2018/09/10(月) - 02:17
牽制する総合ライバルたちを振り切る会心のアタック。超級山岳ラゴス・デ・コバドンガで独走に持ち込んだティボー・ピノが全グランツールステージ優勝を達成した。積極的な走りを見せたマイヨロホのサイモン・イェーツがモビスター勢からリードを奪っている。
ブエルタを代表する名峰でクライマックスを迎えたアストゥリアス山岳3連戦。第15ステージは中盤にかけて1級山岳ミラドール・デル・フィト(全長7.1km/平均7.7%)を2回登り、最後はブエルタ登場21回目の超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ(全長11.7km/平均7.2%)を駆け上がる。
湖が点在する頂上付近に向かう登りは、いくつかの下り区間を含むため実際の平均勾配が10%を超える。前半から14〜15%の急勾配区間が連続し、後半にかけて最大20%の激坂区間も登場。獲得標高差4,500mの難関山岳ステージは、前日にステージ敢闘賞を獲得したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らのアタックで幕開けた。
率先してメイン集団から飛び出したポーランドチャンピオンには、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)らが反応して一時的に20名ほどが先行。しかし危険と判断したミッチェルトン・スコットがすぐさまこの動きを封じ込める。
アタック合戦の末に形成されたのは12名の逃げグループ。前日の第14ステージで7分42秒遅れ、総合14位から総合21位(10分03秒遅れ)に順位を下げたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)やニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)を含む逃げグループがミッチェルトン・スコット率いるメイン集団からすぐさま4分のリードを奪った。
タイム差が5分30秒まで広がる中、1回目の1級山岳ミラドール・デル・フィト(全長7.1km/平均7.7%)でアスタナがメイン集団のペースアップを開始する。8名のメンバーをフル動員したカザフスタンチームの集団牽引によってタイム差は縮まり、2回目の1級山岳ミラドール・デル・フィト通過の時点でタイム差は3分を切った。山岳賞ジャージのルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)が1ポイントも稼ぐことができなかったため、デヘント、モレマ、キングの3名がポイント差を詰めることに成功している。
残り30kmを切ると、6名のステージ優勝経験者(キング、モレマ、エルビティ、ロッシュ、ファンポッペル、コンティ)を含む先頭グループからアタックする選手が続出する。唯一独走に持ち込むことに成功したのは地元アストゥリアス州出身のガルシア。追走グループに1分、メイン集団に2分30秒のタイム差をつけて、ガルシアが超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登りに突入した。
引き続きアスタナが牽引するメイン集団は超級山岳ラゴス・デ・コバドンガで見る見るうちに縮小。トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)らを置き去りにしながらハイペースで進んだメイン集団は、残り8km地点で先頭のガルシアを追い抜いていく。チームメイトの献身に応えるように、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が真っ先に動きを見せた。
急勾配区間での総合4位ロペスのアタックは決まらず、吸収後のペースダウンを利用して今度はティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がカウンター。牽制する総合上位陣を置き去りにする形で総合11位ピノが残り6km地点から独走に持ち込んだ。
先頭ピノの後ろでは途切れることなくアタックと吸収が繰り返された。総合首位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)による強烈なアタックはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らによって封じ込められ、続くエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)の動きにも総合ライバルたちはしっかりと反応。その後もイェーツは執拗にアタックしたが、その度にロペスやマス、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がぴったりとマークする。
残り2kmを前にロペスがようやくマイヨロホとモビスター勢を振り切ることに成功したものの、20秒先を行くピノの背中は見えてこない。好機をつかんだピノが先頭をキープしたまま霧のダウンヒルをこなし、最後の急坂をこなしてフィニッシュへ。後続を寄せ付けない走りで、ピノが名峰コバドンガの優勝者リストに名前を刻んだ。
「総合上位の選手たちが互いを牽制する隙にアタックする作戦が的中した。総合で1分45秒遅れている自分は直接的な脅威にはならないので、即座に追いかけてくることはないと思っていたんだ。15秒差がついた段階で、今の自分なら逃げ切れると思っていた」。5時間におよぶ長い山岳決戦を制したピノは作戦についてそう説明する。
2012年と2015年にツール・ド・フランスで、2017年にジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾っているピノがブエルタでステージ初優勝。この日の勝利によって総合順位を11位から7位まで上げることに成功したピノは「これは狙い通りのステージ優勝であり、キャリアにおいて大きな意味を持つ。全グランツールでステージ優勝を飾るという野望を叶えることができた。自分にリミットを設定することなくマドリードまで戦い抜くよ」とコメントしている。
