2018/12/31(月) - 12:20
国内レースプレーバック最終回は、9月に個人と団体の年間総合優勝が決まったJプロツアーと、初開催のおおいたアーバンクラシック、ジャパンカップ、ツール・ド・おきなわなどの国内UCIレースと、トラックとシクロクロスの全日本選手権を振り返ります。
9月 年間総合優勝が決まったJプロツアー 地震により中止となったツール・ド・北海道
9月1日、1ヶ月の中断期間を経てJプロツアーが再開しました。渡良瀬遊水地で開催された第16戦のチームタイムトライアルチャンピオンシップは、宇都宮ブリッツェンとマトリックスパワータグの首位争いとなり、宇都宮ブリッツェンが優勝しました。
翌日の第17戦タイムトライアルチャンピオンシップは、個人タイムトライアル全日本チャンピオンの窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を1秒差で退けて優勝し、今季4勝目を挙げました。
9月6日未明、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生しました。2日後の8日にスタートする予定だったツール・ド・北海道は全日程の中止を余儀なくされました。スタート地点の旭川市は震度4を記録しましたが、幸いにも市内に集まっていた国内外の出場チームや主催関係者に人的・物的被害はありませんでした。
9月8日と9日、伊豆ベロドロームではトラック競技の全日本選手権が開催されました。
男子エリートでは、窪木一茂を筆頭にチームブリヂストンサイクリングが中・長距離種目を席巻しました。特に窪木は、4km個人パーシュートで4分20秒065の日本新記録を樹立しての優勝を含む計4種目で優勝しました。
女子エリートでは、8月のアジア大会から帰国したばかりの梶原悠未(筑波大学)が、3km個人パーシュート、マディソン、ポイントレースなど4種目で優勝しました。
Jプロツアーは終盤戦に差しかかり、最終戦を待たずに総合優勝が決まります。
9月16日、山口県の秋吉台で開催されたJプロツアー第18戦「秋吉台カルストロード」では、リオモ・ベルマーレ・レーシングチームの才田直人と米谷隆志がレースをリードする中、宇都宮ブリッツェンの増田成幸が今季2勝目を挙げました。増田は5月のツアー・オブ・ジャパン京都ステージでの落車による負傷で一時戦線離脱していましたが、再び復活の勝利を挙げました。この結果により、宇都宮ブリッツェンが事実上年間チーム総合優勝を決めました。
そして9月29日、群馬県前橋市で開催されたJプロツアー第20戦「まえばしクリテリウム」では、雨中のレースで途中中断など混乱したレースを窪木一茂が制し、個人の年間総合優勝を決めました。
9月30日に予定されていたJプロツアー第21戦「群馬オータムロードレース」は、台風接近のため中止となり、残すは最終戦のみとなりました。
10月 緊急参戦のマンセボがJプロツアー最終戦を圧勝 初開催の大分 好天に恵まれたジャパンカップ
10月7日、新潟県南魚沼市での「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」は、マトリックスパワータグからスポット参戦したフランシスコ・マンセボが圧倒的な強さを見せて優勝しました。まえばしクリテリウムで突如参戦したマンセボ。2005年のツール・ド・フランスで個人総合4位に入った全盛期ほどの力はないとは言え、力の差を見せつけました。団体成績でもマトリックスパワータグが優勝し、昨年に続き経済産業大臣旗を獲得。昨年王者の意地を見せました。
マンセボは2019年、マトリックスパワータグに正式加入することが発表されています。
10月6日と7日の2日間、伊豆ベロドロームでオムニアムの全日本選手権が開催されました。
男子はチームブリヂストンサイクリング同士の争いとなり、この種目のリオデジャネイロオリンピック代表だった窪木一茂が優勝しました。窪木は6月のロード個人TT、9月の全日本選手権トラックで4種目優勝、Jプロツアー個人総合優勝に加え、今年7つ目のタイトルを手にしました。
女子は8月のアジア大会でも優勝している梶原悠未(筑波大学)が、4種目全てで1位を取って優勝しました。梶原はこれでトラック5冠を達成し、力の差を見せつけました。
10月13日と14日、九州初となるUCIレースが大分市で開催されました。
JR大分駅前に設定されたコースを使用して行われた「おおいた いこいの道クリテリウム」では、大分市出身の黒枝咲哉(シマノレーシング)が優勝し、9月の維新やまぐちクリテリウムに続くプロ2勝目を挙げました。
