2010/01/23(土) - 06:47
アデレードに到着した時から思っていたのだが、コンスタントに風が強い。特にこの日は朝方から天気は下り坂で、スタート地点に到着した頃にはパラパラ小雨が降り始めた。幸い雨は地面を濡らす前に止んだが、どうも天気は思わしくない。西から強い風が吹いている。
強風区間でアームストロングがアタック!
スタート前にドイツ人選手と和むアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsujiこの日はレース前半に内陸部の丘陵地帯&山岳地帯を通過し、後半は大洋に面した平野部を駆け抜ける。アップダウンの続くコース前半部を消化して平野部に出た途端、沿道の草木をビュンビュン揺らす強い風が吹き始めた。ハンドルがグイグイ取られるぐらいの風。
風は西から。コースが東、南、西、南とコロコロ向きを変えるため、追い風、横風、向かい風、横風と慌ただしくシチュエーションが変わる。ゴール手前の10kmは強い横風だ。エヴァンスがレース後「南オーストラリアでこんなに風が強く吹くとは知らなかった」とコメントするほど強い風だった。
強い横風が吹き付けたゴール地点 photo:Kei Tsujiやがてレース中盤まで完全に集団を支配していたチームHTC・コロンビアが下がり、レディオシャックが集団を牽引。2009年ツール・ド・フランスで集団が分裂した際、集団前方をキープしてタイムロスを被らなかったアームストロングのチームらしい慎重な走り。
そのアームストロングがアタックを仕掛けたのは、レースが佳境に差し掛かろうとするあたりだった。同じアスタナからレディオシャックに引き抜いたトーマス・ヴァイクス(リトアニア)とローテーションを回し、風の強い平坦路を爆走するアームストロング。
17秒遅れのグループでゴールしたランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Kei Tsuji「ラスト15kmから強い横風が吹くことが分かっていたから、常に集団の位置していた。トーマス(ヴァイクス)が牽いて牽いて牽いて・・・気付いたら2人で飛び出していた。もう少し他のチームの選手が入っていてもよかったが、すでに大きなタイム差になっていたので踏み続けたんだ。結果は伴わなかったけど良い試みだったと思う」。
そう言えばランスは2009年大会でも強風が吹いたステージで逃げに乗っていた。キャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックでも逃げていたので、今シーズン早くも2度目の逃げである。
選手と同じコースを走るイベントには8000人が参加
ゴール地点ゴールワに向かう「チャレンジ・ツアー」の参加者8083名 photo:Kei Tsujiスタート地点+3カ所での撮影を終えてゴールに向かう最中、目の前に一般サイクリストの長〜〜〜い隊列が現れた。これはプロレース当日に開催される「チャレンジ・ツアー」と呼ばれるサイクルイベントで、スカイブルーのオリジナルジャージを着て選手たちと同じコースを走るというもの。
コースは160.5kmのフルコース(149.5km+ニュートラル11km)から、中級者向きの111km、初心者向きの35kmの3種類。フルコースの参加者はレーススタートの4時間半前にあたる朝6時30分にスタートし、選手たちに追いつかれずに同じゴールを目指す。
ゴールワに辿り着いた「チャレンジ・ツアー」の参加者たち photo:Kei Tsuji参加者数は何と過去最高の8083人。どうりで抜いても抜いても延々と参加者の列が続いているわけだ(ゴールに辿り着けるのか厳しい状況だったのであまり写真を撮っていない)。
当然ゴール地点は観客+8000人のサイクリストで溢れかえった状況。いつにも増して会場のボルテージが高い。人口6000人の小さなゴールワの街も、この日ばかりはお祭り騒ぎだ。
大歓声に包まれた最終ストレートで、ゴスに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ)が先頭に立つ。フィニッシュラインを何度か目視で確認しては顔を下げて踏み直し、ライバルたちを突き放す。この日も道のど真ん中を突き進む王者の走りだった。
総合優勝を決める第5ステージのウィランガ・ヒル
第5ステージでの活躍が期待されるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Kei Tsujiさて、翌日の第5ステージは総合争いを決定づける最重要ステージ。レース後半の周回コースに登場するオールド・ウィランガ・ヒルの上りは、平均勾配7.5%・登坂距離3km。しかも合計2回登場し、最後の頂上通過はゴールから19kmしか離れていない。
ウィランガはツアー・ダウンアンダーの定番コースであり、これまで何度もこの上りでバトルが繰り広げられて来た。少人数による逃げ切りが決まる場合も多く、2005年にはアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が当時リバティーセグロスのチームメイトだったルイスレオン・サンチェス(スペイン)を引き連れて逃げ切り勝利。LLサンチェスを総合優勝に導いている。
ここ数年は先頭集団に食らいついたスプリンターたちが勝利を収めているが、総合優勝を狙うクライマーやアタッカーたちが必ず上りで攻撃を仕掛けてくるだろう。その最有力候補に挙げられているのがアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)。ケースデパーニュが積極的にレースをコントロールし、バルベルデのアタックをお膳立てする姿が見られるだろう。
