2018/07/03(火) - 13:00
衝撃的なフォルムで世を驚かせ、エアロロードの新時代を切り開いたVenge Viasから3年。遂に新型Vengeが「新しい世界最速のバイク」というキャッチコピーを引っ提げてデビューを飾る。本国から開発スタッフを招き、日本で行われたアジアグローバルプレゼンテーションの模様を通し詳細をお伝えする。
クリテリウム・デュ・ドーフィネにてボーラ・ハンスグローエとクイックステップフロアーズが使用した新型Vengeのメディア発表会が行われたのは、神奈川県の湘南国際村。タイやフィリピン、マレーシア、シンガポール、ベトナムといった東南アジアのメディアや関係者も集結したアジアグローバルイベントとして開催され、ツアー・オブ・ジャパンで総合10位とプロレーサーの顔をも持つ本社ロード製品マネージャー、キャメロン・パイパーの手によって新型Vengeが姿を表した。
ハンドリングと空力の両立を目指した初代と、本社内に作られた風洞実験施設「Win-Tunnel」を使用してTTバイクのShiv同等の空力性能を獲得した第2世代(Venge Vias)に続いてデビューした第3代。「エアロダイナミクスをさらに高めること」「軽量化」「ハンドリング性能の維持」という3点、つまりロードバイクとしてのバランスの追求をターゲットにして開発が進められ、SL5のS-Works Tarmac DISCよりも軽く、Venge Viasよりも速いという意欲作に仕上げられている。
「全く新しいエアロバイクを作るためには、全く新しいアプローチが必要だった」とプレゼンテーションで語られたVenge。具体的にはフレームの最適形状を導き出せるソフトウェア開発から着手し、そこから「FreeFoil Shape Library」と名付けられたチューブシェイプが誕生。これを元に、例えばフロントフォークやヘッドチューブ、ハンドル周りといったフロント部分は空力性能を高め、逆にダウンチューブなどあまり空力に寄与しない部分は剛性や軽量性を突き詰めるというメリハリのある設計によってトータルバランスを高めた。Venge Viasからの空力向上は40kmを走行した際にマイナス8秒だ。
この部分こそがフレーム全てで空力を第一に捉えたVenge Viasとは異なるアプローチであり、フレーム重量はVenge Vias(1200g)から一気に240gも軽量化して960g*に。R9170系デュラエースDi2とCLX64ホイールを装備した完成車では7.1kgと、並み居るディスクエアロロードバイクの中で最軽量と言える数値を叩き出している。
*56サイズのサテンブラックカラー、RDハンガーやボトルケージ用ボルト、シートポストクランプ、BBベアリング、ヘッドセット抜き
Tarmac SL5で初めて導入されたライダーファースト・エンジニアリングも当然導入され、全てのフレームサイズで等しいハンドリングを実現している。ジオメトリーはスペシャライズドのフィッティングシステム「リチュール」で得た4万通りのデータを元に開発され、Tarmac SL6よりもスタックが10mm低く、リーチが3mm遠い。しかしながら専用ヘッドセットコーンの高さの関係上、実際のスタックハイトは2mm低い程度に抑えられている。フレームサイズは49、52、54、56、58、61という6サイズ展開だ。
クイックステップフロアーズやボーラ・ハンスグローエといったプロチームには様々なカーボンレイアップを試したプロトタイプが送られ、数々のテストが繰り返されてきた。プレゼンテーションではトップスプリンターの1人、フェルナンド・ガビリア(コロンビア)が1月のテスト時点で「このバイクはパーフェクト。いつからレースで使える?」と語った逸話も。
空力に直結するハンドルとステムも当然新型が投入され、より直線的なシェイプによって大幅に空気抵抗低減を叶えている。Venge Viasの専用コックピットは空力を追求したことで剛性と重量面でのデメリットを抱えていたものの、新型は剛性ベンチマークであるジップのSL SprintステムとヴィジョンのMetron 5Dを上回る強度と軽さが与えられているという。上ハンドル上部にはフィット感を高める加工が施されている上、ハンドルとバーテープの境がツライチになるよう予め段差が設けられている。
利便性のためにVenge Viasからステム/ハンドル別体式を引き継いでいるが、シフトケーブルやブレーキホースはステムの内側ではなく下側を沿わせ、ステアリングコラム前側に用意された穴からヘッドチューブ内側に入るルーティングを採用している。これによってステム長とステム高さ±10mmの範囲であれば、ケーブル類を分解することなく調整が可能となった。従来は専用トップキャップを使用する関係上、ステムを下げた場合にコラムカットを行う必要があったが、新型では通常の1-1/8インチ用スペーサーを上乗せすることで対処可能であり、更にトップキャップの変更で社外ステム/ハンドルも使用可能という、今日のエアロロードとしては一歩進んだ利便性を確保した。
