2019/05/01(水) - 17:06
FSAのセミワイヤレスコンポーネント「K-Force WE」にディスクブレーキモデルが登場。独自のシリンダー配置を採用することでコンパクトなブラケットサイズを実現している。パワーメータークランクのPowerBoxや、チューブレスレディ対応となったヴィジョンのMETRONホイールなど注目製品と合わせて紹介しよう。
FSAのK-Force WEにディスクブレーキモデルが登場
UCIワールドチームのEFエデュケーションファーストやバーレーン・メリダ、アスタナ、ユンボ・ヴィズマなどにパーツサポートを行っているFSA(FULL SPEED AHEAD)とその傘下のヴィジョン。トッププロ選手たちから直接得られるフィードバックを活かし、レースでの勝利を目指したハイパフォーマンスな製品開発を日夜続けているブランドである。
今回メディア向け新製品説明のためにセールスマネージャーのエドアルド・ジラルディ氏が来日。真っ先に解説してくれたのが、昨年より国内でもデリバリーを開始したブランド初のロードコンポーネント「K-Force WE」である。
新製品のK-Force WE Discをプレゼンしてくれたエドアルド・ジラルディ氏
エアロにも配慮されたコンパクトな三角形状のブレーキキャリパー
ブレーキパッドがキャリパーと一体化したような滑らかなデザイン
”無線電動”を意味する「Wireless Electronic」の頭文字を取ったモデル名の通り、シフターとディレイラーが無線接続によってシフティングを行う変速システムが最大の特徴。前後ディレイラーが電源となるシートポストバッテリーとケーブルで接続される、セミワイヤレス方式を採用した唯一無二のコンポーネントとして生み出された。
今まではリムブレーキタイプのみの販売だったが、この度時代に追随するようにディスクブレーキモデルが新登場。ディレイラーやクランクなどのパーツはそのままに、油圧ディスクブレーキ用のシフター&キャリパーとローターがラインアップへと加わる。FSAは以前からMTB用の油圧ブレーキパーツをリリースしており、そのノウハウを活かして開発が行われたのだという。
ブラケットにはグリップを高めるライン状のパターンが入る
外側にベンドさせたエルゴノミックな形状で操作性を追求している
上下に配置されたシフトスイッチのレイアウトはK-Force WE独自のもの
K-Force WEのシフターは、レバーの上下にスイッチが倒れるように可動するシフトボタンの配置が見た目にも特徴的だが、ディスクブレーキモデルはブラケットのコンパクトなサイズ感が最も注目すべきポイントだ。一般的に油圧のマスターシリンダーはブラケット内部へ縦向きに配置されるためヘッド部分が大きくなりがちだが、それがレバーの操作性を悪化させる要因にもなっていた。
FSAはその問題を解決するために、マスターシリンダーをブラケットの胴体へ横向きに配置する内部構造を採用。対してシフト信号を送る電子パーツやバッテリーとなるボタン電池をヘッド部分に収めており、結果としてリムブレーキモデルとほぼ同サイズのコンパクトなブラケットに仕上がっている。
油圧ディスクブレーキのレバーながらコンパクトなサイズ感が特徴 (c)FSA
シフトレバーのクランプは後部から差し込むタイプで作業性に配慮されている (c)FSA
特有の曲線を描くエルゴノミックな形状はそのまま引き継ぎ、握り込みやすさや指先のタッチの良さに貢献。他社メーカーのものはハンドルの端からバンドを潜らせるように装着していくが、FSAは好みの位置にシフトレバーを合わせ後部からクランプパーツを差し込んでサイドからボルトで締めていく機構を採用しており着脱のしやすさに配慮している。
ブレーキキャリパーは他社同様に三角形状のデザインに。サイズも小さく滑らかなボディ形状を採用することともに、標準装備のパッドもキャリパー本体と一体化したようなフィンデザインを用いており空力性能とデザイン性を両立している。またボディ剛性を高めるよう工夫されており、ブレーキフィーリングの向上に一役買っている。
リアディレイラーはモーターを搭載した箱型のボディが特徴的
シフターとANT+による無線で接続されるフロントディレイラー
FSAのグループセットに合わせたチェーンもラインアップ。シマノとの互換性は有り
2ピース構造で冷却性能を高めたディスクローターも開発 (c)FSA
ディスクローターは外側シルバー、内側ブラックの2ピース構造を採用し、風の通りを良くしたフィン形状と表面積を増やしたデザインによって冷却性能を高めている。ハブへのマウント方式は6ボルトタイプで、ディスクロードには標準の140mmと160mmの2種類のサイズ展開だ。
