2010/03/16(火) - 00:16
有力選手が勢ぞろいのアンダー23は、なんとスタート後1kmで抜け出した吉浦満と長森浩平(ともに京都大学自転車競技部)がそのまま逃げ切ってワン・ツー。女子は福本千佳(Ready Go JAPAN)がスプリントを制した。また、辻貴光の新チーム「シェルボ奈良」もデビュー戦となった。
淡々と周回を重ねる吉浦と長森。追走集団7人との差は30秒から1分近くまでになる。最終周回突入時、その差は50秒。しかし後方にはアンダーやジュニアの現・全日本チャンピオンや強豪がひしめく。その気になれば1周どころか半周あれば追いつく差だ。先頭の2人はそのまま逃げ続ける。
しかし追走集団の強豪選手たちが見ているのはライバルチームの動きだけ。ペースは変わらないまま。ついに京大2人の逃げが決まった。万歳してゴールした2人の49秒後、ジュニア全日本チャンピオンの黒枝士揮(日出暘谷高校)を先頭に集団がゴールした。
2人が抜け出したのはスタート後1km地点。先頭付近の落車で吉浦が「自分だけ自然に前に出て」抜け出し、その後に長森が単独アタックして吉浦に合流。ここから2人でなんとその後の36kmを2人で走り通した。
後続のメイン集団には、ブリヂストン・エスポワールの現日本チャンピオンの平井栄一と嶌田義明そして金子友也がいる。鹿屋体育大学は08年ジュニアアジアチャンピオンの野口正則、そして高宮正嗣がいる。さらに今春に日出暘谷高校を卒業し鹿屋体育大学へ入るジュニア全日本チャンピオンの黒枝士揮も。黒枝は昨年の本大会ジュニア優勝者だ。
彼らはアタックを仕掛けるが、もちろんその視線の先はライバルチームの選手たち。アタックと牽制を繰り返し追撃集団は7人になったが、その集団のラップタイムは遅めの20分ちょうど。京大2人の逃げに気づかない選手もいて、さらに牽制に拍車がかかった。
集団先頭で3位の黒枝以降、選手の順位は、現在の実力からは至極妥当なところだ。違ったのはその上に2人いたこと。この状況について、チーム・ブリヂストンアンカーのロードコーチ、久保信人氏はこう語る。
「全くの失敗です。警戒していない選手であったので泳がせたまま、強豪同士でお見合いをしてしまった。協力してレースを振り出しに戻さなかったのは全くの失敗。うちのチームをはじめどこもがお互いを見て失敗した。さらに絶対のスプリントを持つ黒枝に対しても対策ができていなかった」
「うちのチームは一番いい境遇で走れているはず。率先して逃げをつぶさないといけなかった。たった2人に強豪7人でも追いつけなかったのは、牽制ばかりしていたエスポワール(アンダー)全体の反省点でもあると思います。レース後、選手自身どうしで失敗の理由は考えさせました」
優勝した吉浦は「自転車をやっていて本当によかったです。嬉しいです。最終周回の登坂区間を上ったあたりで50秒差と言われて、これはいけるかもと思いました。ホーム手前の坂でちょっと怖かったので、初めて後ろを見ました。そこまでは後ろを振り返らなかったです」
「逃げができたときは、自分が前に出てしまい、いつ戻ろうかと思っていたら長森が追いついてきたので行きました。半周でも逃げようかと、いつもレースでは何かをやってやろうと思っているので」と語る。
2位の長森も「行ける所まで行こうと考えました。途中で自分が切れたら(吉浦)先輩先に行ってくださいと言っていました。先輩の引くほうが長かったのでゴール順もその通りです」と語る。
強豪選手にとってはまさかの結果になったが、勝つための近道は逃げることだ。後ろを振り返らず、ひたすらゴールまで逃げ続けた2人の勇気を称えたい。
デビュー戦のCIERVO NARA PRO CYCLING TEAM
シマノ、マトリックスを経て今年から辻貴光が立ち上げた新チームがCIERVO NARA PROCYCLING TEAM(シェルボ奈良)だ。辻自身、もちろんこの日のエリートレースに出場、終始先頭グループで展開し、12位でゴール。「立ち上げ業務で練習をほとんどしていなかった」というがさすがの力量だ。
辻は昨秋の実業団みやだ大会で圧倒的な力によりTR個人資格を獲得したが、チームとしてはBR-1、ERから始める。
代表兼選手の辻貴光は「立ち上げの営業活動で動き回ったのですが、自分はやはり走るのが本業だから今日は緊張しました。昨秋に今後のことをいろいろ考えました。実業団みやだもその課程として出たものです。自分がレースで頑張り、そして奈良を自転車のまちにするための活動もします」と語る。
