2017/12/31(日) - 19:13
2017年の国内レースを振り返る最終回は、マトリックスパワータグの強さが目立ったJプロツアー終盤戦と、雨澤毅明の3位に湧いたジャパンカップ、ツール・ド・おきなわ、シクロクロス全日本などを振り返ります。
終盤戦を迎えたJプロツアー。9月16日に初開催された山口県の秋吉台カルストロードでは、優勝したアイラン・フェルナンデスを筆頭に、2位佐野淳哉、3位ホセ・ビセンテと、マトリックスパワータグが上位を独占。ルビーレッドジャージを着るビセンテはこの後も着々と年間総合優勝に向けて足場を固めていく。
10月
国民体育大会は愛媛県で開催。松山競輪場で行われたトラック種目では、野外400mバンクにも関わらず1kmTTや4kmチームパーシュート、男子チームスプリントで大会新記録が続出した。
ロードレースは今治市の大三島。成年、少年共に1周40.4kmという長い周回コースを3周で行われた。成年は残り2kmから独走に持ち込んだ草場啓吾(京都・日本大学)が優勝。少年は約30人のスプリント勝負を西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が制した。
多くの初開催レースがあった2017年だが、一方で最後の開催となったレースもある。石川県の輪島市で行われてきた輪島ロードレースは、10回目となる今回が最後の開催となった。
8月のツール・ド・ラヴニールから9月の世界選手権までナショナルチームで海外遠征に出ていた選手がこのレースからJプロツアーに復帰。そのメンバーの1人である雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が強さを見せ、終盤を独走して優勝。7月の石川ロードレースに次ぐJプロツアー2勝目を挙げた。
10月14日、国内レース取材の第一人者である高木秀彰氏が急逝。翌15日のJプロツアーおおいたサイクルロードレースでは、スタート前に選手が黙祷を捧げた。悲しみの雨の中行われたレースは、マトリックスパワータグが制圧。土井雪広を先頭に4位までを独占して見せた。
台風が近づく悪天候の中での開催にも関わらず、ジャパンカップには今年も多くの観客が集まった。
オープンレース男子は、集団スプリントを制した横塚浩平(LEOMOベルマーレ)が優勝。女子は金子広美(イナーメ信濃山形)が大堀博美(YOKOSUKA UNO RACING)との一騎打ちを制して優勝した。
ジャパンカップクリテリウムには、初来日のアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)が出場。クリテリウム3連覇を目指すチームメイト・別府史之のアシストとして走った。レースはロングスプリントをかけたマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ)が優勝。濡れた路面にも関わらず、平均スピード46.1km/hのハイスピードレースとなった。
ジャパンカップロードレースは朝から雨が降り続く最悪のコンディション。台風が接近していたため、レース距離は103kmに短縮となった。
異例の短距離決戦となったレースは、スタート直後から逃げ続けた初山翔(ブリヂストン・アンカー)ら3人に、カノラ、ベンジャミ・プラデス(チーム右京)、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が終盤に合流。最終周回の古賀志の登りで初山が遅れ、5人によるスプリント勝負をカノラが制して優勝。ジャパンカップ史上初となるクリテリウム・ロードレース連続優勝を果たした。3位に雨澤が入り、宇都宮ブリッツェンは発足9年目にして悲願のジャパンカップ表彰台を実現した。
Jプロツアー最終戦となる経済産業大臣旗ロードレース。本来は新潟県南魚沼市で行われる予定だったが、災害によりコースが使用出来なくなったため、群馬CSCに場所を変えて行われた。
序盤に形成された逃げ集団に入った佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が強さを見せ、最後は3人のスプリントを制して優勝。団体総合でもマトリックスパワータグが優勝して経済産業大臣旗を獲得した。マトリックスパワータグは、ホセ・ビセンテの年間総合優勝とチーム総合優勝も決め、2017年のJプロツアーを完勝して終えた。
11月
5回目の開催となるツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。今年もマイヨ・ジョーヌを着るクリス・フルーム(チームスカイ)を筆頭にツール・ド・フランスのスター選手が勢揃いした。クリテリウムの前に行われたチームタイムトライアルでは、増田成幸、阿部嵩之、小野寺怜の3人で出走した宇都宮ブリッツェンが、ツール常連チームを下して優勝してみせ、集まった観客を沸かせた。
クリテリウムでは新城幸也(バーレーンメリダ)が幾度となくアタックして見せるが決定打とならず。終盤にはフルームとマイヨアポアを着るワレン・バルギル(チームサンウェブ)の2人が逃げるが、残り300mで吸収。残り100mから先行した別府史之(トレック・セガフレード)を、マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)が僅差でかわして優勝した。
シーズン最後のロードレースはツール・ド・おきなわ。今年は曇り空の下でのレースとなり、沖縄らしくない涼しさを感じる中でのレースとなった。
UCI1.2のチャンピオンレースは、残り50kmで逃げが吸収された後のアタック合戦で決定打が出ないまま20人ほどの集団でスプリント勝負に持ち込まれ、残り1kmからロングスパートをしかけた佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が優勝した。