翌日の「おおいたアーバンクラシック」は、日本ナショナルチームから出場した石上優大と松田祥位、宇都宮ブリッツェンの雨澤毅明の3人の争いとなり、数的優位を活かした日本ナショナルチームが1-2フィニッシュ。U23全日本チャンピオンの石上がUCIレースで初優勝しました。
日本中のロードレースファンが年1回宇都宮に集結するジャパンカップ。今年はUCIのルール改正により、これまでの14チーム69人から21チーム126人と大幅にチーム・選手数が増えました。
主催者発表で5万人が集まったジャパンカップクリテリウムは、別府史之に代わって勝負したトレック・セガフレードのジョン・デゲンコルプが初優勝。2位はキャメロン・スコット(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト)、3位は昨年優勝のマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)が入りました。
ジャパンカップ本戦は、今季限りの引退を表明しているオスカル・プジョル(チーム右京)と、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、クーン・ボウマン(ロットNLユンボ)の3名の逃げでレースが始まりました。これに対し、地元チームの宇都宮ブリッツェンがワールドチームを従えて集団コントロールします。
レース終盤、ロットNLユンボが攻勢に出て人数が絞られ、その中からミッチェルトン・スコットのロブ・パワーと、アントワン・トールク(ロットNLユンボ)が抜け出して2人の勝負となり、パワーが2年前のジャパンカップ3位の雪辱を晴らす優勝を決めました。
11月 バルベルデ、トーマスら役者が揃ったさいたまクリテリウム ロードシーズンを締めくくるツール・ド・おきなわ
11月4日のツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。マイヨジョーヌを着たゲラント・トーマス(チームスカイ)、世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、2014年ツール総合優勝のヴィンチェンツォ・二バリ(バーレーン・メリダ)、スプリンターのマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)らが来日。別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(バーレーン・メリダ)を始めとする日本人選手も出場しました。
本戦のクリテリウムは平均スピード44km/hオーバーの戦いとなり、最後はトーマスを下したバルベルデが優勝しました。
今年30周年を迎えた「ツール・ド・おきなわ」のロードレースは11月11日に開催されました。
UCIレースの男子チャンピオンは、レース序盤に形成された10人の逃げ集団が最後まで逃げきる展開となりました。その中からアラン・マランゴーニ(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)が残り5kmでアタックを決めて優勝しました。引退を表明していたマランゴーニは、これがプロ初勝利となりました。
女子国際レースでは、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が6年ぶりに優勝。市民210kmでは紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)が初優勝。今大会通算6勝目のかかっていた高岡亮寛(Roppongi Express)が落車で遅れて20位に終わる波乱が起きました。
12月 雪の全日本シクロクロスで新チャンピオン誕生
滋賀県のマキノ高原で開催されたシクロクロス全日本選手権は、一晩で積もった雪の中でのレースになりました。
男子エリートでは、雪のレースに強いと言われる横山航太(シマノレーシング)を抑えて前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が初優勝しました。前田は1周目に築いたリードを最後まで守りきっての逃げ切り勝ちでした。
女子エリートは、高校3年生の松本璃奈(TEAM SCOTT)が、昨年優勝の今井美穂(CO2 Bicycle)に2分以上の差をつけて初優勝しました。
3回に渡って国内レースを振り返りましたが、いかがでしたでしょうか?
