2010/01/28(木) - 13:54
地元栃木県下で合宿に入った宇都宮ブリッツェンを訪ねた。チーム創立から1年。「地域密着型チーム」として軌道に乗ったように見える。新監督に就任した栗村修さんに訊く。
― まず、栗村さんがなぜブリッツェンにくることになったのか、そのあたりの理由から教えてください。
もともと廣瀬佳正選手とはシマノレーシングにいた2008年に一緒に仕事をしていたことがあるので、彼からは「2008年一杯でチームを辞めて新チームを宇都宮で立ち上げる」と言うことを聞いていました。考えていることは聞かされていましたし、共鳴できました。
柿沼章選手ともミヤタレーシング時代に一緒に仕事をしていたので、いずれはこの2人と一緒に仕事をすることにはなるだろうとは思っていました。それが今年になるとは思っていませんでしたが、タイミングだったと言うことです。
― 入ってみて感じることは?
チームのことはある程度前から知っていたのですが、入ってみると地域密着型のチームのパワーを改めて感じています。地元の人達に支えられているんだなぁ、って感じます。
ブリッツェンというチームは自転車関係のメディアに取り上げられることさえ多くはないチームですが、ここ宇都宮では、栃木放送、ケーブルテレビ、FMラジオ曲のRADIO BERRY、下野(しもつけ)新聞、ミニコミ誌など、地元の一般メディアによく取り上げられます。しかも「チームが合宿に入った」など、細かいことがニュースとして出るんです。
自分の想像を超えて、宇都宮のプロスポーツチームとして市民権を獲ているんだなぁと思いますね。
― 今年のメンバー構成とチーム体制について教えてください。2010年はどんなチームカラーですか?
昨年のチームからは清水良行と中山卓士、CHISAKOが抜けて、柿沼が監督役から現役選手に戻り、中村誠、辻善光、若杉厚仁が加わりました。
昨年まではちょっとおとなしい感じがありましたが、今年はいい意味で個性が強くなったと思います。賑やかになった。
― エースやそれぞれの得意分野など、チームの戦力構成を教えてください。
柿沼と廣瀬は運営会社の社員でもあるので、運営上の様々な仕事をこなしますから、現役時代に比べて練習時間はどうしても落ちることになります。2人とも脚質的にはルーラータイプで、アシスト的な仕事をこなします。
登りに特化したのが長沼です。スプリントは辻。アップダウンのレースなら中村です。20代の選手が主体になって結果を残して行くのが好ましいと思っているので、いい組み合わせだと思います。
斉藤は才能がありますね。今年あたり面白いと思っています。
すでにシクロクロス世界選手権出場のために欧州に飛んだ小坂は、プロローグ系のレースやTTに強く、上位に来ることができます。
― 新人の若杉選手はどんなタイプの選手でしょう。
チームスペースバイク(千葉)で走っていた選手で、鈴木真理(シマノレーシング)が面倒を見ていた選手です。BR-1の年間総合優勝をしています。ただTRのレースは未経験で、まだ身体も出来ていないし、戦力には入れていません。スプリント力があるので、辻について1年間学べば面白い選手になると思います。勝ちにいくセンスがあるんです。
― 年間とおしてチームの目標をどのレースにおきますか?
チームの目標としてはJサイクルツアーでルビーレッドジャージを獲得すること、全日本選手権ロードで優勝すること、ジャパンカップでアジア最優秀選手になることの3つです。
あと、辻が加わったことで、ツール・ド・北海道の総合優勝も狙えます。北海道はプロローグのタイムと、ゴールスプリントで決まることがほとんどなので、可能性があります。辻の加入はチームの戦い方に幅を広げてくれました。
― 国内レースで勝利を狙っていくということですね。
そうです。あくまで国内のレースで、一戦一戦を大事に闘い、真剣に勝ちに行きます。
― チームのキャッチフレーズなどは何かありますか?
う~ん、とくに決めていませんが、僕のイメージでは楽しく、苦しく行きたいですね。どこよりも楽しんで、最高に苦しむ。ミヤタ時代に増田成幸選手が言ってたので、「たのしくるしく」(パクリ)でお願いします(笑)。楽しむココロを持って苦しむことができたなら最高ですね。そして前向きに戦いたい。
― 地域密着型のチームとして、どういう方向を目指して行くのでしょう。栗村さんが解釈する方向性は?