ステムは6度(80、90、100、110、120、130、140mm)と12度(110、120、130、140mm)の合計11種類、ハンドル幅は380、400、420、440mmという4種類が用意され、シートポストは0mmと20mmと2つのオフセット量が選べる他、サドルハイトに合わせてそれぞれ300mmと390mmがラインアップされる。専用ステムにクリップオンで取り付けられる専用TTバーハンドルも忘れてはならない存在だ。
シンプルなセットアップを追求するために、新型Vengeは電動コンポーネント(シマノDi2、スラムeTap、カンパニョーロEPS)のみに対応し、機械式コンポーネントの搭載は不可。併走するチームカーから身を乗り出して調整を行うプロレースメカの利便性を踏まえ、Di2のジャンクションAはシートポスト上部に収納されている。
また、石畳クラシックでも使用することを踏まえ、内幅21mmのロヴァールリムにRoubaix30/32mmタイヤを装備した状態(最大幅34mm)でも1.5mm以上という圧倒的なクリアランスを確保した他、プロトタイプが目撃されていたダイレクトマウントタイプのRDハンガーも用意されるなど、細部に至るまでプロスペックが貫かれている。
完成版の新型Vengeは既にプロレースに実戦投入済みであり、世界王者のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が3勝、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)は4勝など、正式デビュー前から最速バイクとしての片鱗を見せつけている。今週末から開幕するツール・ド・フランスにおいても勝利数を重ねることは間違いなさそうだ。
スペシャライズド S-Works Venge国内販売スペック
フレームサイズ:49、52、54、56
カラー:2種類
税込価格:1,296,000円(シマノR9170系デュラエースDi2+ロヴァールCLX64完成車)
540,000円(フレームセット)
S-Works AeroflyⅡハンドルバー
サイズ:38cm、40cm、42cm、44cm
税抜価格:32,000円
S-Works Vengeステム
サイズ:80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm
税抜価格:16,000円
text:So.Isobe
クリテリウム・デュ・ドーフィネにてボーラ・ハンスグローエとクイックステップフロアーズが使用した新型Vengeのメディア発表会が行われたのは、神奈川県の湘南国際村。タイやフィリピン、マレーシア、シンガポール、ベトナムといった東南アジアのメディアや関係者も集結したアジアグローバルイベントとして開催され、ツアー・オブ・ジャパンで総合10位とプロレーサーの顔をも持つ本社ロード製品マネージャー、キャメロン・パイパーの手によって新型Vengeが姿を表した。
ハンドリングと空力の両立を目指した初代と、本社内に作られた風洞実験施設「Win-Tunnel」を使用してTTバイクのShiv同等の空力性能を獲得した第2世代(Venge Vias)に続いてデビューした第3代。「エアロダイナミクスをさらに高めること」「軽量化」「ハンドリング性能の維持」という3点、つまりロードバイクとしてのバランスの追求をターゲットにして開発が進められ、SL5のS-Works Tarmac DISCよりも軽く、Venge Viasよりも速いという意欲作に仕上げられている。
「全く新しいエアロバイクを作るためには、全く新しいアプローチが必要だった」とプレゼンテーションで語られたVenge。具体的にはフレームの最適形状を導き出せるソフトウェア開発から着手し、そこから「FreeFoil Shape Library」と名付けられたチューブシェイプが誕生。これを元に、例えばフロントフォークやヘッドチューブ、ハンドル周りといったフロント部分は空力性能を高め、逆にダウンチューブなどあまり空力に寄与しない部分は剛性や軽量性を突き詰めるというメリハリのある設計によってトータルバランスを高めた。Venge Viasからの空力向上は40kmを走行した際にマイナス8秒だ。
この部分こそがフレーム全てで空力を第一に捉えたVenge Viasとは異なるアプローチであり、フレーム重量はVenge Vias(1200g)から一気に240gも軽量化して960g*に。R9170系デュラエースDi2とCLX64ホイールを装備した完成車では7.1kgと、並み居るディスクエアロロードバイクの中で最軽量と言える数値を叩き出している。
*56サイズのサテンブラックカラー、RDハンガーやボトルケージ用ボルト、シートポストクランプ、BBベアリング、ヘッドセット抜き
