2018/02/13(火) - 09:07
DURA-ACEコンポーネントのディスクブレーキモデル登場とともに大きな話題を呼んだ、シマノ初のパワーメーター一体型クランク「FC-R9100-P」をインプレッション。クランクのデザインを損なわないルックスを獲得しつつ、左右独立のセンサーによりパワー出力値と各種関連データを測定可能となる。
今やプロ選手のみならずホビーレーサーから週末ライダーまで幅広いサイクリストに浸透したパワーメーター。パワー出力値という明確なトレーニング指標を確認でき、それを元にした効率的な練習が可能とあって、レースでの結果を追い求めるシリアスライダーを中心にそのシェアを拡大させてきた。長年トレーニングツールとして一般的であった心拍計に対し、ここ数年でパワーメーターは一気に市場を席巻したと言っていいだろう。
ハブ、クランク、ペダル等様々なタイプのパワーメーターが各社からリリースされているが、いずれもパワー測定の原理は至ってシンプル。ペダリング時のパワー入力に対し、物体のひずみをセンサーが感知しそのひずみ量を独自のプロトコルによってパワー数値化するというものである。W(ワット)換算で得られた数値はサイクルコンピューター等で随時確認することができ、多くのライダーにとってライドのモチベーションとなっている。
そんなパワーメーター市場に満を持してシマノも参入。自社のDURA-ACEクランクをベースとしつつ、左右両側のクランクアームにセンサーを搭載した、シマノ初のパワーメーターが「FC-R9100-P」である。
まず見た目の特徴として、パワーメーターであることを感じさせないスマートなルックスが挙げられるだろう。一般的なクランク型のパワーメーターというと、チェーンリングやスパイダーアームと言った部分にセンサーやバッテリーが配置されるため、外から見た際に明らかにその存在を主張するデザインのものが多い。特に、他社製のクランクに対応するパワーメーターブランドにその傾向が顕著だ。
それに対しシマノはクランクメーカーとして、自社のFC-R9100クランクと親和性の高いデザインを構築。スピンドル内部にバッテリーを、クランクアーム内にセンサーを配置し、小型の充電ポートのみを外側に露出させることで、純正クランクのデザインを損なわないルックスを獲得している。
また左クランク内側に配されるセンサーも薄く小型にできており、フレームの形状に関係なくほぼすべてのモデルで取り付けが可能だという。類似の他社製品で見られるチェーンステーとのクリアランスが狭かったり、フレームやBB下のダイレクトマウントブレーキと干渉してしまったりという問題も本製品ではクリアされている。
通信規格はANT+とBluetooth LEに対応。サイクルコンピューターとはANT+にてペアリングすることで、パワー関連の測定値を表示できる。またシマノのE-TUBE PROJECTアプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットとはBluetoothにて通信し、無線にてファームウェアのアップデート等の操作が行える仕様だ。
クランクを軽く回転させるだけで自動で電源ONとなり、サイクルコンピューター側でペアリングが可能に。そのままパワーメーターの校正まで行えば、すぐに使用可能となる。5分間クランクの動作がないと自動でスリープモードへと切り替わる。
FC-R9100-Pにて測定できる項目は「パワー」「パワー左右バランス」「ペダルスムーズネス」「ケイデンス」「トルクエフェクティブネス」の5つ。加えてパワーメーターのバッテリー残量もサイクルコンピューター上に表示可能だ。ペダルスムーズネスとはペダリング効率を表し、クランク1回転中の平均出力と最大出力の比率に当たる。数値が小さいほどムラのないペダリングができているという訳だ。
またトルクエフェクティブネスは、パワーがどれだけ推進力として伝わっているかを示すもので、こちらは数値が大きいほど効率的にトルクが伝達されていると分かる。これらに左右バランスを加えた3項目は、左右のパーセント表記にてリアルタイムの測定数値が表示される。
クランクのインストールも5mmの六角レンチが1本あればできてしまうほどシンプル。通常のクランク取り付け作業に、マグネットの取り付け工程とコネクトプラグの接続工程が加わったほどの手間で、必要な専用工具等もパッケージに付属するため作業的なハードルは全く無いだろう。
充電は専用端子のUSBケーブルにて行い、ドライブ側のセンサーカバーを外すとポートが現れる。専用端子は磁力でくっつく仕組みとなっているため、奥まで差し込むといった操作もなく簡単に接続が可能だ。充電中は青いLEDランプが点灯し、充電完了で消灯となる。約2時間半でフル充電され、その後300時間もの長いバッテリー持ちを発揮するのだという。ホビーライダーであれば2,3ヶ月は充電せずとも問題ないだろう。
過酷な環境でもレースを行うプロ選手の使用に対応した作りとなっており、気温による動作の不具合にも配慮されているとともに高い防水性能も備えている。今回は自身のバイクにFC-R9100-Pをインストールし普段から同製品を使用している、なるしまフレンド神宮店の小西メカニックよりインプレッションをいただいた。
― インプレッション
