがキルシェンをバックアップする。
このフレーシュで2008年から2年連続で3位に入ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)や、アムステル2位のライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合優勝者クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)らも上位に絡んでくるだろう。
ツアー・オブ・ターキーで果敢な走りを見せたエストニアチャンピオンのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)も伏兵として注目したい。
現世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は、2008年大会で2位に入り、オーストラリア人として初めてフレーシュの表彰台に上がった。アルカンシェルを着るエヴァンスは、カルステン・クローン(オランダ)のアシストとして出場したアムステルで好調をアピールしている。
エヴァンスと同じくオーストラリア人初優勝を狙うのが、新生チームスカイのサイモン・ジェランス(オーストラリア)だ。チームにはトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)を始め、アルデンヌ向きの選手が揃っている。ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)の存在も不気味だ。
シクロワイアードではフレーシュ・ワロンヌのテキストライブを4月21日(水)21時からお届けする予定です!
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos