2019/06/03(月) - 11:48
ツール・ド・熊野の第3ステージが和歌山県の太地町で行われ、レース中盤から先行した5人が逃げ切り、フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア)がステージ優勝。僅差の2位に孫崎大樹(チームブリヂストンサイクリング)が入った。オールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)が個人総合首位を守って初優勝。チーム総合でも優勝したマトリックスパワータグが2冠を達成した。
ツール・ド・熊野最終日は、くじらの町・太地町が舞台。太地半島に設定された1周10.5kmの周回コースを10周する104.3kmのレースだ。「ジェットコースター」と表現されるアップダウンと道幅の狭いコーナーの連続により、集団が長く引き延ばされるハードなコース。タイムアウトの制限も厳しいことから、出走人数の半数が完走出来ないことも珍しくなく、「熊野は最終日が難関」とも言われる。
第2ステージまでを終えて、個人総合首位はオールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)。9秒差の2位に岡篤志(宇都宮ブリッツェン)がつけ、20秒差以内に10名が名を連ねる接戦。加えて、マトリックスパワータグは出場6名中3名を前日までに失っており、アウラールの個人総合首位を守りきれるのかが注目された。
前日までの天気から一転して肌寒さを感じる1日。スタートと同時に雨が降り出し、乾いていた路面はレース序盤で水浸しになった。大雨というほどではないものの、傘やカッパが必要な必要なほどの雨は夜まで降り続けた。
スタート直後のファーストアタックは入部正太朗と中井唯晶(共にシマノレーシング)。ほどなく吸収されたのちにに飛び出したのは、山岳賞ジャージを着るマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)。これを入部が追って合流し、2人が先行する。メイン集団はセントジョージコンチネンタルサイクリングチームがコントロールし、20秒から30秒の差がつく。
4周目、メイン集団からホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)がブリッジをかけて先行する2人に合流。個人総合で34秒差のトリビオの動きにはチーム右京勢がすぐに反応。メイン集団を牽引して追走し、5周目に吸収する。
その直後、7人の逃げ集団が新たに形成される。メンバーは、入部、中井、前日優勝したトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)、フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア)、孫崎大樹(チームブリヂストンサイクリング)、鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)、ロビー・ハッカー(チーム右京)。
タイム差は2分以上まで開くが、個人総合で2分47秒差のズルロが逃げていることを嫌ったマトリックスパワータグがメイン集団のコントロールを開始し、2分以内の差を維持していく。
残り2周となる9周目、登り区間でチーム右京が攻撃に出る。個人総合15秒差のサム・クロームと、16秒差のベンジャミ・プラデスの2人が交互にアタックしてマトリックスパワータグを揺さぶる。この動きに岡をはじめ個人総合上位勢も追従。リーダージャージのアウラール自ら対応して鎮め、再びマトリックスがコントロールを取り戻す。
一方逃げ集団では鈴木と中井が遅れ、5人となって最終周回に入る。メイン集団との差は一時1分前後まで縮まったが追いつく気配はなく、残った5人でのスプリント勝負へ。最後はズルロ、孫崎、入部がハンドルを投げ合う僅差の勝負となり、ズルロが優勝。ツアー・オブ・ジャパン南信州ステージに続くステージ優勝で再び強さを見せた。2位は孫崎、3位に入部と続いた。
個人総合上位勢は50秒ほど遅れた20名の集団でフィニッシュ。アウラールもこの中でフィニッシュし、ツール・ド・熊野初優勝を決めた。マトリックスパワータグはチーム総合でも優勝し、2年ぶりの個人総合優勝と共に2冠を達成した。
スタートした73名中、完走は42名。今年もサバイバルな最終ステージだった。
マトリックスパワータグ安原監督コメント
「ツアー・オブ・ジャパンでしくじったことを修正し、まずはオールイスの個人総合を守ることを優先にレースを進めた。4日間を通し、他人任せなレースをするのではなく、自分達で仕切ることを目標に戦ったが、その通りの走りが出来たと思う。終わってみれば安泰と思われるかもしれないが、予想外の展開も多く、最終日も最後までハラハラする展開だった。最終日を前に3人を失うことになったが、それも含めチーム全員で勝ち取った結果だと思う」
個人総合2位 岡篤志コメント
「増田選手が不在の中、チームは総合優勝狙いというよりもステージ優勝狙いだったが、第1ステージで大差がつき、第2ステージで自分が残ることが出来た。マトリックスやチーム右京が強い選手を揃えているので、個人総合2位を守ることが現実的と考えて最終日に臨んだ。この大会で2位は恥ずかしくない結果だと思うので、守れたことは良かったと思う。
昨年はツアー・オブ・ジャパンと熊野の時期にコンディションを落としてしまったが、今年は序盤が不調だった分、好調を維持している。特に第2ステージの札立峠では登りで遅れることなくついて行けたことは自信になった。次は全日本選手権が目標。Jプロツアーも続くが、うまく疲れを抜きながら備えたい」
