2010シーズンは、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインから主力クラスの4選手を獲得するなどし、確実にチーム力が向上しているため、今季“国内最強チーム”との呼び声も高い。また昨季は、ベルギーでのレース活動を優先するために見送ったUCIコンチネンタルチーム登録だったが、今季は1年ぶりに登録をし、国内外のビッグレースを転戦する予定だ。

イタリアを拠点に本格的なレース活動をしているチームNIPPO

ヨーロッパに挑み続けるチームNIPPOヨーロッパに挑み続けるチームNIPPO photo:Sonoko Tanakaチームの最大の特徴は、本場ヨーロッパのプロチームと同じスタイル、同じ理論で活動をしていることだろう。日本の現状にも配慮しながら“本物”の自転車競技を常に意識しながら活動していくことは、決して容易いことではないが、限られた人的・物的資材で、次々におこるトラブルに立ち向かいながら、本場で戦うことの意義を大切にし、今日も走り続けている。

さらに今季は、ほとんどの選手が(新人のヨーロッパ人選手はいるが)、プロレースで優勝経験をもっているほど、選手1人1人のレベルがとても高いのが特徴だ。どの選手も拮抗した実力をもっているため、絶対的なエースや決まったアシスト選手がいない。つまり誰もがエースとなって勝ちを狙いにいける可能性があり、選手たちはとても刺激的な共同生活を送っている。

チームNIPPO 2010年体制チームNIPPO 2010年体制 photo:Sonoko Tanaka

大門&エッリ 2人の監督が考える今季のチームNIPPO

大門宏監督(チームNIPPO)大門宏監督(チームNIPPO) photo:Sonoko Tanakaチームの中心となるのは、イタリア、スイスでのレース経験が豊富な大門宏(だいもん・ひろし)監督。最近は、レース現場よりもスポンサーとの交渉など、チーム運営のために動くジェネラルマネージャーとしての仕事が多いが、いつも選手のために何ができるかを考え、陣頭指揮を執る。

今季はどんなチームですか?

「これまで国内外で築いてきた従来のNIPPOのスタイルに戻ったような感じですね。ヨーロッパで戦っていくためにも力量的に相応しい選手が集まりました。今シーズンの目標は10勝。結果だけを追い求めるだけではなく、チームとしての戦術にもこだわりたいと思います」。

大門監督にとって、Team NIPPOはどんなチームですか? 所属選手に期待することは?

「あえて誤解を恐れず言わせて頂くなら、選手やスタッフには、“仕方なく”いるチームだと思っていてほしいんです。本当はもっと上に行きたいんだけど、力量的にも無理だから仕方なくこのチームでステップアップの機会を窺うという強かな気持ち、真摯な意識と言うか……、そういった自覚をもつことは常にレベルの向上を求められている選手、スタッフにとって、とても大切なことなんです。

チームの参加するレース、サラリー含めて待遇に満足できなければ、どんどん上のチームを目指してほしい。

選手の力量に合わせ、最大限の環境を用意するけど、選手はチームを選べるのだから、積極的に自己アピールすることも重要です。ですから有能な選手を数年間に渡り抱え込もうとは一切思っていません。

一度プロチームで戦う決意をした以上、選手には、力量の向上という最大目標を見失うことなく、“プロフェッショナルとしての姿勢”、“課せられた使命”に忠実であってほしいと願ってます。

今シーズンどんなレースができるか? 何勝するか? ということもスポンサーの立場を意識した目先の目標としては確かに重要ですが、選手側の立場で考えるならば、チームNIPPOで得た経験を通じて、若い選手たちが数年後、どのようにレベルアップしているかが楽しみですね」。


アルベルト・エッリ監督(チームNIPPO)アルベルト・エッリ監督(チームNIPPO) photo:Sonoko Tanakaイタリアでは、大門監督がレース現場から離れている分、指導に携わるのは、イタリア人のアルベルト・エッリ監督になる。

現役時代の2000年には、名門テレコムチームに所属し、マイヨジョーヌを4日間着用した経験をもつ、地元イタリア国内では知らない人がいないほどの人物だ。昨季はプロコンチネンタルチームのISDネーリで監督を務め、今季からチームNIPPOに合流した。スマートな体型からも想像がつくように、まだまだ走りは現役選手に劣らない。時間をみつけては、選手たちの練習に同行し、走り方から生活面まで指導をしている。

イタリアの選手と比較して、日本人選手にどんな印象をもちましたか?