果たして第12回大会総合優勝の栄冠は誰の手に。いよいよプロツアー初戦ツアー・ダウンアンダーも佳境を迎える。
歴代のウィランガステージ優勝者
2002年:集団スプリント ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年:集団スプリント ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)
2004年:集団スプリント ベン・デイ(オーストラリア)
2005年:少人数逃げ切り アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年:少人数逃げ切り ラッセル・ヴァンホート(オーストラリア)
2007年:小集団スプリント ピーテル・ヘイレベルト(ベルギー)
2008年:集団スプリント アンドレ・グライペル(ドイツ)
2009年:集団スプリント アラン・デーヴィス(オーストラリア)
text&photo:Kei Tsuji
強風区間でアームストロングがアタック!
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風は西から。コースが東、南、西、南とコロコロ向きを変えるため、追い風、横風、向かい風、横風と慌ただしくシチュエーションが変わる。ゴール手前の10kmは強い横風だ。エヴァンスがレース後「南オーストラリアでこんなに風が強く吹くとは知らなかった」とコメントするほど強い風だった。
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そのアームストロングがアタックを仕掛けたのは、レースが佳境に差し掛かろうとするあたりだった。同じアスタナからレディオシャックに引き抜いたトーマス・ヴァイクス(リトアニア)とローテーションを回し、風の強い平坦路を爆走するアームストロング。
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そう言えばランスは2009年大会でも強風が吹いたステージで逃げに乗っていた。キャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックでも逃げていたので、今シーズン早くも2度目の逃げである。
選手と同じコースを走るイベントには8000人が参加
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コースは160.5kmのフルコース(149.5km+ニュートラル11km)から、中級者向きの111km、初心者向きの35kmの3種類。フルコースの参加者はレーススタートの4時間半前にあたる朝6時30分にスタートし、選手たちに追いつかれずに同じゴールを目指す。
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当然ゴール地点は観客+8000人のサイクリストで溢れかえった状況。いつにも増して会場のボルテージが高い。人口6000人の小さなゴールワの街も、この日ばかりはお祭り騒ぎだ。
大歓声に包まれた最終ストレートで、ゴスに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ)が先頭に立つ。フィニッシュラインを何度か目視で確認しては顔を下げて踏み直し、ライバルたちを突き放す。この日も道のど真ん中を突き進む王者の走りだった。
総合優勝を決める第5ステージのウィランガ・ヒル
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ウィランガはツアー・ダウンアンダーの定番コースであり、これまで何度もこの上りでバトルが繰り広げられて来た。少人数による逃げ切りが決まる場合も多く、2005年にはアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が当時リバティーセグロスのチームメイトだったルイスレオン・サンチェス(スペイン)を引き連れて逃げ切り勝利。LLサンチェスを総合優勝に導いている。
ここ数年は先頭集団に食らいついたスプリンターたちが勝利を収めているが、総合優勝を狙うクライマーやアタッカーたちが必ず上りで攻撃を仕掛けてくるだろう。その最有力候補に挙げられているのがアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)。ケースデパーニュが積極的にレースをコントロールし、バルベルデのアタックをお膳立てする姿が見られるだろう。
果たして第12回大会総合優勝の栄冠は誰の手に。いよいよプロツアー初戦ツアー・ダウンアンダーも佳境を迎える。
歴代のウィランガステージ優勝者
2002年:集団スプリント ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年:集団スプリント ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)
2004年:集団スプリント ベン・デイ(オーストラリア)
2005年:少人数逃げ切り アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年:少人数逃げ切り ラッセル・ヴァンホート(オーストラリア)
2007年:小集団スプリント ピーテル・ヘイレベルト(ベルギー)
2008年:集団スプリント アンドレ・グライペル(ドイツ)
2009年:集団スプリント アラン・デーヴィス(オーストラリア)
text&photo:Kei Tsuji
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