「見た目のスマートさやチェーンリングの互換性の高さが魅力」小西裕介(なるしまフレンド)
コンポーネントメーカーのシマノがリリースしたという安心感や、他のパワーメーターにはない見た目のスマートさに惹かれ自身でも購入しました。外からパッと見てパワーメーターとは分からないデザインで、バイクにもすんなり溶け込むルックスに仕上がります。「パワーメーターを使っているぞ」とアピールしたくないライダーにも受け入れられるアイテムだと思います。
さすがシマノ製品という安定した動作で、ガーミンとのペアリングも非常にスムーズですし、以前使用していたパワータップと比較しても、パワーの出方などその精度は全く問題ありません。冬場の寒いライドでも値が出ないと言った不具合はありませんし、気になるようなら走り出す前に校正を行えるほど素早い動作を見せてくれますね。
センサーもかなり薄型ですので、私の乗るピナレロDOGMA F10で見ても十分なクリアランスが確保できていますし、取り付けできないフレームはまずないと思われます。他社製品ですと一旦クランクをメーカーに送らなければならないものもありますが、そういった煩わしさもないのは嬉しいですね。
また私はオーシンメトリックの楕円チェーンリングを使っていますが、センサーが干渉するなどの問題はありませんね。シマノのチェーンリング以外でも自由に交換できるでしょうし、その際にセンサーの配線等を気にする心配もありません。クランクアームで歪みを測定するので、どのチェーンリングを使用してもパワー数値に影響しないところも大きなポイントでしょう。
重量増の要因となるバッテリーもシャフト内部に収まっているので、体感で通常のクランクとの重量差は感じませんね。誰もが使いやすいパワーメーターとして完成していると思います。今はDURA-ACEグレードのみですが、今後よりリーズナブルなULTEGRAモデル等も出てくることを期待したいですね。FC-R9100-Pの登場を機に、パワーメーターがより一般的なツールとなっていくことを予感させてくれる製品です。
シマノ FC-R9100-P
歯数構成:50×34T、52×36T、53×39T
クランク長:170、172.5、175mm(ギア付)
165、167.5、170、172.5、175、177.5、180mm(ギア無)
アクスル径:24mm(シマノホローテックⅡ)
PCD:110mm
無線規格:ANT+、Bluetooth LE
重量:679g(170mm、50×34T)、691g(170mm、53×39T)
価格:143,662円(税抜、ギア付)、127,398円(税抜、ギア無)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
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なるしまフレンドHP
今やプロ選手のみならずホビーレーサーから週末ライダーまで幅広いサイクリストに浸透したパワーメーター。パワー出力値という明確なトレーニング指標を確認でき、それを元にした効率的な練習が可能とあって、レースでの結果を追い求めるシリアスライダーを中心にそのシェアを拡大させてきた。長年トレーニングツールとして一般的であった心拍計に対し、ここ数年でパワーメーターは一気に市場を席巻したと言っていいだろう。
ハブ、クランク、ペダル等様々なタイプのパワーメーターが各社からリリースされているが、いずれもパワー測定の原理は至ってシンプル。ペダリング時のパワー入力に対し、物体のひずみをセンサーが感知しそのひずみ量を独自のプロトコルによってパワー数値化するというものである。W(ワット)換算で得られた数値はサイクルコンピューター等で随時確認することができ、多くのライダーにとってライドのモチベーションとなっている。
そんなパワーメーター市場に満を持してシマノも参入。自社のDURA-ACEクランクをベースとしつつ、左右両側のクランクアームにセンサーを搭載した、シマノ初のパワーメーターが「FC-R9100-P」である。
まず見た目の特徴として、パワーメーターであることを感じさせないスマートなルックスが挙げられるだろう。一般的なクランク型のパワーメーターというと、チェーンリングやスパイダーアームと言った部分にセンサーやバッテリーが配置されるため、外から見た際に明らかにその存在を主張するデザインのものが多い。特に、他社製のクランクに対応するパワーメーターブランドにその傾向が顕著だ。
それに対しシマノはクランクメーカーとして、自社のFC-R9100クランクと親和性の高いデザインを構築。スピンドル内部にバッテリーを、クランクアーム内にセンサーを配置し、小型の充電ポートのみを外側に露出させることで、純正クランクのデザインを損なわないルックスを獲得している。
また左クランク内側に配されるセンサーも薄く小型にできており、フレームの形状に関係なくほぼすべてのモデルで取り付けが可能だという。類似の他社製品で見られるチェーンステーとのクリアランスが狭かったり、フレームやBB下のダイレクトマウントブレーキと干渉してしまったりという問題も本製品ではクリアされている。