久保龍也マネージャーは「トップクラスは辻で、社会人、子ども達、年配の人たちと自転車を楽しみたいという考えです。4月11日に平城宮跡でサイクルフェスタがあり、そこでキッズライディングスクールを奈良県サイクリング協会とともにします。サイクリングインストラクターの資格も取って裾野を広げたい。4月に奈良県内でクリテリウムがある(FABU project主催)のでできるかぎりそれにも協力していきたい」と語る。
辻は今年の展望をこう語る。
「今年はまず自分が走って結果を出したい、全日本選手権ロード10位以内が目標です。いっぽうで社会人選手にも走ってもらって、そして来年以降へとつなげたいです」
辻自身と、そしてチームの幅広い活動に今年は注目だ。
結果
A-F(女子) 2周24.6km
1位 福本千佳(Ready Go JAPAN)45分22秒60
2位 木村亜美(鹿屋体育大学)
3位 星川恵利奈(Comrade Giant)+1秒
4位 上野みなみ(八戸工業高校)
5位 北野寿枝(bicinoko.com)+14秒
6位 岩田知夏(北桑田高校)+55秒
A-U 3周36.9km
1位 吉浦満(京都大学自転車競技部)58分39秒97
2位 長森浩平(京都大学自転車競技部)
3位 黒枝士揮(日出暘谷高校)+49秒
4位 平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)
5位 嶌田義明(ブリヂストン・エスポワール)
6位 高宮正嗣(鹿屋体育大学)
A-J 3周24.6km
1位 六峰亘(日出暘谷高校)58分22秒30
2位 中井俊亮(榛生昇陽高校)
3位 大野宏樹(広島城北高校)
4位 池部壮太(別府商業高校)
5位 野内隆太郎(日出暘谷高校)
6位 鍵本大地(崇徳高校)
A-M 3周24.6km
1位 中村誠(チーム岡山)1時間01分33秒27
2位 中西一太郎(チーム岡山)
3位 猪又靖(クラブシルベスト)
4位 寺本道彦(ペアラレーシング)
5位 佐藤信哉(TEAM PARABORA)
6位 酒居良和(チームケンズ)
photo&text:高木秀彰
淡々と周回を重ねる吉浦と長森。追走集団7人との差は30秒から1分近くまでになる。最終周回突入時、その差は50秒。しかし後方にはアンダーやジュニアの現・全日本チャンピオンや強豪がひしめく。その気になれば1周どころか半周あれば追いつく差だ。先頭の2人はそのまま逃げ続ける。
しかし追走集団の強豪選手たちが見ているのはライバルチームの動きだけ。ペースは変わらないまま。ついに京大2人の逃げが決まった。万歳してゴールした2人の49秒後、ジュニア全日本チャンピオンの黒枝士揮(日出暘谷高校)を先頭に集団がゴールした。
2人が抜け出したのはスタート後1km地点。先頭付近の落車で吉浦が「自分だけ自然に前に出て」抜け出し、その後に長森が単独アタックして吉浦に合流。ここから2人でなんとその後の36kmを2人で走り通した。
後続のメイン集団には、ブリヂストン・エスポワールの現日本チャンピオンの平井栄一と嶌田義明そして金子友也がいる。鹿屋体育大学は08年ジュニアアジアチャンピオンの野口正則、そして高宮正嗣がいる。さらに今春に日出暘谷高校を卒業し鹿屋体育大学へ入るジュニア全日本チャンピオンの黒枝士揮も。黒枝は昨年の本大会ジュニア優勝者だ。
彼らはアタックを仕掛けるが、もちろんその視線の先はライバルチームの選手たち。アタックと牽制を繰り返し追撃集団は7人になったが、その集団のラップタイムは遅めの20分ちょうど。京大2人の逃げに気づかない選手もいて、さらに牽制に拍車がかかった。
集団先頭で3位の黒枝以降、選手の順位は、現在の実力からは至極妥当なところだ。違ったのはその上に2人いたこと。この状況について、チーム・ブリヂストンアンカーのロードコーチ、久保信人氏はこう語る。
「全くの失敗です。警戒していない選手であったので泳がせたまま、強豪同士でお見合いをしてしまった。協力してレースを振り出しに戻さなかったのは全くの失敗。うちのチームをはじめどこもがお互いを見て失敗した。さらに絶対のスプリントを持つ黒枝に対しても対策ができていなかった」