「素晴らしいアタックを成功させたピノを祝福したい」とステージ優勝者を讃えたのは、28秒遅れのロペスに次いで30秒遅れのステージ3位に入ったイェーツ。ロペスがアタックした際に協力しなかったキンタナに不満を爆発させたイェーツは「(ロペスとキンタナと)全く協調体制を築けなかったので、何も生み出すことはできなかった。向かい風の影響で飛び出してもリードを広げることができなかったんだ。結果的に、大きなタイム差は生まれなかった」と語る。それでもステージ3位のボーナスタイムとタイム差によりモビスターの総合2位バルベルデ&総合3位キンタナを突き放すことに成功した。
翌日は今大会2回目&最後の休息日。休息日明けの第16ステージには32kmの個人タイムトライアルが設定されている。バルベルデと26秒差、キンタナと33秒差でマイヨロホを着るイェーツは「明日は待ちに待った休息日。まだ総合タイム差が小さいので、個人タイムトライアルが重要な鍵を握ると思う」とコメントしている。
ブエルタを代表する名峰でクライマックスを迎えたアストゥリアス山岳3連戦。第15ステージは中盤にかけて1級山岳ミラドール・デル・フィト(全長7.1km/平均7.7%)を2回登り、最後はブエルタ登場21回目の超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ(全長11.7km/平均7.2%)を駆け上がる。
湖が点在する頂上付近に向かう登りは、いくつかの下り区間を含むため実際の平均勾配が10%を超える。前半から14〜15%の急勾配区間が連続し、後半にかけて最大20%の激坂区間も登場。獲得標高差4,500mの難関山岳ステージは、前日にステージ敢闘賞を獲得したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らのアタックで幕開けた。
率先してメイン集団から飛び出したポーランドチャンピオンには、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)らが反応して一時的に20名ほどが先行。しかし危険と判断したミッチェルトン・スコットがすぐさまこの動きを封じ込める。
アタック合戦の末に形成されたのは12名の逃げグループ。前日の第14ステージで7分42秒遅れ、総合14位から総合21位(10分03秒遅れ)に順位を下げたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)やニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)を含む逃げグループがミッチェルトン・スコット率いるメイン集団からすぐさま4分のリードを奪った。
タイム差が5分30秒まで広がる中、1回目の1級山岳ミラドール・デル・フィト(全長7.1km/平均7.7%)でアスタナがメイン集団のペースアップを開始する。8名のメンバーをフル動員したカザフスタンチームの集団牽引によってタイム差は縮まり、2回目の1級山岳ミラドール・デル・フィト通過の時点でタイム差は3分を切った。山岳賞ジャージのルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)が1ポイントも稼ぐことができなかったため、デヘント、モレマ、キングの3名がポイント差を詰めることに成功している。
残り30kmを切ると、6名のステージ優勝経験者(キング、モレマ、エルビティ、ロッシュ、ファンポッペル、コンティ)を含む先頭グループからアタックする選手が続出する。唯一独走に持ち込むことに成功したのは地元アストゥリアス州出身のガルシア。追走グループに1分、メイン集団に2分30秒のタイム差をつけて、ガルシアが超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登りに突入した。
引き続きアスタナが牽引するメイン集団は超級山岳ラゴス・デ・コバドンガで見る見るうちに縮小。トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)らを置き去りにしながらハイペースで進んだメイン集団は、残り8km地点で先頭のガルシアを追い抜いていく。チームメイトの献身に応えるように、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が真っ先に動きを見せた。
急勾配区間での総合4位ロペスのアタックは決まらず、吸収後のペースダウンを利用して今度はティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がカウンター。牽制する総合上位陣を置き去りにする形で総合11位ピノが残り6km地点から独走に持ち込んだ。
先頭ピノの後ろでは途切れることなくアタックと吸収が繰り返された。総合首位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)による強烈なアタックはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らによって封じ込められ、続くエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)の動きにも総合ライバルたちはしっかりと反応。その後もイェーツは執拗にアタックしたが、その度にロペスやマス、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がぴったりとマークする。
残り2kmを前にロペスがようやくマイヨロホとモビスター勢を振り切ることに成功したものの、20秒先を行くピノの背中は見えてこない。好機をつかんだピノが先頭をキープしたまま霧のダウンヒルをこなし、最後の急坂をこなしてフィニッシュへ。後続を寄せ付けない走りで、ピノが名峰コバドンガの優勝者リストに名前を刻んだ。
「総合上位の選手たちが互いを牽制する隙にアタックする作戦が的中した。総合で1分45秒遅れている自分は直接的な脅威にはならないので、即座に追いかけてくることはないと思っていたんだ。15秒差がついた段階で、今の自分なら逃げ切れると思っていた」。5時間におよぶ長い山岳決戦を制したピノは作戦についてそう説明する。
2012年と2015年にツール・ド・フランスで、2017年にジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾っているピノがブエルタでステージ初優勝。この日の勝利によって総合順位を11位から7位まで上げることに成功したピノは「これは狙い通りのステージ優勝であり、キャリアにおいて大きな意味を持つ。全グランツールでステージ優勝を飾るという野望を叶えることができた。自分にリミットを設定することなくマドリードまで戦い抜くよ」とコメントしている。