通信規格はANT+とBluetooth LEに対応。サイクルコンピューターとはANT+にてペアリングすることで、パワー関連の測定値を表示できる。またシマノのE-TUBE PROJECTアプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットとはBluetoothにて通信し、無線にてファームウェアのアップデート等の操作が行える仕様だ。
クランクを軽く回転させるだけで自動で電源ONとなり、サイクルコンピューター側でペアリングが可能に。そのままパワーメーターの校正まで行えば、すぐに使用可能となる。5分間クランクの動作がないと自動でスリープモードへと切り替わる。
FC-R9100-Pにて測定できる項目は「パワー」「パワー左右バランス」「ペダルスムーズネス」「ケイデンス」「トルクエフェクティブネス」の5つ。加えてパワーメーターのバッテリー残量もサイクルコンピューター上に表示可能だ。ペダルスムーズネスとはペダリング効率を表し、クランク1回転中の平均出力と最大出力の比率に当たる。数値が小さいほどムラのないペダリングができているという訳だ。
またトルクエフェクティブネスは、パワーがどれだけ推進力として伝わっているかを示すもので、こちらは数値が大きいほど効率的にトルクが伝達されていると分かる。これらに左右バランスを加えた3項目は、左右のパーセント表記にてリアルタイムの測定数値が表示される。
クランクのインストールも5mmの六角レンチが1本あればできてしまうほどシンプル。通常のクランク取り付け作業に、マグネットの取り付け工程とコネクトプラグの接続工程が加わったほどの手間で、必要な専用工具等もパッケージに付属するため作業的なハードルは全く無いだろう。
充電は専用端子のUSBケーブルにて行い、ドライブ側のセンサーカバーを外すとポートが現れる。専用端子は磁力でくっつく仕組みとなっているため、奥まで差し込むといった操作もなく簡単に接続が可能だ。充電中は青いLEDランプが点灯し、充電完了で消灯となる。約2時間半でフル充電され、その後300時間もの長いバッテリー持ちを発揮するのだという。ホビーライダーであれば2,3ヶ月は充電せずとも問題ないだろう。
過酷な環境でもレースを行うプロ選手の使用に対応した作りとなっており、気温による動作の不具合にも配慮されているとともに高い防水性能も備えている。今回は自身のバイクにFC-R9100-Pをインストールし普段から同製品を使用している、なるしまフレンド神宮店の小西メカニックよりインプレッションをいただいた。
― インプレッション
「見た目のスマートさやチェーンリングの互換性の高さが魅力」小西裕介(なるしまフレンド)
コンポーネントメーカーのシマノがリリースしたという安心感や、他のパワーメーターにはない見た目のスマートさに惹かれ自身でも購入しました。外からパッと見てパワーメーターとは分からないデザインで、バイクにもすんなり溶け込むルックスに仕上がります。「パワーメーターを使っているぞ」とアピールしたくないライダーにも受け入れられるアイテムだと思います。
さすがシマノ製品という安定した動作で、ガーミンとのペアリングも非常にスムーズですし、以前使用していたパワータップと比較しても、パワーの出方などその精度は全く問題ありません。冬場の寒いライドでも値が出ないと言った不具合はありませんし、気になるようなら走り出す前に校正を行えるほど素早い動作を見せてくれますね。
センサーもかなり薄型ですので、私の乗るピナレロDOGMA F10で見ても十分なクリアランスが確保できていますし、取り付けできないフレームはまずないと思われます。他社製品ですと一旦クランクをメーカーに送らなければならないものもありますが、そういった煩わしさもないのは嬉しいですね。
また私はオーシンメトリックの楕円チェーンリングを使っていますが、センサーが干渉するなどの問題はありませんね。シマノのチェーンリング以外でも自由に交換できるでしょうし、その際にセンサーの配線等を気にする心配もありません。クランクアームで歪みを測定するので、どのチェーンリングを使用してもパワー数値に影響しないところも大きなポイントでしょう。
重量増の要因となるバッテリーもシャフト内部に収まっているので、体感で通常のクランクとの重量差は感じませんね。誰もが使いやすいパワーメーターとして完成していると思います。今はDURA-ACEグレードのみですが、今後よりリーズナブルなULTEGRAモデル等も出てくることを期待したいですね。FC-R9100-Pの登場を機に、パワーメーターがより一般的なツールとなっていくことを予感させてくれる製品です。
シマノ FC-R9100-P
歯数構成:50×34T、52×36T、53×39T
クランク長:170、172.5、175mm(ギア付)
165、167.5、170、172.5、175、177.5、180mm(ギア無)
アクスル径:24mm(シマノホローテックⅡ)
PCD:110mm
無線規格:ANT+、Bluetooth LE
重量:679g(170mm、50×34T)、691g(170mm、53×39T)
価格:143,662円(税抜、ギア付)、127,398円(税抜、ギア無)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
CWレコメンドショップページ
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