2019/05/09(木) - 11:49
第102回ジロ・デ・イタリアの特徴は、前半が平坦で、後半がとにかく山岳尽くし。アルプスの難関山岳を含む合計5つの山頂フィニッシュが設定され、個人タイムトライアルで締めくくられるジロ後半戦のステージを紹介します。
前半ステージの紹介はこちら
5月23日(木)第12ステージ → コースマップ
クネオ〜ピネローロ 158km ☆☆☆
2019年大会の特徴は、前半に難易度の低い平坦ステージが詰め込まれ、後半に難易度の高い山岳ステージが詰め込まれていること。後半戦の幕開けとも言える第12ステージは、アルプス山脈に近いピエモンテ州の山岳地帯を走る。今大会最初の1級山岳が残り32km地点に登場。標高1,248mの1級山岳モントーゾは全長8.8kmで平均勾配が9.5%に達する急峻な登りであり、ここでマリアローザ候補たちは最初の脚試しをすることになるだろう。
この日の注目は1級山岳モントーゾだけではない。フィニッシュの2km手前でピークを迎える(残り65km地点でも一度通過する)プリンチピ・ダカヤ通りが集団を破壊する。長さは500mしかないが、路面は石畳で、道幅も3mほどしかなく、その平均勾配は14%。中腹にかけて最大勾配が20%に達するこの激坂プリンチピ・ダカヤ通りで、ステージ優勝に向けた動きやマリアローザの持ち主を変えるような動きが起こるはず。しかしまだまだこの第12ステージは山岳メニューの前菜に過ぎない。
5月24日(金)第13ステージ → コースマップ
ピネローロ〜チェレソーレ・レアーレ 196km ☆☆☆☆
第13ステージから第21ステージまでの9ステージのうち合計5ステージが山頂フィニッシュという濃密なレイアウト。トリノの西に広がる山岳地帯を走る196kmコースは今大会有数の難易度で、まずはじっくりと1級山岳リース峠(距離14.9km/平均6.4%)と2級山岳ピアン・デル・ルーポ(距離9.4km/平均8.7%)を登る。もちろんこの日はそれだけで終わらず、最後はフランス国境に近い標高2,247mのセッル湖まで駆け上がる山頂フィニッシュが待っている。
ジロ初登場の1級山岳チェレソーレ・レアーレ(距離20.3km/平均5.9%)は後半にかけて10%を刻む厳しい登りで、局所的に勾配は13%に達する。正式な登坂距離は20km強だが、実際は残り45km地点から延々と登りが続く。アルプス山脈の奥深くに分け入る今大会最高の山頂フィニッシュで総合成績にシャッフルがかかるだろう。マリアローザ争いと並行して、フィニッシュ地点周辺の美しいアルプスの山岳風景にも注目したい。
5月25日(土)第14ステージ → コースマップ
サンヴィンセント〜クールマイユール 131km ☆☆☆☆☆
131kmという短い距離に獲得標高差4,000mの登りが詰め込まれた第14ステージの破壊力は抜群。サンヴィンセントをスタートして渓谷を駆け上がり、ヴァッレ=ダオスタ州らしい急峻な4つのカテゴリー山岳を越える。2級山岳ヴェライェス(距離6.7km/平均8%)、1級山岳ヴェローニュ(全長13.8km/平均7.1%)、2級山岳トルク・ダルブ(全長8.2km/平均7%)という峠を越えるうちに自然とマリアローザ候補は絞られるだろう。登った分だけしっかり下るため、テクニカルな下りにも注意が必要だ。
標高1,951mの1級山岳サンカルロ峠(全長10.5km/平均9.8%/最大15%)がこの日最大の難所であり、頂上とフィニッシュは25kmしか離れていない。最後はモンテビアンコ(モンブラン)のロープウェイ乗り場、3級山岳クールマイユール(距離8km/平均3.2%)にフィニッシュ。残り8km地点から1kmにわたって続く勾配6%の斜面で最後のアタックがかかるだろう。レース時間の短さは制限時間(タイムリミット)の短さを意味しているため、完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になりそうだ。
5月26日(日)第15ステージ → コースマップ
イヴレア〜コモ 232km ☆☆☆☆
アルプスに別れを告げ、ロンバルディア平原を東に向かう第15ステージは大会最長クラスの232km。大都市ミラノをかすめて山岳地帯に入ると、そこから先は『落ち葉のクラシック』ことイル・ロンバルディアのコースをなぞる。残り70kmを切ってからは慌ただしいレースが展開されることになるだろう。
