2019/02/04(月) - 09:56
テクニカルなキャンバー区間を味方に付け、ワウト・ファンアールト(ベルギー)との一騎打ちを制したマチュー・ファンデルポール(オランダ)が2015年以来4年ぶりに世界タイトルを獲得。悲願の勝利を母国オランダに届けた。
2日間に渡ってデンマーク、ボーゲンセで開催されたシクロクロス世界選手権の最終種目は「世界王者」の称号を決める男子エリートレース。前カテゴリーの女子U23と比べれば僅かに気温が上がったものの、それでもコーナーや急角度のキャンバーなど一部区間は依然としてスリッピーなまま。大会を通して一番の大観衆が詰め掛けたコースに向け、小坂光(宇都宮ブリッツェン)を含む19ヶ国58名の選手が駆け出した。
ボートが停泊する運河沿いのストレートでホールショットを決めたのは、優勝候補最右翼のマチュー・ファンデルポール(オランダ)だった。次いでマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)や、3年連続世界王者に輝いているワウト・ファンアールト(ベルギー)が強烈なペースを保ちながら先頭を奪い合う。序盤から繰り返されるシクロクロス大国同士のぶつかり合いに、会場のボルテージは一気に最高潮へと達する。
積極策に攻めたのはベルギーだった。スペシャルペイントのバイクを駆るベルギー王者トーン・アールツやローレンス・スウィークが波状攻撃を仕掛けるが、ラース・ファンデルハールとコルヌ・ファンケッセル、そして絶対エースファンデルポール擁するオランダ勢は崩れない。宇都宮シクロクロスで勝利しているフェリペ・オルツ(スペイン)が唯一の非ベルギー・オランダ勢として先頭グループに入った。
レースが動いたのは全12周回中の3周目だった。滑りやすいキャンバー区間を前にファンデルポールが加速し、続いたアールツは後輪を滑らせ失速。こうしてファンデルポールが独走に持ち込んだ。
一気に5秒を得たファンデルポールの後ろでは、息切れするアールツに代わりファンアールトが追走した。必死の表情でライバルを追うディフェンディングチャンピオンは、今大会全体の最速ラップ(5分32秒/平均28.18km/h)を叩き出して距離を詰めていく。この動きを確認したファンデルポールは一旦ペースを落とし、ファンアールトの様子を窺うことを選んだ。
すると次なる周回(5周目/12周回)で、再びキャンバー区間を前にファンデルポールが動いた。リアタイヤを滑らせながらも猛烈なペースで難所を駆け抜けると、続いたファンアールトが痛恨のミス。大きくバイクをスライドさせて降車を強いられ、両者の間に5秒の差が生まれた。
ここからアルカンシエルを賭けた、ライバル同士による緊迫の追走劇が幕開ける。平坦やコーナリングは互角だが、キャンバーの処理で上回ったのはやはりファンデルポール。限界近くで追走を続けるファンアールトに細かいミスが出たことも手伝って、8周目に両者の差は20秒以上に。ファンデルポールがアルカンシエル奪還を大きく引き寄せた。
二人の後方ではベルギー、オランダのサブエースが激しく鍔迫り合いを続け、アールツが単独3位に躍り出る。超ハイペースによってラップアウトが続出し、51位小坂光(宇都宮ブリッツェン)もこの中に含まれた。最終的な完走率は他カテゴリーよりも圧倒的に低い50%(29名完走)にまで落ち込んだ。
終始安定したペースを刻んだファンデルポールが、2015年以来4年ぶりの世界選手権エリートタイトル奪還。感極まった表情でバイクを高々と掲げたファンデルポールは「フィニッシュラインを越えた時に自分が抱えていたたくさんのプレッシャーから解放された気がした。ここまで本当に長い戦いだった。ようやく(世界選で)噛み合った」と安堵の色を浮かべる。
「コースは非常にタフ。マッド用タイヤではスピードを乗せるのが難しかったけれど、スタート直後から調子の良さは感じていた。前半戦のワウトは非常に力強く、自分に追いついてきた時は(自分の)心を強く保つ必要があったけれど、引き離すことができてとてもハッピーだ。ここまで素晴らしいシーズンを過ごしてきたけれど、それでも尚世界選手権で勝つのは難しい。待ち望んだアルカンシエルを取り戻せて本当に良かった」。誰よりも世界選手権の難しさを知るファンデルポールはインタビューに応えた。
