待望の12速化　多彩なレースカテゴリーへ対応する7世代目のXTR

シマノのMTBコンポーネントのトップモデルに君臨するXTRがモデルチェンジ。M9100シリーズとして、7代目のXTRが発表された。ついに12速化を果たし、更なるワイドレシオを手に入れたレーシングコンポーネントとなる。

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シマノ XTR M9100 1×12 XC (c)シマノ
刻々と移り行く、MTBレースの機材トレンド。XCレースの現場ではシンプルで軽量なフロントシングルが主流となり、その分リア変速にはワイドなギアレンジが求められるようになってきた。その声にこたえるため、M9100シリーズはシマノ製品として初の12速対応コンポーネントとして送り出されることに。

一方で、軽さを追求した11速仕様もラインアップされる。さらにフロントシングルとダブルも選ぶことができ、レースコースやカテゴリーによって最適な仕様をチョイスすることが出来るコンポーネントとなっている。

今回のM9100シリーズは、XCO仕様の1×12速、エンデューロレースを視野に入れた1×11速と1×12速、XCマラソンに最適な2×12速をそれぞれラインアップ。それでは各パーツの詳細を紹介していこう。

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ダイレクトマウントを採用したクランクセット　FC-M9100シリーズ

シマノ FC-M9100-1（36T） (c)シマノシマノ FC-M9120-1（36T） (c)シマノ

シマノ FC-M9100-2（38-28T） (c)シマノシマノ FC-M9120-B2（38-28T） (c)シマノ


M9100シリーズで、クランク/チェーンリングにシマノ初となるダイレクトマウント方式を採用。シングルとダブルの両方が用意される。シングルのFC-M9100-1とFC-M9120-1はリア11速と12速の両方に対応。用意される歯数は30Tから2T刻みで、38Tまでの5種類が用意される。重量は511g。

ダブルモデルのFC-M9100-2/FC-M9120-B2は38-28Tの組み合わせとなる。こちらもダイレクトマウント方式を採用し、より精悍なルックスに。重量は592g。シングル/ダブル共に165mm/170mm/175mmのクランク長が用意される。9120のモデルナンバーがついているのはブースト規格用のクランクだ。

新たにHYPERGRIDE＋テクノロジーを採用し、チェーンのプレートとチェーンリングの歯先形状を見直すことで、チェーン保持力も大幅にアップしている。フロントシングルでもチェーン落ちの心配をせずに、走りにより集中できるコンポーネントとなった。新しくなったチェーン、SM-CN-910-12-は、12速対応デザインとなるほか、クイックリンクのみの対応。

より速くより滑らかな変速を可能にする新型スプロケット　最大51Tを擁するCS-M9100

シマノ CS-M9100-12（10-51T） (c)シマノシマノ CS-M9100-12（10-51T） (c)シマノ


チェーンリング同様、M9100シリーズで採用されたHYPERGRIDE＋テクノロジーのコアとなるのがこの新型スプロケットだ。変速にかかる時間を約1/3にまで短縮し、変速時の衝撃も抑制することで、よりロスが少なくスムーズなライドを可能にしてくれる。

12速用のCS-M9100-12には10-45Tと10-51Tが、11速用のCS-M9110-11には10-45Tが用意される。アルミ製のスパイダーアームに、トップ側4枚がスチール歯、続いて5枚がチタン歯、ロー側3枚がアルミ歯という組み合わせになっており、軽さと耐久性、変速性能を追求したスプロケットとなる。

勘合するフリーボディも新しくなっており、ショート化することで10Tというトップギアを実現するマイクロスプラインフリーを採用した。その名の通り、スプラインを細かくすることでアルミ製フリーながらスプロケットが噛み込むことを防止する設計となっている。

新たなフリーボディを採用　ストレートプル仕様も用意されるハブ　HB-M9110&FH-M9110

シマノ HB-M9110-B (c)シマノシマノ FH-M9110-B (c)シマノ


先述した新型フリーボディ、マイクロスプラインフリーを採用するハブも発表されている。フリーの形状だけでなく、中身も大幅に進化している。面接触のラチェットを採用することで、よりダイレクトで捻じれに強くなったSCYLENCEフリーとなった。

空走中には、ラチェットが完全に離れるためラチェット音もせず、抵抗も少ないというメリットも。7.6度ごとにラチェットがかみ合うため、コーナーからの加速などでより機敏な反応を見せてくれるはずだ。そんな新型フリーを採用するハブはノーマル仕様とブースト仕様、ノーマルスポーク仕様とストレートプルスポーク仕様が用意される。ストレートプルスポークモデルはブースト/28H仕様のみ。

シマノ FH-M9110-BS (c)シマノ
さらに、11速専用モデルとして、FH-M9125-Bというモデルも用意される。こちらは11速フリーの寸法を極限まで煮詰めたワイドフランジハブとなっており、12速対応のモデルよりもドライブサイドのフランジを4.7mm外側へと配置している。スポークテンションの左右差が少なくなり、より剛性感の高いホイールをくみ上げることが出来る玄人好みの1本だ。

