ツール・ド・フランス開幕を3日後に控えた水曜日、チームスカイがヴァンデ県でプレスイベントを開催。ツールで展開する特別なオーシャンレスキューキャンペーンのコンセプトを紹介。またクリス・フルームはサルブタモール問題から開放された今の心境を語った。
チームスカイの2018ツール・ド・フランス出場メンバー photo:Makoto.AYANO
当初予定されていたチームの宿泊ホテルから、申し込みが殺到したために近くの体育館に場所を変更しての開催となったチームスカイ主催のプレツール・カンファレンス。UCIによるサルブタモール問題の解決のアナウンスの直後とあってメディアの大きな注目を集めた。
配布されたオーシャンレスキューのボトルとキャンペーングッズ photo:Makoto.AYANO
オーシャンレスキュー仕様のボトルには個々にキャンペーンに応募できるコードが入る photo:Makoto.AYANOまずはチームスカイから、このツールで展開するオーシャンレスキュー(OceanRescue)の活動を支援するキャンペーンのコンセプトが紹介された。このキャンペーンの目的は、海に捨てられるプラスチックによる汚染を無くし、海洋生物を護ろうというもの。チームカーやバスはキャンペーンのために青く塗られた車両が登場。カンファレンスのテーブルには特製のボトルが置かれた。
ツールでチームが使うその青いボトルには個々にナンバーが振られ、それを拾った観客がキャンペーンに参加できる仕組みが採用されている。チームスカイももちろんレース中にボトルを使用するが、そのボトルを拾った観客にリサイクルを呼びかけることで、プラスチックの使い捨てに対する意識を高めてもらおうというキャンペーンだ。SNSとの連動はハッシュタグ #PassOnPlastic にて。
チームカーも水色と青色のグラデーション photo:Kei Tsuji
#passOnPlasticのハッシュタグがキャンペーンの合言葉だ photo:Makoto.AYANO
プレゼンによれば、世界の海は5兆個の棄てられたプラスチック片に汚染され、そのゴミは毎年ごとに800万トン増加しているという。2050年にはその総量が海に棲む魚よりも多くなるという試算があり、魚の体内にも取り込まれているという。ゴミのもととなるプラスチックのじつに40%は使い捨て用途のビニール袋、ペットボトル、ストロー、簡易食器などで、それらのリサイクルを進めることが汚染を拡大させないために有効で、スカイオーシャンレスキューのキャンペーンはその啓蒙のために行われる。オーシャンレスキューの活動は2020年までに使い捨てプラスチックの全廃を目指している。
ツール・ド・フランスでチームスカイが使用する特別ジャージ photo:Team Skyチームスカイはこのキャンペーンのために、胸にオーシャンレスキューのロゴ、背中にオルカ(シャチ)をあしらったデザインの白黒カラージャージを着用することになっており、そのジャージ姿は5日夜のチームプレゼンテーションでお披露目される予定だ。そしてこのジャージ自体が海洋で収集されたプラスチックをリサイクルした素材から製造されており、チームスカイは今後ツールだけでなく他のレースにおいてもその素材のジャージを着用すること、ポディウムセレモニーなどにおいてもリサイクルプラスチックで製造された別注アパレルを身につけて登壇することなども含んでいるという。
チームスカイがレース中にそれらのアパレルを着用する姿が放送されることによるキャンペーン効果は非常に大きなものになる。デイブ・ブレイルスフォードGMは「デザインのアイデアはレースの空撮においてプロトンの中をスカイのオルカたちが泳ぐように見えることを意識していて、その様子を想像するのはとても興奮する」と話す。
オーシャンレスキューのコンセプト紹介に続き、記者たちとの質疑応答に入ると、当然ながらサルブタモール問題についての質問が飛ぶ。UCIによるお咎め無しとの発表が2日前にあったばかり。好意的な質問ばかりではなく、むしろこの問題について改めて意見する質問が多く出た。
大勢の報道陣が集まったチームスカイの記者会見 photo:Kei Tsuji
インタビューに応えるクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto.AYANO
フルーム:自分にとっても家族にとっても、チームメイトたちにとっても9ヶ月間という試練の時間だったが、事実は確定された。もう我々は前に進める。すべてが受け入れられた。人々はなぜ自分が走り続けているのかを理解してくれるだろう。困難だったが、自分が何も悪いことをしていないことは知っていた。肩の荷が下りてホッとしている。
質問に応えるデイヴ・ブレイルスフォードGM(チームスカイ) photo:Makoto.AYANO
マイクを握るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ブレイルスフォードGM:とても受け入れ難かった。最悪の悪夢のようだった。しかしそれは尊厳にかけて乗り越えなければいけない問題だったし、むしろクリスは最初から自信に満ちていた。彼はこの結果になることを疑っていなかったから。そしてこの裁定を下したのはWADAとUCIで、我々ではない。審査の段階のことが(リークされて)公にされたのは本当に残念だ。しかし結審した以上、もうこの問題は過去のものだ。彼がこの問題に真摯に対峙したことは信頼に値することだ。我々はもう2日前とは同じ状況ではない。
―問題のデータや審査結果を一般に公開するつもりがあるのか?という問いに対して
それらのうちのいくつかはこの2日間で公開されている。一枚の紙に書かれたデータのようなものではなく、今回の結審もいろいろなデータをもとに判断されたものだ。そのどれもがとてもテクニカルなデータで、簡単に理解できるようなものでない。一般の人々がそれを科学的に理解するのは少し時間がかかるだろう。
体育館で行われたチームスカイの記者会見 photo:Kei Tsuji
エースの言葉に耳を傾けるジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
―ジロ・デ・イタリアではアンチ姿勢のファンからブーイングを受けたこと、フランスの観衆が受け入れてくれると思うか?という質問に対して
フルーム:ジロのときは状況はまだ結審していなかった。状況は良くなると思う。僕自身が人々に対して、とくに自分やチームを嫌いな人たちに対して、アドバイスをすることは難しいことだ。レースになれば自分の応援する選手やチームに対して声援を送るもの。ネガティブに考えないでほしい。僕はフランスを愛している。ツール・ド・フランスは世界最大のレースだ。
ブレイルスフォードGM:我々は信じている。チームは今までも長くフランスで過ごしてきた。フランスの人々がフェアなことも良く知っている。観衆も今はクリスが何も悪いことをしていなかったことを知っている。もちろん今、我々が話しているのは罪のない人たちのことだ。それは他の理由でだが、我々はプレッシャーを受けることには慣れっこだ。それでも我々はレースに集中することについて学ばなければならないだろう。周囲のごたごたに気をそらされないようにしなくてはいけない。
各国テレビ局のインタビューを受けるクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
―質問はレース自体にのことにについて及ぶ。
フルーム:最初の一週間はまさにエクスプローシブ(爆発的)だ。クラシックレースのようだろう。第2週は山岳で、アルプス、ピレネーが待っている。毎日すべてがチャレンジだ。このツールは僕のキャリアでもっともタフなチャレンジになるだろう。4連続グランツール制覇への挑戦は、自分にとっても未知の領域に入っていくことになる。しかしこのように強くバランスが取れたチームで闘えることは自分の特権だと感じる。
ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ブレイルスフォードGM:今までのところ、とくにクリスがジロに勝ったことで我々にとって素晴らしいシーズンになっている。このツールでは、最初の休息日(第8ステージのルーベステージ後)に到達した際に、まず状況が明らかになるだろう。石畳や、とくに雨が降ったとき、レースは過酷になり、大きな差がつくだろう。チームスカイは経験が豊富で、その結束力は特別なものだ。初出場のエガン(ベルナル)は若く、彼にとって初めてのツール。しかし彼は才能に満ちている。
text: Makoto.AYANO
photo: Makoto.AYANO, Kei Tsuji in La Roche-sur-Yon, France