2019年は2020東京オリンピックまで1年となります。7月にはロードレースのプレ大会が予定されており、オリンピック開催ムードが一気に高まりそうです。自転車競技各種目の出場枠がどれだけ確保できるのかも気になるところです。
一方で、国内ロードレースシリーズ「Jプロツアー」は、新たな方向性を模索していく1年となりそうです。Jプロツアーに代わるプロリーグを創設する構想が発表されましたが、具体的な内容は幅広く意見を集めた上で今後検討されていくことになります。賛否両論ありますが、選手、チーム、関係者にとって良い方向が見つかることを願います。
text:Satoru Kato
9月 年間総合優勝が決まったJプロツアー 地震により中止となったツール・ド・北海道
9月1日、1ヶ月の中断期間を経てJプロツアーが再開しました。渡良瀬遊水地で開催された第16戦のチームタイムトライアルチャンピオンシップは、宇都宮ブリッツェンとマトリックスパワータグの首位争いとなり、宇都宮ブリッツェンが優勝しました。
翌日の第17戦タイムトライアルチャンピオンシップは、個人タイムトライアル全日本チャンピオンの窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を1秒差で退けて優勝し、今季4勝目を挙げました。
9月6日未明、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生しました。2日後の8日にスタートする予定だったツール・ド・北海道は全日程の中止を余儀なくされました。スタート地点の旭川市は震度4を記録しましたが、幸いにも市内に集まっていた国内外の出場チームや主催関係者に人的・物的被害はありませんでした。
9月8日と9日、伊豆ベロドロームではトラック競技の全日本選手権が開催されました。
男子エリートでは、窪木一茂を筆頭にチームブリヂストンサイクリングが中・長距離種目を席巻しました。特に窪木は、4km個人パーシュートで4分20秒065の日本新記録を樹立しての優勝を含む計4種目で優勝しました。
女子エリートでは、8月のアジア大会から帰国したばかりの梶原悠未(筑波大学)が、3km個人パーシュート、マディソン、ポイントレースなど4種目で優勝しました。
Jプロツアーは終盤戦に差しかかり、最終戦を待たずに総合優勝が決まります。
9月16日、山口県の秋吉台で開催されたJプロツアー第18戦「秋吉台カルストロード」では、リオモ・ベルマーレ・レーシングチームの才田直人と米谷隆志がレースをリードする中、宇都宮ブリッツェンの増田成幸が今季2勝目を挙げました。増田は5月のツアー・オブ・ジャパン京都ステージでの落車による負傷で一時戦線離脱していましたが、再び復活の勝利を挙げました。この結果により、宇都宮ブリッツェンが事実上年間チーム総合優勝を決めました。
そして9月29日、群馬県前橋市で開催されたJプロツアー第20戦「まえばしクリテリウム」では、雨中のレースで途中中断など混乱したレースを窪木一茂が制し、個人の年間総合優勝を決めました。
9月30日に予定されていたJプロツアー第21戦「群馬オータムロードレース」は、台風接近のため中止となり、残すは最終戦のみとなりました。
10月 緊急参戦のマンセボがJプロツアー最終戦を圧勝 初開催の大分 好天に恵まれたジャパンカップ
10月7日、新潟県南魚沼市での「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」は、マトリックスパワータグからスポット参戦したフランシスコ・マンセボが圧倒的な強さを見せて優勝しました。まえばしクリテリウムで突如参戦したマンセボ。2005年のツール・ド・フランスで個人総合4位に入った全盛期ほどの力はないとは言え、力の差を見せつけました。団体成績でもマトリックスパワータグが優勝し、昨年に続き経済産業大臣旗を獲得。昨年王者の意地を見せました。
マンセボは2019年、マトリックスパワータグに正式加入することが発表されています。
10月6日と7日の2日間、伊豆ベロドロームでオムニアムの全日本選手権が開催されました。
男子はチームブリヂストンサイクリング同士の争いとなり、この種目のリオデジャネイロオリンピック代表だった窪木一茂が優勝しました。窪木は6月のロード個人TT、9月の全日本選手権トラックで4種目優勝、Jプロツアー個人総合優勝に加え、今年7つ目のタイトルを手にしました。
女子は8月のアジア大会でも優勝している梶原悠未(筑波大学)が、4種目全てで1位を取って優勝しました。梶原はこれでトラック5冠を達成し、力の差を見せつけました。
10月13日と14日、九州初となるUCIレースが大分市で開催されました。
JR大分駅前に設定されたコースを使用して行われた「おおいた いこいの道クリテリウム」では、大分市出身の黒枝咲哉(シマノレーシング)が優勝し、9月の維新やまぐちクリテリウムに続くプロ2勝目を挙げました。
翌日の「おおいたアーバンクラシック」は、日本ナショナルチームから出場した石上優大と松田祥位、宇都宮ブリッツェンの雨澤毅明の3人の争いとなり、数的優位を活かした日本ナショナルチームが1-2フィニッシュ。U23全日本チャンピオンの石上がUCIレースで初優勝しました。
