2010/03/07(日) - 13:04
3月6日、イタリア・トスカーナ州シエナ近郊を舞台に、第4回モンテパスキ・ストラーデビアンケ(UCI1.1)が開催された。未舗装路を走ることで年々注目度を上げるこのレース。起伏のあるコースで抜け出した3名によるゴール勝負で、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)が競り勝った。
イタリア中部、トスカーナ州のシエナ近郊を舞台に、今年もモンテパスキ・ストラーデビアンケが開催された。街全体が世界遺産に登録されているシエナは、中世の面影を色濃く残すイタリアきっての観光地。その街の美しさもさることながら、郊外には美しい丘陵地帯が延々と続いている。
なだらかな丘陵地帯を縫うように走るのは、アスファルトで舗装されていない未舗装の砂利道。レース名の「ストラーデ・ビアンケ」は「白い道」を意味しており、全長190kmのコースには、未舗装区間が全8セクター・合計53.7kmも登場する。
ゴール地点は世界一美しいとシエナ人が太鼓判を押すシエナ中心部の「カンポ広場」。ちなみに「モンテ・パスキ」はイタリア最古の銀行として世界的に知られるシエナの「モンテ・パスキ銀行」のこと。同銀行は第1回大会からメインスポンサーを務めている。
今年はジロ・デ・イタリアの第7ステージ(参照:ジロ・デ・イタリア2010コース発表)で同地域の未舗装路を通過することから、下見を兼ねて出場する選手も多数。アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)を含む113名の選手たちが、シエナ北部のガイオーレ・イン・キアンティをスタートした。
レースは序盤からアタックが繰り返され、数名の逃げが先行しては吸収の繰り返し。メイン集団は2008年大会の優勝者ファビアン・カンチェラーラ(スイス)擁するサクソバンクがコントロールした。
逃げを許さず、砂埃を巻き上げながらハイスピードで未舗装路を突っ走る大集団。当然落車はつきもので、第3セクターの92km地点ではイグリンスキーやピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)を含む落車が発生。
ほとんどの選手がそのままレースを続行する中、ケノーは救急車で病院に搬送された。ケノーは昨年のベビージロ(アマチュア版ジロ)でもこのシエナ近郊の未舗装路でパンクし、総合首位の座を失うという災難に見舞われていた。
レースが大きな動きを見せたのは、高低差150mほどのモンテ・サンテ・マリエの上りを含む第5セクター。ゴール60km手前のこの未舗装路で先頭集団は一気に28名まで絞り込まれ、大集団が1分遅れで追う展開に。
先頭集団からは更にマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ら5名がアタックし、ゴール30km手前で23名の後続集団から55秒のリードを得た。
しかしロジャースらはゴール20km手前の第7セクターで吸収され、先頭は28名に。大集団とのタイム差は2分まで広がり、実質的に優勝の行方は28名に絞られた。
最終第8セクターでエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)らがアタックを仕掛けたが決まらず、先頭は11名に絞られた状態でラスト10kmを通過。
フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)とカンチェラーラのアタックに続いて、ラスト6km地点でロジャース、イグリンスキー、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)、そして前年度覇者のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)が飛び出した。
協力して先頭交代するロジャース、イグリンスキー、ヘジダル、ロヴクヴィストの4名には、ラスト3km地点でポッツァートとフランチェスコ・ジナンニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)が合流。カンチェラーラらを引き離した6名は、ゴール地点シエナに向かう上りに差し掛かった。
丘の上に佇むシエナは、城壁に囲まれた典型的なイタリア中世の都市国家。街の中は入り組み、路面はほぼ全てが石畳。街の中心部に辿り着くためには、勾配15%オーバーの急坂をクリアしなければならない。
ラスト1kmから始まる街中の急坂で、先頭からヘジダル、ジナンニ、ポッツァートの3名が遅れ、ロジャース、ロヴクヴィスト、イグリンスキーが先行。カンポ広場に進入する直角カーブに先頭で突っ込んだイグリンスキーが、ロヴクヴィストらを振り切り、大歓声に包まれたカンポ広場のゴールに飛び込んだ。
ドミナヴァカンツェとチームミルラムを経て、2007年からアスタナに所属するイグリンスキーは現在28歳。これまでドーフィネ・リベレ、ドイツ・ツアー、ツール・ド・ロマンディでステージ優勝を経験しており、カザフスタン人選手としてはヴィノクロフに次ぐ戦歴の持ち主だ。ちなみに2002年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)にカザフスタンチームの一員として出場し、総合4位に入っている。
