シクロクロス東京最高峰カテゴリーの男子エリートで、圧倒的なスキルで砂を攻略した竹之内悠(東洋フレーム)が小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)を下して優勝を飾った。表彰台メンバーや、台風の目となった山本幸平らのコメントと併せてレポート。
スタートを待つ小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:So.Isobe
ジャケットをスタッフに渡す竹之内悠(東洋フレーム) photo:So.Isobe
スタート直後の短いサンドコーナーを回っていく男子エリートの選手達 photo: Yuichiro Hosoda
2日間に渡るシクロクロス東京の大トリを務めるのが、国内トップ選手32名が顔を揃えた男子エリートカテゴリー。JCXランキング上位30名と前日のC1レースで参加権を得た選手のみが出走できるこのレースは、全日本選手権よりも参加ハードルが高い、国内レーサーの檜舞台だ。
主催者発表1万1000人が詰めかけた会場で、号砲と共にスプリントを掛けるエリート選手たち。竹之内悠(東洋フレーム)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、全日本王者の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が横並びのままストレートを抜け、最初の砂区間を経て木の根が張り出した森林区間へ。多数のギャラリーが待つ波打ち際へと先頭で飛び出してきたのは竹之内だった。
1周目の雑木林を抜け、早くも独走体制に入ったかと思わせた竹之内悠(TOYO Frame) photo: Yuichiro Hosoda
2周目から先頭に立った小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:So.Isobe
竹之内と小坂を3番手で追う前田公平(弱虫ペダルレーシングチーム) photo: Yuichiro Hosoda
圧倒的なパワーで突き進む山本幸平 photo:So.Isobe
3名の後ろには織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が続き、少し間を空けて中村龍太郎(SNEL CYCLOCROSS TEAM)と江越海玖也(弱虫ペダルサイクリングチーム)が続く。歩くにも苦労する砂浜を飛ぶように駆け抜ける先頭4名は見る間に後続を引き離し、1周目半ばにして表彰台メンバーが絞り込まれた。
U23全日本王者の織田が先頭グループから遅れ、続いて「思うように砂で乗れず、不完全燃焼の走りだった」と振り返る前田も脱落。すると竹之内がするすると小坂を引き離した。
先頭を行く竹之内の数秒後方に小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が迫る photo: Yuichiro Hosoda
激しい順位争いを繰り広げる門田基志(チームジャイアント)と丸山厚(BOMA/ROND BICYCLE) photo: Yuichiro Hosoda
U23全日本チャンピオンの織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が長いサンドセクションを6番手で走る photo: Yuichiro Hosoda
5分44秒という驚異的なラップタイムを刻む竹之内は10秒以上のリードと共に2周目に入ったが、「怪我のせいで脚が動かしづらくなってしまったので一度休むことにした」とペースダウンを選択。ここで小坂が追いつき、二人は付かず離れずの距離でおよそ3周回を消化していく。
その頃、強烈なペースでポジションを上げ続けたのがMTBクロスカントリーの現全日本王者、山本幸平だった。見慣れないドリームシーカージャージに身を包み、一ヶ月後のMTBワールドカップ開幕戦への実戦練習として臨んだ山本は、最後尾スタートながら次々と選手をパス。1周目で25人抜きを披露して4周目には4位へと上がり、3番手の前田を脅かし続ける。見た目にも伝わる圧倒的なパワーとスピードに、観客からは驚きの声が漏れた。
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)の背後で竹之内悠(東洋フレーム)が追い抜きを掛ける photo:So.Isobe
経験に裏打ちされた鮮やかな走りを披露する竹之内悠(東洋フレーム) photo:So.Isobe
海水によりやや砂が固められた波打ち際へと走行ラインを変更する小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo: Yuichiro Hosoda
