3月3日(土)、イタリア中部のトスカーナ州でストラーデビアンケ(UCIワールドツアー)が開催される。未舗装路に雪が積もり、さらに雨が降る今年は大荒れの予感。前年度覇者クウィアトコウスキーがサガンやヴァンアーヴェルマートを迎え撃つ。初山翔と與那嶺恵理、萩原麻由子も出場予定だ。


残雪&降雨の予報が出ている未舗装レース

未舗装区間を走るメイン集団未舗装区間を走るメイン集団 photo:TDWsport / Kei Tsuji
ストラーデビアンケ2018コースマップストラーデビアンケ2018コースマップ photo:RCS Sport2007年に初開催され、2017年にUCIワールドツアー入りを果たしたストラーデビアンケ。レース名がイタリア語で「白い道」を意味する通り、トスカーナ州シエナの近郊に広がる丘陵地帯の未舗装路を走るクラシックレースだ。ティレーノ〜アドリアティコ直前に開催されることもあり、例年多くのトップ選手が出場する。

コースはシエナを発着する184kmで、その中には11ヶ所・合計63kmの未舗装区間(セクター:イタリア語でセットーレ)が設定されている。つまりコース全体の34.2%が未舗装路であり、しかも急勾配のアップダウンがレース終盤に詰め込まれている。

2017年と比べて序盤の未舗装2区間の走行方向と進入方法が変更されたが、残り9区間のレイアウトはそのまま。石畳レースとして知られるパリ〜ルーベのように平坦基調ではなく、獲得標高差は3,000mを超える。最後は丘の上に位置するシエナ旧市街に続く急勾配(最大16%)の石畳坂を駆け上がり、同市内のカンポ広場にフィニッシュする。

日本で未舗装路と言えば石が浮いた走りにくいジープロードを想像しがちだが、ストラーデビアンケに登場する未舗装路の多くは普段から生活道路として使用されているため、滑らかに整地されている。それでも落車やパンクが続出するのがこのレースの特徴であり、いかにトラブルなく走りきるかが勝利の鍵だ。

前週からヨーロッパ全域を覆う寒波によってイタリア中部にも例外なく雪が降り積もり、今週の半ばには未舗装路が一面雪に覆われた。ここ数日は最高気温が9度まで上がっているため雪は融ける方向にあるが、部分的にコースには雪が残るだろう。天気予報によると週末まで悪天候続きで、土曜日も朝からしっかり雨予報。同地域を走った2010年ジロ・デ・イタリア第7ステージのように、ストラーデビアンケ(白い道)ではなくストラーデマローニ(薄茶色の道)になるかもしれない。

ストラーデビアンケ2018高低図ストラーデビアンケ2018高低図 photo:RCS Sportラスト3km高低図ラスト3km高低図 photo:RCS Sport

2010年ジロ・デ・イタリア 雨が降れば未舗装区間は泥に覆われる2010年ジロ・デ・イタリア 雨が降れば未舗装区間は泥に覆われる photo:Kei Tsuji2010年ジロ・デ・イタリア 泥に覆われた未舗装区間2010年ジロ・デ・イタリア 泥に覆われた未舗装区間 photo:Kei Tsuji



世界屈指のクラシックレーサー集結 サガンやクウィアト、GVA、バルベルデに注目

2017年に自身2度目のストラーデビアンケ制覇を果たしたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は登坂勝負でもスプリント勝負でも勝てる選手。今年勝つことができればファビアン・カンチェラーラ(スイス)がもつ最多3勝の記録に並ぶ。チームスカイのチオーニ監督は「クウィアトとジャンニは優勝候補であり、バックアップ体制も整っている。雨が降ればますます運も必要になる。エキサイティングなレースになることは間違いない」と語っている。チームメイトのジャンニ・モスコン(イタリア)もダークホースとして要注意人物だ。

最後の難所をクリアするミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)最後の難所をクリアするミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:TDWsport / Kei Tsuji
クウィアトコウスキーの他に優勝経験があるのは2015年のゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)と2013年のモレーノ・モゼール(イタリア、アスタナ)、そして2011年のフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)。前週のベルギーセミクラシックでチーム力を見せつけたクイックステップフロアーズは強力な布陣を敷いており、スプリンターのフェルナンド・ガビリア(コロンビア)もスタートラインに並ぶ。