「やはり素質が不足しているというのは否めないね。でも日本人だから駄目だとは思わない。大門からも聞いているけど、日本では運動能力の優れた有能なアスリートは他の日本の代表的なメジャースポーツに流れてしまうのかもしれない。でも、あのぺタッキだって日本で生まれてたら相撲取り(関取)になってたかも知れないしね(笑)。

ただ指導したことに対しての飲み込みがとても速いという印象をもっている。頭のいい選手たちだと思っているよ。素質のあるなしに関わらず、まずは本場の環境に来ないかぎりは何も始まらない。そして、彼らはいまここにいる。その姿勢は尊敬しているんだ」。

具体的にどんな内容を選手たちに指導していますか?

「食事と集団内での走り方だね。たとえば、食事においては、スポーツマンとしての食事に対する意識がまだ低い。炭水化物を多く摂って、脂肪を控えるなど基本的なことだよ。食事は食べて楽しむものではなくて、プレーをするための食事でないとダメなんだ」。

今季、チームに望むことは何ですか? どんなチームになってほしい?

「ヨーロッパと日本のレースに出場するわけだけど、いまはヨーロッパでレースを教えているのだから、ヨーロッパのレースで結果を出してほしいと思っているよ。それが勝利でなくてもいい。とにかく教えた甲斐をここ、ヨーロッパで実感することが理想だね。日本で勝つことも確かに大切だけど、日本で勝つためにイタリアに来ている訳じゃないことも良く理解してるつもりだよ」。


注目選手たちの今季の抱負

宮澤崇史(日本、チームNIPPO)宮澤崇史(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●宮澤崇史(みやざわ・たかし)
1978年2月27日生

1人1勝が必須目標!

「とにかく1人1勝以上することが目標。選手であるからには勝てる選手でないとダメだと思っている。もう自分は2勝してきたので、あとはみんなに頑張ってほしいと思う。でも、アシストに回るということではなくて、自分は自分でさらなる勝利を目指していきたい。このチームは、それぞれの目的意識がしっかりしている。イタリアの厳しいレース環境で、チーム全体が成長できればいいと思う。チームが成長することで、1人1人の勝利にも繋がってくると思うから」。


中島康晴(日本、チームNIPPO)中島康晴(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●中島康晴(なかじま・やすはる)
1984年12月27日生

ヨーロッパで1勝!

「環境が変わって、まだ完全には慣れていないけど、今季は本場ヨーロッパのレースで勝ちたいと思っています。フランスのレースは丘陵を利用したアタック合戦が多いのに対して、イタリアのレースは勝負どころが決まっているような印象を受ける。そこでいかに勝負をするか? 下りが得意なので、下りで逃げて勝ちたいですね。もちろん、日本のレースでも勝ちたいと思っていますが、ヨーロッパの展開で勝てるようになりたいです」。


佐野淳哉(日本、チームNIPPO)佐野淳哉(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●佐野淳哉(さの・じゅんや)選手
1982年1月9日生