アスタナチームに今シーズン3勝目をもたらしたイグリンスキーは、レースをこう振り返る。「このストラーデ・ビアンケは初出場。でもこのレースは常に先頭で走る必要があることを心得ていた。終盤にロヴクヴィストがロジャース、ヘジダルと一緒に飛び出した時、決定的な動きになると判断して食らいついたんだ。最後のスプリント勝負は(ロヴクヴィストと)肘で接触しながら先頭に立った。最終コーナーは落車が怖くて思わずブレーキしたけど、何とか先頭を守り切ることが出来た」。
近年イグリンスキーはシーズン前半の目標をクラシックレースに据えており、昨年はセミクラシックのE3プライス・フラーンデレンでボーネン&ポッツァートと最後まで同等に闘って3位に入っている。「次はティレーノ〜アドリアティコ、そして北のクラシックだ」。アジア人初のクラシック制覇に期待したい。
惜しくも大会連覇を逃したロヴクヴィストは「終盤はずっとレース先頭で走り続けた。上りでも街中の路地でも先頭。でもイグリンスキーの幅寄せに屈してしまった。でもこれがロードレースだ」と、悔しいコメントを残す。ロヴクヴィストは2008年に総合3位に入ったティレーノ〜アドリアティコに出場する。
イタリアチャンピオンのポッツァートは、イタリア人最高位4位に。イタリア勢は、2007年の大会初開催以降、コロブネフ(ロシア)、カンチェラーラ(スイス)、ロヴクヴィスト(スウェーデン)と、海外勢にタイトルを奪われたままだ。
ポッツァートは「終盤に先頭の4人に追いついた時点でもう脚は残っていなかった。でも無心で走ることが出来たし、調子は良好。何よりレースを楽しめた」とコメント。56位でフィニッシュした世界チャンピオンのエヴァンスは「このレースはコースや場所、環境など全てが独特だった。今回は体調が優れなかったので結果は残せなかったけど、また出場したい。来年また戻ってくるよ」と好意的なコメントを残している。
レース展開や選手コメントはガゼッタ紙より。
モンテパスキ・ストラーデビアンケ2010結果
1位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
2位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
4位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
6位 フランチェスコ・ジナンニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
7位 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
8位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
イタリア中部、トスカーナ州のシエナ近郊を舞台に、今年もモンテパスキ・ストラーデビアンケが開催された。街全体が世界遺産に登録されているシエナは、中世の面影を色濃く残すイタリアきっての観光地。その街の美しさもさることながら、郊外には美しい丘陵地帯が延々と続いている。
なだらかな丘陵地帯を縫うように走るのは、アスファルトで舗装されていない未舗装の砂利道。レース名の「ストラーデ・ビアンケ」は「白い道」を意味しており、全長190kmのコースには、未舗装区間が全8セクター・合計53.7kmも登場する。
ゴール地点は世界一美しいとシエナ人が太鼓判を押すシエナ中心部の「カンポ広場」。ちなみに「モンテ・パスキ」はイタリア最古の銀行として世界的に知られるシエナの「モンテ・パスキ銀行」のこと。同銀行は第1回大会からメインスポンサーを務めている。
今年はジロ・デ・イタリアの第7ステージ(参照:ジロ・デ・イタリア2010コース発表)で同地域の未舗装路を通過することから、下見を兼ねて出場する選手も多数。アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)を含む113名の選手たちが、シエナ北部のガイオーレ・イン・キアンティをスタートした。
レースは序盤からアタックが繰り返され、数名の逃げが先行しては吸収の繰り返し。メイン集団は2008年大会の優勝者ファビアン・カンチェラーラ(スイス)擁するサクソバンクがコントロールした。
逃げを許さず、砂埃を巻き上げながらハイスピードで未舗装路を突っ走る大集団。当然落車はつきもので、第3セクターの92km地点ではイグリンスキーやピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)を含む落車が発生。
ほとんどの選手がそのままレースを続行する中、ケノーは救急車で病院に搬送された。ケノーは昨年のベビージロ(アマチュア版ジロ)でもこのシエナ近郊の未舗装路でパンクし、総合首位の座を失うという災難に見舞われていた。
レースが大きな動きを見せたのは、高低差150mほどのモンテ・サンテ・マリエの上りを含む第5セクター。ゴール60km手前のこの未舗装路で先頭集団は一気に28名まで絞り込まれ、大集団が1分遅れで追う展開に。
先頭集団からは更にマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ら5名がアタックし、ゴール30km手前で23名の後続集団から55秒のリードを得た。
