2017/12/30(土) - 19:37
オランダを拠点に欧州シクロクロスレースに挑む弱虫ペダルサイクリングチームの遠征記第2弾。世界最強の選手達、重く深すぎる泥コース、熱狂する大観衆など、遠征中盤戦の模様を唐見実世子プレイングコーチによる手記で紹介します。
欧州遠征第3戦、2回目のオランダナショナルレース
12月26日、セカンドクリスマスデイ。オランダでは25日と26日が祝日となり、商店も閉まってしまうので、町はとても静か。大抵は家族や友人で過ごしたり、教会に行ったり。でもそこは自転車の国、オランダ。そんな日でも関係なくシクロクロスレースは行われ、たくさんのサイクリストがどこからともなく会場に集合する。
弱虫ペダルサイクリングチームも同様に、欧州遠征3戦目を迎えた。第3戦目はオランダナショナルレースで昨年も走ったサーキットでもあるNorg。コースがイメージできる分、少し気持ちが楽だった。ステイ先から260㎞離れているため、6時半に出発。真っ暗な中、ひたすらレース会場へ向かって車を走らせる。
少し寒いが晴れ間も見えて、気持ちよく試走へ。コースは昨年とは少し変わっていたが、アップダウンが多くクネクネとした感じは変わっておらず、私にとっては難しかった。しかし、試走時間も十分に取れたので、じっくりと見て回る事が出来た。
11時、男子エリートの出番。いつもと比べてエントリー数が少なく、2列埋まらない。それでも、迫力が伝わるスタートを切り、サーキットへ。先日に勝利しているカチューシャ・アルペシンのマウリス・ラメルティンク(オランダ)もいるが、それよりも前に地元のエリート選手が先行している。コーナーやちょっとしたアップダウンの突っ込みが明らかに2位以下の選手達よりも速い。
2位争いでラメルティンク選手が2人パックを作り、その後4位単独、5位単独とバラバラ状態。前田選手と織田選手は2人で協力して前を追うも、なかなか差が詰まらず、5位6位で走る。1位と2位の差、2位と3位の差、3位と4位の差が時間を追う毎に少しずつ開いていく感じだったが、大まかな変化はなくそのままゴールへ。5位前田選手、6位織田選手となった。
女子エリートは14時スタート。風が冷たく、寒く感じたのでレッグウォーマーを着用してスタートした。すぐにシングルトラックに入り、1列棒状になりながらも、選手のレベルがいろいろなので、すぐに先頭が見えなくなってしまう。4人のパックになるが、ペースが合わない。
少ししてパックが崩れ、前を行く選手を追う。2人のパックに追いつきかわすがその後別の2人に追いつかれ、最終ラップでミスしてしまい、3人パックの3番手になってしまった。結局パックの2番手でゴールして11位。こちらのナショナルレベルの選手は、技術的に優れていて、ぺダリング能力も高い。フィジカル的には高い選手もいればそうでない選手も存在する。でもみんな自転車の走らせ方を知っている。この中から全てに優れ、選ばれた選手だけがUCIレースを走る事になるので、私達日本人は相当努力しなければ世界で戦う事ができないのだ。
欧州遠征第4戦、ロエンハウト(UCI-1)
12月27日は休息日。3連戦を翌日に控えているため、各々自由に過ごす。私はゴーダの町までサイクリング。強風と小雨で震えながらもサイクリングは楽しい。オランダはサイクリング道路が整っており、見渡す限りほとんど何もない小道を永遠と走る事ができ、途中でどこからともなく現れたサイクリストやランナー、ママチャリに乗った人達とすれ違うと、こちらの人たちは逞しいなぁ、と思いつつ、こうやって毎日素敵な環境でサイクリングできる環境がうらやましい。
12月28日、ルンハウト。UCI1クラス。会場付近は観客でごった返して、朝だというのにバーすら盛り上がっている。ハリーさん
は会場のレイアウトが頭に入っているので、まずは受付近くまで車で行って、ライセンスコントロールを済ませ、その後コースに近い場所に駐車してくれる。日本人がいきなり欧州遠征してもスムーズにスタートラインに立てないので、ハリーさんには感謝してもしきれない。
11時にU23レースがスタート。ナショナルチャンピオンジャージを身にまとった織田聖選手だったが、スタートしてすぐの泥区間で落車してしまい、ジャージは真っ黒に。大きく順位を下げた織田選手は流れに乗れないまま-1lapでレースを降りる事になってしまった。
「泥沼セクションで転倒してしまい左半身泥まみれ。どんどん冷えてきてしまい身体が思うように動かず納得いく走りができなかった」と織田選手は振り返っている。一方、優勝はヨーロッパ王者のエリ・イゼルビッド(ベルギー、マーラックス・ナポレンゲームス)。1周目こそ4番手ほどだったが、先頭に立ってからはじりじりと後方との差を広げ、独走で優勝を飾った。
私はと言えば、試走でコース全体が泥の海になっている事に驚く。轍も深いというか深すぎて、昨年とは違うコースに感じる。試走中には杭とハンドルが絡まってこけて膝を思い切りひねり、フライオーバーから思い切り下って、泥に突っ込み、轍を外してハンドル操作を誤って、思いっきりコケる。スタートラインに立つ頃には泥だらけ。でも、これだけ思い切りコケたらコースへの踏ん切りがつき逆にリラックスできた。