2位争いはファンアールトと、後続から単騎追いついてきたアールツによる争いに持ち込まれた。走りに余裕を感じるアールツが先行したものの、最終周回に勢い余って痛恨のスリップダウン。これによってファンアールトの2位とアールツの3位が確定。今シーズン何度もトップスリーを分け合ってきたファンデルポール、ファンアールト、そしてアールツが再び表彰台に登った。
またこの日、ベルギー勢が7名、オランダ勢2名とシクロクロス大国がトップ10をほぼ独占する形に。唯一ドイツのマルセル・メイセンが8位に入り、中盤まで3番手グループで走っていたフェリペ・オルツ(スペイン)は12位でレースを終えている。現役最終レースのベテラン、フランシス・ムレー(フランス)は26位。また、小坂はマイナス6ラップの51位というリザルトでレースを終えている。以下は小坂のコメント。
「今回もフルラップでの完走を目標として走りましたが、届きませんでした。コースが短いこともあってトップからの差を毎周回30秒以内に抑えなければならないと考えていましたが、トップが想像以上に速く、全周回中半分の6周でレースを降ろされてしまいました。
キャンバーやコーナーの技術というよりスピードに対応できていなかったです。昨年よりはレースができたという実感はありますが、もっと走りたかったです。サポートしてくれたスタッフ、現地そして日本からのたくさんの応援、ありがとうございました」
2日間に渡ってデンマーク、ボーゲンセで開催されたシクロクロス世界選手権の最終種目は「世界王者」の称号を決める男子エリートレース。前カテゴリーの女子U23と比べれば僅かに気温が上がったものの、それでもコーナーや急角度のキャンバーなど一部区間は依然としてスリッピーなまま。大会を通して一番の大観衆が詰め掛けたコースに向け、小坂光(宇都宮ブリッツェン)を含む19ヶ国58名の選手が駆け出した。
ボートが停泊する運河沿いのストレートでホールショットを決めたのは、優勝候補最右翼のマチュー・ファンデルポール(オランダ)だった。次いでマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)や、3年連続世界王者に輝いているワウト・ファンアールト(ベルギー)が強烈なペースを保ちながら先頭を奪い合う。序盤から繰り返されるシクロクロス大国同士のぶつかり合いに、会場のボルテージは一気に最高潮へと達する。
積極策に攻めたのはベルギーだった。スペシャルペイントのバイクを駆るベルギー王者トーン・アールツやローレンス・スウィークが波状攻撃を仕掛けるが、ラース・ファンデルハールとコルヌ・ファンケッセル、そして絶対エースファンデルポール擁するオランダ勢は崩れない。宇都宮シクロクロスで勝利しているフェリペ・オルツ(スペイン)が唯一の非ベルギー・オランダ勢として先頭グループに入った。
レースが動いたのは全12周回中の3周目だった。滑りやすいキャンバー区間を前にファンデルポールが加速し、続いたアールツは後輪を滑らせ失速。こうしてファンデルポールが独走に持ち込んだ。
一気に5秒を得たファンデルポールの後ろでは、息切れするアールツに代わりファンアールトが追走した。必死の表情でライバルを追うディフェンディングチャンピオンは、今大会全体の最速ラップ(5分32秒/平均28.18km/h)を叩き出して距離を詰めていく。この動きを確認したファンデルポールは一旦ペースを落とし、ファンアールトの様子を窺うことを選んだ。
すると次なる周回(5周目/12周回)で、再びキャンバー区間を前にファンデルポールが動いた。リアタイヤを滑らせながらも猛烈なペースで難所を駆け抜けると、続いたファンアールトが痛恨のミス。大きくバイクをスライドさせて降車を強いられ、両者の間に5秒の差が生まれた。
ここからアルカンシエルを賭けた、ライバル同士による緊迫の追走劇が幕開ける。平坦やコーナリングは互角だが、キャンバーの処理で上回ったのはやはりファンデルポール。限界近くで追走を続けるファンアールトに細かいミスが出たことも手伝って、8周目に両者の差は20秒以上に。ファンデルポールがアルカンシエル奪還を大きく引き寄せた。
二人の後方ではベルギー、オランダのサブエースが激しく鍔迫り合いを続け、アールツが単独3位に躍り出る。超ハイペースによってラップアウトが続出し、51位小坂光(宇都宮ブリッツェン)もこの中に含まれた。最終的な完走率は他カテゴリーよりも圧倒的に低い50%(29名完走)にまで落ち込んだ。
