2018/11/26(月) - 11:44
2週間後に全日本選手権の舞台となる滋賀県北部のマキノ高原で行われたJCX第8戦。UCI登録の男子エリートはマッチスプリントを制したアンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)に軍配。女子エリートは高校3年生の松本璃奈(TEAM SCOTT)がスクゥイッド勢の連勝にストップをかけた。
スターライト幕張(UCIクラス2)とRaphaスーパークロス野辺山(UCIクラス2&1)が連続し、毎週末UCI登録レースが続いた2018年11月。国内のハイシーズンとも言えるシクロクロス月間を締めくくるUCIクラス2のレースが滋賀県高島市のマキノ高原で開催された。
年間シリーズ12戦が開催されるJCXシリーズの第8戦にあたる関西シクロクロスマキノラウンド。なだらかなスキー場を利用したコースはスタートとフィニッシュの舗装路を除いて一面枯れ草に覆われており、そこにいくつものキャンバー(急坂)や名物となったフライオーバー(立体交差)が組み合わされている。例年は日本海から流れ込む雲によって悪天候に見舞われがちだが、レースが開催された土曜日と日曜日はいずれも最高気温が15度まで上がる"マキノらしくない"好天となった。
幕張と野辺山土曜日の覇者であるアンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)や、エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ)、ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP)といった、UCIレースの連戦出場のために日本に数週間滞在するのがすっかりお馴染みとなった海外勢にとってはこれが日本最終戦。迎え撃つのは、2週間後にマキノ高原で開催されるシクロクロス全日本選手権に向けて調整を続ける日本人選手たち。遠征をパスした野辺山日曜日の覇者である前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)を除く日本のトップCXレーサーが揃った。
スタートからの上り区間で先行したのは全日本チャンピオンの小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)だった。ここにミルバーンとクラーク、ヘケレが続き、やがて小坂が落車で脱落する。徐々に先行する海外勢三人衆に唯一食らいつくことができたのは「せっかく海外から参戦している選手についていかないわけにはいかなかった。オーバーヒート覚悟についていった」という織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)だった。
やがて前週の野辺山でもバトルを繰り広げたクラークとヘケレが互いにアタックを繰り返しながら先行し、これをミルバーンと織田の2人が追う展開に。その後ろでは小坂や竹之内悠(東洋フレーム)、沢田時(チームブリヂストンサイクリング)、丸山厚(Team RIDLEY)、横山航太(シマノレーシング)、竹内遼(FUKAYA RACING)らが追走パックを形成し、その中から高校生の村上功太郎(松山工業高校)が抜け出すシーンも。
後半に入ってもクラークとヘケレは付かず離れずの攻防を続け、3位以下を振り切りながら、そして80%ルールで実に65名の選手をレース外にふるい落としながら周回。概ね1周7分強で周回していた両者は最終周回に6分45秒という強烈なラップタイムをマークする。キャンバーセクションを越えてもフライオーバーを越えてもシケインを越えても2人の距離は広がらず、舗装路での上りスプリント勝負に。先行するヘケレとのマッチスプリントでクラークが勝利した。
「エミルと互いにアタックを繰り返しながら周回を重ねていくうちに、これは最後まで差が生まれないと思った。最終周回で彼が何回もアタックしたけど落ち着いて反応して、彼の後ろで息を整えながら、冷静にスプリントのギアを考えながら勝負に備えたんだ。そして最後の舗装路に出た瞬間に彼の後ろからスプリント。僅差の戦いになったけど、バイク半分の差で勝つことができた」と、幕張と野辺山土曜日に続く国内UCIレース3勝目を飾ったクラーク。
敗れたヘケレは「とにかくパワーが必要なイージーなコースだった。でも劇的に差が広がるポイントがなくて、自分と同じレベルのアンソニー(クラーク)と最後まで離れることがなかった。彼は爆発力があるのでスプリントに持ち込みたくなかったけど、振り切ることができなかったんだ」と悔やむ。2年連続来日を終えたヘケレは「昌一(阿部昌一さん)をはじめ、多くのサポーターに支えられて素晴らしい2週間を過ごしてきたけど、UCIレース3戦で1勝もできなかったのは残念。まだ41歳と若いので、また来年この日本でレースを走りたい」と語っている。