女子国際レースは、世界選手権チームTT優勝メンバーのエレン・ファンダイク(WTC de アムステル)が、與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)を下して優勝。ジュニア国際レースは、細田悠太(南大隅高校)が13人のスプリントを制して優勝した。
伊豆ベロドロームで行われたオムニアム全日本選手権。男子エリートは2年ぶりに出場した橋本英也(競輪学校)が強気のレース展開で他を圧倒。3種目で築いたリードを守りきって優勝した。女子は学生のオムニアムチャンピオン中村愛花(日本体育大学)が全日本でも優勝し、2冠を達成した。
12月
「Raphaスーパークロス野辺山」でお馴染み、野辺山高原の滝沢牧場で初めて開催されたシクロクロス全日本選手権。雪、泥、凍結という難しいコンディションの中のレースとなった男子エリートは、先頭パックを振り切って残り3周を独走に持ち込んだ小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が優勝。表彰台で父・正則への一言「親父、勝ったぞ」に万感が込められていた。
女子エリートは前年優勝の坂口聖香(S-Familia)、與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)、今井美穂(CO2 bicycle)の三つ巴の争い。最終周回に坂口と今井の争いとなり、最後はロードレースのような僅差のスプリント勝負を制した今井が初優勝した。
UCIトラック・ワールドカップで、日本勢が初の快挙を連発した。
イギリス・マンチェスターで行われた第2戦では、女子の4kmチームパーシュート(中村妃智、橋本優弥、梶原悠未、古山稀絵)で日本新記録更新と3位銅メダルを獲得。カナダのマンチェスターで行われた第3戦では、梶原悠未(筑波大学)がオムニアムで優勝し、金メダルを獲得した。
さらにチリのサンチアゴで行われた第4戦では、梶原がオムニアムで再び優勝。男子オムニアムでも橋本英也が2位銀メダル。ケイリンでは脇本雄太(JPCU福井)が日本人では14年ぶりの金メダルを獲得した。4kmチームパーシュートでは、男子(一丸尚伍、近谷涼、沢田桂太郎、今村駿介)が初めて4分を切る日本新記録を出し、2位銀メダルを獲得。女子(中村、橋本、古山、鈴木奈央)は2回目の3位銅メダルを獲得した。
2年後に迫った東京オリンピックに向けて期待が膨らむ。
3回に渡って国内レースの2017年を振り返りました。
本来であれば、本稿は故・高木秀彰さんが書かれるはずでした。過去の記事を振り返っていると足跡を辿っているようで、改めて高木さんがやってこられた事の大きさを実感します。
高木さん、これからも国内レースの趨勢(すうせい)を天国から見守って下さい。
text:Satoru Kato
終盤戦を迎えたJプロツアー。9月16日に初開催された山口県の秋吉台カルストロードでは、優勝したアイラン・フェルナンデスを筆頭に、2位佐野淳哉、3位ホセ・ビセンテと、マトリックスパワータグが上位を独占。ルビーレッドジャージを着るビセンテはこの後も着々と年間総合優勝に向けて足場を固めていく。
10月
国民体育大会は愛媛県で開催。松山競輪場で行われたトラック種目では、野外400mバンクにも関わらず1kmTTや4kmチームパーシュート、男子チームスプリントで大会新記録が続出した。
ロードレースは今治市の大三島。成年、少年共に1周40.4kmという長い周回コースを3周で行われた。成年は残り2kmから独走に持ち込んだ草場啓吾(京都・日本大学)が優勝。少年は約30人のスプリント勝負を西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が制した。
多くの初開催レースがあった2017年だが、一方で最後の開催となったレースもある。石川県の輪島市で行われてきた輪島ロードレースは、10回目となる今回が最後の開催となった。
8月のツール・ド・ラヴニールから9月の世界選手権までナショナルチームで海外遠征に出ていた選手がこのレースからJプロツアーに復帰。そのメンバーの1人である雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が強さを見せ、終盤を独走して優勝。7月の石川ロードレースに次ぐJプロツアー2勝目を挙げた。
10月14日、国内レース取材の第一人者である高木秀彰氏が急逝。翌15日のJプロツアーおおいたサイクルロードレースでは、スタート前に選手が黙祷を捧げた。悲しみの雨の中行われたレースは、マトリックスパワータグが制圧。土井雪広を先頭に4位までを独占して見せた。
台風が近づく悪天候の中での開催にも関わらず、ジャパンカップには今年も多くの観客が集まった。
オープンレース男子は、集団スプリントを制した横塚浩平(LEOMOベルマーレ)が優勝。女子は金子広美(イナーメ信濃山形)が大堀博美(YOKOSUKA UNO RACING)との一騎打ちを制して優勝した。
ジャパンカップクリテリウムには、初来日のアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)が出場。クリテリウム3連覇を目指すチームメイト・別府史之のアシストとして走った。レースはロングスプリントをかけたマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ)が優勝。濡れた路面にも関わらず、平均スピード46.1km/hのハイスピードレースとなった。
ジャパンカップロードレースは朝から雨が降り続く最悪のコンディション。台風が接近していたため、レース距離は103kmに短縮となった。