スペインでの高地トレーニングを終えたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も出場。2013年から2年連続2位に入っている世界チャンピオンは毎年優勝候補に挙げられながらもまだ勝利はない。ダニエル・オス(イタリア)との強力タッグはライバルたちの脅威になるだろう。

ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsportフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos

今シーズン2勝を飾っているグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)や、アブダビツアーで総合優勝を飾ったばかりのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)もまだこのストラーデビアンケで優勝経験がない。両者ともに本格的なクラシックシーズンに向けて調子を上げており、優勝争いに絡んでくると思われる。

グランツールで総合優勝争いに絡むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)といったトップレーサーも顔をそろえる。登りでハードな展開に持ち込むことができれば、グランツールレーサーにも十分に優勝のチャンスがある。

他にもディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らも有力候補の一角。元スキージャンパーのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)や、シクロクロス世界チャンピオンのワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン)の走りにも注目したい。

初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ)は2017年のジャパンカップで二冠を達成したマルコ・カノーラ(イタリア)や新加入フアンホセ・ロバト(スペイン)のアシストとして初出場。ワイルドカード枠で出場するUCIプロコンチネンタルチームはNIPPOヴィーニファンティーニとアンドローニジョカトリ、そしてヴァンアールト擁するベランダスヴィレムス・クレランの3チームだ。

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:A.S.O.アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsportワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン)ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン) photo:so.Isobe

同日開催の女子レースは2018年UCIウィメンズ・ワールドツアーの開幕戦にあたる。コースは男子レースに登場する3つの長い未舗装区間をカットした136km。短縮バージョンとは言え、終盤の急勾配未舗装区間やフィニッシュ手前のシエナ石畳坂は共通している。

全日本チャンピオンの與那嶺恵理は前年度覇者エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)のチームメイトとして出場する。與那嶺は2017年大会で51位完走。直前のオンループで積極的な走りを見せ、26位に入っている與那嶺は「昨年チームのエースが優勝した大切なレースです。最終局面でのアシストとして、全力でサポートします」と語っている。

また、萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)の出場も急遽決定した。萩原は2015年から連続出場しており、2015年は33位で完走している。

過去2年連続で2位に入り、キャニオン・スラムに移籍したカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド)も優勝候補に名前が挙がる。2016年大会の勝者リジー・ダイグナン(イギリス)と2015年大会の勝者メーガン・グアルニエ(アメリカ)に加え、世界王者シャンタル・ブラーク(オランダ)とリオ五輪ロード金メダリストのアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)らをそろえるブールス・ドルマンスが最強チームであることは間違いないだろう。

2017年に女子レースを制したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)2017年に女子レースを制したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ) photo:TDWsport / Kei Tsuji與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

text:Kei.Tsuji
ストラーデビアンケ男子レース歴代優勝者
開催年 1位 2位 3位
2017年 ミカル・クウィアトコウスキー グレッグ・ヴァンアーヴェルマート ティム・ウェレンス
2016年 ファビアン・カンチェラーラ ゼネク・スティバル ジャンルーカ・ブランビッラ
2015年 ゼネク・スティバル グレッグ・ヴァンアーヴェルマート アレハンドロ・バルベルデ
2014年 ミカル・クウィアトコウスキー ペテル・サガン アレハンドロ・バルベルデ
2013年 モレーノ・モゼール ペテル・サガン リナルド・ノチェンティーニ
2012年 ファビアン・カンチェラーラ マキシム・イグリンスキー オスカル・ガット
2011年 フィリップ・ジルベール アレッサンドロ・バッラン ダミアーノ・クネゴ
2010年 マキシム・イグリンスキー トーマス・ロヴクヴィスト マイケル・ロジャース
2009年 トーマス・ロヴクヴィスト ファビアン・ウェーグマン マルティン・エルミガー
2008年 ファビアン・カンチェラーラ アレッサンドロ・バッラン リーナス・ゲルデマン
2007年 アレクサンドル・コロブネフ マルクス・ユーンクヴィスト ミハイロ・カリロフ

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