2019/04/03(水) - 23:00
スラムがミドルグレードロードコンポーネント、FORCE (フォース)へ無線電動変速システムeTapを導入。アップデートされたRED eTap AXSの基幹技術を受け継ぎつつ、素材などでコストダウンを図り、リーズナブルなプライスを実現した戦略モデルがデビューする。ファーストインプレッションを交えて紹介しよう。
今年2月、アメリカにて行われたグローバルキャンプにおいて、新型のRED eTap AXSを発表したスラム。唯一無二である無線電動変速システムを更にブラッシュアップし、12スピード化と独自のギア構成「X-RANGE」によって、ロードレースからグラベルまで対応するシステムを提案し、コンポーネント界に強烈なインパクトを与えた。(特集記事はこちら)
それから2カ月、その興奮さめやらぬ中でスラムが放つ"One more thing"が、同社のミドルグレードロードコンポーネントであるフォースへのeTapの導入だ。2015年の発表以降、最上級グレードにのみ展開されてきた無線電動変速システムが、ついに手の届きやすいグレードへとトリクルダウンしてきた。
FORCE eTap AXSの基幹となる技術は、先日発表されたRED eTap AXSからほぼ全てを受け継いでいる。つまり、12スピードに最適化されたギア構成の”X-RANGE”、そしてそれを可能にするトップ10Tのための新型フリーボディ規格”XDR”、外周部が平らにされた印象的なデザインによってスラム史上最高の耐久性を実現した”フラットトップチェーン”、プーリーケージの動作を油圧ダンパーによって制御することで、あらゆる路面でのチェーンテンションを適切にコントロールする”オービット”、あらゆる規格に対する互換性を持つBBシステム”DUB”といった、RED eTap AXSに備わっているテクノロジー全てが、FORCEにももたらされた。
つまり、RED eTap AXSにおいてスラムが提示したコンセプトやロードライディングの世界観は、FORCE eTap AXSにおいても余すところなく味わうことが出来るということでもある。より多くのサイクリストへ、そのコンセプトを届けるためのコストダウンが行われている。
価格で見れば、フロントダブルのディスクブレーキ仕様のシフター/ディレイラー/バッテリーチャージャーのセットが266,800円となっており、同内容のRED eTap AXSの359,964円に対して約100,000円ほど抑えられている計算になる。
REDとの大きな差はルックスと重量に現れている。ラグジュアリーな印象を与えるシルバーを基調としていたREDに対し、FORCEはブラックメインのコンポーネントで精悍なイメージに仕上がっている。特に大きく異なるのはクランクセット。ダイレクトマウント方式となるのはRED同様だが、FORCEはダブル仕様の場合、スパイダーアームを介してチェーンリングを装着するのは、大きく異なるポイントだ。
重量面においては、フロントダブルのディスクブレーキ仕様のフルセットで比べると、REDが2,518g、FORCEは2,812gと約300gほどの重量増となる。リムブレーキ仕様ではその差は縮まり、REDの2,254gに対しFORCEは2,453gと約200gほどの差となっている。
- 新型FORCE eTAP AXS最速インプレッション
私が1月末にアメリカでREDをテストしてからわずか2ヶ月。先の発表会でもFORCE eTAP AXSの後追い登場については触れられていたものの、まさかここまで早々にリリースされるとは思ってもみなかった。試乗バイクはリムブレーキ仕様で、ギア構成はフロントが最も小さい46/33、カセットが真ん中の10-28という、ホビーユーザーに適したセッティング。発表会で試したREDの記憶と照らし合わせながら(現地の試乗車はディスクブレーキ仕様だったため変速系統を比較)テストライドを行った。
シマノのULTEGRA Di2然り、カンパニョーロのRECORD EPS然り、変速やブレーキのシステムがそれぞれの上位グレードと同一であることは、このFORCE eTAP AXSでも変わらない。シフトボタンの操作感はREDと等しく、前後ディレイラーの反応速度にも差は感じなかった(変速については記事下部の動画を確認して頂きたい)。
筆者がREDで最も感銘を受けた滑らかなチェーン駆動がほぼそのまま体感できた点も評価したい。チェーン形状由来なのか表面コーティング由来なのかは判別がつきにくいが、1コマ1コマのインフォメーションを感じない「フラット」な脚応えがFORCEでも味わえるのは嬉しいところだ。