しかしロジャースらはゴール20km手前の第7セクターで吸収され、先頭は28名に。大集団とのタイム差は2分まで広がり、実質的に優勝の行方は28名に絞られた。
最終第8セクターでエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)らがアタックを仕掛けたが決まらず、先頭は11名に絞られた状態でラスト10kmを通過。
フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)とカンチェラーラのアタックに続いて、ラスト6km地点でロジャース、イグリンスキー、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)、そして前年度覇者のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)が飛び出した。
協力して先頭交代するロジャース、イグリンスキー、ヘジダル、ロヴクヴィストの4名には、ラスト3km地点でポッツァートとフランチェスコ・ジナンニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)が合流。カンチェラーラらを引き離した6名は、ゴール地点シエナに向かう上りに差し掛かった。
丘の上に佇むシエナは、城壁に囲まれた典型的なイタリア中世の都市国家。街の中は入り組み、路面はほぼ全てが石畳。街の中心部に辿り着くためには、勾配15%オーバーの急坂をクリアしなければならない。
ラスト1kmから始まる街中の急坂で、先頭からヘジダル、ジナンニ、ポッツァートの3名が遅れ、ロジャース、ロヴクヴィスト、イグリンスキーが先行。カンポ広場に進入する直角カーブに先頭で突っ込んだイグリンスキーが、ロヴクヴィストらを振り切り、大歓声に包まれたカンポ広場のゴールに飛び込んだ。
ドミナヴァカンツェとチームミルラムを経て、2007年からアスタナに所属するイグリンスキーは現在28歳。これまでドーフィネ・リベレ、ドイツ・ツアー、ツール・ド・ロマンディでステージ優勝を経験しており、カザフスタン人選手としてはヴィノクロフに次ぐ戦歴の持ち主だ。ちなみに2002年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)にカザフスタンチームの一員として出場し、総合4位に入っている。
アスタナチームに今シーズン3勝目をもたらしたイグリンスキーは、レースをこう振り返る。「このストラーデ・ビアンケは初出場。でもこのレースは常に先頭で走る必要があることを心得ていた。終盤にロヴクヴィストがロジャース、ヘジダルと一緒に飛び出した時、決定的な動きになると判断して食らいついたんだ。最後のスプリント勝負は(ロヴクヴィストと)肘で接触しながら先頭に立った。最終コーナーは落車が怖くて思わずブレーキしたけど、何とか先頭を守り切ることが出来た」。
近年イグリンスキーはシーズン前半の目標をクラシックレースに据えており、昨年はセミクラシックのE3プライス・フラーンデレンでボーネン&ポッツァートと最後まで同等に闘って3位に入っている。「次はティレーノ〜アドリアティコ、そして北のクラシックだ」。アジア人初のクラシック制覇に期待したい。
惜しくも大会連覇を逃したロヴクヴィストは「終盤はずっとレース先頭で走り続けた。上りでも街中の路地でも先頭。でもイグリンスキーの幅寄せに屈してしまった。でもこれがロードレースだ」と、悔しいコメントを残す。ロヴクヴィストは2008年に総合3位に入ったティレーノ〜アドリアティコに出場する。
イタリアチャンピオンのポッツァートは、イタリア人最高位4位に。イタリア勢は、2007年の大会初開催以降、コロブネフ(ロシア)、カンチェラーラ(スイス)、ロヴクヴィスト(スウェーデン)と、海外勢にタイトルを奪われたままだ。
ポッツァートは「終盤に先頭の4人に追いついた時点でもう脚は残っていなかった。でも無心で走ることが出来たし、調子は良好。何よりレースを楽しめた」とコメント。56位でフィニッシュした世界チャンピオンのエヴァンスは「このレースはコースや場所、環境など全てが独特だった。今回は体調が優れなかったので結果は残せなかったけど、また出場したい。来年また戻ってくるよ」と好意的なコメントを残している。
レース展開や選手コメントはガゼッタ紙より。
モンテパスキ・ストラーデビアンケ2010結果
1位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
2位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
4位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
6位 フランチェスコ・ジナンニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
7位 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
8位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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