2018/07/18(水) - 09:12
世界最大の自転車ショー、ユーロバイクで見つけた新製品をピックアップするレポートをお届けします。第1弾となる今回は、全世界が注目した13速コンポーネントをリリースしたローターと、サガン特別モデルを発表した100%。セッレイタリア、キャットアイ、DMTを紹介します。
ローター:13速油圧コンポーネント「1×13」を発表
世界中から自転車関係ブランドが集まるなか一際存在感を放っていたブースは、スペインのコンポーネントブランドのローターだろう。既に各国のメディアが報じている通り、ユーロバイクの初日に13速ドライブトレイン「1×13(ワンバイサーティーン)」を発表した。2015年に発表したUnoに次ぐ2作目の油圧式コンポーネントだ。
なぜフロントシングル、リア13速なのか。ローターのグローバル・コミュニケーションマネージャーであるポール・マクギネス氏は「MTBの世界ではフロントシングルが当たり前となりシクロクロスも続きました。ロードでも同じような動きとなると思っているからです。レースでフロント変速を行った時に起こりうるスタックやロスを減らせるとともに、リア変速だけに集中することができます」と語る。
もちろんフロントシングル化のメリットはそれだけではない。2×11速のドライブトレインでは、フロントをアウターとインナーどちらに掛けていても同じようなギア比数値になる組み合わせがいくつか存在する。53/39&11-28というポピュラーなギア構成の場合、ギア比全部使い切ろうとすると、フロントディレイラーの操作が13回も必要となるため非常に実用的ではないのだ。
この時、1回のフロント変速でギアを効率的に活用しようとすると、有効なギアレシオが14種類となる。ローターの1×13では、フロント50&リア10-39Tのギアを採用した時、53/39&11-28の有効ギア比に似たギア比構成となる。また、フロントダブル時の有効ギア比よりも最大ギア比は大きく、最小ギア比は小さくなるように設定されている。スプリントとヒルクライムどちらにも対応できるため、ギアが足りないという自体のリスクは少ない。
元々フロントシングルがスタンダードとなり、12速化も当たり前の装備となりつつあるMTBにおいては、ギアが1枚増え、クロスレシオとなることがアドバンテージ。これまでのギア構成の場合ギアレシオが大きくなるに連れて、ギャップも大きくなっていてしまい、使い所が難しかった。クロスレシオとなることで急坂でも適切なギアで走破しやすくなるだろう。
そんなアドバンテージを持つローター「1×13」のディレイラーはロード/グラベルとMTBと兼用。Unoと比較すると大ぶりなボディとなっているが、その理由はプロテクションのため。スタビライザーが搭載されているため、オフロードでの大きなギャップを乗り越えた場合でもチェーンが暴れすぎない。
ハブはローターのリボルバーハブで、12速用のカセットスプロケットにも対応する。カセットスプロケットはアルミとスチール2種類の素材から作られる。13速ラインナップはロード用「10-36」、ロード/グラベル用「10-39」、グラベル用「10-46」、MTB用「10-46」、MTB用「10-52」という5種類。12速のラインナップは「11-36」、「11-39」、「11-46」、「11-52」という4種類だ。ポール氏によると2019年の早いうちのローンチを目指しているという。ドライブトレイン開発の1歩先へと踏み出したローターの意欲作には大きな期待を寄せたい。
100%:ペテル・サガンの特別エディションが登場
ペテル・サガンが使用しはじめたことから一気にロード派のサイクリストから注目された100%のサングラス。ユーロバイクのブースでは、現在サガンがツール・ド・フランスで着用しているリミテッドエディションの展示と試着が行われた。特別モデルのラインナップはS2、Speedcraft、Speedtrapの3種類で展開されており、数多くの来場者が足を止めて、アイウェアを試していた。
100%はアメリカのモトクロス用ゴーグルから始まったブランドであり、現在もmotoの分野で活躍している。サイクルスポーツではゴーグルを使用する下り系MTBを得意としており、ダウンヒル世界チャンピオンのロイック・ブルーニや、エンデューロのサム・ヒルなど名高い選手たちが使用している。ユーロバイクでも彼らの着用するド派手なヘルメットと合わせて展示されていた。
セッレイタリア:ツール・ド・フランスエディションの特別サドルと2019ラインアップ
創業120周年を迎えたセッレイタリアはユーロバイクで2019年モデルをローンチ。座面がフレキシブルに動く「SP-01」にBOOSTと呼ばれるノーズが短い仕様が追加された。他にも2019年モデルはE-BIKE用のサドルや、ゲルパッド量を増加させたGRAN TURISMOシリーズなども数多くリリースされており、非常に細かいラインナップとなっている。