第3ステージ2位 孫崎大樹
「7人の逃げが決まり、うまく回せて2分差がついたので、このまま逃げ切れると確信はあった。残り2周の登りでズルロ選手が軽くペースアップしたところで2人が遅れて5人になった。スプリント勝負になったらズルロ選手が強いと分かっていたが、このメンバーの中では僕も自信があった。最後はズルロ選手をマークして差しに行った。行けるとは思っていたが差しきれなかった。
チームとしては初日に沢田(桂太郎)が新記録で優勝して、個人総合では平塚(吉光)さんが6位につけていたので、最後は自分が勝って締めくくりたかった。でもツアー・オブ・ジャパンから良い流れが続いていると思う」
21回目のツール・ド・熊野は、マトリックスパワータグが2年ぶりの個人総合優勝を手にした。その原動力となったのはフランシスコ・マンセボの存在。第2ステージと第3ステージでは要所を締めてアウラールを守って見せ、ベテランの職人技を見せた。
その中で、岡篤志の個人総合2位は評価できる結果。岡自身も言うように、第2ステージで勃発した個人総合争いの集団にきっちりと残れたことは、増田の不在を埋めるに十分な働きだった。
一方、悲願の地元レース個人総合優勝はまたお預けとなったキナンサイクリングチーム。第2ステージでのトマ・ルバ優勝と、マルコス・ガルシアの山岳賞獲得がせめてもの救いではあるものの、個人総合17秒差の8位で最終日をスタートした山本大喜が落車で遅れるという不運にも泣かされた。ホームレースで勝つことの難しさを改めて見せられた。
ツール・ド・熊野最終日は、くじらの町・太地町が舞台。太地半島に設定された1周10.5kmの周回コースを10周する104.3kmのレースだ。「ジェットコースター」と表現されるアップダウンと道幅の狭いコーナーの連続により、集団が長く引き延ばされるハードなコース。タイムアウトの制限も厳しいことから、出走人数の半数が完走出来ないことも珍しくなく、「熊野は最終日が難関」とも言われる。
第2ステージまでを終えて、個人総合首位はオールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)。9秒差の2位に岡篤志(宇都宮ブリッツェン)がつけ、20秒差以内に10名が名を連ねる接戦。加えて、マトリックスパワータグは出場6名中3名を前日までに失っており、アウラールの個人総合首位を守りきれるのかが注目された。
前日までの天気から一転して肌寒さを感じる1日。スタートと同時に雨が降り出し、乾いていた路面はレース序盤で水浸しになった。大雨というほどではないものの、傘やカッパが必要な必要なほどの雨は夜まで降り続けた。
スタート直後のファーストアタックは入部正太朗と中井唯晶(共にシマノレーシング)。ほどなく吸収されたのちにに飛び出したのは、山岳賞ジャージを着るマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)。これを入部が追って合流し、2人が先行する。メイン集団はセントジョージコンチネンタルサイクリングチームがコントロールし、20秒から30秒の差がつく。
4周目、メイン集団からホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)がブリッジをかけて先行する2人に合流。個人総合で34秒差のトリビオの動きにはチーム右京勢がすぐに反応。メイン集団を牽引して追走し、5周目に吸収する。
その直後、7人の逃げ集団が新たに形成される。メンバーは、入部、中井、前日優勝したトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)、フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア)、孫崎大樹(チームブリヂストンサイクリング)、鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)、ロビー・ハッカー(チーム右京)。
タイム差は2分以上まで開くが、個人総合で2分47秒差のズルロが逃げていることを嫌ったマトリックスパワータグがメイン集団のコントロールを開始し、2分以内の差を維持していく。
残り2周となる9周目、登り区間でチーム右京が攻撃に出る。個人総合15秒差のサム・クロームと、16秒差のベンジャミ・プラデスの2人が交互にアタックしてマトリックスパワータグを揺さぶる。この動きに岡をはじめ個人総合上位勢も追従。リーダージャージのアウラール自ら対応して鎮め、再びマトリックスがコントロールを取り戻す。
一方逃げ集団では鈴木と中井が遅れ、5人となって最終周回に入る。メイン集団との差は一時1分前後まで縮まったが追いつく気配はなく、残った5人でのスプリント勝負へ。最後はズルロ、孫崎、入部がハンドルを投げ合う僅差の勝負となり、ズルロが優勝。ツアー・オブ・ジャパン南信州ステージに続くステージ優勝で再び強さを見せた。2位は孫崎、3位に入部と続いた。
個人総合上位勢は50秒ほど遅れた20名の集団でフィニッシュ。アウラールもこの中でフィニッシュし、ツール・ド・熊野初優勝を決めた。マトリックスパワータグはチーム総合でも優勝し、2年ぶりの個人総合優勝と共に2冠を達成した。
スタートした73名中、完走は42名。今年もサバイバルな最終ステージだった。
マトリックスパワータグ安原監督コメント