価格的にもREDよりグラベルライドやシクロクロスに使われる機会が多いであろうこのFORCEに、シリコンフルードを搭載したダンピングシステム「Orbid(オービッド)」が引き継がれていることがポイントだろう。実際に舗装が荒れている場所を走ってもチェーン暴れはシマノより控えめで、それでいてクラッチで強制的に押さえつける先代FORCE 1よりも明らかに抵抗感は少ない。
ただし、REDと比較するとリア変速のもたつきは気になった。ディレイラー自体の動きは遜色がないため、恐らくはカセットの素材変更やコーティングが影響していると思うのだが、言うなれば第一世代のDi2と同等程度。REDのカセットに換装すれば改善する可能性が高いので、次回チャンスがあれば試してみたい。
フロントディレイラーの羽やカセットの表面処理はお世辞にも高級とは言えず、各部仕上げの安っぽさも拭えない(失礼!)ものの、今評価すべきはそこではなく、ターゲット幅の広さを謳うX-RANGEギアレシオがホビーユーザー用のFORCEに搭載され、しかもREDの話題冷めやらないこのタイミングで登場したことにある。
一般的にセカンドグレードの登場までは1年以上のタイムラグを要することが常だが、この瞬間的なリリースには、スラムのeTAP、そしてX-RANGEに対する自信と熱意が伺える。実際にトップ側から10-11-12-13-14-15-16-17と7段も1T刻みが確保されているカセットは、プロやエリートホビーレーサーよりも脚力に自信の無いホビーユーザーにこそ歓迎されるべきシステムであり、1秒を争うレースでない限り先ほど述べた変速遅れもさほど問題にはならないだろう。
フロントダブル/シングルといった他者に類を見ないバリエーションや、MTB用のイーグルコンポーネントとの互換性。そしてX-RANGEをはじめとする合理的なシステムを全て引き継ぎ生まれたのがFORCE eTap AXSだ。REDとの価格差10万円を高いと感じるか、それとも安いと感じるかはあなた次第だ。
text:So.Isobe
今年2月、アメリカにて行われたグローバルキャンプにおいて、新型のRED eTap AXSを発表したスラム。唯一無二である無線電動変速システムを更にブラッシュアップし、12スピード化と独自のギア構成「X-RANGE」によって、ロードレースからグラベルまで対応するシステムを提案し、コンポーネント界に強烈なインパクトを与えた。(特集記事はこちら)
それから2カ月、その興奮さめやらぬ中でスラムが放つ"One more thing"が、同社のミドルグレードロードコンポーネントであるフォースへのeTapの導入だ。2015年の発表以降、最上級グレードにのみ展開されてきた無線電動変速システムが、ついに手の届きやすいグレードへとトリクルダウンしてきた。
FORCE eTap AXSの基幹となる技術は、先日発表されたRED eTap AXSからほぼ全てを受け継いでいる。つまり、12スピードに最適化されたギア構成の”X-RANGE”、そしてそれを可能にするトップ10Tのための新型フリーボディ規格”XDR”、外周部が平らにされた印象的なデザインによってスラム史上最高の耐久性を実現した”フラットトップチェーン”、プーリーケージの動作を油圧ダンパーによって制御することで、あらゆる路面でのチェーンテンションを適切にコントロールする”オービット”、あらゆる規格に対する互換性を持つBBシステム”DUB”といった、RED eTap AXSに備わっているテクノロジー全てが、FORCEにももたらされた。
つまり、RED eTap AXSにおいてスラムが提示したコンセプトやロードライディングの世界観は、FORCE eTap AXSにおいても余すところなく味わうことが出来るということでもある。より多くのサイクリストへ、そのコンセプトを届けるためのコストダウンが行われている。
価格で見れば、フロントダブルのディスクブレーキ仕様のシフター/ディレイラー/バッテリーチャージャーのセットが266,800円となっており、同内容のRED eTap AXSの359,964円に対して約100,000円ほど抑えられている計算になる。
REDとの大きな差はルックスと重量に現れている。ラグジュアリーな印象を与えるシルバーを基調としていたREDに対し、FORCEはブラックメインのコンポーネントで精悍なイメージに仕上がっている。特に大きく異なるのはクランクセット。ダイレクトマウント方式となるのはRED同様だが、FORCEはダブル仕様の場合、スパイダーアームを介してチェーンリングを装着するのは、大きく異なるポイントだ。
重量面においては、フロントダブルのディスクブレーキ仕様のフルセットで比べると、REDが2,518g、FORCEは2,812gと約300gほどの重量増となる。リムブレーキ仕様ではその差は縮まり、REDの2,254gに対しFORCEは2,453gと約200gほどの差となっている。