“勝つ”以前の課題をクリアしたい

「今季の目標は、ヨーロッパのレースで自分の走りをすること。そしてさらに、ヨーロッパの選手に認められたいと思っています。イタリアのレースを走っていると、自分の実力がまだ“勝つ”レベルではないと実感します。勝つ以前に課題がたくさんあるんです。その課題を1つずつクリアしていくことや、勝負に絡む走りを試して身につけていくことなどが、いまのヨーロッパでの目標です。
また今季は若い選手が増えて、選手の年齢の幅が狭くなりました。だから、誰かに指示されるということよりも、自分たちで考える機会が増えている。自分は年齢的に少し上になるので、指示する立場も勉強したいと思っています」。


マリウス・ヴィゼイアック(ポーランド、チームNIPPO)マリウス・ヴィゼイアック(ポーランド、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●WIESIAK Mariusz(マリウス・ヴィゼイアック)選手
1981年4月1日生(ポーランド)

日本のビッグレースを狙っている

「まだ今季は多くのレースを走っていないから、調子はまあまあといったところ。レーススケジュールもいまのところは未定だけど、日本のレースのメンバーに選ばれたなら、UCIレースを中心に勝ちを狙っていきたい。ツール・ド・北海道は特に勝ちたいレースだよ。ヨーロッパなら、より内容の濃いベルギーのレースが好きだから、またそこで勝ちたいと思っているよ」。


井上和郎(日本、チームNIPPO)井上和郎(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●井上和郎(いのうえ・かずお)選手
1981年2月17日生

恵まれた環境でさらに上を目指していく

「毎年、チームの体制が変わっていますが、今年は若い選手が多く、監督も選手としてのキャリアは素晴らしいけど、監督のキャリアはまだ浅い。そんなチームで、みんなが手探りながら、懸命に上を目指しているような印象を受けます。チームの規模は小さいですが、チームの仕組みはヨーロッパのプロチームとなにも変わらない。そんな恵まれた環境のなか、目の前の目標をひとつひとつクリアしていくことが自分のやるべきことです。その課程で、さらに上のステップに続く道が出来てくればいいと思います。
今季は1月下旬からヨーロッパに来て、走り始めているので、コンディションよく走れています。まだUCIレースで勝ったことがないので、今年はぜひ勝ちにいきたいと思います。このチームは誰もがエースになれて、勝つチャンスがある。体調がよければ、エースに選んでもらえるので、常に体調をよくし、コンディションを整えていくことも大切ですね」。


増田成幸(日本、チームNIPPO)増田成幸(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●増田成幸(ますだ・なりゆき)選手
1983年10月23日生

半年ぶりの復帰レースが楽しみです

「昨年秋の骨盤骨折と鎖骨骨折から、半年かかってようやく復帰レースを迎えようとしています。2月に鎖骨に入っていた金属のプレートを取る手術をして、不安材料を捨て去って、ヨーロッパにやってきました。まだレースを走っていないので、いまの実力をしっかり把握することはできないけど、みんなと練習をしているかぎりは、いい状態だと思っています。
チームは、みんなが上を目指していて意識の高い人が集まっているので、とてもいい刺激があります。いいモチベーションが保てるチームだと思います。みんなが勝てる選手ですが、自分もその中で得意な上りのレースなどで、結果を残したいです。選手として走れる期間には限りがある。だから、1年1年しっかりと満足ができるように過ごしていきたいと思います。
いまは半年ぶりにレースに出れることをとても嬉しく感じています。楽しみです!」


菊池誠晃(日本、チームNIPPO)菊池誠晃(日本、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●菊池誠晃(きくち・まさあき)選手
1986年4月9日生

タイ合宿で基礎レベルが上がっています

「今季は、国内でも海外でも、とにかく1勝したいです。昨シーズンは、後半になって走れるようになってきたけど、チャンスをものにすることができなかった。実力や経験など全体的に足りていないと感じました。ただ今季はシーズン始めにタイ合宿にいけたので、コンディションがすごくいいです。(新城)幸也さんたちと一緒にかなりハードなトレーニングをしてきました。だから、身体が絞れているし、基礎レベルが上がっていると実感しています。今季はもっと上りに強くなって、アップダウンのレースなどで勝ちを狙っていきたいと思います」。