「うちのチームは一番いい境遇で走れているはず。率先して逃げをつぶさないといけなかった。たった2人に強豪7人でも追いつけなかったのは、牽制ばかりしていたエスポワール(アンダー)全体の反省点でもあると思います。レース後、選手自身どうしで失敗の理由は考えさせました」
優勝した吉浦は「自転車をやっていて本当によかったです。嬉しいです。最終周回の登坂区間を上ったあたりで50秒差と言われて、これはいけるかもと思いました。ホーム手前の坂でちょっと怖かったので、初めて後ろを見ました。そこまでは後ろを振り返らなかったです」
「逃げができたときは、自分が前に出てしまい、いつ戻ろうかと思っていたら長森が追いついてきたので行きました。半周でも逃げようかと、いつもレースでは何かをやってやろうと思っているので」と語る。
2位の長森も「行ける所まで行こうと考えました。途中で自分が切れたら(吉浦)先輩先に行ってくださいと言っていました。先輩の引くほうが長かったのでゴール順もその通りです」と語る。
強豪選手にとってはまさかの結果になったが、勝つための近道は逃げることだ。後ろを振り返らず、ひたすらゴールまで逃げ続けた2人の勇気を称えたい。
デビュー戦のCIERVO NARA PRO CYCLING TEAM
シマノ、マトリックスを経て今年から辻貴光が立ち上げた新チームがCIERVO NARA PROCYCLING TEAM(シェルボ奈良)だ。辻自身、もちろんこの日のエリートレースに出場、終始先頭グループで展開し、12位でゴール。「立ち上げ業務で練習をほとんどしていなかった」というがさすがの力量だ。
辻は昨秋の実業団みやだ大会で圧倒的な力によりTR個人資格を獲得したが、チームとしてはBR-1、ERから始める。
代表兼選手の辻貴光は「立ち上げの営業活動で動き回ったのですが、自分はやはり走るのが本業だから今日は緊張しました。昨秋に今後のことをいろいろ考えました。実業団みやだもその課程として出たものです。自分がレースで頑張り、そして奈良を自転車のまちにするための活動もします」と語る。
久保龍也マネージャーは「トップクラスは辻で、社会人、子ども達、年配の人たちと自転車を楽しみたいという考えです。4月11日に平城宮跡でサイクルフェスタがあり、そこでキッズライディングスクールを奈良県サイクリング協会とともにします。サイクリングインストラクターの資格も取って裾野を広げたい。4月に奈良県内でクリテリウムがある(FABU project主催)のでできるかぎりそれにも協力していきたい」と語る。
辻は今年の展望をこう語る。
「今年はまず自分が走って結果を出したい、全日本選手権ロード10位以内が目標です。いっぽうで社会人選手にも走ってもらって、そして来年以降へとつなげたいです」
辻自身と、そしてチームの幅広い活動に今年は注目だ。
結果
A-F(女子) 2周24.6km
1位 福本千佳(Ready Go JAPAN)45分22秒60
2位 木村亜美(鹿屋体育大学)
3位 星川恵利奈(Comrade Giant)+1秒
4位 上野みなみ(八戸工業高校)
5位 北野寿枝(bicinoko.com)+14秒
6位 岩田知夏(北桑田高校)+55秒
A-U 3周36.9km
1位 吉浦満(京都大学自転車競技部)58分39秒97
2位 長森浩平(京都大学自転車競技部)
3位 黒枝士揮(日出暘谷高校)+49秒
4位 平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)
5位 嶌田義明(ブリヂストン・エスポワール)
6位 高宮正嗣(鹿屋体育大学)
A-J 3周24.6km
1位 六峰亘(日出暘谷高校)58分22秒30
2位 中井俊亮(榛生昇陽高校)
3位 大野宏樹(広島城北高校)
4位 池部壮太(別府商業高校)
5位 野内隆太郎(日出暘谷高校)
6位 鍵本大地(崇徳高校)
A-M 3周24.6km
1位 中村誠(チーム岡山)1時間01分33秒27
2位 中西一太郎(チーム岡山)
3位 猪又靖(クラブシルベスト)
4位 寺本道彦(ペアラレーシング)
5位 佐藤信哉(TEAM PARABORA)
6位 酒居良和(チームケンズ)
photo&text:高木秀彰
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