終盤にかけてミルバーンに引き離されながらも、日本人最高位の4位でフィニッシュしたのは織田。「海外勢の中でも比較的日本人選手とレベルの近いギャリー(ミルバーン)と2人になって、終始良いペースで走れました。でもキャンバーセクションなどテクニックが必要な部分で離されてしまった。終盤にかけて後ろから竹之内選手が迫ってきましたが耐え抜きました」と、海外選手とのレースでしっかり追い込めた様子だ。「結果的に日本人最高位でしたが、それよりも前の3人に負けて4位という印象」と語る織田は、欠場した前田と全日本選手権でタッグを組む。
エリート女子:高校3年性の松本璃奈(TEAM SCOTT)が逃げ切り勝利
幕張から続くスクゥイッド・スクァッド旋風に待ったをかけたのが女子エリートの松本璃奈(TEAM SCOTT)だった。「身体に疲れが残っていたので、全日本選手権に向けて数日前に久々にマッサージを入れた影響かもしれない」という全日本チャンピオンの今井美穂(CO2 Bicycle)が出遅れる中、「スタートでミスして失った先週の(野辺山の)リベンジのため、今日は絶対に勝ってやるという気持ちでした」という松本がスタートから先行する。
松本に続いたのは幕張と野辺山で3連勝を飾っているサミエル・ルーネルズ(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)。1周目を終えた時点で先頭を奪ったルーネルズだったが、2周目のキャンバーの下りで痛恨のパンクに見舞われる。ピットでバイク交換したルーネルズは松本から1分近い遅れを被った。
そこから今井を抜き返して2番手に浮上し、着実に先頭松本とのタイム差を詰めていったルーネルズ。「泥に隠れた下りの石にヒットさせてしまい、パンクしてしまった。1分弱タイムを失ってしまってからは、先頭(松本)に追いついてやるという意気込みで走ったけど、ペースを上げすぎてミスも出てしまったので、落ち着いて少しずつ追い上げることにした」という言葉通り、タイム差は40秒、30秒と縮まり、松本と26秒差で最終周回の鐘を聞くことに。しかし松本が先頭で粘り続けた。
ルーネルズから8秒差で逃げ切り、UCIレース初勝利を果たした高校生の松本は「サミー(ルーネルズ)がパンクで遅れたのを見て『キター!』と思いました。1分近く開いた差を詰めるのは大変だろうと思いながら、そこから自分のペースで走りました。最終的に迫られたのですが、逃げ切れてよかった。勝つためには最初から行くしかなかった」と満面の笑みでトロフィーを受け取る。幕張6位、野辺山土曜日4位に続く成績で、「後半にかけてラップタイムが落ちるのも減ってきたので、毎戦成長できていると感じています。日本の中でトップを取ってやるという気持ちです」と勢いづいている。
「最終周回の前の周回でタイム差を20秒詰めることができたので届くかと思ったけど、彼女がミスをしない限り不可能だった。スタートから力強い走りを見せた彼女にとって、全日本選手権に向けて良いレースになったんじゃないかな」と語るのは2位のルーネルズ。男子エリート優勝のクラークとともに日本で過ごした3週間についてルーネルズは「この琵琶湖周辺も本当に美しくて、レース以外でも走るために戻ってきたい。真也(ABOVE BIKE STOREの須崎真也さん)とその家族、周りの人々に出会って本当に素晴らしい日本滞在だった」と語っている。
スターライト幕張(UCIクラス2)とRaphaスーパークロス野辺山(UCIクラス2&1)が連続し、毎週末UCI登録レースが続いた2018年11月。国内のハイシーズンとも言えるシクロクロス月間を締めくくるUCIクラス2のレースが滋賀県高島市のマキノ高原で開催された。
年間シリーズ12戦が開催されるJCXシリーズの第8戦にあたる関西シクロクロスマキノラウンド。なだらかなスキー場を利用したコースはスタートとフィニッシュの舗装路を除いて一面枯れ草に覆われており、そこにいくつものキャンバー(急坂)や名物となったフライオーバー(立体交差)が組み合わされている。例年は日本海から流れ込む雲によって悪天候に見舞われがちだが、レースが開催された土曜日と日曜日はいずれも最高気温が15度まで上がる"マキノらしくない"好天となった。
幕張と野辺山土曜日の覇者であるアンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)や、エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ)、ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP)といった、UCIレースの連戦出場のために日本に数週間滞在するのがすっかりお馴染みとなった海外勢にとってはこれが日本最終戦。迎え撃つのは、2週間後にマキノ高原で開催されるシクロクロス全日本選手権に向けて調整を続ける日本人選手たち。遠征をパスした野辺山日曜日の覇者である前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)を除く日本のトップCXレーサーが揃った。
