2018/12/28(金) - 19:02
4回にわたって2018年の海外ロードレースシーズンを振り返るシリーズ第2弾。ベルギーやオランダでのクラシックレーサーの力走に沸いた4月から、ジロやカリフォルニアの熾烈なリーダージャージ争いに息を飲んだ5月までをプレーバック!
4月
3月から続いたクラシックシーズンの熱狂はベルギー・フランドル地方を舞台にしたロンド・ファン・フラーンデレンでピークに。実に27kmにおよぶ独走の末に逃げ切ったニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)がオランダ人選手として32年ぶりのロンド制覇を達成。強力な『狼の群れ(クイックステップフロアーズ)』は続くシュヘルデプライスでも勝利して改めて強さを見せつけましたが、テルプストラは来季ディレクトエネルジーに移籍するため勢力図に変化が見られるかも?
続くパリ〜ルーベは、大健闘したシルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)とベロドロームまで逃げ切ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が自身初の優勝。アルカンシェルの石畳トロフィー獲得は実に37年ぶりとなる出来事でした。また、パリ〜ルーベではレース中に落車したマイケル・ホーラールツがが亡くなるという痛ましい事故も発生しています。
パリ〜ルーベを最後に世間の注目は「北のクラシック」から「アルデンヌクラシック」に移行。前哨戦のブラバンツペイルではティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が独走勝利。そして迎えたオランダ最大のレースアムステルゴールドレースでは、終盤に精鋭グループの中から抜け出したロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)との一騎打ちの末、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)が初勝利を飾りました。
最大勾配26%の『ユイの壁』で決するラ・フレーシュ・ワロンヌでは、大会5連覇がかかったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)をジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が打破。クラシックシーズンを通したクイックステップフロアーズの快進撃は止まらず、ベルギー・ワロン地方最大のレースである大一番リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が独走。19kmにわたる逃げを成功させたルクセンブルクチャンピオンがモニュメント初制覇を果たしました。
クラシックレースの裏ではスペインやイタリア、スイスでグランツールの前哨戦とも言うべきステージレースが開催。スペインのバスク地方で開催されたイツリア・バスクカントリーでは元スキージャンパーが大活躍します。(その後ラ・フレーシュ・ワロンヌで勝つことになる)アラフィリップのステージ2連勝で始まった6日間の戦いは、大会4日目の個人タイムトライアルで優勝したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)が総合争いでリード。難関山岳ステージでモビスターの攻撃にあいながらも耐え抜いたログリッチェが総合優勝を射止めました。
ログリッチェの勢いは止まらず、ツール・ド・ロマンディではエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)らと激突。鎖骨と肩甲骨骨折からわずか1ヶ月というスピード回復を見せた21歳のベルナルが山岳タイムトライアルで優勝したものの、ログリッチェが安定感ある走りで総合リードをキープ。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が勝利したクイーンステージでベルナルを封じ込めたログリッチェがUCIワールドツアーのステージレース2連勝を飾りました。
イタリアのツアー・オブ・アルプスには、ジロ・デ・イタリア出場を控えたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)やファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)らが出場。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が序盤から登坂力を発揮したものの、リーダージャージはティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の手に。フルームやアルらの攻撃を防ぎきったピノが最終日までリーダージャージを着続けました。
タイでは日本から5チームが出場したツアー・オブ・タイランドが開催。第2ステージで入部正太朗(シマノレーシング)が優勝してリーダージャージを着るなど、日本人選手の上位入賞が続きました。
5月
5月に入るといよいよグランツール初戦ジロ・デ・イタリアが開幕!グランツール史上初めてヨーロッパを抜け出してイスラエルで動き出した第101回ジロは、大会連覇を狙う世界TT王者トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)のエルサレム個人タイムトライアル勝利で開幕。一方のフルームはTTの試走中に落車負傷。対照的なスタートとなりました。イスラエルでの残る2日間はエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)がスプリント連勝。サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)に2回土をつけられますが、閉幕までに4勝を飾ったヴィヴィアーニが大会最強スプリンターとしてマリアチクラミーノを獲得しています。
