2018/10/21(日) - 12:13
2019モデルで一気に3つのメタルバイクをラインアップに追加したデローザ。その中でも異色ともいえるエアロアルミディスクロード、KERMESSEをインプレッション。
デローザ KERMESSE (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
一線級のレーシングバイクがすべて炭素繊維に置き換えられて既にどれだけの時が経っただろうか。かつて、レーシングバイクの中心であったアルミニウムはエントリーバイク向けのマテリアルという位置づけ、というのがほぼ共通した認識だろう。
確かに、キャノンデールのCAAD12やスペシャライズドのALLEZ SPRINTなど、いくつかのマスプロブランドは金属素材ならではの踏み味を武器と謳い、アルミ製のレーシングバイクをラインアップしている。だが、それらにしてもハイエンドカーボンバイクより手が届きやすく、扱いやすいといった点が大きなメリットであることは否めない。
デローザのハートマークがヘッドチューブに輝く
ストレートブレードのカーボンフォーク もちろんスルーアクスル仕様だ
フラットマウントを採用する
2018年現在、アルミバイクが置かれている立ち位置とはつまるところ、そのリーズナブルな価格をこそアイデンティティとするものなのだが、この2019モデルにおいてデローザが発表したKERMESSEは、その風潮に一石を投じる異端児。つまり一言で言えば、高価なのだ。
フレームセットで58万円。他社を例に引くまでもなく、同社のハイエンドカーボンモデルPROTOSに迫る価格設定で、2019モデルのデローザカタログを見た人は少なからず驚かされたのではないだろうか。一方で、デローザなら不思議ではないと感じた方もいるはずだ。
長方形のトップチューブ中央に車名のロゴが入る
スマートウェルディングされたチューブ接合部は滑らかな仕上がりだ
ケーブル類はダウンチューブより内装される
楕円形状でエアロ性能にも考慮したダウンチューブ
少し歴史を振り返ろう。クロモリ、チタンに続く次世代のレーシングバイク素材として、ウーゴ・デローザがアルミニウムへと情熱を燃やし始めたのは90年代後半。イタリア・ライグエーリアにて見かけた観光用のレンタサイクルにインスピレーションを得たことがきっかけだったという。
そこからデローザの生み出したアルミバイクがレースシーンを席巻するのに時間はかからなかった。2000年にロマンス・ヴァインシュタインスによって世界選手権を制した初代MERAKを筆頭に、MACROやDUALなど、多くのバイクを送り出してきたデローザにとって、アルミニウムは他の素材と同等以上に重要な存在であり続けた。そう、アルミだから安価でなければならない、という先入観は誇り高いイタリアブランドには当てはまらない。
すっきりとしたBB周りはメタルフレームならでは イタリアンでメンテナンス性も良好
リアのディスクブレーキ台座はスマートながら高い強度を与えられたデザインだ
そして、このKERMESSEが作りあげられる場所もまた特別だ。デローザが「ブラックラベル」と呼ぶ、通常の生産ラインと異なるカスタムモデル専用のフレーム製作ラインがKERMESSEの生まれ故郷だ。
「乗り手の身体に合ったフレームを提供する」、シンプルにして明快なコンセプトを掲げるブラックラベルは、規格化されたサイズによって効率化を追及する潮流に否やを突き付けるデローザの挑戦状。創業以来65年間、ウーゴが積み重ねてきた歴史と文化の結晶。交換可能な量産品ではなく、交換不可能な工芸品。オーダーシートを通してイタリアの職人が魂を注いで作り上げる唯一無二。そうして作り上げられたフレームに値札をつけられることが、奇跡だといえよう。
KERMESSEという車名は、ベルギー各地の都市部で頻繁に開催されるクリテリウムレースに由来する。軽量かつ独特な反応性と振動吸収性を持ったスカンジウム添加アルミニウムを極太のチュービングでつなぎ合わせたこのバイクが目指したのは、短距離レースに特化した反応性。ドロップしたシートステイによるコンパクトなリアトライアングル、スクエア形状のトップチューブ、楕円形状のダウンチューブ。全ては、クリテリウムレースで必要なクイックなハンドリングとダイレクトな加速感を生み出すための設計だ。
最先端のレース機材として、デローザのアルミバイクとしては初となるディスクブレーキを採用する。ディスクブレーキのストッピングパワーを余さず受け止める頑丈なフレーム設計によって可能となる的確なスピードコントロール性能は、レースでも大きな武器となるはずだ。
コンパクトなリアトライアングル 反応性を重視したデザインだ
シートチューブにはブラックラベルであることを示すステッカーが