スタートからの上り区間で先行したのは全日本チャンピオンの小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)だった。ここにミルバーンとクラーク、ヘケレが続き、やがて小坂が落車で脱落する。徐々に先行する海外勢三人衆に唯一食らいつくことができたのは「せっかく海外から参戦している選手についていかないわけにはいかなかった。オーバーヒート覚悟についていった」という織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)だった。
やがて前週の野辺山でもバトルを繰り広げたクラークとヘケレが互いにアタックを繰り返しながら先行し、これをミルバーンと織田の2人が追う展開に。その後ろでは小坂や竹之内悠(東洋フレーム)、沢田時(チームブリヂストンサイクリング)、丸山厚(Team RIDLEY)、横山航太(シマノレーシング)、竹内遼(FUKAYA RACING)らが追走パックを形成し、その中から高校生の村上功太郎(松山工業高校)が抜け出すシーンも。
後半に入ってもクラークとヘケレは付かず離れずの攻防を続け、3位以下を振り切りながら、そして80%ルールで実に65名の選手をレース外にふるい落としながら周回。概ね1周7分強で周回していた両者は最終周回に6分45秒という強烈なラップタイムをマークする。キャンバーセクションを越えてもフライオーバーを越えてもシケインを越えても2人の距離は広がらず、舗装路での上りスプリント勝負に。先行するヘケレとのマッチスプリントでクラークが勝利した。
「エミルと互いにアタックを繰り返しながら周回を重ねていくうちに、これは最後まで差が生まれないと思った。最終周回で彼が何回もアタックしたけど落ち着いて反応して、彼の後ろで息を整えながら、冷静にスプリントのギアを考えながら勝負に備えたんだ。そして最後の舗装路に出た瞬間に彼の後ろからスプリント。僅差の戦いになったけど、バイク半分の差で勝つことができた」と、幕張と野辺山土曜日に続く国内UCIレース3勝目を飾ったクラーク。
敗れたヘケレは「とにかくパワーが必要なイージーなコースだった。でも劇的に差が広がるポイントがなくて、自分と同じレベルのアンソニー(クラーク)と最後まで離れることがなかった。彼は爆発力があるのでスプリントに持ち込みたくなかったけど、振り切ることができなかったんだ」と悔やむ。2年連続来日を終えたヘケレは「昌一(阿部昌一さん)をはじめ、多くのサポーターに支えられて素晴らしい2週間を過ごしてきたけど、UCIレース3戦で1勝もできなかったのは残念。まだ41歳と若いので、また来年この日本でレースを走りたい」と語っている。
終盤にかけてミルバーンに引き離されながらも、日本人最高位の4位でフィニッシュしたのは織田。「海外勢の中でも比較的日本人選手とレベルの近いギャリー(ミルバーン)と2人になって、終始良いペースで走れました。でもキャンバーセクションなどテクニックが必要な部分で離されてしまった。終盤にかけて後ろから竹之内選手が迫ってきましたが耐え抜きました」と、海外選手とのレースでしっかり追い込めた様子だ。「結果的に日本人最高位でしたが、それよりも前の3人に負けて4位という印象」と語る織田は、欠場した前田と全日本選手権でタッグを組む。
エリート女子:高校3年性の松本璃奈(TEAM SCOTT)が逃げ切り勝利
幕張から続くスクゥイッド・スクァッド旋風に待ったをかけたのが女子エリートの松本璃奈(TEAM SCOTT)だった。「身体に疲れが残っていたので、全日本選手権に向けて数日前に久々にマッサージを入れた影響かもしれない」という全日本チャンピオンの今井美穂(CO2 Bicycle)が出遅れる中、「スタートでミスして失った先週の(野辺山の)リベンジのため、今日は絶対に勝ってやるという気持ちでした」という松本がスタートから先行する。
松本に続いたのは幕張と野辺山で3連勝を飾っているサミエル・ルーネルズ(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)。1周目を終えた時点で先頭を奪ったルーネルズだったが、2周目のキャンバーの下りで痛恨のパンクに見舞われる。ピットでバイク交換したルーネルズは松本から1分近い遅れを被った。