「素晴らしいアタックを成功させたピノを祝福したい」とステージ優勝者を讃えたのは、28秒遅れのロペスに次いで30秒遅れのステージ3位に入ったイェーツ。ロペスがアタックした際に協力しなかったキンタナに不満を爆発させたイェーツは「(ロペスとキンタナと)全く協調体制を築けなかったので、何も生み出すことはできなかった。向かい風の影響で飛び出してもリードを広げることができなかったんだ。結果的に、大きなタイム差は生まれなかった」と語る。それでもステージ3位のボーナスタイムとタイム差によりモビスターの総合2位バルベルデ&総合3位キンタナを突き放すことに成功した。
翌日は今大会2回目&最後の休息日。休息日明けの第16ステージには32kmの個人タイムトライアルが設定されている。バルベルデと26秒差、キンタナと33秒差でマイヨロホを着るイェーツは「明日は待ちに待った休息日。まだ総合タイム差が小さいので、個人タイムトライアルが重要な鍵を握ると思う」とコメントしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第15ステージ結果
1位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 5:01:49 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:28 |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:30 |
4位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:32 |
5位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | |
6位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:00:34 |
7位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | |
8位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:01:25 |
9位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:33 |
10位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:01:49 |
12位 | トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) | 0:02:50 |
敢闘賞 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) |
個人総合成績
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 64:13:33 |
2位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:26 |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:33 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:43 |
5位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:01:29 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:01:55 |
7位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:02:10 |
8位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:02:27 |
9位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:03:03 |
10位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:03:15 |
ポイント賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 115pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 83pts |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 71pts |
山岳賞
1位 | ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) | 64pts |
2位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 57pts |
3位 | ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) | 56pts |
複合賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 13pts |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 13pts |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 16pts |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・メリダ | 192:48:14 |
2位 | モビスター | 0:03:13 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:27:23 |
text:Kei Tsuji in Lagos de Covadonga, Spain
photo:Kei Tsuji, Luca Bettini
photo:Kei Tsuji, Luca Bettini
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