K-Force WE Discはアルミ削り出しやカーボンを多用したパーツで構成されており、グループセット重量2,057gと非常に軽量な値をマーク。すでにEFエデュケーションファーストを始めとする一部のプロ選手がトレーニングで使っているのだという。プロの意見を取り入れ、リムブレーキよりも下りやコーナーでアドバンテージとなるような制動性能に調整している。
「開発においては他社を参考にする訳でもなく、プロからのフィードバックを第一に考え反映しています。K-Force WE Discのブレーキフィーリングも非常に気に入ってもらえていますよ。強力にストッピングパワーが立ち上がるよう味付けしているので、ブレーキをかけている時間が今までより短く、それによってレースを速く走れるよう開発を重ねました。リムブレーキモデルはすでにレース投入も果たしていますが、ディスクブレーキモデルはおそらくプロコンチネンタルチームのブルゴスBHが今後のレースで使ってくれる予定です」とジラルディ氏は語ってくれた。
またFSAのパワーメーター搭載クランク「PowerBox(パワーボックス)」には46/30T、48/32Tのスーパーコンパクトモデルが登場。急坂の多い峠道を楽に走りたい人、グラベル/シクロクロスバイクでパワー測定をしたい人にピッタリのクランクとなっている。Power2maxと共同開発した製品で信頼性も高い。クランクアームもカーボンとアルミの2タイプを用意しており、予算に応じて選べるラインアップだ。
Power2maxと共同開発したFSAのパワーメーター搭載クランク「PowerBox」 (c)FSA
PowerBoxにはスーパーコンパクトモデルが登場。カーボン(左)とアルミ(右)から選べるラインアップ (c)FSA
エアロダイナミクスに定評のあるプロダクツを揃えるヴィジョンは、カーボンホイールのMETRON(メトロン)シリーズが新たにチューブレスレディ対応に。チューブレスタイヤの有用性はヴィジョンも大いに認めるところで、スムースなライドフィーリングやトラクションの向上、重量の削減やリム打ちパンクの防止など多くのメリットをライダーにもたらしてくれる。
METRONのクリンチャーホイールはすべて、タイヤビードが保持されやすいチューブレス対応のリムベッドへとアップデート。開発時にはあらゆるメーカーのチューブレスタイヤを装着して嵌合のマッチングテストを行ったという。25C以上のワイドタイヤに合わせたリム内幅19mmの設計だ。またチューブラーモデルも引き続き併売される。
30/40/55/81mmという4種類のハイトが揃うヴィジョンのMETRONホイール (c)Vision
FSAのパーツとヴィジョンのホイールでフランドルを制したアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト) (c)CorVos
今まではリムハイトごとに40SL、55SL、81SLというラインアップだったが、今回新たにヒルクライム向けの軽量モデル「30SL」が追加。モデル名の通り30mmのローハイトを採用しており、登りでの軽い走りと高い反応性を有したホイールに仕上がっている。チューブラーで1,260g、クリンチャーで1,400gの重量だ。
「EFエデュケーションファーストが使用しているMETRONホイールは完全に市販品と同じものです。リムのステッカーデザインがプロチーム仕様なだけ。ベッティオルもフランドルではMETRON 55SLを使用しました。ハイトが高いほうが高剛性でプロ好みのようですね。現状ですでにかなりのワイドリムなので、クラシックレース用にワイドタイヤを使用する場合でも問題はありませんでした」と解説したジラルディ氏。
METRONと言えばカーボンハンドルも代表的な製品の一つ。メリダやビアンキのエアロロードと合わせて使われることの多い、ステム一体型のMETRON 5Dはプロレースでも愛用されておりご存知の人も多いはず。さらにはバートップがストレート形状になったMETRON 6Dもリリースされており、自身のポジションに合わせて選択できるラインアップとなっている。
「まずCFD解析を用いてコンピュータ上でエアロに優れたバー形状を導き出します。その後は握り心地やコントロール性の良いドロップ形状をプロトタイプをいくつも作成して試していくんです。ひたすらプロライダーとのコンタクトを繰り返して形状を煮詰めていきます。そうやって誰もが使いやすいエルゴノミックなデザインができあがっていくんです。バーレーン・メリダの新城幸也もヴィジョン/FSAハンドルの愛用者ですし、ぜひ日本の皆さんにも試して欲しいですね」とジラルディ氏は締めくくった。
プロ選手も愛用するステム一体型ハンドルMETRON 5D photo:Kei Tsuji
バートップがストレート形状になったMETRON 6Dも展開
text&photo:Yuto.Murata