日本中のロードレースファンが年1回宇都宮に集結するジャパンカップ。今年はUCIのルール改正により、これまでの14チーム69人から21チーム126人と大幅にチーム・選手数が増えました。
主催者発表で5万人が集まったジャパンカップクリテリウムは、別府史之に代わって勝負したトレック・セガフレードのジョン・デゲンコルプが初優勝。2位はキャメロン・スコット(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト)、3位は昨年優勝のマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)が入りました。
ジャパンカップ本戦は、今季限りの引退を表明しているオスカル・プジョル(チーム右京)と、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、クーン・ボウマン(ロットNLユンボ)の3名の逃げでレースが始まりました。これに対し、地元チームの宇都宮ブリッツェンがワールドチームを従えて集団コントロールします。
レース終盤、ロットNLユンボが攻勢に出て人数が絞られ、その中からミッチェルトン・スコットのロブ・パワーと、アントワン・トールク(ロットNLユンボ)が抜け出して2人の勝負となり、パワーが2年前のジャパンカップ3位の雪辱を晴らす優勝を決めました。
11月 バルベルデ、トーマスら役者が揃ったさいたまクリテリウム ロードシーズンを締めくくるツール・ド・おきなわ
11月4日のツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。マイヨジョーヌを着たゲラント・トーマス(チームスカイ)、世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、2014年ツール総合優勝のヴィンチェンツォ・二バリ(バーレーン・メリダ)、スプリンターのマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)らが来日。別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(バーレーン・メリダ)を始めとする日本人選手も出場しました。
本戦のクリテリウムは平均スピード44km/hオーバーの戦いとなり、最後はトーマスを下したバルベルデが優勝しました。
今年30周年を迎えた「ツール・ド・おきなわ」のロードレースは11月11日に開催されました。
UCIレースの男子チャンピオンは、レース序盤に形成された10人の逃げ集団が最後まで逃げきる展開となりました。その中からアラン・マランゴーニ(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)が残り5kmでアタックを決めて優勝しました。引退を表明していたマランゴーニは、これがプロ初勝利となりました。
女子国際レースでは、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が6年ぶりに優勝。市民210kmでは紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)が初優勝。今大会通算6勝目のかかっていた高岡亮寛(Roppongi Express)が落車で遅れて20位に終わる波乱が起きました。
12月 雪の全日本シクロクロスで新チャンピオン誕生
滋賀県のマキノ高原で開催されたシクロクロス全日本選手権は、一晩で積もった雪の中でのレースになりました。
男子エリートでは、雪のレースに強いと言われる横山航太(シマノレーシング)を抑えて前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が初優勝しました。前田は1周目に築いたリードを最後まで守りきっての逃げ切り勝ちでした。
女子エリートは、高校3年生の松本璃奈(TEAM SCOTT)が、昨年優勝の今井美穂(CO2 Bicycle)に2分以上の差をつけて初優勝しました。
3回に渡って国内レースを振り返りましたが、いかがでしたでしょうか?
2019年は2020東京オリンピックまで1年となります。7月にはロードレースのプレ大会が予定されており、オリンピック開催ムードが一気に高まりそうです。自転車競技各種目の出場枠がどれだけ確保できるのかも気になるところです。
一方で、国内ロードレースシリーズ「Jプロツアー」は、新たな方向性を模索していく1年となりそうです。Jプロツアーに代わるプロリーグを創設する構想が発表されましたが、具体的な内容は幅広く意見を集めた上で今後検討されていくことになります。賛否両論ありますが、選手、チーム、関係者にとって良い方向が見つかることを願います。
text:Satoru Kato
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