13時45分、女子エリートスタート。1周目の最初の深い泥区間はランニング。1周過ぎたあたりからバラバラになりはじめ、抜きつ抜かれつが続く。同じ集団で走っている選手達もミスする選手もいて、ミスするのは自分だけではない、出来ないのは自分だけではないと言い聞かせてとにかくビビらないように周回を重ねた。
だが、ラスト2ラップのところでまたしても轍を外してしまって、自転車と一緒に1回転、頭を強打してしまう。起き上がって前を追うもふら付いてしまってペースが上がらない。結局最終回に入る事が出来ず、そのままDNFとなってしまった。さっきまで一緒に走っていたグループは最終ラップに入れたのでとても残念。
今年のルンハウトは昨年に比べて私にとっては非常に難しく、この舞台で走らせてもらう前に、もっとやらなければならない事がたくさんあると感じる。まずはナショナルレースで上位に絡めるくらいのテクニックがないとダメ。女子エリートの優勝は世界チャンピオンであるサンヌ・カント(ベルギー、ベオバンク・コレンドン)。1周目から独走態勢に入り、そのまま危なげなくゴールへ。力強い走りで優勝を決めた。
そして15時、男子エリートスタート。前田公平選手も深い轍と泥に良いイメージを持てないまま走り、落車もなくこなしたが、泥で細かいミスを繰り返してしまい、思うように順位を上げられない。だが、中盤をすぎてから、徐々に深い泥の轍の処理の感覚がわかってきたようだ。男子エリート優勝はマテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)。2周目にはいる頃には先頭に立ち、他のカテゴリーと同様に後続の追走を許さない走りだった。前田選手もこれまでの経験と欧州遠征での経験を生かして、次に繋げてくれると信じている。
佐藤成彦ゼネラルマネージャーのコメント
欧州遠征も中盤を迎え少しずつ本場のスピード&コースに順応できてきた感はあったのですが、トップ選手達の繰りなす泥ハイスピードコーナーリンングに対抗する術にはなりませんでした。頭をハンマーで叩かれたくらいの衝撃を覚えたレースでしたが、今回の様なコースレイアウト&路面状況のレースを、とにかく数多くこなしたいと言う思いが強く残るレースとなりました。明日からもUCIレースが続きますが、3人それぞれ感じた事を明日以降のレースに活かし、そして、来シーズンにフィードバックしていきたいと感じたレースだった。
text:Karami.Miyoko
欧州遠征第3戦、2回目のオランダナショナルレース
12月26日、セカンドクリスマスデイ。オランダでは25日と26日が祝日となり、商店も閉まってしまうので、町はとても静か。大抵は家族や友人で過ごしたり、教会に行ったり。でもそこは自転車の国、オランダ。そんな日でも関係なくシクロクロスレースは行われ、たくさんのサイクリストがどこからともなく会場に集合する。
弱虫ペダルサイクリングチームも同様に、欧州遠征3戦目を迎えた。第3戦目はオランダナショナルレースで昨年も走ったサーキットでもあるNorg。コースがイメージできる分、少し気持ちが楽だった。ステイ先から260㎞離れているため、6時半に出発。真っ暗な中、ひたすらレース会場へ向かって車を走らせる。
少し寒いが晴れ間も見えて、気持ちよく試走へ。コースは昨年とは少し変わっていたが、アップダウンが多くクネクネとした感じは変わっておらず、私にとっては難しかった。しかし、試走時間も十分に取れたので、じっくりと見て回る事が出来た。
11時、男子エリートの出番。いつもと比べてエントリー数が少なく、2列埋まらない。それでも、迫力が伝わるスタートを切り、サーキットへ。先日に勝利しているカチューシャ・アルペシンのマウリス・ラメルティンク(オランダ)もいるが、それよりも前に地元のエリート選手が先行している。コーナーやちょっとしたアップダウンの突っ込みが明らかに2位以下の選手達よりも速い。
2位争いでラメルティンク選手が2人パックを作り、その後4位単独、5位単独とバラバラ状態。前田選手と織田選手は2人で協力して前を追うも、なかなか差が詰まらず、5位6位で走る。1位と2位の差、2位と3位の差、3位と4位の差が時間を追う毎に少しずつ開いていく感じだったが、大まかな変化はなくそのままゴールへ。5位前田選手、6位織田選手となった。
女子エリートは14時スタート。風が冷たく、寒く感じたのでレッグウォーマーを着用してスタートした。すぐにシングルトラックに入り、1列棒状になりながらも、選手のレベルがいろいろなので、すぐに先頭が見えなくなってしまう。4人のパックになるが、ペースが合わない。