Tarmac SL5で初めて導入されたライダーファースト・エンジニアリングも当然導入され、全てのフレームサイズで等しいハンドリングを実現している。ジオメトリーはスペシャライズドのフィッティングシステム「リチュール」で得た4万通りのデータを元に開発され、Tarmac SL6よりもスタックが10mm低く、リーチが3mm遠い。しかしながら専用ヘッドセットコーンの高さの関係上、実際のスタックハイトは2mm低い程度に抑えられている。フレームサイズは49、52、54、56、58、61という6サイズ展開だ。
クイックステップフロアーズやボーラ・ハンスグローエといったプロチームには様々なカーボンレイアップを試したプロトタイプが送られ、数々のテストが繰り返されてきた。プレゼンテーションではトップスプリンターの1人、フェルナンド・ガビリア(コロンビア)が1月のテスト時点で「このバイクはパーフェクト。いつからレースで使える?」と語った逸話も。
空力に直結するハンドルとステムも当然新型が投入され、より直線的なシェイプによって大幅に空気抵抗低減を叶えている。Venge Viasの専用コックピットは空力を追求したことで剛性と重量面でのデメリットを抱えていたものの、新型は剛性ベンチマークであるジップのSL SprintステムとヴィジョンのMetron 5Dを上回る強度と軽さが与えられているという。上ハンドル上部にはフィット感を高める加工が施されている上、ハンドルとバーテープの境がツライチになるよう予め段差が設けられている。
利便性のためにVenge Viasからステム/ハンドル別体式を引き継いでいるが、シフトケーブルやブレーキホースはステムの内側ではなく下側を沿わせ、ステアリングコラム前側に用意された穴からヘッドチューブ内側に入るルーティングを採用している。これによってステム長とステム高さ±10mmの範囲であれば、ケーブル類を分解することなく調整が可能となった。従来は専用トップキャップを使用する関係上、ステムを下げた場合にコラムカットを行う必要があったが、新型では通常の1-1/8インチ用スペーサーを上乗せすることで対処可能であり、更にトップキャップの変更で社外ステム/ハンドルも使用可能という、今日のエアロロードとしては一歩進んだ利便性を確保した。
ステムは6度(80、90、100、110、120、130、140mm)と12度(110、120、130、140mm)の合計11種類、ハンドル幅は380、400、420、440mmという4種類が用意され、シートポストは0mmと20mmと2つのオフセット量が選べる他、サドルハイトに合わせてそれぞれ300mmと390mmがラインアップされる。専用ステムにクリップオンで取り付けられる専用TTバーハンドルも忘れてはならない存在だ。
シンプルなセットアップを追求するために、新型Vengeは電動コンポーネント(シマノDi2、スラムeTap、カンパニョーロEPS)のみに対応し、機械式コンポーネントの搭載は不可。併走するチームカーから身を乗り出して調整を行うプロレースメカの利便性を踏まえ、Di2のジャンクションAはシートポスト上部に収納されている。
また、石畳クラシックでも使用することを踏まえ、内幅21mmのロヴァールリムにRoubaix30/32mmタイヤを装備した状態(最大幅34mm)でも1.5mm以上という圧倒的なクリアランスを確保した他、プロトタイプが目撃されていたダイレクトマウントタイプのRDハンガーも用意されるなど、細部に至るまでプロスペックが貫かれている。
完成版の新型Vengeは既にプロレースに実戦投入済みであり、世界王者のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が3勝、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)は4勝など、正式デビュー前から最速バイクとしての片鱗を見せつけている。今週末から開幕するツール・ド・フランスにおいても勝利数を重ねることは間違いなさそうだ。
スペシャライズド S-Works Venge国内販売スペック
フレームサイズ:49、52、54、56
カラー:2種類
税込価格:1,296,000円(シマノR9170系デュラエースDi2+ロヴァールCLX64完成車)
540,000円(フレームセット)
S-Works AeroflyⅡハンドルバー
サイズ:38cm、40cm、42cm、44cm
税抜価格:32,000円
S-Works Vengeステム
サイズ:80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm
税抜価格:16,000円
text:So.Isobe
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