2級山岳マドンナ・デル・ギザッロ(距離8.6km/平均5.6%)に続いて2級山岳コルマ・ディ・ソルマーノ(距離9.6km/平均6.6%)を越えるが、ロンバルディア名物となりつつある激坂区間は回避する。最後は残り9km地点で3級山岳チヴィリオ(距離4.2km/平均9.6%)を越えてコモにフィニッシュ。登場するカテゴリー山岳は3つだが、レース主催者による難易度格付けは4つ星。このクラシックレーサー向きの危険なステージを終えると大会最後の休息日を迎える。
5月27日(月)休息日
5月28日(火)第16ステージ → コースマップ
ローヴェレ〜ポンテ・ディ・レーニョ 226km ☆☆☆☆☆
ジロの最終週は決まって過酷だ。第16ステージは226kmという長い距離に獲得標高差5,700mというボリューム満点の山岳が詰め込まれたクイーンステージ。中盤にかけて標高2,618mの『チーマコッピ(大会最高地点)』ガヴィア峠(距離16.5km/平均8%/最大16%)が佇んでいる。毎回レースに組み込まれるたびに降雪によって通行が危ぶまれるガヴィア峠を越えると、そこから高低差2,000m以上を一気に駆け下りる。
次に待つのは、ジロを代表する難関峠として知られる1級山岳モルティローロ峠(距離12.8km/平均10.1%/最大18%)。標高1,854m、その急勾配の登りでメイン集団は完全に破壊されるだろう。ガヴィア峠とモルティローロ峠のダブルパンチで抜け出した選手が、フィニッシュ地点ポンテ・ディ・レーニョに向かって勾配2〜3%の緩斜面を駆け上がる。このレース時間が7時間に達するクイーンステージを終えた時点でマリアローザ候補は数名に絞られているはずだ。
5月29日(水)第17ステージ → コースマップ
コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆
イタリア北限の南チロル地方を走る第17ステージは逃げ切り向きの中級山岳ステージ。『太陽の渓谷(ヴァル・ディ・ソーレ)』に位置するコメッツァデューラをスタートして標高1,363mのメンドラ峠(カテゴリー無し)を越えると、そこから先は地名がイタリア語とドイツ語の二重表記となる。オーストリア国境に近いこのエリア特有の美しいドロミテ山塊を通過するが、難易度の高い峠は登場しない。
エイザック渓谷に沿ってボルツァーノとブレッサノーネの街を抜け、4級山岳エルヴァス(距離3.4km/平均7.6%)と3級山岳テレント(全長6.6km/平均7.6%)を越えてブルニコへ。ジロ初登場となる3級山岳アンテルセルヴァは距離5.5km/平均6.9%という難易度で、短い下りとトンネルを経て標高1,635mのクロスカントリースキー場ならびにバイアスロン用射撃場にフィニッシュする。
5月30日(木)第18ステージ → コースマップ
ヴァルダオーラ〜サンタマリア・ディ・サーラ 222km ☆
ジロは足早にドロミテ山塊を脱出。美しい山々を横目に、30km地点の標高1,530mチーマバンケ峠(カテゴリー無し)をピークにして徐々に高度を落としていく。ステージ中盤に4級山岳ピエーヴェ・ディ・アルパゴが登場するが、最終的なステージ優勝争いには影響しない。
最後はトレヴィーゾ近郊を駆け抜け、ヴェネト州の平野のど真ん中に位置するサンタマリア・ディ・サーラでフィニッシュを迎える。すでに多くのスプリンターが姿を消していることも考えられるが、山岳ステージに前後を挟まれたこの第18ステージは完全にスプリンター向き。そしてこれがスプリンターにとってのラストチャンスとなる。マリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)の栄誉を目指して、スピード自慢たちが久々の平坦路でしのぎを削る。
5月31日(金)第19ステージ → コースマップ
トレヴィーゾ〜サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ 151km ☆☆☆
ヴェネト州トレヴィーゾをスタートする第19ステージは難易度3つ星の中級山岳ステージ。中盤に設定された3級山岳サンボルド峠(距離6.5km/平均7.1%)は崖のような急斜面に作られた難関峠で、頂上手前にはトンネルに覆われた5つのスイッチバックが登場する。
中級山岳ステージと侮るなかれ、最後は標高1,478mの2級山岳サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ(距離13.6km/平均5.6%)の山頂フィニッシュ。11年ぶりの登場となる2級山岳サンマルティーノ・ディ・カストロッツァは6%前後の一定勾配が淡々と続く登り。数字だけを見るとインパクトに欠けるが、開幕からすでに3週間走り続けてきたマリアローザ候補たちの脚がいつ崩壊してもおかしくはない。逆に、まだステージ優勝を飾っていないチームは逃げ切りを狙って序盤から果敢に攻撃を仕掛けてくるはずだ。