異例の短距離決戦となったレースは、スタート直後から逃げ続けた初山翔(ブリヂストン・アンカー)ら3人に、カノラ、ベンジャミ・プラデス(チーム右京)、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が終盤に合流。最終周回の古賀志の登りで初山が遅れ、5人によるスプリント勝負をカノラが制して優勝。ジャパンカップ史上初となるクリテリウム・ロードレース連続優勝を果たした。3位に雨澤が入り、宇都宮ブリッツェンは発足9年目にして悲願のジャパンカップ表彰台を実現した。
Jプロツアー最終戦となる経済産業大臣旗ロードレース。本来は新潟県南魚沼市で行われる予定だったが、災害によりコースが使用出来なくなったため、群馬CSCに場所を変えて行われた。
序盤に形成された逃げ集団に入った佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が強さを見せ、最後は3人のスプリントを制して優勝。団体総合でもマトリックスパワータグが優勝して経済産業大臣旗を獲得した。マトリックスパワータグは、ホセ・ビセンテの年間総合優勝とチーム総合優勝も決め、2017年のJプロツアーを完勝して終えた。
11月
5回目の開催となるツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。今年もマイヨ・ジョーヌを着るクリス・フルーム(チームスカイ)を筆頭にツール・ド・フランスのスター選手が勢揃いした。クリテリウムの前に行われたチームタイムトライアルでは、増田成幸、阿部嵩之、小野寺怜の3人で出走した宇都宮ブリッツェンが、ツール常連チームを下して優勝してみせ、集まった観客を沸かせた。
クリテリウムでは新城幸也(バーレーンメリダ)が幾度となくアタックして見せるが決定打とならず。終盤にはフルームとマイヨアポアを着るワレン・バルギル(チームサンウェブ)の2人が逃げるが、残り300mで吸収。残り100mから先行した別府史之(トレック・セガフレード)を、マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)が僅差でかわして優勝した。
シーズン最後のロードレースはツール・ド・おきなわ。今年は曇り空の下でのレースとなり、沖縄らしくない涼しさを感じる中でのレースとなった。
UCI1.2のチャンピオンレースは、残り50kmで逃げが吸収された後のアタック合戦で決定打が出ないまま20人ほどの集団でスプリント勝負に持ち込まれ、残り1kmからロングスパートをしかけた佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が優勝した。
女子国際レースは、世界選手権チームTT優勝メンバーのエレン・ファンダイク(WTC de アムステル)が、與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)を下して優勝。ジュニア国際レースは、細田悠太(南大隅高校)が13人のスプリントを制して優勝した。
伊豆ベロドロームで行われたオムニアム全日本選手権。男子エリートは2年ぶりに出場した橋本英也(競輪学校)が強気のレース展開で他を圧倒。3種目で築いたリードを守りきって優勝した。女子は学生のオムニアムチャンピオン中村愛花(日本体育大学)が全日本でも優勝し、2冠を達成した。
12月
「Raphaスーパークロス野辺山」でお馴染み、野辺山高原の滝沢牧場で初めて開催されたシクロクロス全日本選手権。雪、泥、凍結という難しいコンディションの中のレースとなった男子エリートは、先頭パックを振り切って残り3周を独走に持ち込んだ小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が優勝。表彰台で父・正則への一言「親父、勝ったぞ」に万感が込められていた。
女子エリートは前年優勝の坂口聖香(S-Familia)、與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)、今井美穂(CO2 bicycle)の三つ巴の争い。最終周回に坂口と今井の争いとなり、最後はロードレースのような僅差のスプリント勝負を制した今井が初優勝した。
UCIトラック・ワールドカップで、日本勢が初の快挙を連発した。
イギリス・マンチェスターで行われた第2戦では、女子の4kmチームパーシュート(中村妃智、橋本優弥、梶原悠未、古山稀絵)で日本新記録更新と3位銅メダルを獲得。カナダのマンチェスターで行われた第3戦では、梶原悠未(筑波大学)がオムニアムで優勝し、金メダルを獲得した。
さらにチリのサンチアゴで行われた第4戦では、梶原がオムニアムで再び優勝。男子オムニアムでも橋本英也が2位銀メダル。ケイリンでは脇本雄太(JPCU福井)が日本人では14年ぶりの金メダルを獲得した。4kmチームパーシュートでは、男子(一丸尚伍、近谷涼、沢田桂太郎、今村駿介)が初めて4分を切る日本新記録を出し、2位銀メダルを獲得。女子(中村、橋本、古山、鈴木奈央)は2回目の3位銅メダルを獲得した。
2年後に迫った東京オリンピックに向けて期待が膨らむ。
3回に渡って国内レースの2017年を振り返りました。
本来であれば、本稿は故・高木秀彰さんが書かれるはずでした。過去の記事を振り返っていると足跡を辿っているようで、改めて高木さんがやってこられた事の大きさを実感します。
高木さん、これからも国内レースの趨勢(すうせい)を天国から見守って下さい。
text:Satoru Kato
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