チームは新しい形態、方向性を目指しているんです。それは大変な作業です。
今、レース界の流れは「世界を目指す」だと思うんです。それはある意味普遍的で、王道です。選手も監督も、少しでも早く海外に出て、世界を目指したいと言う。しかしブリッツェンは国内を大事にして、地域に根ざすことを目標に掲げている。逆行しているとも言えるでしょう。でも、世界を目指すことを否定しているわけではないんです。
国内で走るということの価値観をレース界の中で作っていくことができればと思っています。
チームはある意味Jサイクルツアーのような国内レースとセットなんです。そこで強くなって、強くなった選手が日本ナショナルチームや世界を目指すチームや、世界のチームに吸い上げられて行く。その根元の部分で価値のあるチームになりたい。
その成功例をつくることがブリッツェンの意義だと思います。地域に根ざしたチームとして、若者が目指し、集まるチームにしたい。目標は国内から世界を目指す流れのピラミッドが形成されることです。その成功例を作りたい。
エキップアサダは世界を目指している。愛三工業レーシングはアジアを目指している。ブリッツェンは国内を目指す。実業団という形態を否定はしませんが、今は時代的に逆風が吹いている。ブリッツェンが国内で確かな価値観を生み出すチームとして、成功例とならなければいけないと思っています。
― チームブリヂストン・アンカー、シマノレーシングなど、他のチームが暖かい沖縄で合宿に入っていますが?
予算がつかないという点が大きいですが(笑)、このチームは宇都宮で走っているほうがいいと思います。寒いところで練習した方が身体が開発されるという説もありますが。
― なるほど。チームが走っていると、通りがかる人が声をかけたり、地元で本当に応援されていますよね。
ブリッツェン応援自動販売機(※)もあるし、街のあちこちに応援の旗が立っているし、本当に1年でよくここまで来たな、と感心していますよ。
※飲料を購入すると売上の一部がチームの活動資金として寄付される。現在栃木県内で61機が稼働している。
photo&text:綾野 真
― まず、栗村さんがなぜブリッツェンにくることになったのか、そのあたりの理由から教えてください。
もともと廣瀬佳正選手とはシマノレーシングにいた2008年に一緒に仕事をしていたことがあるので、彼からは「2008年一杯でチームを辞めて新チームを宇都宮で立ち上げる」と言うことを聞いていました。考えていることは聞かされていましたし、共鳴できました。
柿沼章選手ともミヤタレーシング時代に一緒に仕事をしていたので、いずれはこの2人と一緒に仕事をすることにはなるだろうとは思っていました。それが今年になるとは思っていませんでしたが、タイミングだったと言うことです。
― 入ってみて感じることは?
チームのことはある程度前から知っていたのですが、入ってみると地域密着型のチームのパワーを改めて感じています。地元の人達に支えられているんだなぁ、って感じます。
ブリッツェンというチームは自転車関係のメディアに取り上げられることさえ多くはないチームですが、ここ宇都宮では、栃木放送、ケーブルテレビ、FMラジオ曲のRADIO BERRY、下野(しもつけ)新聞、ミニコミ誌など、地元の一般メディアによく取り上げられます。しかも「チームが合宿に入った」など、細かいことがニュースとして出るんです。
自分の想像を超えて、宇都宮のプロスポーツチームとして市民権を獲ているんだなぁと思いますね。
― 今年のメンバー構成とチーム体制について教えてください。2010年はどんなチームカラーですか?