少ししてパックが崩れ、前を行く選手を追う。2人のパックに追いつきかわすがその後別の2人に追いつかれ、最終ラップでミスしてしまい、3人パックの3番手になってしまった。結局パックの2番手でゴールして11位。こちらのナショナルレベルの選手は、技術的に優れていて、ぺダリング能力も高い。フィジカル的には高い選手もいればそうでない選手も存在する。でもみんな自転車の走らせ方を知っている。この中から全てに優れ、選ばれた選手だけがUCIレースを走る事になるので、私達日本人は相当努力しなければ世界で戦う事ができないのだ。
欧州遠征第4戦、ロエンハウト(UCI-1)
12月27日は休息日。3連戦を翌日に控えているため、各々自由に過ごす。私はゴーダの町までサイクリング。強風と小雨で震えながらもサイクリングは楽しい。オランダはサイクリング道路が整っており、見渡す限りほとんど何もない小道を永遠と走る事ができ、途中でどこからともなく現れたサイクリストやランナー、ママチャリに乗った人達とすれ違うと、こちらの人たちは逞しいなぁ、と思いつつ、こうやって毎日素敵な環境でサイクリングできる環境がうらやましい。
12月28日、ルンハウト。UCI1クラス。会場付近は観客でごった返して、朝だというのにバーすら盛り上がっている。ハリーさん
は会場のレイアウトが頭に入っているので、まずは受付近くまで車で行って、ライセンスコントロールを済ませ、その後コースに近い場所に駐車してくれる。日本人がいきなり欧州遠征してもスムーズにスタートラインに立てないので、ハリーさんには感謝してもしきれない。
11時にU23レースがスタート。ナショナルチャンピオンジャージを身にまとった織田聖選手だったが、スタートしてすぐの泥区間で落車してしまい、ジャージは真っ黒に。大きく順位を下げた織田選手は流れに乗れないまま-1lapでレースを降りる事になってしまった。
「泥沼セクションで転倒してしまい左半身泥まみれ。どんどん冷えてきてしまい身体が思うように動かず納得いく走りができなかった」と織田選手は振り返っている。一方、優勝はヨーロッパ王者のエリ・イゼルビッド(ベルギー、マーラックス・ナポレンゲームス)。1周目こそ4番手ほどだったが、先頭に立ってからはじりじりと後方との差を広げ、独走で優勝を飾った。
私はと言えば、試走でコース全体が泥の海になっている事に驚く。轍も深いというか深すぎて、昨年とは違うコースに感じる。試走中には杭とハンドルが絡まってこけて膝を思い切りひねり、フライオーバーから思い切り下って、泥に突っ込み、轍を外してハンドル操作を誤って、思いっきりコケる。スタートラインに立つ頃には泥だらけ。でも、これだけ思い切りコケたらコースへの踏ん切りがつき逆にリラックスできた。
13時45分、女子エリートスタート。1周目の最初の深い泥区間はランニング。1周過ぎたあたりからバラバラになりはじめ、抜きつ抜かれつが続く。同じ集団で走っている選手達もミスする選手もいて、ミスするのは自分だけではない、出来ないのは自分だけではないと言い聞かせてとにかくビビらないように周回を重ねた。
だが、ラスト2ラップのところでまたしても轍を外してしまって、自転車と一緒に1回転、頭を強打してしまう。起き上がって前を追うもふら付いてしまってペースが上がらない。結局最終回に入る事が出来ず、そのままDNFとなってしまった。さっきまで一緒に走っていたグループは最終ラップに入れたのでとても残念。
今年のルンハウトは昨年に比べて私にとっては非常に難しく、この舞台で走らせてもらう前に、もっとやらなければならない事がたくさんあると感じる。まずはナショナルレースで上位に絡めるくらいのテクニックがないとダメ。女子エリートの優勝は世界チャンピオンであるサンヌ・カント(ベルギー、ベオバンク・コレンドン)。1周目から独走態勢に入り、そのまま危なげなくゴールへ。力強い走りで優勝を決めた。
そして15時、男子エリートスタート。前田公平選手も深い轍と泥に良いイメージを持てないまま走り、落車もなくこなしたが、泥で細かいミスを繰り返してしまい、思うように順位を上げられない。だが、中盤をすぎてから、徐々に深い泥の轍の処理の感覚がわかってきたようだ。男子エリート優勝はマテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)。2周目にはいる頃には先頭に立ち、他のカテゴリーと同様に後続の追走を許さない走りだった。前田選手もこれまでの経験と欧州遠征での経験を生かして、次に繋げてくれると信じている。
佐藤成彦ゼネラルマネージャーのコメント
欧州遠征も中盤を迎え少しずつ本場のスピード&コースに順応できてきた感はあったのですが、トップ選手達の繰りなす泥ハイスピードコーナーリンングに対抗する術にはなりませんでした。頭をハンマーで叩かれたくらいの衝撃を覚えたレースでしたが、今回の様なコースレイアウト&路面状況のレースを、とにかく数多くこなしたいと言う思いが強く残るレースとなりました。明日からもUCIレースが続きますが、3人それぞれ感じた事を明日以降のレースに活かし、そして、来シーズンにフィードバックしていきたいと感じたレースだった。
text:Karami.Miyoko
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