ユーロバイクでは、既に販売が開始されているツール・ド・フランスエディションのサドルも展示。SP-01をはじめ、クラシカルな革サドルを展開するサブブランドの「セライタリア(Sella Italia)」仕様のFLITEなどが用意されており、様々な層のサイクリストがツール開催の雰囲気を味わうことができる。
また、2018年モデルの注目プロダクトとしてオフロード向けに開発されたX-LRは、サポートライダーのマテュー・ファンデルポールがシクロクロスで使用する実車と共に飾られていた。X-LRは前端部のベースとレールの間にショックアブソーバーが配置され、振動吸収性を向上させた事が特徴。パッドのクッション性が損なわれないよう、表皮をベース裏側まで引っ張るトラディショナルな方法は廃止され、ベース上部に接着するという新工法を採用していることもポイントだ。ロード、MTBでも存在感を強めているファンデルポールが使用する機材から目が離せない。
キャットアイ:前後ライトを一括操作できるSYNCシリーズと、スタイリッシュなサイコンQUICK
日本が誇るライトメーカーのキャットアイがユーロバイクで発表した新製品は「SYNC」シリーズのライトとサイクルコンピューター「QUICK」の2種類。SYNCシリーズはヘッドライトのCORE、リアライトのKINETIC、装着する場所を選ばないWEARABLEの3種類で展開し、それぞれのデバイスがスマートフォンと同期することが特徴だ。
各デバイスが"シンクロ"することのアドバンテージは、ある1つのデバイスを操作すると同期しているデバイスも自動的に同じ操作が行われること。ヘッドライト「CORE」の電源をいれると、リアライトまで一緒に点灯させてくれるのだ。モードチェンジも同様。トンネルを通過する際に前後のライトをそれぞれ点灯させる行為をワンアクションで済ませられるため、ライド中の安全性が向上するだろう。
またSYNCはスマートフォンと連携するため、各種デバイスのバッテリー管理が行える。デバイス自体にインジケーターは備えられているものの、リアライトの電池残量は確認するのは手間という側面もあった。ライド前後にパーセント表示される数値を確認することで、何時間点灯状態を維持できるのか、充電したほうが良いのかを把握しやすくなっている。
COREに関しては、使用する点灯モードをスマホで取捨選択できるようになった。ライトには複数のモードが用意されているが、実用するのはおおよそ2~3種程度だろう。使わないモードを飛ばすために何度もクリックするのは手間なので、それを省くことができるのは非常に嬉しい機能だ。販売はSYNC COREとKINETIC(ブレーキランプ機能付きリアライト)のセットパッケージ、WEARABLEは別売のオプションとなる。
QUICK(クイック)は必要最低限の機能のみに洗練されたサイクルコンピューター。ステムキャップの前に画面をポジショニングさせられるアウトフロント型ブラケットと一体となっており、シンプルかつスタイリッシュなデザインとなっている事が特徴だ。詳しいデータを求めるトレーニング用ではなく、コミューターなど気軽なライドを楽しむサイクリスト向けに仕立てられている。日本での公式発表はまだ行われていないが、SYNCシリーズと合わせて発売が期待できるだろう。
DMT:エリア・ヴィヴィアーニが使用する新型フラッグシップシューズKR1が登場
イタリアンシューズブランドDMTは新型ロードシューズKR1をローンチ。このKR1はユーロバイクでの正式発表となる前から、サポートライダーであるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)によって着用されており、イタリア国内選手権での優勝に貢献し華々しいデビューを飾っている。
キーとなるテクノロジーはアッパー全体にニット素材を採用していること。3D KnitとDMTが呼ぶこの素材は非常に柔らかく、ボアクロージャーをきつく締め上げても足全体を包み込むようにフィットしてくれる。シューズのタンもアッパーと一体となっていることに加え、足を差し込む開口部周辺もニット素材となっているため、優れた快適性を得られるはずだ。
もちろん快適性だけではない。アッパー内側にサポーターが仕込まれているため、柔らかすぎないアッパーを実現している。アウターソールに関しては、トラックで素晴らしい成績を収めているヴィヴィアーニのスプリント力を受け止める剛性を備えていることは間違いない。
新型フラッグシップモデルに加えてセカンドモデルKR2も用意される。KR2は3D Knitを要所に使うに留め、各種の素材を最適化していることが特徴。KR1に対し、アッパーのサポーターは外側に配置され、ヒールカップも大きめ、アキレス腱をホールドするクッションも厚めの設定だ。