6月1日(土)第20ステージ → コースマップ
フェルトレ〜クローチェ・ダウネ・モンテアヴェーナ 194km ☆☆☆☆☆
最終山岳決戦の舞台となるのが、ヴェネト州とトレンティーノ=アルトアディジェ州にまたがる山岳地帯。2級山岳チーマカンポ(距離18.7km/平均5.9%)、1級山岳マンゲン峠(距離18.9km/平均7.6%)、2級山岳ロッレ峠(距離20.6km/平均4.6%)という登坂距離20km/標高2,000mクラスのカテゴリー山岳が序盤から3つ連続する第20ステージの獲得標高差は5,000mを超える。レース主催者による格付けはもちろん5つ星だ。
延々と続いた山岳バトルを締めくくるのが、残り22km地点から連続して登場する2級山岳クローチェ・ダウネ(距離11.1km/平均5.5%/最大16%)と1級山岳モンテアヴェーナ(距離6.9km/平均7.3%/最大11%)のタフな組み合わせ。ジロ初登場となる1級山岳モンテアヴェーナの頂上でマリアローザを受け取った選手が2019年大会制覇に王手をかけるが、ここではまだマリアローザ争いは完結しない。選手たちは何よりも回復を優先しながら、終着地ヴェローナまでの長距離移動をこなす。
6月2日(日)第21ステージ → コースマップ
ヴェローナ〜ヴェローナ 17km(個人TT)☆☆☆
最終日はヴェローナを走る17kmの個人タイムトライアル。街中のコーナーをこなしながら中盤にかけて距離4.5km/平均4.6%の緩やかな登りをこなし、パヴェ(石畳)を含む市街地を走ってローマ時代の円形闘技場『アレーナ』前でフィナーレを迎える。レース主催者が予想するステージ優勝タイムは22〜23分。総合上位陣に1分を超えるようなタイム差はつかないが、20〜30秒程度のタイム差は十分につくだろう。
フィニッシュ後にそのまま『アレーナ』内を通過する完走者には盛大な歓声が送られるはず。そしてもちろんステージ優勝者や各賞ジャージ受賞者を迎えての『アレーナ』内での表彰台は荘厳なものになる。マリアローザを着て、トロフェオ・センツァ・フィーネ(総合優勝トロフィー)を手にした総合優勝者は金色の紙吹雪に包まれるはずだ。
text:Kei Tsuji in Bologna, Italy
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5月23日(木)第12ステージ → コースマップ
クネオ〜ピネローロ 158km ☆☆☆
2019年大会の特徴は、前半に難易度の低い平坦ステージが詰め込まれ、後半に難易度の高い山岳ステージが詰め込まれていること。後半戦の幕開けとも言える第12ステージは、アルプス山脈に近いピエモンテ州の山岳地帯を走る。今大会最初の1級山岳が残り32km地点に登場。標高1,248mの1級山岳モントーゾは全長8.8kmで平均勾配が9.5%に達する急峻な登りであり、ここでマリアローザ候補たちは最初の脚試しをすることになるだろう。
この日の注目は1級山岳モントーゾだけではない。フィニッシュの2km手前でピークを迎える(残り65km地点でも一度通過する)プリンチピ・ダカヤ通りが集団を破壊する。長さは500mしかないが、路面は石畳で、道幅も3mほどしかなく、その平均勾配は14%。中腹にかけて最大勾配が20%に達するこの激坂プリンチピ・ダカヤ通りで、ステージ優勝に向けた動きやマリアローザの持ち主を変えるような動きが起こるはず。しかしまだまだこの第12ステージは山岳メニューの前菜に過ぎない。
5月24日(金)第13ステージ → コースマップ
ピネローロ〜チェレソーレ・レアーレ 196km ☆☆☆☆
第13ステージから第21ステージまでの9ステージのうち合計5ステージが山頂フィニッシュという濃密なレイアウト。トリノの西に広がる山岳地帯を走る196kmコースは今大会有数の難易度で、まずはじっくりと1級山岳リース峠(距離14.9km/平均6.4%)と2級山岳ピアン・デル・ルーポ(距離9.4km/平均8.7%)を登る。もちろんこの日はそれだけで終わらず、最後はフランス国境に近い標高2,247mのセッル湖まで駆け上がる山頂フィニッシュが待っている。
ジロ初登場の1級山岳チェレソーレ・レアーレ(距離20.3km/平均5.9%)は後半にかけて10%を刻む厳しい登りで、局所的に勾配は13%に達する。正式な登坂距離は20km強だが、実際は残り45km地点から延々と登りが続く。アルプス山脈の奥深くに分け入る今大会最高の山頂フィニッシュで総合成績にシャッフルがかかるだろう。マリアローザ争いと並行して、フィニッシュ地点周辺の美しいアルプスの山岳風景にも注目したい。