細身のエアロチューブを採用していることが上から見るとわかりやすい
レースでの勝利を至上命題としつつ、一方で官能的な美しさを併せ持つ二面性もまた、デローザバイクらしさ。アグレッシブなシルエットのフレームを包み込むのは、見るものを虜にする魔性の魅力を放つゴールドカラー。
"Ignis aurum probat; miseria fortes viros."ローマの賢人、セネカは言った。炎が黄金を証明する。逆境が英雄を証明する。過酷なレースで生み出される英雄のため、ローマより連綿と伝わるクラフトマンシップがトーチの火を通して鍛え上げた黄金色のバイクが見せる世界はどのようなものか、2人の強者が語る。
― インプレッション
「他のバイクから一線を画す力強い加速感を持ったレーシングマシン」藤岡徹也(シルベストサイクル)
まず、見た目のオーラが凄いですよね。ゴールドだけのカラー展開というのも潔くて好感が持てますが、走らせるともっと好きになりました。個人的な好みでいえば、ど真ん中な乗り味で、欲しくなっちゃいましたね。
どんなバイクかと言えば、ベルギーで行われるハイスピードなクリテリウムをイメージして作られたと聞いて、僕たちがイメージするようなレーシーな性能がそのままカタチになったような一台です。私自身、ヨーロッパで活動していたこともあり、そういったレースを走っていたこともあるのですが、その時にこのバイクがあればなあ、と思ってしまうほど、素晴らしいバイクでした。
「他のバイクから一線を画す力強い加速感を持ったレーシングマシン」藤岡徹也(シルベストサイクル) とにかく、速度が変化する時のフィーリングがたまらなく気持ちいいですね。コーナーへ向けて高速で突っ込んでいき、ブレーキを一気にかけて曲がる、そして、立ち上がりからトップスピードめがけて加速していく。それを何度も繰り返すのがクリテリウムレースですが、その一連の減速、旋回、加速という全ての動作がこれ以上ないほど気持ちいいんです。
車重としては決して軽いバイクではないですが、加速時の力強さは目を瞠るものがあります。同クラスのバイクと比較しても、頭一つ抜けているな、と感じます。その上、スカンジウムを添加しているとはいえアルミバイクだというのですから、驚くほかないですよね。
最新のカーボンバイクに比べると細身のフレームは、その分少ししなる感覚があります。ですので、少し重めのギアでトルクを掛けてリズムよく踏み込んでいくと、ばね感のある伸びで応えてくれる。それが気持ちよさにつながっています。
一方、ウェットでラフな路面のダウンヒルでも挙動の乱れを見せることも無く、とてもコントローラブルで安定感のある走りが印象的でしたね。ブレーキを掛けつつ車体を倒しこんでいっても破綻することなく、信頼感のあるコーナーリングでした。
デローザが培ってきたレースバイクのノウハウ、つまりレースならではの走り方をしたときに、どういった力がフレームにかかるのか、それを知り尽くしたデローザならではの味付けだと思います。
加えていうなら、ワイドタイヤとカーボンホイール、ディスクブレーキという最新のトレンドが、良い方向に作用していると思います。安定感と快適性をもたらすこれらのスペックが、素材のデメリットを補い、長所をさらに引き出している。それも含めてデローザはメタルバイクの新しいステージを見せようとしてくれているのではないでしょうか。
性能面で言えばレースで大きな助けとなってくれるでしょう。ただ、ラフに扱うには気が引けるというのも事実です。価格もそうですし、道具と割り切るにはオーラがありすぎる。ですので、仲間と遠乗りに出かけてお互いの写真を撮りつつ、ちょっとしたところでアタックを掛け合うような、ちょっと大人な乗り方が似合うのではないでしょうか。もちろん、経済力があればレースで戦わせてあげたいところではあります。本来はそのためのバイクですから。
「バイクと自転車が一体になったような自然なフィーリング」遠藤誠(GROVE港北)
良いですね。金属素材でもここまでのものが生み出せるのかと感動しました。どの速度域でも安定しているのですが、スピードが伸びるとともに安心感が強くなっていくのは、デローザならではの乗り味です。
アルミフレームかつ、ディスクブレーキということを加味すると、車体自体も軽いのですが、漕ぎだすと別次元ですね。思わず「軽い!」と口に出してしまうくらい軽快な加速感を持っています。
剛性自体は高めなのですが、金属フレームらしく素直なしなり方をするので、回転型よりも大きなトルクを掛けて踏んでいくのが良いでしょうね。筋力がある人、体重がある人にとても向いていると思います。
「バイクと自転車が一体になったような自然なフィーリング」遠藤誠(GROVE港北)