- 新型FORCE eTAP AXS最速インプレッション
私が1月末にアメリカでREDをテストしてからわずか2ヶ月。先の発表会でもFORCE eTAP AXSの後追い登場については触れられていたものの、まさかここまで早々にリリースされるとは思ってもみなかった。試乗バイクはリムブレーキ仕様で、ギア構成はフロントが最も小さい46/33、カセットが真ん中の10-28という、ホビーユーザーに適したセッティング。発表会で試したREDの記憶と照らし合わせながら(現地の試乗車はディスクブレーキ仕様だったため変速系統を比較)テストライドを行った。
シマノのULTEGRA Di2然り、カンパニョーロのRECORD EPS然り、変速やブレーキのシステムがそれぞれの上位グレードと同一であることは、このFORCE eTAP AXSでも変わらない。シフトボタンの操作感はREDと等しく、前後ディレイラーの反応速度にも差は感じなかった(変速については記事下部の動画を確認して頂きたい)。
筆者がREDで最も感銘を受けた滑らかなチェーン駆動がほぼそのまま体感できた点も評価したい。チェーン形状由来なのか表面コーティング由来なのかは判別がつきにくいが、1コマ1コマのインフォメーションを感じない「フラット」な脚応えがFORCEでも味わえるのは嬉しいところだ。
価格的にもREDよりグラベルライドやシクロクロスに使われる機会が多いであろうこのFORCEに、シリコンフルードを搭載したダンピングシステム「Orbid(オービッド)」が引き継がれていることがポイントだろう。実際に舗装が荒れている場所を走ってもチェーン暴れはシマノより控えめで、それでいてクラッチで強制的に押さえつける先代FORCE 1よりも明らかに抵抗感は少ない。
ただし、REDと比較するとリア変速のもたつきは気になった。ディレイラー自体の動きは遜色がないため、恐らくはカセットの素材変更やコーティングが影響していると思うのだが、言うなれば第一世代のDi2と同等程度。REDのカセットに換装すれば改善する可能性が高いので、次回チャンスがあれば試してみたい。
フロントディレイラーの羽やカセットの表面処理はお世辞にも高級とは言えず、各部仕上げの安っぽさも拭えない(失礼!)ものの、今評価すべきはそこではなく、ターゲット幅の広さを謳うX-RANGEギアレシオがホビーユーザー用のFORCEに搭載され、しかもREDの話題冷めやらないこのタイミングで登場したことにある。
一般的にセカンドグレードの登場までは1年以上のタイムラグを要することが常だが、この瞬間的なリリースには、スラムのeTAP、そしてX-RANGEに対する自信と熱意が伺える。実際にトップ側から10-11-12-13-14-15-16-17と7段も1T刻みが確保されているカセットは、プロやエリートホビーレーサーよりも脚力に自信の無いホビーユーザーにこそ歓迎されるべきシステムであり、1秒を争うレースでない限り先ほど述べた変速遅れもさほど問題にはならないだろう。
フロントダブル/シングルといった他者に類を見ないバリエーションや、MTB用のイーグルコンポーネントとの互換性。そしてX-RANGEをはじめとする合理的なシステムを全て引き継ぎ生まれたのがFORCE eTap AXSだ。REDとの価格差10万円を高いと感じるか、それとも安いと感じるかはあなた次第だ。
text:So.Isobe
スラム Force eTap AXS 重量
2x | 2x(パワーメーター込み) | 1x | 1x(パワーメーター込み) | |
Force ディスク | 2,812g | 2,912g | 2,572g | 2,608g |
Force リム | 2,453g | 2,553g | 2,213g | 2,249g |
Force ディスク(エアロ) | 2,622g | 2,722g | 2,383g | 2,419g |
Force リム(エアロ) | 2,223g | 2,323g | 1,983g | 2,019g |
スラム Force eTap AXS 価格
グループセット(シフター/ディレイラー/充電器セット) | フルセット(グループセット+クランク/チェーン/カセット/ブレーキセット) | |
Force AXS Road 1X | ¥166,900 | ¥249,600 |
Force AXS Road 2X | ¥220,200 | ¥299,800 |
Force AXS HRD 1X(ディスクブレーキ) | ¥220,200 | ¥282,100 |
Force AXS HRD 2X (ディスクブレーキ) | ¥266,800 | ¥326,100 |
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