当初予定されていたチームの宿泊ホテルから、申し込みが殺到したために近くの体育館に場所を変更しての開催となったチームスカイ主催のプレツール・カンファレンス。UCIによるサルブタモール問題の解決のアナウンスの直後とあってメディアの大きな注目を集めた。


ツールでチームが使うその青いボトルには個々にナンバーが振られ、それを拾った観客がキャンペーンに参加できる仕組みが採用されている。チームスカイももちろんレース中にボトルを使用するが、そのボトルを拾った観客にリサイクルを呼びかけることで、プラスチックの使い捨てに対する意識を高めてもらおうというキャンペーンだ。SNSとの連動はハッシュタグ #PassOnPlastic にて。


プレゼンによれば、世界の海は5兆個の棄てられたプラスチック片に汚染され、そのゴミは毎年ごとに800万トン増加しているという。2050年にはその総量が海に棲む魚よりも多くなるという試算があり、魚の体内にも取り込まれているという。ゴミのもととなるプラスチックのじつに40%は使い捨て用途のビニール袋、ペットボトル、ストロー、簡易食器などで、それらのリサイクルを進めることが汚染を拡大させないために有効で、スカイオーシャンレスキューのキャンペーンはその啓蒙のために行われる。オーシャンレスキューの活動は2020年までに使い捨てプラスチックの全廃を目指している。

