フランダース・クラシックスのシリーズ最終戦ブラバンツペイルでマチュー・ファンデルポールがジュリアン・アラフィリップらを含む4人の有力グループスプリントを制し勝利。シクロクロス世界王者の若者はクラシックでも超一級であることを証明した。



前回覇者ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が天を仰ぐ前回覇者ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が天を仰ぐ photo:CorVosバスクのレースで負傷したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の復帰戦が話題だバスクのレースで負傷したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の復帰戦が話題だ photo:CorVos


今年で開催59回目を迎えたブラバンツペイル(UCI1.HC)は、ベルギーのフランドル地方とワロン地方を繋ぐセミクラシックレースだ。フランス語では「ラ・フレーシュ・ブラバンソンヌ(ブラバントの矢)」と呼ばれ親しまれる水曜日開催の大会だ。

ロンド・ファン・フラーンデレンを主催するフランダース・クラシックシリーズ(オンループ、ドワーズドア、ヘント、ロンド、シュヘルデ、ブラバンツ)の最終戦にあたるが、起伏に富んだコースはアルデンヌ・クラシック寄り。そのため、週末から始まるアルデンヌ3連戦(アムステル、フレーシュ、リエージュ)を見据えたクラシックレーサーが集まる。

ロンド2連覇のメンター、ステイン・デヴォルデルと並ぶマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)ロンド2連覇のメンター、ステイン・デヴォルデルと並ぶマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) photo:CorVos地元とも言えるロット・スーダルの応援が目立つ地元とも言えるロット・スーダルの応援が目立つ photo:CorVos


レースの舞台となるのは、ベルギーの首都ブリュッセル南東に広がる丘陵地帯。地理的にはロンドに代表されるフランドルクラシックの開催場所よりも東だ。そのため丘陵は比較的緩やかとなり、激坂と呼ぶような急勾配の登りは登場しないのが特徴。しかしルーヴェンからオーベレルエイセに至る196.2kmコースには31ヶ所の登坂区間が登場し、選手たちの脚を削る。

美しいルーヴェンの街をスタートしていくプロトン美しいルーヴェンの街をスタートしていくプロトン photo:CorVos
フィニッシュ手前には5つの坂「ハーガールト(平均勾配10%)」「ヘルトストラート(平均勾配4%)」「ホルストハイデ(平均勾配5%)」「エイケルダーラーン(平均勾配7%)」「シャヴェイ(平均勾配6%)」が詰め込まれた23kmの周回コースが用意されており、選手たちはここを4周する。

フィニッシュは平坦であり、スプリンター系の選手が残れば有利な展開に持ち込めるが、激しい展開と細かなアップダウンで生き残ることが条件となる。昨年はティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がチーム力を活かし独走勝利を飾った。

ルーヴェンの教会のステンドグラスがプロトンを見守るルーヴェンの教会のステンドグラスがプロトンを見守る photo:CorVosスタートフラッグが振られ、レースが始まるスタートフラッグが振られ、レースが始まる photo:CorVos


有力選手として、ここまで出場するレースすべてで勝利(ステージレースでも最低区間1勝)を挙げているジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の出場が話題。先のイツリア・バスクカントリーでリーダージャージを着ながら落車して負傷、棄権した後の復帰第一戦。他にもロンド覇者アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト)、ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、そしてマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、前回覇者ティム・ウェレンスら豪華な布陣が顔を揃えた。

ドリス・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス)らを含む7人の逃げドリス・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス)らを含む7人の逃げ photo:CorVosドリス・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス)、フレデリック・バカールト (ベルギー、ワンティ・グループゴベール)、フランチェスコマヌエル・ボンジョルノ (イタリア、ネーリ ソットーリ・セッレ・イタリア・KTM)らプロコン勢による7人の逃げは残り100km地点で3分の差を保っていた。

レースが残り70kmを切り、終盤の23.3km×3ラップの周回路に入ると、ロット・スーダルのコントロールする後方メイン集団は一気に活性化し、逃げグループの差は見る間に減少した。

アタックして独走に持ち込んだダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)アタックして独走に持ち込んだダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVosトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)とミケルフレーリク・ホノレ(デンマーク・ドゥクーニンク・クイックステップ)らがアタックして集団のペースを上げる。そしてマチュー・ファンデルポールが単身で積極的に動く。ファンデルポールはヘルトストラートとホルストハイデで脚を見せ、前を行く2人に合流。しかし協調体制が得られないことを悟ると一度メイン集団に戻る。

残り30kmを切って逃げ集団も捕まるとダリル・インピーがアタック、独走を開始した。ツアー・ダウンアンダーで勝利を飾っているインピーは強力なペダリングで集団に15秒ほどの差を保持し、残り23kmの最終周回へと入る。

パヴェでペースアップするジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)パヴェでペースアップするジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
後方ではヘルトストラートでついに優勝候補ジュリアン・アラフィリップがアタックを開始。マイケル・マシューズ、ティム・ウェレンス、マチュー・ファンデルポールが追走し、インピーに合流。5人の優勝候補による逃げグループが形成される。

スプリンターのマイケル・マシューズを嫌いジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタックスプリンターのマイケル・マシューズを嫌いジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタック photo:CorVos
スプリントを嫌いアタックを試みるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)スプリントを嫌いアタックを試みるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos後方では一昨年覇者、昨年2位のソニー・コルブレッリ擁するバーレーン・メリダが集団先頭に集結してペースアップを試みるが、前を行く超強力なメンバーとの差が詰まらない。ホルストハイデでアラフィリップによるペースアップがあると、脚を使ってきたインピーがまず遅れる。マシューズは苦しみながらも粘り、4人の争いに絞られた。

この4人によるゴールスプリントを見越しつつ、しかしフィニッシュまで良く協調したまま最後の闘いへ。ファンデルポール先頭でスプリントが開始されると、アラフィッリップが続くがスピードの乗りが違った。驚くことにオランダチャンピオンジャージに並べる者は誰も居なかった。

アラフィリップら3人をスプリントで下し勝利したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)アラフィリップら3人をスプリントで下し勝利したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) photo:CorVos
終始最も積極的に動き、掴んだ堂々の勝利。ファンデルポールは今期フランダースクラシック初挑戦ながらワールドツアーレースのドワーズドール・フラーンデレンに勝利し、ロンド・ファン・フラーンデレンとヘント・ウェヴェルヘムで4位など、確固たる地位を築いた。

ポディウム待ちインタビューエリア。アラフィリップを下したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)ポディウム待ちインタビューエリア。アラフィリップを下したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) photo:CorVos「3人のビッグネームと争い、勝てたことは本当に誇らしく、夢のようだ。このレースはクラシック入り前から言っていたとおり、もっとも僕の走りに適したレース。それが証明できたことも嬉しい」と24歳の若き王者は言う。遡ること34年前、マチューの父アドリも1985年のブラバンツペイルに勝利している。マチューの生まれる10年前の話だ。

ファンデルポールの次なる目標は日曜日。当初より今期のクラシック参戦で最大の目標としてきたオランダチャンピオンジャージを着ての母国最大のワールドツアーレース、アムステルゴールドレース制覇だ。

ブラバンツ・ペイル2019表彰台  優勝は24歳のマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)ブラバンツ・ペイル2019表彰台 優勝は24歳のマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) photo:CorVos

ブラバンツ・ペイル2019結果
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 4h35’11”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
5位 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) +11”
6位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト) +12”
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ディメンションデータ)
8位 アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワル・レディーネス)
9位 ピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
10位 ジュスタン・ジュル(フランス、ワロニー・ブリュッセル) +18”
text:Makoto.AYANO
photo:CorVos

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