先頭グループに動きがあったのは4周目。砂の状態を見極めた竹之内は波打ち際のラインを選択し、一気に小坂との距離を削り取ってパス。「一度砂のリズムを崩してしまって取り戻せず、元々の技術の差が明確に現れてしまった」と言う小坂は徐々に遅れ、ここから竹之内のフィニッシュまで続く独走劇が幕を開ける。
過酷なヨーロッパサーキットで培った技術と経験に裏打ちされた、鮮やかな竹之内の走り。バランスを取りながらするすると轍をトレースしていく竹之内は、ただ一人5分30〜40秒台というラップタイムを刻んで優勝への道を突き進んだ。鮮やかでスムーズな走りに多くの選手が周回遅れとなり、フルラップ完走者は僅か8名(今回は80%ルールの適用は無し)というサバイバルレースが繰り広げられた。
両手を広げてゴールした竹之内悠(TOYO Frame) photo: Yuichiro Hosoda
観客とのハイタッチに応じながらゴールした2位の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo: Yuichiro Hosoda
笑顔で勝利者インタビューに応じる竹之内悠(TOYO Frame) photo: Yuichiro Hosoda
サンドタイヤを前後1.1気圧にセッティングして臨んだ竹之内は、最終的に小坂を1分半以上引き離してフィニッシュ。「海外勢不在の今年、これまで日本人最高位を獲り続けてきた自分が良い走りをしなければいけなかった」と臨んだ区切りのシクロクロス東京で勝利した。
深い砂を攻略し、盤石の走りで優勝をさらった竹之内。「1周目の走りをずっと続けたかったのですが、それが叶わずやや残念。でも中盤からよくラインが見えるようになったし、良いリズムが刻めた」と巧者ぶりを今一度日本のファンの前でアピールすることに。以下に小坂と前田、そして台風の目となった山本のコメントを紹介。
ポディウムに上がった竹之内悠(TOYO Frame)ら男子エリートの上位3名 photo: Yuichiro Hosoda
最後は男女トップカテゴリー上位3名が揃って登壇した photo: Yuichiro Hosoda
AJOCC男女総合首位の小坂光と今井美穂が記念撮影に応じる photo: Yuichiro Hosoda
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
「今日のコースは悠の方が得意なのはわかっていたので」と序盤の仕掛けについて語った小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo: Yuichiro Hosoda今日は悠が一枚上手だろうなと理解していたので、彼をしっかりフォローすることが最初の目標でした。一度砂のリズムを崩してしまってからは取り戻せず、元々の技術の差が普段の国内レースよりも出てしまったように感じます。
今年はチャンピオンジャージも取れて、パワーも身についたのですが、ヨーロッパで走るにはまだまだ及びません。でも今日はたくさんの応援を頂けたし、楽しく走れました。勝てれば最高でしたが、シーズン最後の大きなレースで勝負できて気持ち良かったですね。世界に挑戦するからにはもっともっと上を目指していきたいですし、また全日本王者として世界選手権に挑みたい。今年は野辺山もUCIクラス1に上がりますし、ナショナルクラスのメンバーや代表監督、JCFに対して何が必要なのかを働きかけて、みんなのレベルを底上げできるようにもしていきたいと思っています。
トロフィーと賞状を掲げ、撮影に応じる小坂光と前田公平 photo: Yuichiro Hosoda前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
思うように砂を乗れず、レースをしたというよりは一人で苦しんでいた時間が長く続きました。結果よりも自分の走りの精度の悪さに不完全燃焼を感じています。先頭二人に絡めなかったので一人のペースでしか走れず…。MTBシーズンに向けて練習を重ねてよい状態で開幕戦を迎えたい。今年こそ全日本選手権での勝利を叶えたいですね。
山本幸平
レース後、クールダウンをしながらインタビューに応える山本幸平 photo:So.Isobeあと一ヶ月後に迫ったMTBワールドカップを踏まえたトレーニングレースとしての出場です。今シーズンは一度もシクロクロスに出ておらず、昨日1時間乗っただけ。バイクの扱いなど難しい部分もあったのですが、出るからには優勝を目指して走りました。
でも最後尾スタートだったのが響いて1周目が終わった時点で50秒差。これは参ったなと思って3,4周目は攻めに攻めたのですが、後が続かなかった。それでも今日は最後まで踏み切れたし、脚が攣るくらい追い込めたので開幕戦に向けて良い感触を掴みました。