昨年のチームからは清水良行と中山卓士、CHISAKOが抜けて、柿沼が監督役から現役選手に戻り、中村誠、辻善光、若杉厚仁が加わりました。
昨年まではちょっとおとなしい感じがありましたが、今年はいい意味で個性が強くなったと思います。賑やかになった。
― エースやそれぞれの得意分野など、チームの戦力構成を教えてください。
柿沼と廣瀬は運営会社の社員でもあるので、運営上の様々な仕事をこなしますから、現役時代に比べて練習時間はどうしても落ちることになります。2人とも脚質的にはルーラータイプで、アシスト的な仕事をこなします。
登りに特化したのが長沼です。スプリントは辻。アップダウンのレースなら中村です。20代の選手が主体になって結果を残して行くのが好ましいと思っているので、いい組み合わせだと思います。
斉藤は才能がありますね。今年あたり面白いと思っています。
すでにシクロクロス世界選手権出場のために欧州に飛んだ小坂は、プロローグ系のレースやTTに強く、上位に来ることができます。
― 新人の若杉選手はどんなタイプの選手でしょう。
チームスペースバイク(千葉)で走っていた選手で、鈴木真理(シマノレーシング)が面倒を見ていた選手です。BR-1の年間総合優勝をしています。ただTRのレースは未経験で、まだ身体も出来ていないし、戦力には入れていません。スプリント力があるので、辻について1年間学べば面白い選手になると思います。勝ちにいくセンスがあるんです。
― 年間とおしてチームの目標をどのレースにおきますか?
チームの目標としてはJサイクルツアーでルビーレッドジャージを獲得すること、全日本選手権ロードで優勝すること、ジャパンカップでアジア最優秀選手になることの3つです。
あと、辻が加わったことで、ツール・ド・北海道の総合優勝も狙えます。北海道はプロローグのタイムと、ゴールスプリントで決まることがほとんどなので、可能性があります。辻の加入はチームの戦い方に幅を広げてくれました。
― 国内レースで勝利を狙っていくということですね。
そうです。あくまで国内のレースで、一戦一戦を大事に闘い、真剣に勝ちに行きます。
― チームのキャッチフレーズなどは何かありますか?
う~ん、とくに決めていませんが、僕のイメージでは楽しく、苦しく行きたいですね。どこよりも楽しんで、最高に苦しむ。ミヤタ時代に増田成幸選手が言ってたので、「たのしくるしく」(パクリ)でお願いします(笑)。楽しむココロを持って苦しむことができたなら最高ですね。そして前向きに戦いたい。
― 地域密着型のチームとして、どういう方向を目指して行くのでしょう。栗村さんが解釈する方向性は?
チームは新しい形態、方向性を目指しているんです。それは大変な作業です。
今、レース界の流れは「世界を目指す」だと思うんです。それはある意味普遍的で、王道です。選手も監督も、少しでも早く海外に出て、世界を目指したいと言う。しかしブリッツェンは国内を大事にして、地域に根ざすことを目標に掲げている。逆行しているとも言えるでしょう。でも、世界を目指すことを否定しているわけではないんです。
国内で走るということの価値観をレース界の中で作っていくことができればと思っています。
チームはある意味Jサイクルツアーのような国内レースとセットなんです。そこで強くなって、強くなった選手が日本ナショナルチームや世界を目指すチームや、世界のチームに吸い上げられて行く。その根元の部分で価値のあるチームになりたい。
その成功例をつくることがブリッツェンの意義だと思います。地域に根ざしたチームとして、若者が目指し、集まるチームにしたい。目標は国内から世界を目指す流れのピラミッドが形成されることです。その成功例を作りたい。
エキップアサダは世界を目指している。愛三工業レーシングはアジアを目指している。ブリッツェンは国内を目指す。実業団という形態を否定はしませんが、今は時代的に逆風が吹いている。ブリッツェンが国内で確かな価値観を生み出すチームとして、成功例とならなければいけないと思っています。
― チームブリヂストン・アンカー、シマノレーシングなど、他のチームが暖かい沖縄で合宿に入っていますが?
予算がつかないという点が大きいですが(笑)、このチームは宇都宮で走っているほうがいいと思います。寒いところで練習した方が身体が開発されるという説もありますが。
― なるほど。チームが走っていると、通りがかる人が声をかけたり、地元で本当に応援されていますよね。
ブリッツェン応援自動販売機(※)もあるし、街のあちこちに応援の旗が立っているし、本当に1年でよくここまで来たな、と感心していますよ。
※飲料を購入すると売上の一部がチームの活動資金として寄付される。現在栃木県内で61機が稼働している。
photo&text:綾野 真