ミルコ・バッタリーニ(イタリア、チームNIPPO)ミルコ・バッタリーニ(イタリア、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●BATTAGLINI Mirko(ミルコ・バッタリーニ)選手
1987年9月13日生(イタリア)

プロのスタートラインに立てたことが嬉しい

「今季はネオプロからプロになれたことを嬉しく思っているよ。ジロ・デ・イタリアなどのビッグレースで活躍するトップ選手と同じスタートラインに並べることが、まずは最初の目標だったからね。
そう言う意味で、今季はとても高いモチベーションでスタートが切れているんだ。チームの雰囲気もいいし、アルベルト監督がいつでも側にいてくれるから、何もストレスを感じていないよ。上りのレースや少人数のスプリントが得意なので、そのようなレースで活躍したいと思っているんだ」。


ニコラス・ウィンター(スイス、チームNIPPO)ニコラス・ウィンター(スイス、チームNIPPO) photo:Sonoko Tanaka●WINTER NICOLAS(ニコラス・ウィンター)選手
1989年2月15日生(スイス)

プロ1年目、1つずつステップアップしたい

「今季は自分にとって、プロのチームで過ごす1年目。だから、大きなレースというよりも、小さなレースでレベルを上げていきたいと思っています。もちろん、将来はビッグチームに入って、ツール・ド・フランスのような大きなレースに出てみたい。でも、それは来年とかすぐ先の目標ではない。今は一つ一つ段階を踏んで、ステップアップしていきたいですね。チームの雰囲気はとてもよく感じています。日本の選手たちもとてもフレンドリーです。日本語は難しいですが……」。



2010シーズン チーム体制

【選手】
ルーカ・バルラ(BARLA Luca)(ITA)※新加入
ミルコ・バッタリーニ(BATTAGLINI Mirko)(ITA)※新加入
藤岡 徹也(FUJIOKA Tetsuya)
ヴィンチェンツォ・ガロッファロ(GAROFALO Vincenzo)(ITA)※新加入
井上 和郎(INOUE Kazuo)
菊池 誠晃(KIKUCHI Masaaki)※新加入
増田 成幸(MASUDA Nariyuki)※新加入
宮澤 崇史(MIYAZAWA Takashi)※新加入
中島 康晴(NAKAJIMA Yasuharu)※新加入
中田 真琴(NAKATA Makoto)
ウンベルト・ナルデッキア(NARDECCHIA Unberto)(ITA)※新加入
佐野 淳哉(SANO Junya)
アレッシオ・シニェーゴ(SIGNEGO Alessio)(ITA)※新加入
マリウス・ヴィゼイアック(WIESIAK Mariusz)(POL)
ニコラス・ウィンター(WINTER Nicolas)(SUI)※新加入

【監督・マネージャー】
大門 宏(DAIMON Hiroshi)
アルベルト・エッリ(ELLI Alberto)
アントニオ・チベイ(CIBEI Antionio)

【コーチ】
橋川 健(HASHIKAWA Ken)

【メカニック】
西 勉(NISHI Tsutomu)
成田 加津利(NARITA Katsutoshi)
永井 孝樹(NAGAI Koki)
ピエールルイージ・マッツァリイオール(MAZZARIOL Pierluigi)

【マッサージャー】
クリスチャン・バレンティ(VALENTE Cristian)
セルジョ・ビアンキ(BIANCHI Sergio)

【チームバイク】
フレーム:COLNAGO CX-1
コンポーネント:CAMPAGNOLO
ホイール:FULCRUM
タイヤ:PANARACER
ペダル:LOOK
ボトルケージ:OGK
ハンドル&ステム:3T
サドル:SELLA SAN MARCO
ウエア:PALENTINI
アフターウエア:LEDA SPORT
アンダーウエア:OUT WET
ヘルメット:LAS

text&photo:Sonoko Tanaka