UCIワールドチームのEFエデュケーションファーストやバーレーン・メリダ、アスタナ、ユンボ・ヴィズマなどにパーツサポートを行っているFSA(FULL SPEED AHEAD)とその傘下のヴィジョン。トッププロ選手たちから直接得られるフィードバックを活かし、レースでの勝利を目指したハイパフォーマンスな製品開発を日夜続けているブランドである。
今回メディア向け新製品説明のためにセールスマネージャーのエドアルド・ジラルディ氏が来日。真っ先に解説してくれたのが、昨年より国内でもデリバリーを開始したブランド初のロードコンポーネント「K-Force WE」である。



”無線電動”を意味する「Wireless Electronic」の頭文字を取ったモデル名の通り、シフターとディレイラーが無線接続によってシフティングを行う変速システムが最大の特徴。前後ディレイラーが電源となるシートポストバッテリーとケーブルで接続される、セミワイヤレス方式を採用した唯一無二のコンポーネントとして生み出された。
今まではリムブレーキタイプのみの販売だったが、この度時代に追随するようにディスクブレーキモデルが新登場。ディレイラーやクランクなどのパーツはそのままに、油圧ディスクブレーキ用のシフター&キャリパーとローターがラインアップへと加わる。FSAは以前からMTB用の油圧ブレーキパーツをリリースしており、そのノウハウを活かして開発が行われたのだという。



K-Force WEのシフターは、レバーの上下にスイッチが倒れるように可動するシフトボタンの配置が見た目にも特徴的だが、ディスクブレーキモデルはブラケットのコンパクトなサイズ感が最も注目すべきポイントだ。一般的に油圧のマスターシリンダーはブラケット内部へ縦向きに配置されるためヘッド部分が大きくなりがちだが、それがレバーの操作性を悪化させる要因にもなっていた。
FSAはその問題を解決するために、マスターシリンダーをブラケットの胴体へ横向きに配置する内部構造を採用。対してシフト信号を送る電子パーツやバッテリーとなるボタン電池をヘッド部分に収めており、結果としてリムブレーキモデルとほぼ同サイズのコンパクトなブラケットに仕上がっている。


特有の曲線を描くエルゴノミックな形状はそのまま引き継ぎ、握り込みやすさや指先のタッチの良さに貢献。他社メーカーのものはハンドルの端からバンドを潜らせるように装着していくが、FSAは好みの位置にシフトレバーを合わせ後部からクランプパーツを差し込んでサイドからボルトで締めていく機構を採用しており着脱のしやすさに配慮している。
ブレーキキャリパーは他社同様に三角形状のデザインに。サイズも小さく滑らかなボディ形状を採用することともに、標準装備のパッドもキャリパー本体と一体化したようなフィンデザインを用いており空力性能とデザイン性を両立している。またボディ剛性を高めるよう工夫されており、ブレーキフィーリングの向上に一役買っている。