新ケージデザインを採用し安定感を増したリアディレイラー　RD-M9100

シマノ RD-M9100（SGS） (c)シマノ
10-51Tというワイドなギアレシオに対応するべく新たに開発されたリアディレイラーは、プーリーを大径化。トータルキャパシティを稼ぐとともに、チェーンの抵抗減を狙った変更だろう。プーリーケージのデザインも変更されており、表と裏でアシンメトリーなデザインとなった。

シャドーRD+やプレートテンション軸とガイドプーリーのオフセットなどは前作から受け継ぎつつも、より精悍なデザインに。10-45Tのみに対応するRD-M9100-GSは11/12速兼用、ロングケージのRD-M9100-SGSは12速専用で10-51Tにまで対応する。さらにフロントダブル用としてRD-M9120-GSが用意される。

3種類のマウントが用意されたフロントディレイラーとチェーンデバイス　FD-M9100/SM-CD800

シマノ FD-M9100-E (c)シマノ
前作で登場したサイドスイング機構を採用するフロントディレイラーは、3つのマウントタイプが用意され、様々なフレームへと対応する。用意されるのは、ダイレクトマウント、Eマウント、ミッドクランプの3つの仕様だ。

加えて、フロントシングル用のチェーンデバイスも用意される。SM-CD800と名付けられ、30～38Tまでのチェーンリングに対応。こちらもダイレクトマウント、Eマウント、ISCG05規格の3つのマウント方式に対応している。

より速い変速を可能にするシフトレバー　SL-M9100　ドロッパーポストコントロールレバーも登場

シマノ SL-M9100-R（右レバー/リア用） (c)シマノシマノ SL-M9100-I（左レバー/フロント用） (c)シマノ


更にライトアクションを追求したのがこのシフトレバーだ。前作から速度で20%、操作に必要な入力が35%軽くなっている。バンド式のSL-M9100とI-SPEC EVに対応するSL-M9100-Iが用意される。リアシフターはツーウェイ / マルチリリースを採用する一方、フロントシフターは新たに採用されたモノレバー機構を採用する。

インデックスのダブルレバーを応用したような構造で、手前にレバーがあるときにインナーへ、奥にレバーを押し込めばアウターへと変速する機構だ。こちらにもツーウェイリリースは採用されており、テンション解除時（シフトダウン時）にはレバーのプッシュ/プルどちらの操作でもシフトダウンが可能となっている。

また、ドロッパーポストコントロールレバーSL-MT800-ILもお披露目された。I-SPEC EVに対応し、混みあうハンドル周りをすっきりとまとめることが出来るのは大きなメリットとなるはずだ。ワイヤーストローク量は7mm用意されており、市販の多くのドロッパーポストに対応する。

XCとエンデューロ用に作り分けられるブレーキ　BR-M9100/BR-M9120

シマノ BR-M9100 (c)シマノシマノ BR-M9120 (c)シマノ


M9100シリーズでもブレーキは2種類が用意される。より軽く、コントローラブルなフィーリングを好むXCライダー向けのBR-M9100と、それよりも激しい下りでストッピングパワーに重きを置くエンデューロ系のBR-M9120だ。

BR-M9100は対向2ピストンでワンピースアルミボディを採用。前作よりもさらに26gの軽量化を果たすと同時にボディ剛性を10%向上させ、更なるコントロール性能を手にした。一方、BR-M9120は、XTR史上初の対向4ピストンモデルとしてデビュー。過酷なダウンヒルでも余裕あるストッピングパワーを獲得した。

シマノ BL-M9120-R (c)シマノシマノ BL-M9100-L (c)シマノ


組み合わせられるブレーキレバーもそれぞれ異なる仕様に。XCモデルのBL-M9100はカーボンレバーとマグネシウムシリンダーを採用し、軽さを追求する一方、エンデューロモデルのBL-M9120は、アルミレバーとアルミニウムシリンダーを採用し、剛性を第一とした。更にエンデューロモデルではサーボウェーブ機構が搭載され、より強い制動力を少ない入力で得ることが出来る。

よりダイレクトで泥つまりに強いデザインへ　PD-M9100/PD-M9120

シマノ PD-M9100 (c)シマノシマノ PD-M9120 (c)シマノ


更に設計が煮詰められたペダルも2種類が用意される。XC用のPD-M9100は、踏み面をさらに拡大。ダイレクトなペダリングフィールを提供してくれる。前作より各部分のエッジをそぎ落とし、丸みを帯びたデザインによって、泥詰まりにも強くなっている。XCモデルとして、ペダルアクスルを55mmのノーマルモデルと52mmのショートモデルを用意する。ブースト規格によって、広がる一方のQファクターを少しでも縮めてくれるのは一部のライダーにとって福音となるだろう。

ケージが備えられたトレイル向けのPD-M9120も踏み面を最適化。ペダルの後半部分がシューズと接触するように新たに設計しなおされ、安定感のあるライディングを楽しめるように進化した。