そこから今井を抜き返して2番手に浮上し、着実に先頭松本とのタイム差を詰めていったルーネルズ。「泥に隠れた下りの石にヒットさせてしまい、パンクしてしまった。1分弱タイムを失ってしまってからは、先頭(松本)に追いついてやるという意気込みで走ったけど、ペースを上げすぎてミスも出てしまったので、落ち着いて少しずつ追い上げることにした」という言葉通り、タイム差は40秒、30秒と縮まり、松本と26秒差で最終周回の鐘を聞くことに。しかし松本が先頭で粘り続けた。
ルーネルズから8秒差で逃げ切り、UCIレース初勝利を果たした高校生の松本は「サミー(ルーネルズ)がパンクで遅れたのを見て『キター!』と思いました。1分近く開いた差を詰めるのは大変だろうと思いながら、そこから自分のペースで走りました。最終的に迫られたのですが、逃げ切れてよかった。勝つためには最初から行くしかなかった」と満面の笑みでトロフィーを受け取る。幕張6位、野辺山土曜日4位に続く成績で、「後半にかけてラップタイムが落ちるのも減ってきたので、毎戦成長できていると感じています。日本の中でトップを取ってやるという気持ちです」と勢いづいている。
「最終周回の前の周回でタイム差を20秒詰めることができたので届くかと思ったけど、彼女がミスをしない限り不可能だった。スタートから力強い走りを見せた彼女にとって、全日本選手権に向けて良いレースになったんじゃないかな」と語るのは2位のルーネルズ。男子エリート優勝のクラークとともに日本で過ごした3週間についてルーネルズは「この琵琶湖周辺も本当に美しくて、レース以外でも走るために戻ってきたい。真也(ABOVE BIKE STOREの須崎真也さん)とその家族、周りの人々に出会って本当に素晴らしい日本滞在だった」と語っている。
男子エリート
1位 | アンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド) | 56:23 |
2位 | エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ) | +0:00 |
3位 | ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP) | +1:42 |
4位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +1:45 |
5位 | 竹之内悠(東洋フレーム) | +1:49 |
6位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | +2:31 |
7位 | 沢田時(チームブリヂストンサイクリング) | +2:51 |
8位 | 村上功太郎(松山工業高校) | +3:17 |
9位 | 丸山厚(Team RIDLEY) | +3:21 |
10位 | 横山航太(シマノレーシング) | +4:23 |
女子エリート
1位 | 松本璃奈(TEAM SCOTT) | 41:54 |
2位 | サミエル・ルーネルズ(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド) | +0:08 |
3位 | 今井美穂(CO2 Bicycle) | +1:55 |
4位 | 宮内佐季子(ClubLa.sistaOffroadTeam) | +2:26 |
5位 | 西山みゆき(東洋フレーム) | +3:55 |
6位 | 赤松綾(SimWorks CX Racing) | +4:07 |
7位 | 平田千枝(ClubLa.sistaOffroadTeam) | +5:12 |
8位 | 鵜飼知春(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB) | +5:20 |
9位 | 福田咲絵(AX cyclocross team) | +5:35 |
10位 | 川崎路子(PAXPROJECT) | +5:38 |
男子ジュニア
1位 | 小島大輝(SNEL CYCLOCROSS TEAM) | 38:52 |
2位 | 中島渉(Limited Team 846/Team-K) | +1:50 |
3位 | 黒田拓杜(チームローマン) | +1:58 |
4位 | 大谷玄真(榛生昇陽高等学校) | +6:11 |
CM1
1位 | 筧五郎(56サイクル) | 40:53 |
2位 | 水竹真一(Kokopelli Gurny Goo) | +1:24 |
3位 | 石川正道(Champion System Test Team) | +1:59 |
C2
1位 | 田中信行(Zippycycleclub) | 42:38 |
2位 | 井上耕輔(京都大学サイクリング部) | +0:03 |
3位 | 嶋田祥(立命館大学自転車競技部) | +0:23 |
text&photo:Kei Tsuji
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