「ツアー・オブ・ジャパンでしくじったことを修正し、まずはオールイスの個人総合を守ることを優先にレースを進めた。4日間を通し、他人任せなレースをするのではなく、自分達で仕切ることを目標に戦ったが、その通りの走りが出来たと思う。終わってみれば安泰と思われるかもしれないが、予想外の展開も多く、最終日も最後までハラハラする展開だった。最終日を前に3人を失うことになったが、それも含めチーム全員で勝ち取った結果だと思う」
個人総合2位 岡篤志コメント
「増田選手が不在の中、チームは総合優勝狙いというよりもステージ優勝狙いだったが、第1ステージで大差がつき、第2ステージで自分が残ることが出来た。マトリックスやチーム右京が強い選手を揃えているので、個人総合2位を守ることが現実的と考えて最終日に臨んだ。この大会で2位は恥ずかしくない結果だと思うので、守れたことは良かったと思う。
昨年はツアー・オブ・ジャパンと熊野の時期にコンディションを落としてしまったが、今年は序盤が不調だった分、好調を維持している。特に第2ステージの札立峠では登りで遅れることなくついて行けたことは自信になった。次は全日本選手権が目標。Jプロツアーも続くが、うまく疲れを抜きながら備えたい」
第3ステージ2位 孫崎大樹
「7人の逃げが決まり、うまく回せて2分差がついたので、このまま逃げ切れると確信はあった。残り2周の登りでズルロ選手が軽くペースアップしたところで2人が遅れて5人になった。スプリント勝負になったらズルロ選手が強いと分かっていたが、このメンバーの中では僕も自信があった。最後はズルロ選手をマークして差しに行った。行けるとは思っていたが差しきれなかった。
チームとしては初日に沢田(桂太郎)が新記録で優勝して、個人総合では平塚(吉光)さんが6位につけていたので、最後は自分が勝って締めくくりたかった。でもツアー・オブ・ジャパンから良い流れが続いていると思う」
21回目のツール・ド・熊野は、マトリックスパワータグが2年ぶりの個人総合優勝を手にした。その原動力となったのはフランシスコ・マンセボの存在。第2ステージと第3ステージでは要所を締めてアウラールを守って見せ、ベテランの職人技を見せた。
その中で、岡篤志の個人総合2位は評価できる結果。岡自身も言うように、第2ステージで勃発した個人総合争いの集団にきっちりと残れたことは、増田の不在を埋めるに十分な働きだった。
一方、悲願の地元レース個人総合優勝はまたお預けとなったキナンサイクリングチーム。第2ステージでのトマ・ルバ優勝と、マルコス・ガルシアの山岳賞獲得がせめてもの救いではあるものの、個人総合17秒差の8位で最終日をスタートした山本大喜が落車で遅れるという不運にも泣かされた。ホームレースで勝つことの難しさを改めて見せられた。
ツール・ド・熊野 第3ステージ・太地半島 結果(104.3km)
1位 | フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア) | 2時間38分28秒 |
2位 | 孫崎大樹(チームブリヂストンサイクリング) | +0秒 |
3位 | 入部正太朗(シマノレーシング) | |
4位 | ロビー・ハッカー(オーストラリア、チーム右京) | |
5位 | トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) | |
6位 | ホセ・ビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) | +44秒 |
個人総合成績(第3ステージ 終了時)
1位 | オールイス・アルベルト・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) | 7時間32分49秒 |
2位 | 岡 篤志(宇都宮ブリッツェン) | +9秒 |
3位 | ユーセフ・レグイグイ(アルジェリア、トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム) | +13秒 |
4位 | コービン・ストロング(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタルサイクリングチーム) | +15秒 |
5位 | サム・クローム(オーストラリア、チーム右京) | |
6位 | 平塚吉光(チームブリヂストンサイクリング) | +16秒 |
ポイント賞(第3ステージ 終了時)
1位 | オールイス・アルベルト・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) | 55p |
2位 | フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア) | 42p |
3位 | トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) | 37p |
山岳賞(第3ステージ 終了時)
1位 | マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) | 21p |
2位 | トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) | 7p |
3位 | ベンジャミ・プラデス(スペイン、チーム右京) | 7p |
チーム総合順位(第3ステージ 終了時)
text&photo:Satoru Kato
関連ファイル
ツール・ド・熊野第3ステージ 総合リザルト.pdf
(492.26 KB)
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