コーナーリング時に、神経質にハンドルに意識を向けておく必要もありません。まるで、バイクと自分が一体になったように、自然と綺麗なアールを描いて曲がっていくようなフィーリング。ジオメトリーのおかげもあるのでしょうが、とにかく自然なハンドリングも魅力の一つです。
以前、KINGに乗ったことがあるのですが、とても似た性格のバイクでした。デローザバイクの目指す方向が一貫しているのでしょう。素材という壁を越えて、この乗り味を実現しているのは、純粋に驚きです。
快適性は考慮していない、とデローザ自身は言っていますけれど、決して不快感のある乗り心地ではありません。路面からのインフォメーションは伝えてくるのですが、衝撃の角はとられていて、身体に優しく処理されています。これは、スカンジウム添加アルミ合金という素材の持つ力でもあるでしょうね。
とにかく楽しいバイクですので、ぜひいろんな人に体験してほしいですね。アルミという素材に対する見方が変わると思います。ただ、価格だけがネックですが、純粋に性能だけで語るならば、決して高すぎるということはないと思います。
加速の軽快さを考えると、クリテリウムなど速度の上げ下げが多いレースには最高でしょう。一方、ロングライドでしたら、より向いているバイクは他にも沢山ありますが、一体感のある走り自体の気持ちよさは他では味わえないものです。安楽なライドよりも、走らせることの楽しみを求める、フィジカルに余裕のある方であればロングでも。
レースにも出つつ、自転車自体の世界観を楽しめるような方が、希少性や美しさ、走行性能の全てを兼ね備えた一台が欲しい、という時に真っ先に候補に挙げてほしいバイクですね。
デローザ KERMESSE (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
デローザ KERMEESE
カラー:ゴールド
サイズ:49、52、56、58もしくはカスタムオーダー
※KERMESSEは規格サイズならびにカスタムサイズともにBLACK LABEL
価格:580,000円(税抜、フレームセット)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル) 藤岡徹也(シルベストサイクル)
大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
シルベストサイクル ショップHP
遠藤誠(GROVE港北) 遠藤誠(GROVE港北)
神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。
CWレコメンドショップページ
GROVE港北 ショップHP
ウェア協力:Funkier(ファンキアー)
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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一線級のレーシングバイクがすべて炭素繊維に置き換えられて既にどれだけの時が経っただろうか。かつて、レーシングバイクの中心であったアルミニウムはエントリーバイク向けのマテリアルという位置づけ、というのがほぼ共通した認識だろう。
確かに、キャノンデールのCAAD12やスペシャライズドのALLEZ SPRINTなど、いくつかのマスプロブランドは金属素材ならではの踏み味を武器と謳い、アルミ製のレーシングバイクをラインアップしている。だが、それらにしてもハイエンドカーボンバイクより手が届きやすく、扱いやすいといった点が大きなメリットであることは否めない。
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2018年現在、アルミバイクが置かれている立ち位置とはつまるところ、そのリーズナブルな価格をこそアイデンティティとするものなのだが、この2019モデルにおいてデローザが発表したKERMESSEは、その風潮に一石を投じる異端児。つまり一言で言えば、高価なのだ。
フレームセットで58万円。他社を例に引くまでもなく、同社のハイエンドカーボンモデルPROTOSに迫る価格設定で、2019モデルのデローザカタログを見た人は少なからず驚かされたのではないだろうか。一方で、デローザなら不思議ではないと感じた方もいるはずだ。
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少し歴史を振り返ろう。クロモリ、チタンに続く次世代のレーシングバイク素材として、ウーゴ・デローザがアルミニウムへと情熱を燃やし始めたのは90年代後半。イタリア・ライグエーリアにて見かけた観光用のレンタサイクルにインスピレーションを得たことがきっかけだったという。