ディスクローターは外側シルバー、内側ブラックの2ピース構造を採用し、風の通りを良くしたフィン形状と表面積を増やしたデザインによって冷却性能を高めている。ハブへのマウント方式は6ボルトタイプで、ディスクロードには標準の140mmと160mmの2種類のサイズ展開だ。
K-Force WE Discはアルミ削り出しやカーボンを多用したパーツで構成されており、グループセット重量2,057gと非常に軽量な値をマーク。すでにEFエデュケーションファーストを始めとする一部のプロ選手がトレーニングで使っているのだという。プロの意見を取り入れ、リムブレーキよりも下りやコーナーでアドバンテージとなるような制動性能に調整している。
「開発においては他社を参考にする訳でもなく、プロからのフィードバックを第一に考え反映しています。K-Force WE Discのブレーキフィーリングも非常に気に入ってもらえていますよ。強力にストッピングパワーが立ち上がるよう味付けしているので、ブレーキをかけている時間が今までより短く、それによってレースを速く走れるよう開発を重ねました。リムブレーキモデルはすでにレース投入も果たしていますが、ディスクブレーキモデルはおそらくプロコンチネンタルチームのブルゴスBHが今後のレースで使ってくれる予定です」とジラルディ氏は語ってくれた。
またFSAのパワーメーター搭載クランク「PowerBox(パワーボックス)」には46/30T、48/32Tのスーパーコンパクトモデルが登場。急坂の多い峠道を楽に走りたい人、グラベル/シクロクロスバイクでパワー測定をしたい人にピッタリのクランクとなっている。Power2maxと共同開発した製品で信頼性も高い。クランクアームもカーボンとアルミの2タイプを用意しており、予算に応じて選べるラインアップだ。


エアロダイナミクスに定評のあるプロダクツを揃えるヴィジョンは、カーボンホイールのMETRON(メトロン)シリーズが新たにチューブレスレディ対応に。チューブレスタイヤの有用性はヴィジョンも大いに認めるところで、スムースなライドフィーリングやトラクションの向上、重量の削減やリム打ちパンクの防止など多くのメリットをライダーにもたらしてくれる。
METRONのクリンチャーホイールはすべて、タイヤビードが保持されやすいチューブレス対応のリムベッドへとアップデート。開発時にはあらゆるメーカーのチューブレスタイヤを装着して嵌合のマッチングテストを行ったという。25C以上のワイドタイヤに合わせたリム内幅19mmの設計だ。またチューブラーモデルも引き続き併売される。


今まではリムハイトごとに40SL、55SL、81SLというラインアップだったが、今回新たにヒルクライム向けの軽量モデル「30SL」が追加。モデル名の通り30mmのローハイトを採用しており、登りでの軽い走りと高い反応性を有したホイールに仕上がっている。チューブラーで1,260g、クリンチャーで1,400gの重量だ。
「EFエデュケーションファーストが使用しているMETRONホイールは完全に市販品と同じものです。リムのステッカーデザインがプロチーム仕様なだけ。ベッティオルもフランドルではMETRON 55SLを使用しました。ハイトが高いほうが高剛性でプロ好みのようですね。現状ですでにかなりのワイドリムなので、クラシックレース用にワイドタイヤを使用する場合でも問題はありませんでした」と解説したジラルディ氏。
METRONと言えばカーボンハンドルも代表的な製品の一つ。メリダやビアンキのエアロロードと合わせて使われることの多い、ステム一体型のMETRON 5Dはプロレースでも愛用されておりご存知の人も多いはず。さらにはバートップがストレート形状になったMETRON 6Dもリリースされており、自身のポジションに合わせて選択できるラインアップとなっている。
「まずCFD解析を用いてコンピュータ上でエアロに優れたバー形状を導き出します。その後は握り心地やコントロール性の良いドロップ形状をプロトタイプをいくつも作成して試していくんです。ひたすらプロライダーとのコンタクトを繰り返して形状を煮詰めていきます。そうやって誰もが使いやすいエルゴノミックなデザインができあがっていくんです。バーレーン・メリダの新城幸也もヴィジョン/FSAハンドルの愛用者ですし、ぜひ日本の皆さんにも試して欲しいですね」とジラルディ氏は締めくくった。


text&photo:Yuto.Murata
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