チームスカイがレース中にそれらのアパレルを着用する姿が放送されることによるキャンペーン効果は非常に大きなものになる。デイブ・ブレイルスフォードGMは「デザインのアイデアはレースの空撮においてプロトンの中をスカイのオルカたちが泳ぐように見えることを意識していて、その様子を想像するのはとても興奮する」と話す。
オーシャンレスキューのコンセプト紹介に続き、記者たちとの質疑応答に入ると、当然ながらサルブタモール問題についての質問が飛ぶ。UCIによるお咎め無しとの発表が2日前にあったばかり。好意的な質問ばかりではなく、むしろこの問題について改めて意見する質問が多く出た。


フルーム:自分にとっても家族にとっても、チームメイトたちにとっても9ヶ月間という試練の時間だったが、事実は確定された。もう我々は前に進める。すべてが受け入れられた。人々はなぜ自分が走り続けているのかを理解してくれるだろう。困難だったが、自分が何も悪いことをしていないことは知っていた。肩の荷が下りてホッとしている。


ブレイルスフォードGM:とても受け入れ難かった。最悪の悪夢のようだった。しかしそれは尊厳にかけて乗り越えなければいけない問題だったし、むしろクリスは最初から自信に満ちていた。彼はこの結果になることを疑っていなかったから。そしてこの裁定を下したのはWADAとUCIで、我々ではない。審査の段階のことが(リークされて)公にされたのは本当に残念だ。しかし結審した以上、もうこの問題は過去のものだ。彼がこの問題に真摯に対峙したことは信頼に値することだ。我々はもう2日前とは同じ状況ではない。
―問題のデータや審査結果を一般に公開するつもりがあるのか?という問いに対して
それらのうちのいくつかはこの2日間で公開されている。一枚の紙に書かれたデータのようなものではなく、今回の結審もいろいろなデータをもとに判断されたものだ。そのどれもがとてもテクニカルなデータで、簡単に理解できるようなものでない。一般の人々がそれを科学的に理解するのは少し時間がかかるだろう。


―ジロ・デ・イタリアではアンチ姿勢のファンからブーイングを受けたこと、フランスの観衆が受け入れてくれると思うか?という質問に対して
フルーム:ジロのときは状況はまだ結審していなかった。状況は良くなると思う。僕自身が人々に対して、とくに自分やチームを嫌いな人たちに対して、アドバイスをすることは難しいことだ。レースになれば自分の応援する選手やチームに対して声援を送るもの。ネガティブに考えないでほしい。僕はフランスを愛している。ツール・ド・フランスは世界最大のレースだ。
ブレイルスフォードGM:我々は信じている。チームは今までも長くフランスで過ごしてきた。フランスの人々がフェアなことも良く知っている。観衆も今はクリスが何も悪いことをしていなかったことを知っている。もちろん今、我々が話しているのは罪のない人たちのことだ。それは他の理由でだが、我々はプレッシャーを受けることには慣れっこだ。それでも我々はレースに集中することについて学ばなければならないだろう。周囲のごたごたに気をそらされないようにしなくてはいけない。


―質問はレース自体にのことにについて及ぶ。
フルーム:最初の一週間はまさにエクスプローシブ(爆発的)だ。クラシックレースのようだろう。第2週は山岳で、アルプス、ピレネーが待っている。毎日すべてがチャレンジだ。このツールは僕のキャリアでもっともタフなチャレンジになるだろう。4連続グランツール制覇への挑戦は、自分にとっても未知の領域に入っていくことになる。しかしこのように強くバランスが取れたチームで闘えることは自分の特権だと感じる。


ブレイルスフォードGM:今までのところ、とくにクリスがジロに勝ったことで我々にとって素晴らしいシーズンになっている。このツールでは、最初の休息日(第8ステージのルーベステージ後)に到達した際に、まず状況が明らかになるだろう。石畳や、とくに雨が降ったとき、レースは過酷になり、大きな差がつくだろう。チームスカイは経験が豊富で、その結束力は特別なものだ。初出場のエガン(ベルナル)は若く、彼にとって初めてのツール。しかし彼は才能に満ちている。
text: Makoto.AYANO
photo: Makoto.AYANO, Kei Tsuji in La Roche-sur-Yon, France
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