そこからデローザの生み出したアルミバイクがレースシーンを席巻するのに時間はかからなかった。2000年にロマンス・ヴァインシュタインスによって世界選手権を制した初代MERAKを筆頭に、MACROやDUALなど、多くのバイクを送り出してきたデローザにとって、アルミニウムは他の素材と同等以上に重要な存在であり続けた。そう、アルミだから安価でなければならない、という先入観は誇り高いイタリアブランドには当てはまらない。
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そして、このKERMESSEが作りあげられる場所もまた特別だ。デローザが「ブラックラベル」と呼ぶ、通常の生産ラインと異なるカスタムモデル専用のフレーム製作ラインがKERMESSEの生まれ故郷だ。
「乗り手の身体に合ったフレームを提供する」、シンプルにして明快なコンセプトを掲げるブラックラベルは、規格化されたサイズによって効率化を追及する潮流に否やを突き付けるデローザの挑戦状。創業以来65年間、ウーゴが積み重ねてきた歴史と文化の結晶。交換可能な量産品ではなく、交換不可能な工芸品。オーダーシートを通してイタリアの職人が魂を注いで作り上げる唯一無二。そうして作り上げられたフレームに値札をつけられることが、奇跡だといえよう。
KERMESSEという車名は、ベルギー各地の都市部で頻繁に開催されるクリテリウムレースに由来する。軽量かつ独特な反応性と振動吸収性を持ったスカンジウム添加アルミニウムを極太のチュービングでつなぎ合わせたこのバイクが目指したのは、短距離レースに特化した反応性。ドロップしたシートステイによるコンパクトなリアトライアングル、スクエア形状のトップチューブ、楕円形状のダウンチューブ。全ては、クリテリウムレースで必要なクイックなハンドリングとダイレクトな加速感を生み出すための設計だ。
最先端のレース機材として、デローザのアルミバイクとしては初となるディスクブレーキを採用する。ディスクブレーキのストッピングパワーを余さず受け止める頑丈なフレーム設計によって可能となる的確なスピードコントロール性能は、レースでも大きな武器となるはずだ。
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"Ignis aurum probat; miseria fortes viros."ローマの賢人、セネカは言った。炎が黄金を証明する。逆境が英雄を証明する。過酷なレースで生み出される英雄のため、ローマより連綿と伝わるクラフトマンシップがトーチの火を通して鍛え上げた黄金色のバイクが見せる世界はどのようなものか、2人の強者が語る。
― インプレッション
「他のバイクから一線を画す力強い加速感を持ったレーシングマシン」藤岡徹也(シルベストサイクル)
まず、見た目のオーラが凄いですよね。ゴールドだけのカラー展開というのも潔くて好感が持てますが、走らせるともっと好きになりました。個人的な好みでいえば、ど真ん中な乗り味で、欲しくなっちゃいましたね。
どんなバイクかと言えば、ベルギーで行われるハイスピードなクリテリウムをイメージして作られたと聞いて、僕たちがイメージするようなレーシーな性能がそのままカタチになったような一台です。私自身、ヨーロッパで活動していたこともあり、そういったレースを走っていたこともあるのですが、その時にこのバイクがあればなあ、と思ってしまうほど、素晴らしいバイクでした。
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車重としては決して軽いバイクではないですが、加速時の力強さは目を瞠るものがあります。同クラスのバイクと比較しても、頭一つ抜けているな、と感じます。その上、スカンジウムを添加しているとはいえアルミバイクだというのですから、驚くほかないですよね。
最新のカーボンバイクに比べると細身のフレームは、その分少ししなる感覚があります。ですので、少し重めのギアでトルクを掛けてリズムよく踏み込んでいくと、ばね感のある伸びで応えてくれる。それが気持ちよさにつながっています。
一方、ウェットでラフな路面のダウンヒルでも挙動の乱れを見せることも無く、とてもコントローラブルで安定感のある走りが印象的でしたね。ブレーキを掛けつつ車体を倒しこんでいっても破綻することなく、信頼感のあるコーナーリングでした。
デローザが培ってきたレースバイクのノウハウ、つまりレースならではの走り方をしたときに、どういった力がフレームにかかるのか、それを知り尽くしたデローザならではの味付けだと思います。