2日間に渡るシクロクロス東京の大トリを務めるのが、国内トップ選手32名が顔を揃えた男子エリートカテゴリー。JCXランキング上位30名と前日のC1レースで参加権を得た選手のみが出走できるこのレースは、全日本選手権よりも参加ハードルが高い、国内レーサーの檜舞台だ。
主催者発表1万1000人が詰めかけた会場で、号砲と共にスプリントを掛けるエリート選手たち。竹之内悠(東洋フレーム)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、全日本王者の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が横並びのままストレートを抜け、最初の砂区間を経て木の根が張り出した森林区間へ。多数のギャラリーが待つ波打ち際へと先頭で飛び出してきたのは竹之内だった。




3名の後ろには織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が続き、少し間を空けて中村龍太郎(SNEL CYCLOCROSS TEAM)と江越海玖也(弱虫ペダルサイクリングチーム)が続く。歩くにも苦労する砂浜を飛ぶように駆け抜ける先頭4名は見る間に後続を引き離し、1周目半ばにして表彰台メンバーが絞り込まれた。
U23全日本王者の織田が先頭グループから遅れ、続いて「思うように砂で乗れず、不完全燃焼の走りだった」と振り返る前田も脱落。すると竹之内がするすると小坂を引き離した。



5分44秒という驚異的なラップタイムを刻む竹之内は10秒以上のリードと共に2周目に入ったが、「怪我のせいで脚が動かしづらくなってしまったので一度休むことにした」とペースダウンを選択。ここで小坂が追いつき、二人は付かず離れずの距離でおよそ3周回を消化していく。
その頃、強烈なペースでポジションを上げ続けたのがMTBクロスカントリーの現全日本王者、山本幸平だった。見慣れないドリームシーカージャージに身を包み、一ヶ月後のMTBワールドカップ開幕戦への実戦練習として臨んだ山本は、最後尾スタートながら次々と選手をパス。1周目で25人抜きを披露して4周目には4位へと上がり、3番手の前田を脅かし続ける。見た目にも伝わる圧倒的なパワーとスピードに、観客からは驚きの声が漏れた。



先頭グループに動きがあったのは4周目。砂の状態を見極めた竹之内は波打ち際のラインを選択し、一気に小坂との距離を削り取ってパス。「一度砂のリズムを崩してしまって取り戻せず、元々の技術の差が明確に現れてしまった」と言う小坂は徐々に遅れ、ここから竹之内のフィニッシュまで続く独走劇が幕を開ける。
過酷なヨーロッパサーキットで培った技術と経験に裏打ちされた、鮮やかな竹之内の走り。バランスを取りながらするすると轍をトレースしていく竹之内は、ただ一人5分30〜40秒台というラップタイムを刻んで優勝への道を突き進んだ。鮮やかでスムーズな走りに多くの選手が周回遅れとなり、フルラップ完走者は僅か8名(今回は80%ルールの適用は無し)というサバイバルレースが繰り広げられた。



サンドタイヤを前後1.1気圧にセッティングして臨んだ竹之内は、最終的に小坂を1分半以上引き離してフィニッシュ。「海外勢不在の今年、これまで日本人最高位を獲り続けてきた自分が良い走りをしなければいけなかった」と臨んだ区切りのシクロクロス東京で勝利した。
深い砂を攻略し、盤石の走りで優勝をさらった竹之内。「1周目の走りをずっと続けたかったのですが、それが叶わずやや残念。でも中盤からよくラインが見えるようになったし、良いリズムが刻めた」と巧者ぶりを今一度日本のファンの前でアピールすることに。以下に小坂と前田、そして台風の目となった山本のコメントを紹介。



小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)

今年はチャンピオンジャージも取れて、パワーも身についたのですが、ヨーロッパで走るにはまだまだ及びません。でも今日はたくさんの応援を頂けたし、楽しく走れました。勝てれば最高でしたが、シーズン最後の大きなレースで勝負できて気持ち良かったですね。世界に挑戦するからにはもっともっと上を目指していきたいですし、また全日本王者として世界選手権に挑みたい。今年は野辺山もUCIクラス1に上がりますし、ナショナルクラスのメンバーや代表監督、JCFに対して何が必要なのかを働きかけて、みんなのレベルを底上げできるようにもしていきたいと思っています。

思うように砂を乗れず、レースをしたというよりは一人で苦しんでいた時間が長く続きました。結果よりも自分の走りの精度の悪さに不完全燃焼を感じています。先頭二人に絡めなかったので一人のペースでしか走れず…。MTBシーズンに向けて練習を重ねてよい状態で開幕戦を迎えたい。今年こそ全日本選手権での勝利を叶えたいですね。
山本幸平

でも最後尾スタートだったのが響いて1周目が終わった時点で50秒差。これは参ったなと思って3,4周目は攻めに攻めたのですが、後が続かなかった。それでも今日は最後まで踏み切れたし、脚が攣るくらい追い込めたので開幕戦に向けて良い感触を掴みました。
男子エリート 結果
1位 | 竹之内悠(TOYO Frame) | 58'13" |
2位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | +1'38" |
3位 | 前田 公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +2'10" |
4位 | 山本幸平 | +2'52" |
5位 | 丸山厚(BOMA/ROND BICYCLE) | +5'31" |
6位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +5'47" |
7位 | 門田基志(チームジャイアント) | +6'48" |
8位 | 宮津旭(PAXPROJECT) | +7'11" |
9位 | 小坂正則(スワコレーシングチーム) | -1Lap |
10位 | 江越海玖也(弱虫ペダルサイクリングチーム) | -1Lap |
text:So.Isobe
photo:Yuichiro.Hosoda,So.Isobe
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