text&photo:Gakuto Fujiwara
ローター:13速油圧コンポーネント「1×13」を発表
世界中から自転車関係ブランドが集まるなか一際存在感を放っていたブースは、スペインのコンポーネントブランドのローターだろう。既に各国のメディアが報じている通り、ユーロバイクの初日に13速ドライブトレイン「1×13(ワンバイサーティーン)」を発表した。2015年に発表したUnoに次ぐ2作目の油圧式コンポーネントだ。
なぜフロントシングル、リア13速なのか。ローターのグローバル・コミュニケーションマネージャーであるポール・マクギネス氏は「MTBの世界ではフロントシングルが当たり前となりシクロクロスも続きました。ロードでも同じような動きとなると思っているからです。レースでフロント変速を行った時に起こりうるスタックやロスを減らせるとともに、リア変速だけに集中することができます」と語る。
もちろんフロントシングル化のメリットはそれだけではない。2×11速のドライブトレインでは、フロントをアウターとインナーどちらに掛けていても同じようなギア比数値になる組み合わせがいくつか存在する。53/39&11-28というポピュラーなギア構成の場合、ギア比全部使い切ろうとすると、フロントディレイラーの操作が13回も必要となるため非常に実用的ではないのだ。
この時、1回のフロント変速でギアを効率的に活用しようとすると、有効なギアレシオが14種類となる。ローターの1×13では、フロント50&リア10-39Tのギアを採用した時、53/39&11-28の有効ギア比に似たギア比構成となる。また、フロントダブル時の有効ギア比よりも最大ギア比は大きく、最小ギア比は小さくなるように設定されている。スプリントとヒルクライムどちらにも対応できるため、ギアが足りないという自体のリスクは少ない。
元々フロントシングルがスタンダードとなり、12速化も当たり前の装備となりつつあるMTBにおいては、ギアが1枚増え、クロスレシオとなることがアドバンテージ。これまでのギア構成の場合ギアレシオが大きくなるに連れて、ギャップも大きくなっていてしまい、使い所が難しかった。クロスレシオとなることで急坂でも適切なギアで走破しやすくなるだろう。
そんなアドバンテージを持つローター「1×13」のディレイラーはロード/グラベルとMTBと兼用。Unoと比較すると大ぶりなボディとなっているが、その理由はプロテクションのため。スタビライザーが搭載されているため、オフロードでの大きなギャップを乗り越えた場合でもチェーンが暴れすぎない。
ハブはローターのリボルバーハブで、12速用のカセットスプロケットにも対応する。カセットスプロケットはアルミとスチール2種類の素材から作られる。13速ラインナップはロード用「10-36」、ロード/グラベル用「10-39」、グラベル用「10-46」、MTB用「10-46」、MTB用「10-52」という5種類。12速のラインナップは「11-36」、「11-39」、「11-46」、「11-52」という4種類だ。ポール氏によると2019年の早いうちのローンチを目指しているという。ドライブトレイン開発の1歩先へと踏み出したローターの意欲作には大きな期待を寄せたい。
100%:ペテル・サガンの特別エディションが登場
ペテル・サガンが使用しはじめたことから一気にロード派のサイクリストから注目された100%のサングラス。ユーロバイクのブースでは、現在サガンがツール・ド・フランスで着用しているリミテッドエディションの展示と試着が行われた。特別モデルのラインナップはS2、Speedcraft、Speedtrapの3種類で展開されており、数多くの来場者が足を止めて、アイウェアを試していた。
100%はアメリカのモトクロス用ゴーグルから始まったブランドであり、現在もmotoの分野で活躍している。サイクルスポーツではゴーグルを使用する下り系MTBを得意としており、ダウンヒル世界チャンピオンのロイック・ブルーニや、エンデューロのサム・ヒルなど名高い選手たちが使用している。ユーロバイクでも彼らの着用するド派手なヘルメットと合わせて展示されていた。
セッレイタリア:ツール・ド・フランスエディションの特別サドルと2019ラインアップ
創業120周年を迎えたセッレイタリアはユーロバイクで2019年モデルをローンチ。座面がフレキシブルに動く「SP-01」にBOOSTと呼ばれるノーズが短い仕様が追加された。他にも2019年モデルはE-BIKE用のサドルや、ゲルパッド量を増加させたGRAN TURISMOシリーズなども数多くリリースされており、非常に細かいラインナップとなっている。