5月25日(土)第14ステージ → コースマップ
サンヴィンセント〜クールマイユール 131km ☆☆☆☆☆
131kmという短い距離に獲得標高差4,000mの登りが詰め込まれた第14ステージの破壊力は抜群。サンヴィンセントをスタートして渓谷を駆け上がり、ヴァッレ=ダオスタ州らしい急峻な4つのカテゴリー山岳を越える。2級山岳ヴェライェス(距離6.7km/平均8%)、1級山岳ヴェローニュ(全長13.8km/平均7.1%)、2級山岳トルク・ダルブ(全長8.2km/平均7%)という峠を越えるうちに自然とマリアローザ候補は絞られるだろう。登った分だけしっかり下るため、テクニカルな下りにも注意が必要だ。
標高1,951mの1級山岳サンカルロ峠(全長10.5km/平均9.8%/最大15%)がこの日最大の難所であり、頂上とフィニッシュは25kmしか離れていない。最後はモンテビアンコ(モンブラン)のロープウェイ乗り場、3級山岳クールマイユール(距離8km/平均3.2%)にフィニッシュ。残り8km地点から1kmにわたって続く勾配6%の斜面で最後のアタックがかかるだろう。レース時間の短さは制限時間(タイムリミット)の短さを意味しているため、完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になりそうだ。
5月26日(日)第15ステージ → コースマップ
イヴレア〜コモ 232km ☆☆☆☆
アルプスに別れを告げ、ロンバルディア平原を東に向かう第15ステージは大会最長クラスの232km。大都市ミラノをかすめて山岳地帯に入ると、そこから先は『落ち葉のクラシック』ことイル・ロンバルディアのコースをなぞる。残り70kmを切ってからは慌ただしいレースが展開されることになるだろう。
2級山岳マドンナ・デル・ギザッロ(距離8.6km/平均5.6%)に続いて2級山岳コルマ・ディ・ソルマーノ(距離9.6km/平均6.6%)を越えるが、ロンバルディア名物となりつつある激坂区間は回避する。最後は残り9km地点で3級山岳チヴィリオ(距離4.2km/平均9.6%)を越えてコモにフィニッシュ。登場するカテゴリー山岳は3つだが、レース主催者による難易度格付けは4つ星。このクラシックレーサー向きの危険なステージを終えると大会最後の休息日を迎える。
5月27日(月)休息日
5月28日(火)第16ステージ → コースマップ
ローヴェレ〜ポンテ・ディ・レーニョ 226km ☆☆☆☆☆
ジロの最終週は決まって過酷だ。第16ステージは226kmという長い距離に獲得標高差5,700mというボリューム満点の山岳が詰め込まれたクイーンステージ。中盤にかけて標高2,618mの『チーマコッピ(大会最高地点)』ガヴィア峠(距離16.5km/平均8%/最大16%)が佇んでいる。毎回レースに組み込まれるたびに降雪によって通行が危ぶまれるガヴィア峠を越えると、そこから高低差2,000m以上を一気に駆け下りる。
次に待つのは、ジロを代表する難関峠として知られる1級山岳モルティローロ峠(距離12.8km/平均10.1%/最大18%)。標高1,854m、その急勾配の登りでメイン集団は完全に破壊されるだろう。ガヴィア峠とモルティローロ峠のダブルパンチで抜け出した選手が、フィニッシュ地点ポンテ・ディ・レーニョに向かって勾配2〜3%の緩斜面を駆け上がる。このレース時間が7時間に達するクイーンステージを終えた時点でマリアローザ候補は数名に絞られているはずだ。
5月29日(水)第17ステージ → コースマップ
コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆
イタリア北限の南チロル地方を走る第17ステージは逃げ切り向きの中級山岳ステージ。『太陽の渓谷(ヴァル・ディ・ソーレ)』に位置するコメッツァデューラをスタートして標高1,363mのメンドラ峠(カテゴリー無し)を越えると、そこから先は地名がイタリア語とドイツ語の二重表記となる。オーストリア国境に近いこのエリア特有の美しいドロミテ山塊を通過するが、難易度の高い峠は登場しない。
エイザック渓谷に沿ってボルツァーノとブレッサノーネの街を抜け、4級山岳エルヴァス(距離3.4km/平均7.6%)と3級山岳テレント(全長6.6km/平均7.6%)を越えてブルニコへ。ジロ初登場となる3級山岳アンテルセルヴァは距離5.5km/平均6.9%という難易度で、短い下りとトンネルを経て標高1,635mのクロスカントリースキー場ならびにバイアスロン用射撃場にフィニッシュする。