終始安定したペースを刻んだファンデルポールが、2015年以来4年ぶりの世界選手権エリートタイトル奪還。感極まった表情でバイクを高々と掲げたファンデルポールは「フィニッシュラインを越えた時に自分が抱えていたたくさんのプレッシャーから解放された気がした。ここまで本当に長い戦いだった。ようやく(世界選で)噛み合った」と安堵の色を浮かべる。
「コースは非常にタフ。マッド用タイヤではスピードを乗せるのが難しかったけれど、スタート直後から調子の良さは感じていた。前半戦のワウトは非常に力強く、自分に追いついてきた時は(自分の)心を強く保つ必要があったけれど、引き離すことができてとてもハッピーだ。ここまで素晴らしいシーズンを過ごしてきたけれど、それでも尚世界選手権で勝つのは難しい。待ち望んだアルカンシエルを取り戻せて本当に良かった」。誰よりも世界選手権の難しさを知るファンデルポールはインタビューに応えた。
2位争いはファンアールトと、後続から単騎追いついてきたアールツによる争いに持ち込まれた。走りに余裕を感じるアールツが先行したものの、最終周回に勢い余って痛恨のスリップダウン。これによってファンアールトの2位とアールツの3位が確定。今シーズン何度もトップスリーを分け合ってきたファンデルポール、ファンアールト、そしてアールツが再び表彰台に登った。
またこの日、ベルギー勢が7名、オランダ勢2名とシクロクロス大国がトップ10をほぼ独占する形に。唯一ドイツのマルセル・メイセンが8位に入り、中盤まで3番手グループで走っていたフェリペ・オルツ(スペイン)は12位でレースを終えている。現役最終レースのベテラン、フランシス・ムレー(フランス)は26位。また、小坂はマイナス6ラップの51位というリザルトでレースを終えている。以下は小坂のコメント。
「今回もフルラップでの完走を目標として走りましたが、届きませんでした。コースが短いこともあってトップからの差を毎周回30秒以内に抑えなければならないと考えていましたが、トップが想像以上に速く、全周回中半分の6周でレースを降ろされてしまいました。
キャンバーやコーナーの技術というよりスピードに対応できていなかったです。昨年よりはレースができたという実感はありますが、もっと走りたかったです。サポートしてくれたスタッフ、現地そして日本からのたくさんの応援、ありがとうございました」
シクロクロス世界選手権2019 男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルポール(オランダ) | 1h09’20” |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | +16” |
3位 | トーン・アールツ(ベルギー) | +25” |
4位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) | +50” |
5位 | ローレンス・スウィーク(ベルギー) | +1’01” |
6位 | ラース・ファンデルハール(オランダ) | +1’10” |
7位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー) | +1’24” |
8位 | マルセル・メイセン(ドイツ) | +1’29” |
9位 | イェンス・アダムス(ベルギー) | +1’31” |
10位 | ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー) | +1’33” |
51位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェン) | -6LAPS |
text:So.Isobe
photo:photo:Nobuhiko.Tanabe in Bogense, Denmark
photo:photo:Nobuhiko.Tanabe in Bogense, Denmark
Amazon.co.jp
テトロン製 オランダ国旗(M判・34×50cm)
トスパ東京製旗株式会社
テトロン製 ベルギー国旗(M判・34×50cm)
トスパ東京製旗株式会社
テトロン製 ベルギー国旗(M判・34×50cm)
トスパ東京製旗株式会社