フルームがタイムを失い続ける中、イタリア・シチリア島のエトナ火山フィニッシュでミッチェルトン・スコットがワンツー勝利。大会6日目にサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がマリアローザを獲得します。タイムトライアルでデュムランに挽回されることを理解していたイェーツはその後も攻撃を続け、マリアローザを着て1級山岳グランサッソとマルケ州の丘上都市オージモで勝利。総合リードを広げていきました。
ジロが北イタリアの山岳地帯に差し掛かる頃、徐々に風向きが変わり始めます。時間をかけて調子を戻したフルームがモンテゾンコランで勝利して復活をアピール。イェーツはドロミテ山岳ステージでダメ押しの3勝目を飾るとともに、デニスが勝利した34.2km個人タイムトライアルを終えた時点でデュムランから56秒差でマリアローザを守りましたが、アルプス初日に初めて失速。するとその翌日、今シーズン最大と言っても過言ではないサプライズが起こりました。
アルプスの難関山岳峠を越える第19ステージで、フルームがフィニッシュまで80kmを残してアタック。完全に失速したマリアローザのイェーツを置き去りにして未舗装路のフィネストレ峠を駆け上がったフルームは、追いすがるデュムランやピノらを引き離して独走フィニッシュ&マリアローザ獲得を果たしました。最終山岳ステージでもライバルの攻撃を封じ込めたフルームが自身初のジロ総合優勝。2017年のツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャに続く3連続グランツール制覇を果たしました。
アメリカ最大のツアー・オブ・カリフォルニアではフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がスプリント3勝をマーク。山頂フィニッシュを制したベルナルが総合首位に浮上したものの、個人タイムトライアルに勝利したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がリーダージャージを奪います。しかし獲得標高差が4,800mを超える難関山岳ステージで再び圧倒的な登坂力を発揮したベルナルが首位に返り咲き、自身初のUCIワールドツアーレース総合優勝を果たしました。
2019年のロード世界選手権の開催地としても注目を集めるイギリスのツール・ド・ヨークシャーでは、最終日にグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が逆転総合優勝を達成。ハンマーシリーズのスタヴァンゲル大会では、ハンマーチェイスでも最速タイムを出したミッチェルトン・スコットが文句なしの優勝に輝いています。
text:Kei Tsuji
4月
3月から続いたクラシックシーズンの熱狂はベルギー・フランドル地方を舞台にしたロンド・ファン・フラーンデレンでピークに。実に27kmにおよぶ独走の末に逃げ切ったニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)がオランダ人選手として32年ぶりのロンド制覇を達成。強力な『狼の群れ(クイックステップフロアーズ)』は続くシュヘルデプライスでも勝利して改めて強さを見せつけましたが、テルプストラは来季ディレクトエネルジーに移籍するため勢力図に変化が見られるかも?
続くパリ〜ルーベは、大健闘したシルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)とベロドロームまで逃げ切ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が自身初の優勝。アルカンシェルの石畳トロフィー獲得は実に37年ぶりとなる出来事でした。また、パリ〜ルーベではレース中に落車したマイケル・ホーラールツがが亡くなるという痛ましい事故も発生しています。
パリ〜ルーベを最後に世間の注目は「北のクラシック」から「アルデンヌクラシック」に移行。前哨戦のブラバンツペイルではティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が独走勝利。そして迎えたオランダ最大のレースアムステルゴールドレースでは、終盤に精鋭グループの中から抜け出したロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)との一騎打ちの末、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)が初勝利を飾りました。
最大勾配26%の『ユイの壁』で決するラ・フレーシュ・ワロンヌでは、大会5連覇がかかったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)をジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が打破。クラシックシーズンを通したクイックステップフロアーズの快進撃は止まらず、ベルギー・ワロン地方最大のレースである大一番リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が独走。19kmにわたる逃げを成功させたルクセンブルクチャンピオンがモニュメント初制覇を果たしました。