5月30日(木)第18ステージ → コースマップ
ヴァルダオーラ〜サンタマリア・ディ・サーラ 222km ☆
ジロは足早にドロミテ山塊を脱出。美しい山々を横目に、30km地点の標高1,530mチーマバンケ峠(カテゴリー無し)をピークにして徐々に高度を落としていく。ステージ中盤に4級山岳ピエーヴェ・ディ・アルパゴが登場するが、最終的なステージ優勝争いには影響しない。
最後はトレヴィーゾ近郊を駆け抜け、ヴェネト州の平野のど真ん中に位置するサンタマリア・ディ・サーラでフィニッシュを迎える。すでに多くのスプリンターが姿を消していることも考えられるが、山岳ステージに前後を挟まれたこの第18ステージは完全にスプリンター向き。そしてこれがスプリンターにとってのラストチャンスとなる。マリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)の栄誉を目指して、スピード自慢たちが久々の平坦路でしのぎを削る。
5月31日(金)第19ステージ → コースマップ
トレヴィーゾ〜サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ 151km ☆☆☆
ヴェネト州トレヴィーゾをスタートする第19ステージは難易度3つ星の中級山岳ステージ。中盤に設定された3級山岳サンボルド峠(距離6.5km/平均7.1%)は崖のような急斜面に作られた難関峠で、頂上手前にはトンネルに覆われた5つのスイッチバックが登場する。
中級山岳ステージと侮るなかれ、最後は標高1,478mの2級山岳サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ(距離13.6km/平均5.6%)の山頂フィニッシュ。11年ぶりの登場となる2級山岳サンマルティーノ・ディ・カストロッツァは6%前後の一定勾配が淡々と続く登り。数字だけを見るとインパクトに欠けるが、開幕からすでに3週間走り続けてきたマリアローザ候補たちの脚がいつ崩壊してもおかしくはない。逆に、まだステージ優勝を飾っていないチームは逃げ切りを狙って序盤から果敢に攻撃を仕掛けてくるはずだ。
6月1日(土)第20ステージ → コースマップ
フェルトレ〜クローチェ・ダウネ・モンテアヴェーナ 194km ☆☆☆☆☆
最終山岳決戦の舞台となるのが、ヴェネト州とトレンティーノ=アルトアディジェ州にまたがる山岳地帯。2級山岳チーマカンポ(距離18.7km/平均5.9%)、1級山岳マンゲン峠(距離18.9km/平均7.6%)、2級山岳ロッレ峠(距離20.6km/平均4.6%)という登坂距離20km/標高2,000mクラスのカテゴリー山岳が序盤から3つ連続する第20ステージの獲得標高差は5,000mを超える。レース主催者による格付けはもちろん5つ星だ。
延々と続いた山岳バトルを締めくくるのが、残り22km地点から連続して登場する2級山岳クローチェ・ダウネ(距離11.1km/平均5.5%/最大16%)と1級山岳モンテアヴェーナ(距離6.9km/平均7.3%/最大11%)のタフな組み合わせ。ジロ初登場となる1級山岳モンテアヴェーナの頂上でマリアローザを受け取った選手が2019年大会制覇に王手をかけるが、ここではまだマリアローザ争いは完結しない。選手たちは何よりも回復を優先しながら、終着地ヴェローナまでの長距離移動をこなす。
6月2日(日)第21ステージ → コースマップ
ヴェローナ〜ヴェローナ 17km(個人TT)☆☆☆
最終日はヴェローナを走る17kmの個人タイムトライアル。街中のコーナーをこなしながら中盤にかけて距離4.5km/平均4.6%の緩やかな登りをこなし、パヴェ(石畳)を含む市街地を走ってローマ時代の円形闘技場『アレーナ』前でフィナーレを迎える。レース主催者が予想するステージ優勝タイムは22〜23分。総合上位陣に1分を超えるようなタイム差はつかないが、20〜30秒程度のタイム差は十分につくだろう。
フィニッシュ後にそのまま『アレーナ』内を通過する完走者には盛大な歓声が送られるはず。そしてもちろんステージ優勝者や各賞ジャージ受賞者を迎えての『アレーナ』内での表彰台は荘厳なものになる。マリアローザを着て、トロフェオ・センツァ・フィーネ(総合優勝トロフィー)を手にした総合優勝者は金色の紙吹雪に包まれるはずだ。
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