ドイツ生まれのスプリンターがトップ3を独占したアブダビツアー第3ステージ。マルセル・キッテルを写真判定で下した23歳のフィル・バウハウスが勝利し、サンウェブに今シーズン初勝利をもたらした。


アブダビ市内を抜けて郊外を目指すアブダビ市内を抜けて郊外を目指す photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
総合優勝者に授与される優勝トロフィー総合優勝者に授与される優勝トロフィー photo:LaPresse - Ferrari / Paolone巨大なシェイク・ザーイド・モスクを通過する選手たち巨大なシェイク・ザーイド・モスクを通過する選手たち photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

アブダビツアー2日目はUAE(アラブ首長国連邦)の首都アブダビ市を駆け抜ける133km。今大会最短の、再びスプリンター向きの平坦コースが用意された。高層ビルが建ち並ぶアブダビ市内をスタートし、巨大なシェイク・ザーイド・モスク、ヤス・マリーナ・サーキットがあるヤス島、開発が進むサディヤット島を経て、ペルシャ湾に突き出たアル・マリーナにフィニッシュする。

スタート直後からアタックを連発したピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)にセルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、サム・ブランド(イギリス、ノボノルディスク)、マルコ・マロネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)がジョイン。クイックステップフロアーズの集団牽引によってタイム差は2分30秒以内に抑え込まれた。

幅広で真っ平らなコースは逃げグループに不利。残り70km地点でタイム差が早くも1分を切ると、ニコライ・トルソーフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)のスプリント賞ジャージを守りたいガスプロム・ルスヴェロが集団牽引を開始する。ペースの上がったメイン集団によって逃げは早めの吸収。残り51km地点の第2スプリントで本格的なスプリントバトルが繰り広げられ、リーダージャージを着るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)が先頭通過している。

巨大なシェイク・ザーイド・モスクを通過巨大なシェイク・ザーイド・モスクを通過 photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
逃げるピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)ら逃げるピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)ら photo:LaPresse - Ferrari / Paolone最大2分半のリードで逃げる先頭4名最大2分半のリードで逃げる先頭4名 photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

横風区間でのペースアップによって集団が割れたが、その後の幹線道路で集団は一つに戻る。ラウンドアバウトで落車したアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)も難なく集団に復帰。アタックが生まれないまま、クイックステップフロアーズを先頭に集団は淡々とフィニッシュへと向かった。

この日もフレッシュなスプリンターチームが人数を揃えて隊列を組んだ。残り1kmを切ってから先頭に立ったのは、40秒間にわたって平均852Wを出力したミッチェルトン・スコットのルカ・メズゲッツ(スロベニア)。カレブ・ユアン(オーストラリア)のリードアウトを担うスロベニアチャンピオンを先頭に、60km/hオーバーを維持したまま残り300mの最終コーナーを抜ける。

真っ先に仕掛けたのは4番手につけていたユアンで、サバティーニのリードアウトを受けたヴィヴィアーニが少しタイミングを遅らせてからスプリントをスタートさせる。すぐさま先頭に立ったユアンとヴィヴィアーニ。しかしその後ろからジャーマンスプリンターたちが追い上げを見せた。

フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)が先行するヴィヴィアーニに並び、別ラインで突き進んでいたユアンをも抜く。さらには最終コーナーの時点で13〜14番手に下がっていたマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)も猛烈な勢いで差し込み、最後はアッカーマン、バウハウス、ヴィヴィアーニ、キッテルが横並びでハンドルを投げ込んだ。

ハンドルを投げ込むフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)やマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)ハンドルを投げ込むフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)やマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

トップスピード65.9km/hのスプリントバトルの栄冠は、数センチ差でキッテルを下したバウハウスの手にわたった。キッテルは同じアル・マリーナにフィニッシュした2017年大会の第2ステージでユアンを差し切って勝利したが、その再現はならなかった。僅差で初勝利を逃したキッテルは「ようやく自分のスピードが戻ってきた」と語っている。この日はドイツ人スプリンターがトップ3を独占した。

23歳の新鋭バウハウスは「エリア・ヴィヴィアーニの番手につけて最終コーナーを抜け、彼の後ろからスプリントを開始した。後方から追い上げたマルセル・キッテルとの差が極めて小さかったので、フィニッシュした時点で勝ったかどうか分からなかった。勝利が確定した時はもちろんスーパーハッピーだったよ」と喜ぶ。

バウハウスは2015年にボーラ・アルゴン18でプロ入りし、2016年ロード世界選手権U23ロードで4位。サンウェブに加入した2017年にクリテリウム・デュ・ドーフィネでステージ優勝を飾っている。「ビッグネームを打ち負かしたことを誇りに思う。チームにシーズン初勝利をもたらすことができたし、昨年のドーフィネでのステージ優勝とはまた違った喜びだ」とバウハウスは語る。サンウェブはこれが今シーズン初勝利。サンウェブの勝利により、すべてのUCIワールドチームが今シーズン勝利を手にしたことになる。

ステージ4位に終わったヴィヴィアーニは「最終コーナーでの位置取りは悪くなかった。最後はファビオ・サバティーニの後ろから残り150mでスプリントを開始。早すぎたわけじゃないけど、後ろから迫るドイツのスプリンターたちを振り切れなかった」と振り返る。なお、ヴィヴィアーニが第2スプリントを先頭通過した際に記録した出力は13秒間1,213Wで最大1,481W。熾烈なポジション争いによってスプリント前に力を使ったため、フィニッシュでの出力は13秒間907W、最大1,214Wにとどまった。

第4ステージの12.6km個人タイムトライアルを前に、総合首位のヴィヴィアーニは「距離があと4km短ければ総合リードを守れるかもしれないけど、実際は難しいと思う。明日の個人TTではリーダージャージに敬意を表して最大限の走りをしたい。ポイント賞の座を守るために最終日(山岳ステージ)では再びスプリントポイントを狙うよ」とコメント。総合争いの行方は、翌日の12.6km個人TTと最終日のジュベルハフィート山頂フィニッシュに委ねられた。

今シーズン初勝利を飾った23歳のフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)今シーズン初勝利を飾った23歳のフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone総合首位を守ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)総合首位を守ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
表彰台の真ん中に立つフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)表彰台の真ん中に立つフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

アブダビツアー2018第3ステージ結果
1位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) 3:02:55
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
5位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
6位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)
7位 ルディ・バルビエ(フランス、アージェードゥーゼール)
8位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
9位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF)
個人総合成績
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 11:06:36
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 0:00:03
3位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)
4位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:05
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ) 0:00:07
6位 マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
7位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:09
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:00:10
9位 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
10位 アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
ポイント賞
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 46pts
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 27pts
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 26pts
ヤングライダー賞
1位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) 11:06:39
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:02
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ) 0:00:04
スプリント賞
1位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 12pts
2位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF) 10pts
3位 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) 9pts
チーム総合成績
1位 バーレーン・メリダ 33:20:27
2位 クイックステップフロアーズ
3位 バルディアーニCSF
text:Kei Tsuji

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