クラシックレースの裏ではスペインやイタリア、スイスでグランツールの前哨戦とも言うべきステージレースが開催。スペインのバスク地方で開催されたイツリア・バスクカントリーでは元スキージャンパーが大活躍します。(その後ラ・フレーシュ・ワロンヌで勝つことになる)アラフィリップのステージ2連勝で始まった6日間の戦いは、大会4日目の個人タイムトライアルで優勝したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)が総合争いでリード。難関山岳ステージでモビスターの攻撃にあいながらも耐え抜いたログリッチェが総合優勝を射止めました。
ログリッチェの勢いは止まらず、ツール・ド・ロマンディではエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)らと激突。鎖骨と肩甲骨骨折からわずか1ヶ月というスピード回復を見せた21歳のベルナルが山岳タイムトライアルで優勝したものの、ログリッチェが安定感ある走りで総合リードをキープ。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が勝利したクイーンステージでベルナルを封じ込めたログリッチェがUCIワールドツアーのステージレース2連勝を飾りました。
イタリアのツアー・オブ・アルプスには、ジロ・デ・イタリア出場を控えたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)やファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)らが出場。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が序盤から登坂力を発揮したものの、リーダージャージはティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の手に。フルームやアルらの攻撃を防ぎきったピノが最終日までリーダージャージを着続けました。
タイでは日本から5チームが出場したツアー・オブ・タイランドが開催。第2ステージで入部正太朗(シマノレーシング)が優勝してリーダージャージを着るなど、日本人選手の上位入賞が続きました。
5月
5月に入るといよいよグランツール初戦ジロ・デ・イタリアが開幕!グランツール史上初めてヨーロッパを抜け出してイスラエルで動き出した第101回ジロは、大会連覇を狙う世界TT王者トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)のエルサレム個人タイムトライアル勝利で開幕。一方のフルームはTTの試走中に落車負傷。対照的なスタートとなりました。イスラエルでの残る2日間はエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)がスプリント連勝。サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)に2回土をつけられますが、閉幕までに4勝を飾ったヴィヴィアーニが大会最強スプリンターとしてマリアチクラミーノを獲得しています。
フルームがタイムを失い続ける中、イタリア・シチリア島のエトナ火山フィニッシュでミッチェルトン・スコットがワンツー勝利。大会6日目にサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がマリアローザを獲得します。タイムトライアルでデュムランに挽回されることを理解していたイェーツはその後も攻撃を続け、マリアローザを着て1級山岳グランサッソとマルケ州の丘上都市オージモで勝利。総合リードを広げていきました。
ジロが北イタリアの山岳地帯に差し掛かる頃、徐々に風向きが変わり始めます。時間をかけて調子を戻したフルームがモンテゾンコランで勝利して復活をアピール。イェーツはドロミテ山岳ステージでダメ押しの3勝目を飾るとともに、デニスが勝利した34.2km個人タイムトライアルを終えた時点でデュムランから56秒差でマリアローザを守りましたが、アルプス初日に初めて失速。するとその翌日、今シーズン最大と言っても過言ではないサプライズが起こりました。
アルプスの難関山岳峠を越える第19ステージで、フルームがフィニッシュまで80kmを残してアタック。完全に失速したマリアローザのイェーツを置き去りにして未舗装路のフィネストレ峠を駆け上がったフルームは、追いすがるデュムランやピノらを引き離して独走フィニッシュ&マリアローザ獲得を果たしました。最終山岳ステージでもライバルの攻撃を封じ込めたフルームが自身初のジロ総合優勝。2017年のツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャに続く3連続グランツール制覇を果たしました。
アメリカ最大のツアー・オブ・カリフォルニアではフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がスプリント3勝をマーク。山頂フィニッシュを制したベルナルが総合首位に浮上したものの、個人タイムトライアルに勝利したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がリーダージャージを奪います。しかし獲得標高差が4,800mを超える難関山岳ステージで再び圧倒的な登坂力を発揮したベルナルが首位に返り咲き、自身初のUCIワールドツアーレース総合優勝を果たしました。
2019年のロード世界選手権の開催地としても注目を集めるイギリスのツール・ド・ヨークシャーでは、最終日にグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が逆転総合優勝を達成。ハンマーシリーズのスタヴァンゲル大会では、ハンマーチェイスでも最速タイムを出したミッチェルトン・スコットが文句なしの優勝に輝いています。
text:Kei Tsuji
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