加えていうなら、ワイドタイヤとカーボンホイール、ディスクブレーキという最新のトレンドが、良い方向に作用していると思います。安定感と快適性をもたらすこれらのスペックが、素材のデメリットを補い、長所をさらに引き出している。それも含めてデローザはメタルバイクの新しいステージを見せようとしてくれているのではないでしょうか。
性能面で言えばレースで大きな助けとなってくれるでしょう。ただ、ラフに扱うには気が引けるというのも事実です。価格もそうですし、道具と割り切るにはオーラがありすぎる。ですので、仲間と遠乗りに出かけてお互いの写真を撮りつつ、ちょっとしたところでアタックを掛け合うような、ちょっと大人な乗り方が似合うのではないでしょうか。もちろん、経済力があればレースで戦わせてあげたいところではあります。本来はそのためのバイクですから。
「バイクと自転車が一体になったような自然なフィーリング」遠藤誠(GROVE港北)
良いですね。金属素材でもここまでのものが生み出せるのかと感動しました。どの速度域でも安定しているのですが、スピードが伸びるとともに安心感が強くなっていくのは、デローザならではの乗り味です。
アルミフレームかつ、ディスクブレーキということを加味すると、車体自体も軽いのですが、漕ぎだすと別次元ですね。思わず「軽い!」と口に出してしまうくらい軽快な加速感を持っています。
剛性自体は高めなのですが、金属フレームらしく素直なしなり方をするので、回転型よりも大きなトルクを掛けて踏んでいくのが良いでしょうね。筋力がある人、体重がある人にとても向いていると思います。
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コーナーリング時に、神経質にハンドルに意識を向けておく必要もありません。まるで、バイクと自分が一体になったように、自然と綺麗なアールを描いて曲がっていくようなフィーリング。ジオメトリーのおかげもあるのでしょうが、とにかく自然なハンドリングも魅力の一つです。
以前、KINGに乗ったことがあるのですが、とても似た性格のバイクでした。デローザバイクの目指す方向が一貫しているのでしょう。素材という壁を越えて、この乗り味を実現しているのは、純粋に驚きです。
快適性は考慮していない、とデローザ自身は言っていますけれど、決して不快感のある乗り心地ではありません。路面からのインフォメーションは伝えてくるのですが、衝撃の角はとられていて、身体に優しく処理されています。これは、スカンジウム添加アルミ合金という素材の持つ力でもあるでしょうね。
とにかく楽しいバイクですので、ぜひいろんな人に体験してほしいですね。アルミという素材に対する見方が変わると思います。ただ、価格だけがネックですが、純粋に性能だけで語るならば、決して高すぎるということはないと思います。
加速の軽快さを考えると、クリテリウムなど速度の上げ下げが多いレースには最高でしょう。一方、ロングライドでしたら、より向いているバイクは他にも沢山ありますが、一体感のある走り自体の気持ちよさは他では味わえないものです。安楽なライドよりも、走らせることの楽しみを求める、フィジカルに余裕のある方であればロングでも。
レースにも出つつ、自転車自体の世界観を楽しめるような方が、希少性や美しさ、走行性能の全てを兼ね備えた一台が欲しい、という時に真っ先に候補に挙げてほしいバイクですね。
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デローザ KERMEESE
カラー:ゴールド
サイズ:49、52、56、58もしくはカスタムオーダー
※KERMESSEは規格サイズならびにカスタムサイズともにBLACK LABEL
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インプレッションライダーのプロフィール
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大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
シルベストサイクル ショップHP
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神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。
CWレコメンドショップページ
GROVE港北 ショップHP
ウェア協力:Funkier(ファンキアー)
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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