ユーロバイクでは、既に販売が開始されているツール・ド・フランスエディションのサドルも展示。SP-01をはじめ、クラシカルな革サドルを展開するサブブランドの「セライタリア(Sella Italia)」仕様のFLITEなどが用意されており、様々な層のサイクリストがツール開催の雰囲気を味わうことができる。
また、2018年モデルの注目プロダクトとしてオフロード向けに開発されたX-LRは、サポートライダーのマテュー・ファンデルポールがシクロクロスで使用する実車と共に飾られていた。X-LRは前端部のベースとレールの間にショックアブソーバーが配置され、振動吸収性を向上させた事が特徴。パッドのクッション性が損なわれないよう、表皮をベース裏側まで引っ張るトラディショナルな方法は廃止され、ベース上部に接着するという新工法を採用していることもポイントだ。ロード、MTBでも存在感を強めているファンデルポールが使用する機材から目が離せない。
キャットアイ:前後ライトを一括操作できるSYNCシリーズと、スタイリッシュなサイコンQUICK
日本が誇るライトメーカーのキャットアイがユーロバイクで発表した新製品は「SYNC」シリーズのライトとサイクルコンピューター「QUICK」の2種類。SYNCシリーズはヘッドライトのCORE、リアライトのKINETIC、装着する場所を選ばないWEARABLEの3種類で展開し、それぞれのデバイスがスマートフォンと同期することが特徴だ。
各デバイスが"シンクロ"することのアドバンテージは、ある1つのデバイスを操作すると同期しているデバイスも自動的に同じ操作が行われること。ヘッドライト「CORE」の電源をいれると、リアライトまで一緒に点灯させてくれるのだ。モードチェンジも同様。トンネルを通過する際に前後のライトをそれぞれ点灯させる行為をワンアクションで済ませられるため、ライド中の安全性が向上するだろう。
またSYNCはスマートフォンと連携するため、各種デバイスのバッテリー管理が行える。デバイス自体にインジケーターは備えられているものの、リアライトの電池残量は確認するのは手間という側面もあった。ライド前後にパーセント表示される数値を確認することで、何時間点灯状態を維持できるのか、充電したほうが良いのかを把握しやすくなっている。
COREに関しては、使用する点灯モードをスマホで取捨選択できるようになった。ライトには複数のモードが用意されているが、実用するのはおおよそ2~3種程度だろう。使わないモードを飛ばすために何度もクリックするのは手間なので、それを省くことができるのは非常に嬉しい機能だ。販売はSYNC COREとKINETIC(ブレーキランプ機能付きリアライト)のセットパッケージ、WEARABLEは別売のオプションとなる。
QUICK(クイック)は必要最低限の機能のみに洗練されたサイクルコンピューター。ステムキャップの前に画面をポジショニングさせられるアウトフロント型ブラケットと一体となっており、シンプルかつスタイリッシュなデザインとなっている事が特徴だ。詳しいデータを求めるトレーニング用ではなく、コミューターなど気軽なライドを楽しむサイクリスト向けに仕立てられている。日本での公式発表はまだ行われていないが、SYNCシリーズと合わせて発売が期待できるだろう。
DMT:エリア・ヴィヴィアーニが使用する新型フラッグシップシューズKR1が登場
イタリアンシューズブランドDMTは新型ロードシューズKR1をローンチ。このKR1はユーロバイクでの正式発表となる前から、サポートライダーであるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)によって着用されており、イタリア国内選手権での優勝に貢献し華々しいデビューを飾っている。
キーとなるテクノロジーはアッパー全体にニット素材を採用していること。3D KnitとDMTが呼ぶこの素材は非常に柔らかく、ボアクロージャーをきつく締め上げても足全体を包み込むようにフィットしてくれる。シューズのタンもアッパーと一体となっていることに加え、足を差し込む開口部周辺もニット素材となっているため、優れた快適性を得られるはずだ。
もちろん快適性だけではない。アッパー内側にサポーターが仕込まれているため、柔らかすぎないアッパーを実現している。アウターソールに関しては、トラックで素晴らしい成績を収めているヴィヴィアーニのスプリント力を受け止める剛性を備えていることは間違いない。
新型フラッグシップモデルに加えてセカンドモデルKR2も用意される。KR2は3D Knitを要所に使うに留め、各種の素材を最適化していることが特徴。KR1に対し、アッパーのサポーターは外側に配置され、ヒールカップも大きめ、アキレス腱をホールドするクッションも厚めの設定だ。
text&photo:Gakuto Fujiwara
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